優 越 的 地 位 の 濫 用
︵ 一
︶
韓
都 律
第一 章 序 論 第二 章 不公 正な 取引 方法 の意 義 第一 節 独占 禁止 法の 目的 第二 節 不公 正な 取引 方法 第三 章 優越 的地 位の 濫用 規制 の意 義 第一 節 優越 的地 位の 濫用 規制 の概 要 第二 節 優越 的地 位の 濫用 規制 にお ける 解釈 の問 題 第三 節 経済 学的 考察 に対 する 検討 第四 章 優越 的地 位の 濫用 規制 の展 開 第一 節 昭和 二八 年一 般指 定に 基づ く事 件 第二 節 昭和 五七 年一 般指 定に 基づ く事 件 第三 節 平成 二一 年独 占禁 止法 改正 に基 づく 事件 第四 節 判 例 第五 節 その 他の 事例 第五 章 下 請 法
第一 節 概 要 第二 節 下請 法の 適用 範囲 と禁 止行 為 第三 節 判 例 第四 節 放送 コン テン ツ製 作に おけ る下 請法 の問 題︵ 以上 本号
︶ 第六 章 フラ ンチ ャイ ズ・ シス テム にお ける 優越 的地 位の 濫用 第七 章 韓国 にお ける 優越 的地 位の 濫用 規制 第八 章 総括 的検 討 第九 章 研究 のま とめ と今 後の 研究 課題
︵以 上次 号︶
第 一 章 序 論
ઃ
市場 経済 体制 が十 分に 機能 する ため には、市 場に おけ る自 由で 公正 な競 争が 維持 され なけ れば なら ない
。そ のよ うな 競争 が維 持、 促進 され るた めに は、 まず
、競 争・ 取引 の主 体で ある 事業 者間 の自 由な 取引 が保 障さ れな け れば なら ない
。競 争は
、各 市場 にお ける 競争 の機 能が 生き 物の よう に勝 手に 働く もの では なく
、競 争に 参加 して い る事 業者
・消 費者 の自 由か つ自 主的 な判 断に 基づ く取 引に より 動い てい るか らで ある
。
私的 独占 の禁 止及 び公 正取 引の 確保 に関 する 法律︵以 下﹁ 独占 禁止 法﹂ とい う。
︶は
、競 争を 阻害 する おそ れ があ る行 為の 一つ とし て、 優越 的地 位の 濫用 規制 を設 けて いる
。こ の規 制は
、独 占禁 止法 の三 本の 柱の 一つ とい わ れる 不公 正な 取引 方法 の一 類型 とし て、 本法 二条 九項 五号 およ び一 般指 定一
( )
三項 に定 めら れて いる
。
本規 制に つい ては
、従 来か ら様 々な 議論 がな され てき たが
、そ の主 な論 点の 一つ とし て、 競争 との 関連 性を 取り 上げ るこ とが でき る。 競争 との 関連 性を どの よう に捉 える かに よっ て、 不公 正な 取引 方法 の性 格が 変わ るか らで あ る。 不公 正な 取引 方法 を私 的独 占お よび 不当 な取 引制 限の 予防 的・ 補完 的規 制と みる 場合
︵多 数説
、︶ 不公 正な 取引 方法 は、 固有 の内 容を 持つ 規制 とし てで はな く、 あく まで 私的 独占 およ び不 当な 取引 制限 の補 助的 役割 にと どま る。 この よう な立 場の 根拠 は、 不公 正な 取引 方法 に関 する 規定 が、 米国 反ト ラス ト法 にお ける クレ イト ン法 およ び FT C法 を受 け入 れて 成立 した こと に求 める
。た だし
、こ の立 場に おい ても
、優 越的 地位 の濫 用規 制は
、私 的独 占・ 不当 な取 引制 限と は異 なる
、特 殊な 性格 を持 つと 捉え られ
、私 的独 占・ 不当 な取 引制 限と の関 連が 深刻 な問 題 とな る。 これ に対 し、 不公 正な 取引 方法 を事 業者
・消 費者 の自 由か つ自 主的 な取 引を 保障 する 規制 とし て捉 え、 その よう な事 業者
・消 費者 の活 動に より 競争 が促 進さ れる とい う立 場か らは
、本 規制 は、 私的 独占 およ び不 当な 取引 制限 と は性 格の 異な る、 独占 禁止 法に おけ る独 自の 性格 を有 する 規制 とし て位 置づ けら れる
。
અ
この 後者︵少 数説
︶の 立場 は、 次の こと を根 拠に して いる
。 日本 は米 国と 異な る資 本主 義の 展開 を見 せて きて おり
、ま た、 西欧 でみ られ る市 民社 会の 経験 がな いた め、 日本 の取 引社 会は
、前 近代 的な 優越 的地 位に ある 事業 者が 劣等 な地 位に ある 事業 者ま たは 消費 者に 対し て不 当な 不利 益 を与 える よう な取 引が 数多 く行 われ てい る。 すな わち
、事 業者 間ま たは 事業 者と 消費 者間 の取 引に おい て、 事業 者 およ び消 費者 の独 立性
・自 主性 が奪 われ てい る場 合が 多い とい うこ とで ある
。し たが って
、市 場に おけ る正 常な 競 争関 係を 作る ため には
、そ の前 提と なる 公正 な取 引関 係を 形成 する 必要 があ り、 優越 的地 位の 濫用 規制 はそ の役 割 を果 たす 規制 とし て、 固有 の意 味を 持つ
、重 要性 を有 して いる
。
આ
本規 制に つい ては、弱 者保 護規 制で ある とい う批 判が みら れる
。こ こか ら、 例え ば、 大規 模小 売業 者と 納入 業者 間の 優越 的地 位の 濫用 問題 にお いて
