特殊 的投 資﹂ が前 提に 行わ れた 場合
、ホ ール ドア ップ 問題 が生 ずる こと にな るが
、実 際の 日本 の取 引社 会で はそ のよ うな 投資 が行 われ てい なく ても 同様 な問 題が 起こ って いる こと に注 目 する 必要 があ る。 した がっ て、
﹁取 引特 殊的 投資
﹂が 行わ れる 取引 関係 のみ 優越 的地 位の 濫用 問題 が起 こる とい うこ の理 論は
、優 越的 地位 の濫 用の 射程 範囲 が狭 すぎ るた め、 全面 的に 賛成 する こと はで きな い。
⑵
取引 慣行 とホ ール ドア ップ 問題 ホー ルド アッ プ問 題は、普 段は 正常 な取 引が 行わ れて いる が、
﹁取 引特 殊的 投資
﹂の よう に特 殊な 取引 が行 われ た場 合に 優越 的地 位の 濫用 が行 われ る取 引社 会を 想定 して いる
。そ のよ うな 社会 にお いて 優越 的地 位の 濫用 行為 が 行わ れる のは 稀な ケー スで あり
、そ の取 引関 係も 継続 的な 取引 が前 提に なる であ ろう
。し かし
、日 本で みら れる 優 越的 地位 の濫 用行 為は その よう なホ ール ドア ップ 問題 とは 異な る。 まず
、﹁ 人質
﹂を 出さ なく ても 優越 的地 位の 濫用 は行 われ る。 次の 第四 章で みる よう に優 越的 地位 の濫 用行 為が 行わ れた 事例 で、
﹁取 引特 殊的 投資
﹂が 行わ れた ケー スは 少な い。 ホー ルド アッ プ問 題の 理論 的な レベ ルに おい て
﹁人 質﹂ は、 互い に機 会主 義的 行動 を防 ぐた めに 行わ れる もの であ るが
、実 際の 取引 にお いて は、 最初 から 納入 業 者は 取引 を開 始す るか どう かの 選択 しか もた ない
。な ぜな ら、 納入 業者 は最 初か ら評 判の メカ ニズ ムが 機能 しな い こと を認 識し てい るか らで ある
。 日本 の取 引社 会に おい て優 越的 地位 の濫 用は
、広 範囲 に行 われ てい るた め、 評判 のメ カニ ズム が機 能す る可 能性 は非 常に 低い と思 われ る。 その ため
、納 入業 者が それ を批 判し たと して も、 大規 模小 売業 者や 親企 業者 が損 を被 る こと はな い。 むし ろ、 それ を批 判し た納 入業 者だ けが 取引 を拒 絶さ れ、 不利 益を 受け る可 能性 が高 い。 また
、実 際
に優 越的 地位 の濫 用行 為を 行っ たと して 公取 委の 排除 措置 命令 を受 けた 事業 者が
、同 じ行 為を 繰り 返し て行 って い るの では ない かと いう 疑問 の声 もあ るこ とか ら、 評判 のメ カニ ズム はほ とん ど機 能し てい ない と推 測さ れる
。 ただ し、 情報 の非 対称 性に おけ るホ ール ドア ップ 問題 は、
﹁フ ラン チャ イズ
・シ ステ ムに おけ る優 越的 地位 の濫 用﹂ で見 るよ うに 情報 の非 対称 がな ぜ優 越的 地位 の濫 用に 結び 付く のか の理 論的 根拠 にお いて 有用 な手 掛り にな る。 それ に関 して はま た後 述す る。
︵
︶ 根岸
=舟 田・ 前掲 注︵ ︶ 二九 四頁
。
︵ 38
︶ 根岸
=舟 田・ 前掲 注︵ ︶ 二九 五~ 二九 六頁
。
︵ 39
︶ 根岸
=舟 田・ 前掲 注︵ ︶ 二九 二~ 二九 三頁
。
︵ 40
︶ 岡野 純司
﹁優 越的 地位 の認 定︱ 大規 模小 売業 者に 対す る規 制を 素材 とし て﹂ 中央 大学 大学 院研 究年 報三 五号 二八 一頁 以下
︵二
〇〇 五︶ 参 照 41
。
︵
︶ 来生 新﹁ 優越 的地 位の 濫用 法理 の再 検討
︱競 争原 理と の矛 盾と 調整
︱﹂ 今村 成和 教授 退官 記念
﹃公 法と 経済 法の 諸問 題 下﹄
︵有 斐閣
、一 九 42 八二
︶三
〇三 頁以 下。
︵
︶ 村上 政博
﹃ア メリ カ経 済法
﹄︵ 弘文 堂、 一九 九三
︶二 一六 頁。
︵ 43
︶ 栗城 利明
﹁独 占禁 止法 にお ける 取引 上の 優越 的地 位濫 用規 制に 関す る一 考察
︵一
︶﹂ 公正 取引 五五 一号 四七 頁︵ 一九 九六
︶。 また
、両 者が 連 続 44 線上 にあ ると した もの とし て、 根岸 哲﹁ 民法 と独 占禁 止法
﹂︵ 上︶
、︵ 下︶ 法曹 時報 四六 巻一 号一 頁以 下、 二号 二〇 七頁 以下
︵一 九九 四︶ 参照
。
︵
︶ 規制 の実 効性 に疑 問を 抱く もの とし て、 三輪 芳郎
﹃日 本の 取引 慣行
﹄︵ 有斐 閣、 一九 九一
︶二 四三 頁以 下、 また
