第三章 義務的モダリティを表す〈-不得〉と〈-不了〉
3.6. まとめ
本章では、不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉と不必要を表す〈-不了: -NEG-LIAOnecess〉
という義務的モダリティを表す形式について論じた。両形式は、主に主題-評言という有題 文を取り、その主題に現れる要素の性質や属性について述べるという点で共通した特徴を 有する。また、両者とも否定形式のみで用いられる。そこで、3.6節では、本章の総括とし て、両形式の意味的特徴を簡潔に提示し、更に文法的、構文的特徴を再度まとめる。その 上で、先行研究との関連で、特に問題とした議論についても簡潔にまとめる。
まず、意味的特徴として、両形式の意味を各々簡潔にまとめると次のようになる。不許 可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉は、「主題に立つ要素の性質として、評言で表される事態が 許されない」ということを表し、不必要を表す〈-不了: -NEG-LIAOnecess〉は「主題に立つ要 素の性質として、評言で表される事態が必要でない」ということを表すと記述することが できる。3.3節で可能用法との相違でも述べたように、義務的モダリティは、遂行的である という点で、不可能とは区別できる。この機能から、義務的モダリティの範疇にある不許 可や不必要という意味は、話し手から聞き手に対して直接的に動作を指示することができ そうであるが、この〈-不得: -NEG-DEpermi〉及び〈-不了: -NEG-LIAOnecess〉では、動作の直 接的な指示は極めて困難であり、主題要素の性質を述べるという点が非常に重要な特徴の 一つである。
次に、両者の文法的或いは構文的特徴をまとめる。
(表15) 可能を表す〈-得了/-不了〉及び〈-不得〉の諸特徴
不許可: 〈-不得〉 不必要: 〈-不了〉
先行述語
種類 動作動詞 動作動詞の中の使用・消費を表す動詞
意味素性 意志性 意志性
構文的特徴 有題文 有題文
文法的特徴 ― 数量表現の目的語位置への付加
不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉は動作動詞を先行述語に取り、不必要を表す〈-不了:
-NEG-LIAOnecess〉は動作動詞の中でも特に使用・消費を表す動詞を先行述語に取る。また、
特に不必要を表す〈-不了: -NEG-LIAOnecess〉は、数量表現を必ず目的語位置に取らなければ ならないという制約がある。このように、不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉については、
先行述語が意志性を有する動作動詞であれば成立するというように、その制約は非常に緩
やかであるのに対して、不必要を表す〈-不了: -NEG-LIAOnecess〉は先行述語が主に使用・消 費を表す動詞に限られ、数量表現が必須であるというように、非常に制限された環境でし か成立しないことが分かった。
最後に、先行研究の分析・記述との関連で、特に問題として取り上げた点をまとめる。先 行研究では、〈-不得: -NEG-DEpermi〉は、先行述語の「事態の実現性」と「悪い結果」の含意 という点において、主に特徴付けられてきた。それに対して、本研究では、事態の実現性 は、文法化した〈-得了/-不了: -DE-LIAO/-NEG-LIAO〉及び〈-得/-不得: -DE/-NEG-DE〉で表 される意味に共通した特徴であることを述べ、更に悪い結果の含意に関しては、不許可を 表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉に現れるという一定の傾向は見られるものの、必要条件ではな いことを論じた。