、取 引当 事者 間の 関係 では なく
、大 規模 小売 業者 間お よび 納入 業者 間の 競 争の 関係 につ いて 不当 性を 考え よう とす る議 論が ある
。ま た、 競争 との 関連 性を より 強調 する ため に、 行為 の広 が りと いう 議論 が持 ち込 まれ るこ とが ある
。 しか し、 独占 禁止 法は
、弱 者保 護そ れ自 体を 目的 とし てい るの では なく
、公 正か つ自 由な 競争 を促 進す るこ とを 目的 とす るも ので ある が、 他方 で、 独占 禁止 法は
、す べて の取 引当 事者 に対 し、 公正 かつ 自由 な競 争の 中で 取引 す る法 的地 位︵ 権利 と呼 んで もよ い︶ を保 障し てい ると 理解 すべ きで ある
。
ઇ
本稿 は、 基本 的に 市場 にお ける 競争 は、 事業 者お よび 消費 者の 自由 かつ 自主 的な 判断 と活 動を 保護 する こと によ り、 促進 され ると いう 立場 から 論ず る。 それ 故、 不公 正な 取引 方法 は独 占禁 止法 にお いて 独自 の役 割を 果た す 規制 であ ると し、 その 理由 を再 検討 する。ま た、 それ に基 づい て、 優越 的地 位の 濫用 規制 の解 釈論
・立 法政 策論 を 展開 する
。 また
、本 稿は
、検 討対 象と して
、独 占禁 止法 以外 に、 下請 代金 支払 遅延 等防 止法
︵以 下﹁ 下請 法﹂ とい う。 や︶ 不 当景 品類 及び 不当 表示 防止 法︵ 以下
﹁景 表法
﹂と いう
。︶ をも 取り 上げ る。 下請 法は
、優 越的 地位 の濫 用規 制の 補助 立法 とし て、 事業 者の 自由 かつ 自主 的な 取引 を保 護し
、ま た、 景表 法は
、事 業者 が商 品の 内容 につ いて 正確 な開 示 を行 うよ うに する こと によ って
、消 費者 の自 由か つ自 主的 な取 引を 保護 して いる から であ る。 ただ し、 景表 法は
、 それ 自体 とし てま とめ て検 討す るこ とは なく
、折 りに 触れ て扱 うに とど まる
。
︵
︶ 昭和 五七 年公 正取 引委 員会 告示 第一 五号 であ って
、平 成二 一年 公正 取引 委員 会告 示第 一八 号に よる 改正 後の
﹁不 公正 な取 引方 法﹂
、な お、 これ 以前 の﹁ 不公 正な 取引 方法
﹂に つい ては
、昭 和五 七年 一般 指定
、ま たは 昭和 二八 年一 般指 定︵ 昭和 二八 年公 正取 引委 員会 告示 第一 一号
︶と 略記 する
。
第 二 章 不 公 正 な 取 引 方 法 の 意 義
第一節 独占 禁止 法の 目的
ઃ
独占 禁止 法は、そ の一 条に 次の よう に定 めて いる
。
﹁私 的独 占、 不当 な取 引制 限及 び不 公正 な取 引方 法を 禁止 し、 事業 支配 力の 過度 の集 中を 防止 して
、結 合、 協定 等の 方法 によ る生 産、 販売
、価 格、 技術 等の 不当 な制 限そ の他 一切 の事 業活 動の 不当 な拘 束を 排除 する こと
﹂に よ り、
﹁公 正且 つ自 由な 競争 を促 進し
、事 業者 の創 意を 発揮 させ
、事 業活 動を 盛ん にし
、雇 傭及 び国 民実 所得 の水 準 を高 め、 以て
、一 般消 費者 の利 益を 確保 する とと もに
、国 民経 済の 民主 的で 健全 な発 達を 促進 する こと
﹂を 目的 と する 本 。 条は
、独 占禁 止法 がど のよ うな 法律 であ るか を端 的に 明ら かに した もの であ り、 後段 部分 がそ の立 法目 的を
、 前段 部分 がそ の立 法目 的を 実現 する ため に採 られ る規 制内 容を それ ぞれ 示し てい る。
立法 目的 は、 当該 法律 全体 の性 格を 規定 し、 当該 法律 全体 の指 導的 な解 釈基 準と なる もの であ る。 独占 禁止 法の 目的 につ いて は大 きく 三つ の説 に整 理で( )
きる
。
第一 説は
、独 占禁 止法 の目 的を
、競 争政 策を 実現 する 法律 であ ると し、 独占 禁止 法は 競争 によ る市 場機 能の 維持 を通 じて 社会 的好 結果 を得 るた めの 存在 であ ると
( )
する
。
第二 説は
、独 占禁 止法 の目 的を
、﹁ 国民 経済 の民 主的 で健 全な 発達
﹂、 つま り、 消費 者を 含む すべ ての 取引 主体 に 対す る実 質的 平等 の確 保に 求め
、﹁ 競争
﹂は
、独 占禁 止法 の究 極的 目的 を実 現す る﹁ 手段
﹂に すぎ ない とす る。 こ
の説 の特 徴は
、独 占禁 止法 を中 核と する 経済 法全 体を 独占 資本 主義 段階 の国 民経 済社 会に 存在 する 経済 的従 属関 係 を規 制す る法 とし て、 社会 法的 性格 を有 する もの とし て統 一的 に捉 えよ うと する こと に
( )
ある
。
第三 説は
、独 占禁 止法 の目 的を
、生 産者 を含 めた 国民 経済 全般 の利 益に 求め る。 この 説は
、政 府の 支配 的政 策が 国際 競争 力強 化の ため の集 中︵ 寡占 化︶ 政策 や過 当競 争防 止の ため のカ ルテ ル容 認政 策に あり
