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不許可を表す〈‑不得〉の諸特徴

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第三章 義務的モダリティを表す〈-不得〉と〈-不了〉

3.4. 不許可を表す〈‑不得〉

3.4.1. 不許可を表す〈‑不得〉の諸特徴

3.4.1 節では、不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉の先行述語の種類や主題-評言或いは

主語-述語という構文を取るか否かといった特徴について論じる。不許可の意味を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉は、一般的に意志性を有した動作動詞を取る。稀ではあるが、形容詞 を先行述語とすることも可能であるが、この場合でも必ず動作主体の動作性及び事態に対

するコントロール性といった特徴が現れる。また、必ず、主題-評言という有題文として現 れる。

そこで、3.4.1.1 節では、先行述語である意志動詞或いは動作性が読み込まれた形容詞に ついて論じ、3.4.1.2節では、構文的特徴について記述する。

3.4.1.1. 動作・行為動詞の種類

不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉に先行する述語は、基本的に可能補語が可能を表す 場合と同様、意志性を含意した動詞が用いられる。

(111) a. 这 个 人 你 小看 不 得。(刘月华他2001:593②)

この CL あなた 馬鹿にする-NEG-DEperm

「この人は馬鹿にしてはいけない。」

b. 阿公 说 面前 的 河,从前 杨柳色,

祖父 言う 目の前 ASSOC 以前 ヤナギ色

现在 白鱼 肚子 里 都 墨鱼 一样,有 毒,吃 不 得。

現在 白い魚 腹 の中 すべて イカ と同じ ある 毒 食べる-NEG-DEpermi

(CCL: 林斤澜《三阿公》)

「祖父が言うに、目の前の川は、以前はヤナギ色だったが、現在は、魚の白い腹の中は まるでイカのように黒く、毒があり、食べてはいけない。」

更に、不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉の特徴として、形容詞が先行述語として用いら れることもある。しかしその場合でも、動作主による意志性及び事態に対する制御性が必 ず関与している(刘月华他2001:593-594参照)69。以下、形容詞が先行述語として用いられ ている例である。

69 刘月华他 (2001) では、不許可を表す可能補語〈-不得: -NEG-DEpermi〉をC2類可能補語(〈C2 类可能补语〉)とし、その特徴について、次のように記述する。〈C2类可能补语前的动词或 形容词也以单音节的为多。…能带C2类可能补语的形容词是有限的,多是口语中常用的、表 示人所能控制的状态的。(刘月华他2001:593-594)〉(C2類可能補語の前の動詞或いは形容詞 も、単音節のものが多い。…C2類可能補語を取ることができる形容詞にも制限がある。そ の多くは話し言葉で良く用いるもので、人がコントロールできる状態を表す。)

(112) 那 推 针 的 手,轻 不 得、 重 不 得、 慢 不 得、 快 不 得。

あの 押す 針 ASSOC 手 軽い-NEG-DEpermi 重い-NEG- DEpermi 遅い-NEG- DEpermi 速い-NEG- DEpermi

(刘月华他2001:593③)

「あの針を押し動かす手は、軽くても、重くても、遅くても、速くてもいけない。」

(112) は、形容詞〈轻: 軽い〉、〈重: 重い〉、〈慢: 遅い〉及び〈快: 速い〉が〈-不得: -NEG-DEpermi〉 の先行述語であり、「針を押し動かす手」の様子や速度の描写を行っている。ここでは、動 作主体がその動作を意図的に制御できるということが含意されているため、確かに、各々 の形容詞が表す重さや速さも自由に制御できると言えるであろう。つまり、たとえ形容詞 であっても、不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉に先行する場合は、必ず動作性が含意さ れ、意志性及び制御性を有した述語として解釈されるということが重要である。また、3.3.2 節でも述べたが、この制御可能性とは、対象となる事態が動作主体の意志によって制御で きるか否かを表す意味特徴であり、意志性に含意される概念である。そのため、不許可を 表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉は、典型的には意志を表す述語が先行すると言えよう。

3.4.1.2. 文の構文的特徴

不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉は、「対象/場所…(+ 動作主体) + 動作動詞-不得」

というような、主題-評言を基本とする有題文となる。

(113) “大叔, 这 个 也 放 不 得!” 淑娴 气 愤 地 指 着 冯寡妇。

おじさん これ CL も 放つ-NEG-DEpermi 淑嫻 怒り 噴く DE指す DUR 馮寡婦

(CCL: 冯德英《迎春花》)

