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主題の属性・性質

ドキュメント内 ― 可能とモダリティ ― (ページ 109-112)

第三章 義務的モダリティを表す〈-不得〉と〈-不了〉

3.4. 不許可を表す〈‑不得〉

3.4.2. 不許可

3.4.2.1. 主題の属性・性質

以上、考察したように、不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉は、主題-評言を基本とする 有題文となり、主題には述語との文法関係において、対象や場所といった成分が現れ得る ことが明らかとなった。

(118) a. 所以 这 种 蛋 也 称 “拙蛋”, 说是 小孩子 吃 不 得,

だから この CL も 呼ぶ 『稚拙な卵』 と言われている 子供 食べる-NEG-DEpermi

吃 了 书 念 不 好。(CCL:汪曾祺《鸡鸭名家》)

食べる PERF本 読む NEG良い

「よってこの種の卵は『稚拙な卵』とも呼ばれており、子供は食べてはいけない、食べ ると勉強ができなくなると言われている。」

b. “那 种 地方 是 去 不 得 的,他们 有 打手,

あのCL 場所 COP 行く-NEG-DEpermi NOM 彼ら いる 手下

去 了 就 必须 进货,…”(CCL:《1994年报刊精选10》)

行く PERF 正に 必ず~しなければならない 仕入れる

「あの種の場所には行ってはいけない。彼らには手下がいて、行けば必ず商品を仕入れ なければならなく、…」

つまり、主題である〈这种蛋: この種の卵〉及び〈那种地方: あの種の場所〉が話題を設定 し、それに対しての説明として〈小孩子吃不得: 子供が食べてはいけない〉及び〈去不得: 行 ってはいけない〉ということを述べている。つまり、主題である〈这种蛋: この種の卵〉及 び〈那种地方: あの種の場所〉の性質を描写していると言える。このような特徴より、〈-不 得: -NEG-DEpermi〉が表す不許可の意味では、聞き手に対して、直接的に動作の不許可を指 示することは難しい。

(119) a. *出去!再 也 回来 不 得!

出て行く 再び も 戻ってくる-NEG-DEpermi

「出て行け。もう二度と戻って来るな。」

b. 出去!再 也 不要 回来!

出て行く 再び も NEG AUX(するな) 戻ってくる

「出て行け。もう二度と戻って来るな。」

(119a) ように、遂行的意味が前面に出た用法では、〈-不得: -NEG-DEpermi〉を用いることは

できない。(119a) を正しく言うならば、法助動詞である〈不要: するな〉(或いは〈别: す るな〉)を用いて、(119b) のように表現される。つまり、このような相手に対して、動作行 為を直接的に阻止する表現は、主題-評言では表しにくいためであると考えられる。

ここまでの議論では、主題を「文頭に立ち、1文の中で説明がなされる対象」という観点 から考察した。しかし、事柄の既知或いは未知という点に着目した新情報及び旧情報とい った見方も情報構造の一つとして見做される。これは、一文を超えて談話、テキストのレ ベルでの議論に拡張される。この観点に立つと、主題は「前提とされている情報」という ように規定され、次のような見方となる。

(120) 杨过道:“那 情花 何等 美丽,结 的 果实 却 这麽 难看。”

あの 情花 なんと 美しい 結ぶ NOM 果実 のに こんなにも 醜い

「『あの情花はすごく美しいのに、結んだ実はこんなにも醜い』と楊過は言った。」

女郎道:“情花 的 果实 是 吃 不 得 的, 有的 酸, 有的 辣,

情花 ASSOC 果実 COP 食べる-NEG-DEpermiNOM あるもの 酸っぱい あるもの 辛い

有的 更加 臭气 难闻, 中 人 欲 呕。”

あるもの ますます 臭気 嫌な臭い CAUS したい 吐く

「『情花の実は食べてはいけない。酸っぱいものもあるし、辛いものもあるし、更に臭く て、吐き気をもよおすものもある』と若い女性は言った。」

(CCL: 金庸《神雕侠侣》)

(120) の〈情花的果实是吃不得的: 情花の果実は食べてはいけない〉という文では、〈情花的

果实: 情花の実〉が主題、〈吃不得: 食べてはいけない〉が評言となっている。また、情報 構造においても、〈情花: 情花〉及び〈果实: 果実〉が先行文脈で話題となっており、主題 である〈情花的果实: 情花の果実〉が「前提とされている情報」を提示している。つまり、

前文の〈杨过: 楊過〉が「情花とはなんと美しいのだろう」というように、〈情花: 情花〉

の話題を既に提示している。それに対して、次の女郎の〈情花的果实是吃不得的: 情花の果 実は食べてはいけない〉という発話があり、ここで〈情花: 情花〉は旧情報として主題位置 に現れている。

しかし、「前提とされている情報」と、新情報及び旧情報というレベルでの主題というこ

とが合わない現象もある。

(121) 他 叹 了 口气:“喝 酒 我 不 在乎, 什么样 的 酒 我 都 喝,

彼 溜息をつく PERF 飲む 酒 私 NEG気に掛ける どのような ASSOC 酒 私 全部 飲む

可是,喝 茶 我 一向 很 讲究, 冷茶 是 万万 喝 不 得 的,

しかし 飲む お茶 私 平素から とても 重んじる 冷たいお茶 COP 絶対に 飲む-NEG-DEpermiNOM

要 我 喝 冷茶, 我 宁可 喝 毒 酒。”(CCL:古龙《英雄无泪》)

もし 私 飲む 冷たいお茶 私 した方が良い 飲む 毒 酒

「彼は溜息をついて『私は酒を飲むことについては気にかけない、どんな酒でも飲む。

しかしお茶を飲むことについては平素からずっとこだわりがあって、冷たいお茶は絶 対に飲んではいけない(飲まないようにしている)。冷たいお茶を飲むなら、毒入りの 酒を飲むほうがましだ』と言った。」

(121) の〈冷茶是万万喝不得的: 冷たいお茶は絶対に飲んではいけない〉というのは、〈冷茶:

冷たいお茶〉が主題で、〈喝不得: 飲んではいけない〉が評言である。しかし、先行文脈で 話題となっているのは「(酒やお茶を)飲む」ということであり、「前提とされている情報」

は〈喝不得: 飲んではいけない〉であり、〈冷茶: 冷たいお茶〉は新しい情報であると言え る。このように、文レベルでの主題がすべて旧情報となるわけではないという点について は、既に指摘されている(堀川2009:80-81参照)。

以上の議論より、本研究では、主題を「文頭に立ち、1文の中で説明がなされる対象」と いう観点からの考察し、〈-不得: -NEG-DEpermi〉が表す不許可の意味は、主題の属性及び性質 を描写するという属性叙述文に近い表現であることを論じた。これは、3.3節で論じた弱い 義務ということと同等のこととして捉えることができる。

ドキュメント内 ― 可能とモダリティ ― (ページ 109-112)