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第4章  雨水幹線の整備

第1節  下水道事業の財源

※ 『日本下水道史』より

1 国の下水道施策と財源

(1)昭和の時代

 下水道事業は、自然が相手である「雨水処理」と、下水道利用者がサービ スを受ける「汚水処理」の2つの事業がある。これらの事業を実施していく ために「雨水公費・汚水私費の原則」があり、事業は独立採算性となってい る。このような財源の枠組が固まったのは、昭和35年(1960)の第1次下水 道財政研究委員会の提言からであった。下水道財政研究委員会(第1次)は、

日本も本格的に下水道事業へ乗り出す時代を迎え、建設省が全国市長会へ呼 びかけて設置した委員会で、同年10月に下水道事業の財政について、提言を まとめた。この提言は雨水公費・汚水私費の原則や受益者負担金、下水道料 金、国の補助金、一般会計からの繰入金、市債の発行を財源とし、国庫の負 担率や下水道料金の算定の仕方などが提示され、以後下水道事業の財政基盤 を形作るものとなった。

 この提言を基に同年12月に「国民所得倍増計画」での下水道事業計画予算 が策定されたが、現実は建設省の意に反して10年間で4,400億円、最初の5 年間で1,280億円程度の小規模の投資予算となった。

 しかし、その後は予算が順調に伸びていく。当時の一般会計の予算の伸び 率は約13〜16%ぐらいであったが、下水道事業の予算は昭和36年度57%、昭 和37年度でも49%の高い伸び率となった。そして昭和38年度から第1次下水 道整備五箇年計画が実施されることとなる。時代は、東京オリンピックが開 催される昭和39年(1964)に向けて、大規模な公共事業が始まったばかりの 頃である。

 昭和42年(1968)から始まる国の第2次下水道整備五箇年計画では、計画 額は9,300億円と第1次計画の倍の予算となり、さらに昭和46年(1971)から 始まる第3次計画では、一気に2兆6,000億円へと膨れ上がった。この第3次 計画で流域下水道の法整備ができあがった。以後、順調に下水道事業の予算

第5章 下水道の財政

第1節 下水道事業の財源

※1 和製英語、国が国民に対して最低限の生活水準を保証するという意味。

※2 福田内閣(昭和51から昭和53年)時に策定され、次の大平内閣時代(昭和53から昭和55年))にも継続さ れた計画

額が伸びていくように思われたが、昭和48年(1973)10月に中東戦争が勃発 し、オイルショックが起こった。日本経済は一気にインフレとなり、当時の 田中内閣はインフレ抑制のために次年度の公共事業の伸び率をゼロとし、下 水道事業への投資も大きな影響が出ると思われたが、建設省が国庫の補助率 を上げることに着目し、公共下水道の4/10を6/10に、流域下水道を1/

2から2/3へ、都市下水路を1/3から4/10へ引き上げることでなんと か維持できた。

 そして昭和51年(1976)からの第4次計画は7兆5,000億円の計画額とな り、下水道にナショナル・ミニマム※1として、特定環境保全下水道の制度 化をおこない、昭和56年(1981)から始まる第5次計画では、昭和52年(1977)

福田内閣時代に策定された第三次全国総合開発計画※2に基づいた住環境の 整備を盛り込み、計画額を11兆8,000億円まで引き上げ、第6次計画は初め て雨水整備も取り上げた計画となった。

(2)平成の時代

 第7次下水道整備五箇年計画は計画額をさらに伸ばし、16兆5,000億円と した。中小市町村への下水道整備を積極的に進め、特に閉鎖水域の水質改善 を行うために高度処理の推進や都市内にせせらぎを回復するため、下水処理 水を活用したアメニティ下水道モデル事業、遊歩道の設置を行うことによっ て下水道施設をより親水的にする下水道水緑景観モデル事業(ウォータース クウェアプラン)などを全国的に推し進めた。そして平成8年(1996)から 始まる第8次下水道整備五(七)箇年計画は建設省として進める下水道整備 五箇年計画の最後となった。事業額は23兆7,000億円と20兆円台を突破した。

この計画により下水道処理人口は65%を超え、高度処理人口※3も1,427万人 と前計画実績のほぼ倍となった。

 平成13年(2001)に建設省は国土交通省へ編入されると共に、下水道整備 五箇年計画は平成15年(2003)から第1次社会資本整備重点計画に含まれて、

国の下水道整備の方向性が見直された。

 平成13年12月の第1次小泉内閣※4閣議決定で下水道整備について地域や 課題に応じて厳しく見直し、重点化・効率化して行くと発表。翌平成14年11 月の閣議決定で「厳しい見直しを行うべき分野」とし、平成15年12月24日の 平成16年度予算案で下水道事業費の削減額は501億円となった。このように

第5章第1節

※3 高度処理人口

※4 平成13年(2001)から平成15年(2003)

下水道事業への財源として大きな比率を占めてきた国庫補助金が、国の財政 難から次第に縮小していったのである。

表5−1−1 平成14年度から平成16年度の公共事業予算と下水道予算(前年度対比)

年   度 公共事業予算

前年度対比 下水道予算 前年度対比 平成14年度 8.35兆円

△11%

9,700億円

△13%

平成15年度 8.02兆円

△4%

9,250億円

△5%

平成16年度 7.74兆円

△4%

8,749億円

△5%

出典:国土交通省・下水道財政・経営論小委員会資料より

 これに対して平成11年(1999)2月に当時の建設省(現在は国土交通省都 市・地域整備局下水道部)と日本下水道協会は下水道政策研究委員会を発 足し、今後の下水道の役割と整備と管理の方向性を検討し始め、平成14年