、独 占禁 止法 の運 用 が消 極的 ない し停 滞的 であ った 時期 に有 力で あっ た考 え方 であ る。
અ
本稿 は、 基本 的に 第二 の説 によ るも ので ある が、 その 理由 は次 のと おり であ る。 独占 禁止 法は、戦 後の
﹁経 済民 主化
﹂に 向け られ た諸 改革 の中 で制 定さ れた もの であ る。 戦前 の日 本に おい て、 経済 的な 力は 社会 的・ 政治 的に 大き な影 響力 を持 って いた
。そ れに 対す る批 判と して
、﹁ 経済 民主 主義
﹂と いう 理 念が
、日 本の 新し い経 済社 会像 を提 示す るよ うに なっ たの であ る。 しか し、 民主 主義 とい う言 葉は 多岐 にわ たり 解 釈可 能で あり
、そ れが 独占 禁止 法に おか れた 以上 は、 その 意味 を具 体化 し、 法解 釈に おけ る混 乱を 避け る必 要が あ る。 現代 資本 主義 経済 にお ける 独占 禁止 法は
、近 代市 民法 の原 則を 修正 する もの であ る。 市民 法が 基本 的に 市場 経済 原理 に立 脚し てい る法 であ れば
、現 代に おけ る私 法は
、現 代的 修正 を受 けつ つ﹁ 公正 かつ 自由 な競 争﹂ 秩序 の形 成 に一 定の 役割 を果 たす べき もの と考 えら れる
。す なわ ち、 現代 にお ける
﹁公 正か つ自 由な 競争
﹂秩 序の 形成 にか か わる 法と して は、 独占 禁止 法の みな らず
、民 法・ 商法 等の 私法
、さ らに は知 的財 産法 等も 含め て考 える 必要 があ る。 これ は、 市民 法が 市場 経済 原理 に立 脚す る法 であ れば
、現 代資 本主 義経 済に おけ る市 民法 の限 界に 属す る問 題 は、 独占 禁止 法の みに よっ て解 決で きる もの では ない と考 える から で
( )
ある
。
また
、近 代市 民法 は、 その 前提 とし てす べて の経 済主 体は
、自 由・ 平等 であ ると する が、 それ は、 形式 的な 自 由・ 平等 を指 して いる
。独 占禁 止法 は、 その よう な形 式的 な自 由・ 平等 を前 提と した 経済 社会 にお いて
、市 場支 配
力が 市場 機能 を不 十分 なも のと し、 また
、経 済的 な力 の不 当利 用が 行わ れ、 経済 主体 の実 質的 な取 引自 由を 侵害 す るこ とを ふま えて
、成 立し たも ので ある
。特 に日 本に おけ る近 代経 済社 会の 展開 を見 ると それ はよ り鮮 明で ある
。 その よう な形 式的 な自 由・ 平等 を超 えて 実質 的な 自由
・平 等を 目指 すた めに 制定 され た独 占禁 止法 は、 第一 条に そ の目 的規 定を おき
、そ れを 明確 にし たと いえ る。
આ
経済 主体 には、事 業者 だけ でな く、 消費 者も 労働 者も 含ま れて いる こと に注 目す べき であ る。 独占 禁止 法 は、 自由 競争 とい う全 体的 制度 と、 その 中で 活動 する 事業 者・ 消費 者の 取引 の自 由が 生き 生き と機 能す るこ との 集 合体 とし ての み認 めら れる とい う意 味で 自由 競争 と公 正な 競争 とが 相重 なっ ては じめ て法 的価 値と され るの であ る。 独占 禁止 法一 条は
、究 極の 目的 とし て﹁ 一般 消費 者の 利益 を確 保す ると とも に﹂
、﹁ 国民 経済 の民 主的 で健 全な 発 達を 促進 する こと
﹂と 定め てい る。
﹁民 主主 義﹂ の根 本条 件が
﹁政 治社 会の 根底 にあ る民 衆が 秩序 をみ ずか らつ く り、 みず から 担お うと する 精神 の実
( )
現﹂ にあ ると すれ ば、
﹁経 済民 主主 義﹂ も経 済社 会の 根底 にあ る消 費者 が秩 序 を自 らつ くり
、自 ら担 おう とす る精 神の 実現 にこ そ見 いだ され るべ きで ある
。そ れは
、﹁ 一般 消費 者の 利益
﹂は
、 基本 的に
﹁消 費者 の権 利な いし 自由
﹂の 実現 を通 して 確保 され るも ので あり
、し たが って
、﹁ 経済 民主 主義
﹂と
﹁一 般消 費者 の権 利な いし 自由
﹂と は一 体不 可分 の関 係に ある とい うこ とを 意味 する
。し たが って
、﹁ 経済 民主 主 義﹂ とい うの は、 実質 的な 経済 主体 の﹁ 取引 の自 由﹂ の確 保を 意味 する とい
( )
える
。
ઇ
この よう に独 占禁 止法 は、 経済 的な 力の 形成 を阻 止し、ま たは 既に 成立 して いる 経済 的な 力が 不当 に行 使さ れる こと を防 止し
、そ れに よっ て、 すべ ての 取引 主体 の経 済的 自由 を実 質的 に確 保し よう とす るも ので ある
。独 占 禁止 法は
、取 引主 体を
﹁事 業者
﹂と
﹁消 費者
﹂に 分け て多 様な 規定 を置 いて いる が、 これ らを 取引 主体 の実 質的 な
﹁取 引の 自由
﹂と 換言 すれ ば主 体性 の確 保が
﹁民 主的 な経 済秩 序﹂ の基 礎と なる ので
( )
ある
。
その こと を独 占禁 止法 にお いて 具体 化し
、規 定さ れた のが
、私 的独 占の 禁止
