図3.118 アレイ構造を用いることによる高出力化,高指向性化
アレイ構造における基板の影響を評価するため,300GHz∼1.2THzの遠方界電界放射パターンを 図3.119に示す.
形状に依らず基板が存在すると出力の低下と指向性の劣化は生じてしまう.300GHz,600GHzに おいては直方体基板,900GHz,1.2THzでは円柱基板が優れた特性を示しているが,300GHz基本 波発振を目指す本研究においては,300GHz,600GHzの低次成分を効果的に利用できる直方体基板 の採用が好ましいと言える.
また,素子間距離intは放射の空間合成が達成可能な距離に近づける必要がある一方で,近づけす ぎると隣接アンテナ間でカップリングが生じ放射パターン等の特性劣化を招き得る.そこで素子間 距離の影響を評価するため,intを200µmから300µmに拡張して放射特性を解析した(図3.120).
int=300µmに拡張されたことによって各素子の結合が弱まり,xy方向への放射パターンが広が り,出力も低下している.アンテナサイズD=100µmにおいては最近接素子間距離は150µ mで あり,200µ mはアンテナ間カップリングを回避し,電力合成を達成する適切な距離であると考えら れる.
図3.119 基板構造の異なるアレイ発振器の放射パターン比較
また,アレイ発振器を動作させるためにはバイアス線路の配線が必要である.設計したRTD発振 器はアンテナ中心に関して対称な構造であることを利用し,図3.121のように配線を施した.±x端 部に電極を設定し,各発振素子における外部構造の薄膜抵抗両端から電極への配線をしている.こ れにより,一つの電源で同時にバイアスを与えることが可能となる.また,配線の重なりを避ける ためにint=300µmへと変更した.バイアス配線を含めたアレイ発振器の放射パターンを図3.121 に示す.
図3.120 素子間距離の異なるアレイ発振器の放射パターン比較
図3.121 バイアス配線付与アレイ発振器構造
なお,それぞれの素子の発振の位相や周波数が同相で生じなければ放射の合成時にパワーの低下 や通信品質の劣化が生じるため,発振の同期を行う必要がある.本研究では解析条件として各素子 の同時同相励振を設定したが,実際のアレイ発振器では注入同期により発振の同期を行う.そのた めの構造設計,同期性能の見積もりは今後の課題として残されている.
図3.122 バイアス配線付与アレイ発振器の電磁界特性