「『おじさん、これも放ってはいけない』と、淑嫻が馮寡婦を指して怒っている。」

(113) の〈这个: これ〉は、動詞〈放: 放す〉との文法関係を考えると対象を表す要素であ

り、本来であれば目的語位置に置かれるはずである。しかし、(113) ではそれが主題位置(文 頭)に置かれていることが分かる。この例においては、中国語の基本語順である「動作主 体+ V不得 + 対象」から、目的語位置の対象名詞句が左方転移 (left dislocation) したもので あるとは考えない。なぜなら、不許可の意味を表す場合、〈V不得: -NEG-DEpermi〉は、決し て「動作主体 + V不得 + 対象」とはならないからである。この点に関しては、以下で詳述

する。

(114) a. #穿 不 得 这 双 鞋。

履く-NEG-DEpermi この CL

「彼はこの靴を履いてはいけない。」

b. 这 双 鞋 穿 不 得。

この CL 履く-NEG-DEpermi

「この靴は(彼が)履いてはいけない。」

(114a) は、「(動作主+)V 不得 + 対象」の語順となっており、〈-不得: -NEG-DEpermi〉が不

可能ではなく不許可の意味を表すと仮定した場合、その文の容認度は非常に低くなる。そ れに対して、(114b) のように、動詞〈穿: 着る〉の対象である〈这双鞋: この靴〉を文頭に 置き、所謂主題-評言としたとき、〈-不得: -NEG-DEpermi〉が不許可の意味として成立する。

この現象とは対照的に、不可能を表す〈-不了: -NEG-LIAOpoten〉の場合、2.3.1.3節でも論じ たように、その構文は (115) のように「(動作主体+)V 不了 + 対象」、及びその目的語位 置にある対象名詞句を左方転移した構文の両方で成立する。

(115) a. 穿 不 了 这 双 鞋。

履く-NEG-LIAOpoten この CL

「この靴を履くことができない。」

b. 这 双 鞋 穿 不 了。

この CL 靴 履く-NEG-LIAOpoten

「この靴は履くことはできない。」

ここで、(115b) のような「対象 + V不得」(〈这双鞋穿不了: この靴を履いてはいけない〉)

という主題-評言を、可能を表す主語-述語からの派生であるとして捉えることもできる。但 し、普通話においては、可能の意味を表す〈-不得: -NEG-DEpoten〉は〈-不了: -NEG-LIAOpoten〉 に取って替わられたため、ここでは〈-不了: -NEG-LIAOpoten〉として話を進める。つまり、

(115a) のような可能を表す「V 不了 + 対象」(〈穿不了这双鞋: この靴を履くことはできな い〉)から対象である〈这双鞋: この靴〉が文頭へ移動して、主題化したとも原理的には考 えることができるが、3.3節で論じた通り、不可能と不許可は、遂行表現か否かという点を 始め、現れ得る特徴が異なるため、本研究では両者を異なる意味範疇に属すると考える。

よって、不許可の意味において成立する主題-評言を可能の意味を表す主語-述語からの派生 形であるとは考えない。

また、主題としての要素が、前文等に現れ、〈動作動詞-不得: -NEG-DEpermi〉を含む文では、

その主題が文中に現れる要素としては省略されることも多々ある。

(116) 所以 这 种 蛋 也 称 “拙蛋”, 说是 小孩子 吃 不 得,

だから この CL も 呼ぶ 『稚拙な卵』 と言われている 子供 食べる-NEG-DEpermi

吃 了 书 念 不 好。 (CCL:汪曾祺《鸡鸭名家》)

食べる PERF本 読む NEG良い

「よってこの種の卵は『稚拙な卵』とも呼ばれており、子供は食べてはいけない、食べ ると勉強ができなくなると言われている。」

(116) は、〈小孩子吃不得: 子供が食べてはいけない〉の中の成分である〈小孩子: 子供〉及

び〈吃不得: 食べてはいけない〉が主語-述語(動作主体-動詞)の関係であり、全体で評言 として機能している。それに対応する主題は、前文の〈这种蛋: この種の卵〉である。本来、

〈这种蛋: この種の卵〉は、述語〈吃不得: 食べてはいけない〉とは、対象という文法関係 を結んでいる。

更に、主題には場所等の他の要素が現れる場合もある。(117) の例は、〈那种地方: あの種 の場所〉が主題であり、〈去不得: 行ってはいけない〉が評言である。

(117) “那 种 地方 是 去 不 得 的,他们 有 打手,

あのCL 場所 COP行く-NEG-DEpermiNOM 彼ら いる 手下

去 了 就 必须 进货,…”(CCL:《1994年报刊精选10》)

行く PERF 正に 必ず~しなければならない 仕入れる

「『あの種の場所には行ってはいけない。彼らには手下がいて、行けば必ず商品を仕入れ なければならなく、…』」

以上、考察したように、不許可を表す〈-不得: -NEG-DEpermi〉は、主題-評言を基本とする 有題文となり、主題には述語との文法関係において、対象や場所といった成分が現れ得る ことが明らかとなった。

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