、企 業結 合規 制、 不当 な取 引制 限の 禁止
、不 公正 な取 引方 法な どで ある
。私 的独 占の 禁止
、企 業結 合規 制、 不当 な取 引制 限の 禁止 は、 反競 争的 な方 法・ 行為 によ って 市場 にお ける 支配 力を 形成 し行 使す るこ との 規制 であ り、 それ に共 通す る市 場要 件が
﹁競 争の 実 質的 制限
﹂で ある
︵た だし
、企 業結 合規 制は
﹁こ とと なる
﹂と され てい る︶
。ま た、 不公 正な 取引 方法 は、 市場 支配 力 にま で至 らな いが
、取 引の 相手 方ま たは 競争 者に 対し て一 定の 経済 的な 力を 有す る事 業者 が行 う反 競争 的な 行為 の 規制 であ り、 それ に共 通す る市 場要 件が
﹁公 正競 争阻 害性
﹂で ある
。 第二 節 不公 正な 取引 方法 一
不公 正な 取引 方法 の性 格
ઃ
独占 禁止 法の 二条 九項 は、 一号 から 六号 にお いて﹁不 公正 な取 引方 法﹂ につ いて 定め てい る。 また
、二 条九 項五 号は
、﹁ 自己 の取 引上 の地 位が 相手 方に 優越 して いる こと を利 用し て、 正常 な商 慣習 に照 らし て不 当に
、次 の いず れか に該 当す る行 為を する こと
﹂と 定め てお り、 この 規定 が本 稿で 扱う
﹁優 越的 地位 の濫 用規 制﹂ であ る。 そ の類 型に つい ては
、二 条九 項五 号の イ~ ハに おい て定 めら れて いる
。 本規 定が 最初 に定 めら れた のは
、昭 和二 八年 であ り、 その 後、 昭和 五七 年一 般指 定の 改正 によ り、 優越 的地 位の 濫用 規制 の類 型が より 具体 化さ れた
。そ の改 正の 趣旨 は、 旧一 般指 定一
( )
〇項 が一 般的
・抽 象的 であ るた めに 四つ の
行為 に類 型化 して
、よ り明 確な 規定 にす るこ と、 旧一 般指 定
( )
九項 の役 員選 任に 関す る不 当干 渉を 優越 的地 位の 一類
10
系と して 整理 した こと
、旧 一般 指定 九項
、一
〇項 にい う﹁ 条件
﹂に は契 約の 一部 をな して いる もの に限 らず 事実 上 の不 利益 な状 況な ども 含む とさ れて いた ので
、解 釈上 の疑 義を なく すた めに
﹁条 件﹂ とい う文 言を 削除 した こと で
( )
ある
。こ のよ うに 昭和 五七 年の 改正 では 優越 的地 位の 濫用 行為 につ いて 一応 の明 確化 が図 られ た。 ま 11
た、 昭和 二八 年の 不公 正な 取引 方法 に関 する 定義 規定 の改 正は
、単 なる 指定 に関 する 手続 上の 変化 のみ では な く、 不公 正な 取引 方法 の性 格の 変化 を示 すも ので もあ る。 すな わち
、原 始独 占禁 止法 にお ける 不公 正な 取引 方法 は、
﹁不 公正 な競 争方 法﹂ と題 され
、規 定内 容も 行為 者と その 競争 者と の関 係に おけ る競 争手 段を 規律 する こと が 規定 上明 白で あっ たが
、二 八年 改正 の独 占禁 止法 は、
﹁取 引上 の地 位の 不当 利用
﹂の 規定 を新 設し
、全 体が
﹁不 公 正な 取引 方法
﹂と なっ た。 この 改正 によ って
、不 公正 な取 引方 法の 性格 が、 タテ の取 引関 係を 本質 的な 一部 分と す る構 成に なっ たの か、 それ とも
、従 来の 性格 づけ
、す なわ ち、 私的 独占 およ び不 当な 取引 制限 の予 防・ 補完 的規 制 が改 正後 も妥 当す るか の議 論が なさ れて いる
。
不公 正な 取引 方法 が私 的独 占お よび 不当 な取 引制 限の 予防・補 完的 規制 なの か、 それ 自体 とし て独 自の 役割 を果 たす 規制 なの かの 議論 は、 優越 的地 位の 濫用 規制 が独 占禁 止法 上ど のよ うな 位置 を占 める かに おい て重 要な 点 であ る。 不公 正な 取引 方法 が私 的独 占お よび 不当 な取 引制 限の 予防
・補 完的 規制 であ ると すれ ば、 独占 禁止 法に おけ る
﹁一 般消 費者 の利 益を 確保 する
﹂と いう 意味 は、 各々 の市 場全 体に おけ る公 正か つ自 由な 競争 の維 持・ 促進 とい う 媒介 項を 経て
、は じめ て実 現さ れる こと にな る。 しか し、 独占 禁止 法が 取引 主体 の実 質的 な﹁ 取引 の自 由﹂ の確 保 に関 する 法律 であ ると いう 立場 から は、 不公 正な 取引 方法 の規 制は
、取 引当 事者
、殊 に消 費者 の商 品や 取引 先を 選 択す る自 由を 侵害 する もの か否 かと いう 点か ら、 個々 の取 引方 法を チェ ック する こと にな る。 した がっ て、 不公 正 な取 引方 法は
、私 的独 占お よび 不当 な取 引制 限の 予防
・補 完的 規制 では なく
、そ れ自 体と して 独自 の役 割を 果た す こと にな る。
અ
不公 正な 取引 方法 は、 独占 禁止 法の 三本 の柱 の一 つと さ( )
れる
。そ の根 拠は 独占 禁止 法の 一条 の目 的規 定の 冒
12
頭で
﹁こ の法 律は