、実 際の 適用
・運 用に おけ る 45 慎重 さを 主張 する もの とし て、 村上 政博
﹃独 占禁 止法
︹第 二版
︺﹄
︵弘 文堂
、二
〇〇
〇︶ 一〇 三頁 等が ある
。
︵
︶ 優越 的地 位の 濫用 が、 継続 的な 取引 関係 にお いて のみ に成 立す ると 解釈 する もの とし て、 滝川 敏明
﹁優 越的 地位 の濫 用︱ 限定 基準 と事 件 例 46
﹂公 正取 引六 五五 号三 一頁
︵二
〇〇 五︶
、若 杉隆 平﹁ 不公 正な 取引 方法 に関 する 規制
︵一
︶: 不当 廉売 及び 優越 的地 位の 濫用
・下 請取 引︱
﹃不 公正 取引 の一 般指 定﹄ と﹃ 下請 代金 支払 遅延 等防 止法
﹄﹂ 後藤 晃= 鈴木 興太 郎編
﹃日 本の 競争 政策
﹄︵ 東京 大学 出版 会、 一九 九九
︶一 一九 頁が あ る。
︵
︶ 根岸
=舟 田・ 前掲 注︵ ︶ 二九 四頁
。
︵ 47
︶ 諏訪 園貞 明﹁ 株式 会社 三井 住友 銀行 に対 する 勧告 審決 につ いて
﹂公 正取 引六 六四 号四 七頁 以下
︵二
〇〇 六︶
。 48
︵
︶ 取引 転換 可能 性に 対す る批 判に つい ては
、根 岸= 舟田
・前 掲注
︵
︶二 九四 頁以 下を 参照
。
︵ 49
︶ 取引 依存 度に 対す る批 判に つい ては
、舟 田・ 前掲 注︵ ︶ 五六
〇頁 以下 を参 照。
︵ 50
︶ 岡野
・前 掲注
︵
︶二 八一 頁以 下。 51
41
︵
︶ 舟田
・前 掲注
︵
︶五 五〇 頁。
︵ 52
︶ した がっ て、 優越 的地 位と その 濫用 を相 関関 係に ある とし て一 体的 に認 定さ れる こと があ る。 根岸 哲編
﹃注 釈独 占禁 止法
﹄︵ 有斐 閣、 二〇
〇 53 九︶ 四九
〇頁
、根 岸哲 執筆 参照
。ま た、
﹁濫 用行 為が ある か否 かを 先に 判断 し、 濫用 行為 性が 肯定 され る場 合に はじ めて 優越 的地 位の 有無 を 分析 する
﹂と いう 主張 があ る。 越知 保見
﹁流 通激 変の 環境 下に おけ る優 越的 地位 の濫 用規 制の 新た な課 題︱
﹃優 越的 地位
﹄の 源泉 は何 か﹂ 公正 取引 七二 四号 二五 頁︵ 二〇 一一
︶参 照。
︵
︶ 舟田
・前 掲注
︵
︶二 二五 頁。
︵ 54
︶ 以下
、舟 田・ 前掲 注︵ ︶ 五五 六頁 以下 参照
。
︵ 55
︶ 独占 禁止 法研 究会 報告
﹁不 公正 な取 引方 法に 関す る基 本的 な考 え方
︵二
︶終
﹂公 正取 引三 八三 号六 一頁
︵一 九八 二︶
。
︵ 56
︶ 栗田 誠・ 独禁 法審 決判 例百 選︵ 第六 版︶ 一九 四頁 以下
。
︵ 57
︶ 大録 英一
﹁ホ ール ドア ップ 問題 と優 越的 地位 の濫 用︵ 一︶
、︵ 二︶
、︵ 三︶
、︵ 四︶
﹂公 正取 引四 八七 号三 二頁 以下
、四 八八 号五 六頁 以下
、四 九 一 58 号七 七頁 以下
、四 九二 号三 九頁 以下
︵一 九九 一︶
、同
﹁優 越的 地位 の濫 用規 制に つい て︵ 一︶
﹂香 川法 学一 九巻 三・ 四号 二二 七頁 以下
︵二
〇〇
〇︶
、若 杉・ 前掲 注︵
︶九 七頁 以下
、伊 藤元 重= 加賀 見一 彰﹁ 企業 間取 引と 優越 的地 位の 濫用
﹂三 輪芳 明= 神田 英樹
=柳 川範 之編
﹃会 社法 の 46 経済 学﹄
︵東 京大 学出 版会
、一 九九 八︶ 三九 三頁 以下 参照
。
︵
︶ 田村 善之
﹁市 場と 組織 と法 をめ ぐる 一考 察︵ 一︶
﹂民 商一 二一 巻四
・五 号五 六五 頁︵ 二〇
〇〇
︶。
︵ 59
︶ 田村
・前 掲注
︵
︶五 八一 頁。 60
59
︵
︶ 若杉
・前 掲注
︵
︶一 二七 頁。 61
46
︵
︶ 若杉
・前 掲注
︵
︶一 一六 頁。 62
46
︵
︶ 市場 や業 務か ら撤 退す る際 に回 収す るこ との でき ない 費用
。 63
第四 章 優越 的地 位の 濫用 規制 の展 開 第一
節 昭和 二八 年一 般指 定に 基づ く事 件 優越 的地 位の 濫用 に当 たる とし た公 取委 の審 決は
、平 成二 三年 一一 月の 時点 で二 八件 ある
。 その うち
、昭 和二 八年 一般 指定 に基 づく 審決 は六 件で あり
、昭 和五 七年 一般 指定 の下 にお ける 事件 は二 一件 であ る︵ ただ し、 同時 期の 特殊 指定 該当 事件 を含 む︶
。そ の後
、平 成二 一年 独占 禁止 法改 正に 伴っ て、 同年 に一 般指 定も 改 定さ れた
。そ して
、改 正独 占禁 止法 に基 づく 公取 委の 事件 が一 件あ る。 一 役員 選任 への 干渉