第 2 章 日本における謝罪の変容
第 4 節 ‟パフォーマンス謝罪“
例②
2007年11月16日に大 阪と福岡の船場吉兆が食 品偽装で疑われた。船場 吉兆の湯木社長は次のよ うに述べた。「信頼しき っていたところに、この
…なんというんですか…
偽装というものがあった のに、非常に裏切られた 気持ちで、本当に申ーし
訳ない、お恥ずかしく、もうこれは本当に痛切に感じるわけでございます。」(写 13)。
社長の表現は非常に感情的で、声のトーンもよく変わったりした。11 月 17 日に湯木尚冶 取締役は NHK に特別に謝罪をした。「本当にこのたびは一連の不祥事に対して、深く心 からお詫びを申し上げます」と述べた。話の中、単語と単語の間に必ず長く止まって、深 く空気を吸って、神妙な面持ちでゆっくり話をした。
この二つのケースにおいて謝罪者はそれぞれ会見のための準備をしているように考えら れる。朝青龍の場合は、やらさられたようにも見え、あらかじめ決められたように演技し ているが、内心反省する感情は全くなさそうに見えている。筆者は、このような演技的な 謝罪会見を「パフォーマンス謝罪」と呼ぶ。パフォーマンス謝罪の社会的な意味は被害者 に謝ることであるが、一般の「謝罪会見」とは違って、謝罪者はよいイメージを出すため 努力をする。あるいは、全く謝りたくない感情を見せる。つまり、「謝罪」自体は演技に しか見えない。勿論、演技が上手な謝罪者は本当に心から謝っているように見えるが、そ の完璧な演技をするために謝罪トレーニングが必要であろう。
勿論、「パフォーマンス謝罪」が嘘とは言えないが、謝罪者は必ず謝罪に準備をして、
発表前に振り付けを決めて、使う言葉を考えて、顔の表現も決めているということであろ う。演技するための準備といえる。
写13.NHKニュース7 2007年11月16日
例③
このような「パフォー マンス謝罪」は最近も見 られている。2013 年 10 月 28 日にフジテレビの
『とくダネ』でフリーア ナウンサーのみのもんた の 息 子 が 窃 盗 未 遂 を 起 し、みのもんたは親とし ての責任があるとし、謝 罪 し て 、 仕 事 を 辞 め た
(写14)。70分の謝罪会見は17秒の長いお辞儀で始まり、謝罪会見中に涙も笑顔も見せ
たみのもんたはプロフェッショナルな「パフォーマンス謝罪」を見せた。みのもんたの謝 罪の中に笑顔から、悔しい気持ち、涙、そして最後に怒りの表情も現れた。みのもんたの
「まず、私事で大変世間をお騒がせしまして、誠に申し訳ございません」と述べた時、単 語のスペース、話をゆっくり
から非常に早くまでするスピードの変化、声のトーン、そして声の大きさが全て完璧に演 技された。『とくダネ』の番組のキャスターが述べたように、みのもんたの謝罪会見の70 分の中では表情がよく変わり、カメラマンのシャッターチャンスが多かった。『とくダネ』
のメインキャスターである小倉智昭は、「みのもんたの謝罪会見であまりにもたくさんの 感情が混ぜられて、違和感があった。本人は長い間にテレビの前の経験あることが見えて いる」と述べた。
朝青龍、船場吉兆とみのもんたの「謝罪会見」を比較すると、すべて社会的な期待、つ まり謝るということに応えている。しかし、みのもんたの謝罪は構造的に作られており、
謝罪会見を開く前に長く頭を下げて、感情的な部分が多かった。記者の質問に決まった答 えがあると分かる。つまり、パターン化された「謝罪会見」がパターン化された「パフォ ーマンス謝罪」になっていたのである。
写14.フジテレビ「とくダネ」2013年10月28日
例④
2012年10月に森 口尚史はIPS細胞を 使った世界初の心筋 移植手術を実施した と読売新聞にニュー ヨークで述べた。日 本のメディアはこの ことに注目したが、
二日後、説明したこ とが嘘だったという ことが発覚した(写
15)。森口は自分の嘘により、情けない記者会見を開いた。12月 15 日に日本に帰国し、
空港内に待っていた多くのメディアを怖がって小走りをしたが、結局成田空港外で報道群 に囲まれて謝罪した。この事件を事例にした理由は、会見が面白いだけではなく、メディ アの立場がよく表れている事例だからだ。なぜメディアはこの事件にあんなに注目したか 二つの要因が考えられる。一つは、メディアは森口にだまされたから、罰として森口を謝 らせたかった。もう一つは、メディアが森口が嘘を言っていることに気づき、視聴者に娯 楽として紹介すれば、視聴者の注目を得ることができると考えたからである。このケース はメディアの権力をよく見せる事件である。
写15.メ~テレ2012年10月15日 森口尚史 成田空港