、私 的独 占、 不当 な取 引制 限及 び不 公正 な取 引方 法を 禁止 し、
……
﹂と いう 表現 があ るこ とか ら、 不公 正な 取引 方法 は、 独占 禁止 法の 中心 的な 規制 の一 つで ある とさ れて きた とい わ
( )
れる
。し かし
、不 公正 な取
13
引方 法が
、私 的独 占お よび 不当 な取 引制 限の 予防
・補 完的 規制 であ ると する なら ば、 三本 の柱 の一 つと して それ を 位置 づけ るこ とに は、 やや 違和 感が
( )
ある
。三 本の 柱と して その 役割 を論 ずる には
、不 公正 な取 引方 法を 私的 独占 お
14
よび 不当 な取 引制 限の 予防
・補 完的 な規 制で はな く、 それ 自体 とし て独 立的 な役 割を 果た して いる とい う位 置づ け が必 要で ある
。
આ
不公 正な 取引 方法 は、 独占 禁止 法の 母法 であ る米 国の クレ イト ン法 およ び連 邦取 引委 員会 法︵ FT C法 五︶ 条を 模範 にし てい ると いわ れる。そ こに おけ る規 制目 的は 独占 の予 防で あり
、そ れを 踏ま えて
、日 本の 通説 は不 公 正な 取引 方法 もク レイ トン 法等 と同 様に 理解 して いる よう で
( )
ある
。
15
米国 の反 トラ スト 法︵ シャ ーマ ン法
、ク レイ トン 法、 連邦 取引 委員 会法 など の総 称︶ にお ける 不公 正な 競争 方法 につ いて は、 その 形成 過程 にお いて
、独 占を 未然 に防 止す るた めの 規定 とし て制 定さ れた のは 確か であ る。 その 根底 には
、独 占は 不公 正な 競争 方法 によ りな され るた め、 それ を禁 止す れば 独占 を未 然に 防止 でき ると いう 思考 があ る。 それ は、 米国 の経 済社 会は 既に 独占 化が 進ん でい るの にも かか わら ず、 古典 的自 由主 義へ の復 帰を 理 想に して いた 中産 階級 の影 響で
( )
ある
。
16
しか し、 今日 の独 占禁 止法 は、 もは やこ のよ うな 古典 的自 由競 争を 目指 して いな いこ とは 確か であ る。 今日 の競 争政 策は
、独 占を 内包 する 資本 主義 社会 にお いて でき るだ け競 争の 機能 を維 持す るこ とを 目指 して いる とい
( )
える
。
17
した がっ て、 不公 正な 取引 方法 の性 格を 反ト ラス ト法 にお ける 不公 正な 競争 方法 と同 じよ うに
、独 占力 の行 為の 未 然防 止と いう こと だけ で論 ずる こと は妥 当と は思 われ ない
。
ઇ
独占 禁止 法に おけ る不 公正 な取 引方 法は、個 々の 事業 者の 自由 や経 済力 に基 づく 抑圧 的行 為に 着目 して 規制
する こと が妥 当で ある
、と いう 点か ら、 独占 禁止 法に おい てそ れ特 有の 役割 を果 たし てい ると 考
( )
える
。
18
また
、消 費者 も、 事業 者の 取引 の相 手方 とし て、 市場 経済 の中 で、 経済 主体 とし て機 能し てい るこ とか ら、 消費 者取 引は 市場 経済 の基 底に ある と位 置づ けら れる
。し たが って
、独 占禁 止法 は、 事業 者間 の競 争の みで なく
、消 費 者が
︵間 接的 な取 引も 含め て︶ 取引 の一 方当 事者 とし て市 場経 済の 中に 立ち 現れ てい るこ とを
、最 も重 要な 対象 と して 取り 上げ なけ れば なら ない と考 える
。 特に
、不 公正 な取 引方 法の 規制 につ いて は、 事業 者間 の競 争が 結果 的に 消費 者の 利益 にな ると いう 間接 保護 的な 考え 方は 採る こと がで きず
、そ れは
、﹁ 公正 な競 争﹂ の一 方当 事者 とし ての 消費 者の 取引 の自 由を 直接 的に 保障 し よう とす るも ので
( )
ある とい うこ とを 考え ると
、不 公正 な取 引方 法が 独占 禁止 法上 独自 の役 割を 果た して いる こと は
19
より 明確 であ る。 二 公正 競争 阻害 性
ઃ
今 村 説 不公 正な 取引 方法 の性 格を より 明確 に表 して いる のが﹁公 正競 争阻 害性
﹂で ある
。公 正競 争阻 害性 の捉 え方 によ って
、不 公正 な取 引方 法に おけ る各 規定 がそ の中 でど のよ うな 位置 を占 める かが 決ま るか らで ある
。従 来か ら﹁ 公 正競 争阻 害性
﹂に つい ては 様々 な学 説が 争わ れた が、 以下 では
、そ の中 で代 表的 な学 説を 紹介 し検 討す る。 まず
、故 今村 成和 氏の 説で ある が、
﹁公 正な 競争
﹂を
①市 場に おけ る競 争が 自由 であ り、 かつ
、② そこ にお ける 競争 が公 正に 行わ れて いる 状態 であ ると いう
。そ して
、① は、 市場 参入 の自 由と
、市 場に おけ る競 争の 自由 が妨 げ られ てい ない 状態 であ り、
②は
、そ の競 争が
、良 質廉 価な 商品 また は役 務の 提供 によ る能 率競 争を 本位 とし て行 わ れて いる こと であ ると
( )
する
。そ こで は、 公正 な競 争が 阻害 され る場 合と して