(2002)5月に「下水道を取り巻く社会経済情勢と下水道財政・経営の今後 の方向」と題した中間報告を発表した。下水道財政の厳しい現状を踏まえ、

今後の下水道経営について検討したもので、中小市町村の整備、合流式下水 道改善事業、流域的視点からの費用負担、下水道財政・経営から見た適切な 管理と経営のあり方などが課題とされ、膨れ上がる借入金や国庫補助の減 額、下水道整備水準の地域格差について報告された。それらを検討し、公費 で負担する部分を整理し、維持管理費は原則私費負担を、繰入金については 赤字補てんという評価にならないような透明性を持つことと情報の公開、上 下水道の統合や地方独立法人制度の適用、検討する必要があることなどを提 言した。平成17年(2005)9月に「下水道ビション2100」として今後100年 の下水道事業のあり方を発表し、平成26年(2013)7月に「新下水道ビジョ ン」を取りまとめ、先に発表した「下水道ビジョン2100」策定から、10年が 経ち下水道事業を取り巻く環境の変化に対応して、今後の10年間の中期計画 を策定している。

※3 高度処理人口

※4 平成13年(2001)から平成15年(2003)

下水道事業への財源として大きな比率を占めてきた国庫補助金が、国の財政 難から次第に縮小していったのである。

表5−1−1 平成14年度から平成16年度の公共事業予算と下水道予算(前年度対比)

年   度 公共事業予算

前年度対比 下水道予算 前年度対比 平成14年度 8.35兆円

△11%

9,700億円

△13%

平成15年度 8.02兆円

△4%

9,250億円

△5%

平成16年度 7.74兆円

△4%

8,749億円

△5%

出典:国土交通省・下水道財政・経営論小委員会資料より

 これに対して平成11年(1999)2月に当時の建設省(現在は国土交通省都 市・地域整備局下水道部)と日本下水道協会は下水道政策研究委員会を発 足し、今後の下水道の役割と整備と管理の方向性を検討し始め、平成14年

(2002)5月に「下水道を取り巻く社会経済情勢と下水道財政・経営の今後 の方向」と題した中間報告を発表した。下水道財政の厳しい現状を踏まえ、

今後の下水道経営について検討したもので、中小市町村の整備、合流式下水 道改善事業、流域的視点からの費用負担、下水道財政・経営から見た適切な 管理と経営のあり方などが課題とされ、膨れ上がる借入金や国庫補助の減 額、下水道整備水準の地域格差について報告された。それらを検討し、公費 で負担する部分を整理し、維持管理費は原則私費負担を、繰入金については 赤字補てんという評価にならないような透明性を持つことと情報の公開、上 下水道の統合や地方独立法人制度の適用、検討する必要があることなどを提 言した。平成17年(2005)9月に「下水道ビション2100」として今後100年 の下水道事業のあり方を発表し、平成26年(2013)7月に「新下水道ビジョ ン」を取りまとめ、先に発表した「下水道ビジョン2100」策定から、10年が 経ち下水道事業を取り巻く環境の変化に対応して、今後の10年間の中期計画 を策定している。

表5−1−2 「下水道整備五箇年計画の推移と山形市の下水道事業の投資額」

計画額(上)

実績額(下) 整備目標 山形市の実績 うち国費

第1次昭和38〜42(41) 4,400億円

2,963億円 排水面積普及率 7億8,023万円 3億2,300万円 第2次昭和42〜46(45) 9,300億円

6,178億円 排水面積普及率 9億 272万円 3億9,300万円 第3次昭和46〜50 2兆6,000億円

2兆6,241億円 処理区域面積普及率 23億2,560万円 6億7,940万円 第4次昭和51〜55 7兆5,000億円

6兆8,673億円 処理人口普及率 86億1,796万円 11億1,016万円 第5次昭和56〜60 11兆8,000億円

8兆4,781億円 処理人口普及率 105億9,945万円 32億 539万円 第6次昭和61〜平成2 12兆2,000億円

11兆6,913億円 処理人口普及率

雨水排水整備率 278億8,258万円 62億1,666万円 第7次平成3〜7 16兆5,000億円

16兆7,105億円

処理人口普及率 雨水排水整備率 高度処理人口

546億3,111万円

(参考) 133億5,468万円

(参考)

※NTT貸付金は国費に含めていない。

出典:「山形市下水道30年史」より(第7次については事業年報より集計)

2 山形市の下水道事業財源

(1)国庫補助から市債へ

 事業認可された昭和36年(1961)の下水道事業歳入は国庫補助金700万円、

借金である市債700万円で、これと自己財源である一般会計1,028万円で合計 2,428万円を財源として山形市下水道事業はスタートした。工事が進捗する につれて、下水道予算額は増大し、供用開始前年の昭和39年度には国庫補助 金6,800万円、市債7,300万円、一般会計6,754万円に加え、下水道利用者が建 設費の一部を負担する受益者負担金も177万円と見込み、合計2億1,032万円 となっていた。これは前年の合計額が1億2,041万円だったことからみれば、

ほぼ2倍の予算となる。以降、毎年度建設事業費は右肩上がりとなる。昭和 の時代、国の施策として下水道事業が大幅に予算を獲得し始めた時期と重 なっていた。

 昭和40年代末、オイルショックで景気が失速した以降は、山形市の財政も 厳しさを増し、景気回復のための公共事業投資が始まる。下水道事業の歳入 は、昭和62年度になると総額が43億5,670万円となり、初の40億円台へ突入 した。総額としては増加傾向にあったものの、国の財政の厳しさから国庫補 助金の占める割合は徐々に定率化し、建設財源における国庫補助金が占める

第5章第1節