、取 引方 法自 体が 非難 に値 する 場合
20
と、 自由 競争 を困 難な らし める 状態 を生 ずる 場合 とが あげ られ てい る。 また
、優 越的 地位 の濫 用規 制に 対し ては
、市 場で 支配 的な 地位 を有 する こと は優 越的 地位 の成 立に 必要 では ない とい う前 提に 立ち なが ら、
﹁競 争原 理が 機能 する ため の前 提条 件で ある 取引 先の 選択 の自 由が
、一 方の 側に のみ 有 利に 働く 場合 にお いて
、そ のこ とに 基づ く優 越的 地位
﹂が
﹁優 越的 地位
﹂で ある と説 く。 その 上で
、優 越的 地位 の 不当 利用 は競 争原 理が 機能 する 場合 に比 べて 著し く不 利な 条件 を相 手方 に押 しつ ける こと がで きる こと にあ ると す る。 この 点に おい て、 優越 的地 位の 濫用 は市 場に おけ る競 争秩 序に 直接 影響 を及 ぼす もの では なく
、他 の不 公正 な 取引 方法 とは 異な る異 質な 規定 であ ると 捉
( )
える
。
21
しか し、 この 説は
、実 際に 一般 指定 とし て規 定さ れて いる 趣旨 を全 面的 に生 かす ため の立 場に 立ち
、次 のよ うに 主張 する
。す なわ ち、
﹁公 正競 争阻 害性
﹂の 要件 を緩 和し て、 優越 的地 位の 濫用 が、
①自 己の 取引 上の 地位 を不 当 に利 用し て相 手方 と取 引す るこ とは
、自 己の 競争 者と して の地 位を 不当 に強 化す るこ と、
②そ れに よっ て、 中小 企 業の 健全 な発 達を 妨げ るこ とは
、そ の者 の競 争者 とし ての 地位 を弱 める こと にな り、 結局 は﹁ 公正 な競 争を 阻害 す るお それ
﹂が ある と
( )
する
。
22
正 田 説 故正 田( )
彬氏 の説 によ ると
、﹁ 公正 な競 争﹂ とは
、① 競争 参加 者の 競争 機能 を自 由に 発揮 し得 る状 態、
②企 業性 を
23
前提 とし た、 企業 の能 率、 製品 の価 格・ 品質 など をめ ぐっ て行 われ る競 争行 為に よっ て構 成さ れる 自由 な競 争の 状 態、 の二 者を 意味 する とさ れる
。そ して
、不 公正 な取 引方 法の 禁止 は、 個別 的な 事業 者の 力に よっ て競 争秩 序が 侵 害さ れ、 ある いは その 公正 かつ 自由 な秩 序づ けが 阻害 され るこ とを 規制 する もの であ り、 この 観点 から は、 独占 禁 止法 二条 九項 各号 に列 挙さ れて いる 諸行 為類 型を
、① 取引 の場 にお ける
﹁力
﹂の 不当 利用 と、
②競 争の 場に おけ る
﹁力
﹂の 不当 利用 とに 分け て整 理す べき であ ると 説か れて いる
。 独占 禁止 法二 条九 項五 号︵ また は一 般指 定一 三号 は︶
、こ の取 引の 場に おけ る﹁ 支配 的な 力﹂ の不 当利 用に つい て総 括的 に定 めた もの であ り、 競争 秩序 が機 能し ない 状況 がな けれ ば課 すこ とが でき ない 不利 益な 条件 を課 して 取 引を 行い
、相 手方 の競 争機 能の 自由 な行 使を
、こ とさ らに 困難 にす る行 為を 行う こと など を規 制す ると いう
。 本説 は、 独占 禁止 法が
﹁経 済的 従属 関係 を除 去し 取引 主体 間の 取引 上の 地位 の実 質的 平等 を確 保す る法
﹂で ある との 前提 に立 つた め、 取引 の相 手方 の競 争機 能の 自由 な行 使を 困難 にす る優 越的 地位 の濫 用規 制は 不公 正な 取引 方 法の 中心 的な もの とす るの であ る。
અ
根 岸 説︵
=三 条件 説︶ 第三 は、 通説 であ る独 占禁 止法 研究 会報 告・ 根岸 哲氏 によ るも ので ある
。こ の説 は、 従来 の見 解を 統合 し再 構成 する こと を検 討し た﹁ 独占 禁止 法研 究会 報告
﹂︵ 一九 八二 年︶ に基 づい てい る。 独占 禁止 法研 究会 の﹁ 不公 正な 取引 方法 に関 する 基本 的な 考え
( )
方﹂ によ れば
、﹁ 公正 競争 阻害 性﹂ には
①自 由な 競争 が阻 害さ れる おそ れが ある 場合
24
︵以 下﹁ 競争 の減 殺﹂ とい う。
︶、
②競 争手 段が 不公 正で ある 場合
︵以 下﹁ 競争 手段 の不 公正 さ﹂ とい う。
︶、
③自 由競 争 基盤 が侵 害さ れる おそ れが ある 場合
︵以 下﹁ 競争 基盤 の侵 害﹂ とい う。 が︶ ある
。そ して 優越 的地 位の 濫用 規制 は③ に当 たる とす る。 根岸 哲氏 はこ の見 解を 支持 し、
﹁取 引上 の地 位が 優越 して いる 事業 者が
、そ の地 位を 利用 して 相手 方に 不当 に不 利益 を与 える こと によ り、 取引 主体 が取 引の 諾否 およ び取 引条 件に つい て自 由か つ自 主的 に判 断す るこ とに よっ て 取引 が行 われ る、 とい う自 由な 競争 基盤 を侵 害す る場 合に 優越 的地 位の 濫用 とし て不 公正 な取 引方 法に 該当 する こ とに なる
。こ のよ うな 場合 に該 当す るか 否か は、 当該 業界 にお ける 正常 な商 慣習 に照 らし て個 別具 体的 に判 断す る
こと が必 要と な
( )
る﹂ と述 べて いる
。
25
આ
学説 の比 較⑴
今村 説お よび 正田 説で は、﹁公 正な 競争
﹂は
﹁良 質廉 価な 商品 又は 役務 の提 供を 唯一 の手 段と して
、顧 客を 獲得 しよ うと する こと
﹂を 指し てい るが
、そ れを その まま
、違 法性 判断 基準 とし て用 いて いる わけ では ない
。 例え ば、 寡占 企業 間の 非価 格競 争あ るい は中 小企 業間 の過 当競 争は
﹁公 正な 競争
﹂に 当た るか どう かと いう 形 で、 個別 具体 的な 市場 の状 態に 対す る判 断基 準と して 直接 的に 用い るこ とは
、議 論の 混乱 をも たら す。
﹁公 正な 競 争﹂ とい う概 念は
、そ れ自 体と して は、 違法 性の 判断 基準 たり 得る もの では なく
、法 的判 断・ 評価 のた めの 理論 的 基礎 ない し指 導理 念と して 捉え るべ きで
( )
ある
。
26
⑵
それ では、公 正競 争阻 害性 をど のよ うに 論理 構成 すれ ばい いの か。 それ に関 して は、 公正 な競 争を 問題 とす る法 の趣 旨は
、そ の積 極的 実現 を図 ると いう より は、 それ を可 能な らし める 条件 を破 壊す る行 為か らの 防衛 とい う こと に、 重点 があ ると 見な くて はな らな い。 現実 の競 争は
、価 格・ 品質 等に つい ての 各事 業者 の努 力な いし 優秀 さが 反映 する ばか りで なく
、偶 然な いし 運が 左右 する こと も少 なく ない
。さ らに
、企 業間 の資 本力 を中 心と する 様々 の差 が競 争に 反映 され るこ とを すべ ての 場 合に 否定 する こと も実 際上 はで き
( )
ない
。
27
元来
、事 実と 規範 ない し理 念は 必ず 一致 する もの でな く、 規範
・理 念は 事実 を一 定の 方向 へと 導く 機能 を有 すべ きも ので あり
、不 公正 な取 引方 法も
、﹁ 公正 な競 争﹂ の実 現へ 向け て、 公正 競争 阻害 性を 有す る行 為を 禁止 しよ う とす るも ので ある
。こ の点 に、
﹁公 正な 競争
﹂と
﹁自 由競 争﹂ に対 する 独占 禁止 法上 の諸 規定 の規 範と して の意 義 が
( )
ある
。
28
なお
、公 正競 争阻 害性 を認 める べき 行為 とは
、﹁ 公正 な競 争﹂ の実 現を 阻む すべ ての 行為 を意 味す るも ので はな い。
﹁公 正な 競争
﹂の 実現 を阻 む行 為は
、多 様な 態様 があ り得 るの であ り、 特定 の行 為要 件に 該当 する 必要 があ る とし て、 事業 者の 予測 可能 性の 要請 にも 応え なけ れば なら ない
。こ れは
、上 記の どの 説に おい ても 留意 され てい る 事柄 であ る。
⑶
以上 のこ とを 前提 とす れば、公 正競 争阻 害性 につ いて は、 上述 の﹁ 良質 廉価 な商 品又 は役 務の 提供 を唯 一の 手段 とし て、 顧客 を獲 得し よう とす るこ と﹂ の意 味で の﹁ 公正 な競 争﹂ が成 り立 つた めの 不可 欠な 要素 ない し条 件 をま ず考 え、 それ らの うち 法的 に確 保す べき
、ま たは
、確 保す るこ とが 可能 な条 件を 取り 出し
、そ れを 侵害 する 行 為を
﹁阻 害﹂ と捉 える こと が妥 当で ある と考 える
。公 正な 競争 に対 する この よう な考 え方 は、 今村 説、 正田 説、 三 条件 説と もに 同様 であ る。 それ らの 学説 にお いて 差異 がみ られ るの は、 公正 な競 争を 阻害 する おそ れの 捉え 方で ある
。今 村説 と正 田説 を統 合し た三 条件 説は
、﹁ 公正 競争 阻害 性﹂ を① 競争 の減 殺、
②競 争手 段の 不公 正さ
、③ 競争 基盤 の侵 害が ある 場合 と する
。今 村説 は、
①と
②を
、正 田説 は、
②と
③を 公正 競争 阻害 性の 要件 とし て把 握し てい る。 今村 説と 正田 説の 差 は① と③ をど う捉 える かに よる もの であ る。
⑷
今村 説は、不 公正 な取 引方 法を 私的 独占 また は不 当な 取引 制限 の予 防・ 補完 的な 規制 であ ると いう 立場 か ら、
①を 中心 とし て、 公正 競争 阻害 性を 判断 する
。正 田説 は、 不公 正な 取引 方法 を事 業者 の競 争機 能を 妨げ る行 為 と捉 える 立場 から
、③ を中 心に 公正 競争 阻害 性を 判断 する
。し たが って
、今 村説 の立 場で は、
③は
、私 的独 占ま た は不 当な 取引 制限 を予 防・ 補完 する 規制 とし て結 びつ ける こと がで きず
、不 公正 な取 引方 法に おけ る異 質的 な規 制 であ ると 捉え た。 しか し、 正田 説の 立場 から は、
①は
③の 別の 見方 にす ぎな いと 捉え る。 相対 的市 場力 を持 つ事 業者 の力 の濫 用
は、 取引 の相 手方 また は、 その 競争 者の 競争 機能 を妨 げる こと にな り、 結局 は競 争に 影響 を与 える と捉 える
。結 局、 故正 田彬 氏は
、今 村説 と正 田説 につ いて
、﹁ 自由 な競 争の 阻害 のお それ を、 自由 な競 争自 体と の関 係で 整理 す るか
、自 由な 競争 を構 成す る取 引の 自由 を手 掛か りと して 整理 する かの 違い であ り、 基本 的に 同じ 行為 の公 正競 争 阻害 性に 係わ る整 理な ので ある
﹂と
( )
説く
。
29
以上
、両 説を 比較 して きた が、 より 具体 的な 独占 禁止 法の 解釈 論の レベ ルに おい ては
、両 説は
、前 記の よう な基 本的 な視 角の 違い にも かか わら ず、 みか けほ どは 異質 な考 え方 では ない と思 わ
( )
れる
。そ れは
、両 説は いう まで もな
30
く、 独占 禁止 法の 実定 法と して の枠 内で の論 理構 成で あっ て、 なか んず く、
﹁競 争秩 序﹂ とい う概 念を 中心 的な 鍵 概念 とす る点 で共 通で ある から で
( )
ある
。
31
⑸
この よう な考 え方 は、 三条 件説 の誕 生に も影 響を 与え たと 思わ れる。し かし
、そ の後 の学 説の 展開 をみ る と、 独占 禁止 法に おけ る不 公正 な取 引方 法の 位置 づけ につ いて 統一 的な 見解 より は、 複雑 化さ れつ つあ るよ うに み
( )
える
。 例 32
えば
、三 条件 説が 今村 説を 中心 に調 整さ れた とい う立 場か らは
、競 争基 盤の 侵害 にお ける 優越 的地 位の 濫用 規 制も 何ら かの 形で 競争 との 関連 性を 求め よう とす る傾 向が
( )
ある
。
33
三条 件説 の﹁ 公正 競争 阻害 性﹂ は① 競争 の減 殺、
②競 争手 段の 不公 正さ
、③ 競争 基盤 の侵 害が ある 場合 を示 すと いう こと は既 に述 べた とお りで ある
。し かし
、三 条件 説の 誕生 にお いて
、①
、②
、③ の条 件が 公正 競争 阻害 性の 要 件で ある こと に特 別な 理論 的根 拠が あっ たと はい えな いよ うに 思わ れる
。優 越的 地位 の濫 用規 制を 競争 促進 の政 策 にお いて 積極 的に 評価 して
③の 競争 基盤 の侵 害を 今村 説の
①と
②に 加え た形 で構 成さ れた だけ であ る。 その ため
、 不公 正な 取引 方法 の性 格に 関し て、 今村 説が 説く 私的 独占 およ び不 当な 取引 制限 の予 防・ 補完 的規 制で ある とい う 考え 方が 依然 とし て根 強く 残っ てい ると 考え ら
( )
れる
。
34
さら に進 んで 近年 では
、不 公正 な取 引方 法が 私的 独占 およ び不 当な 取引 制限 の予 防・ 補完 的規 制で ある とい う考 え方 から は、 公正 競争 阻害 性の
①の 競争 減殺 型に つい て、 市場 の確 定が 必要 であ ると いう 主張 が有 力に なっ て
( )
いる
。こ のよ うな 立場 から は、 競争 の減 殺を 反競 争的 効果 の量 的違 いと して 捉え る傾 向が みら れる
。す なわ ち、 競 争 35
の減 殺を 私的 独占 およ び不 当な 取引 制限 の違 反要 件で ある
﹁競 争の 実質 的制 限﹂ と同 質の もの とし て捉 え、 それ に至 らな い程 度の もの とし て考 える ので ある
。し かし
、こ のよ うな 考え 方は
、三 条件 説を 理論 的レ ベル で統 一し 難 く、 また
、不 公正 な取 引方 法の 性格 が独 占禁 止法 上の 他の 規制 と異 なる
、そ れ自 体独 立し た規 制で ある こと と相 反 する もの であ る。
ઇ
三条 件説 と取 引の 自由
⑴
既に 述べ たよ うに、不 公正 な取 引方 法は
、個 々の 事業 者の 自由 や経 済力 に基 づく 抑圧 的行 為に 着目 して 規制 して いる と考 えら れる
。不 公正 な取 引方 法を 独占 禁止 法に おけ る独 自の 規制 とし て説 く説 は、 上記 の正 田説 であ る。 この 説の 特徴 は、 ある 事業 者の 力の 濫用 によ り、 取引 の相 手方 また は競 争者 が価 格と 品質 によ って 商品
・役 務を 選択 する 可能 性を 奪わ れ、 ある いは その 選択 の判 断が ゆが めら れる こと に着 目す ると いう 点で ある
。
⑵
この 説は 不公 正な 取引 方法 の各 規定 を取 引の 場に おけ る﹁ 力﹂ の不 当利 用と、競 争の 場に おけ る﹁ 力﹂ の不 当利 用と に分 けて 整理 して いる
。し かし
、競 争者 に対 する 相対 的な 力と 取引 の相 手方 に対 する 相対 的な 力を 厳密 に 区別 する のは
、概 念論 理上 は正 しく とも 現実 的で はな い。 例え ば、 取引 の相 手方 に対 する 力は
、多 くの 場合
、競 争 者に 対す る力 とし ても 機能 する
。 ただ し、 競争 者に 対す る相 対的 な力 と取 引の 相手 方に 対す る相 対的 な力 を区 別す るこ とは
、理 論上 妥当 であ り、
また
、独 占禁 止法 の規 定に つい ての 具体 的な 解釈 論に おい ては
、力 の行 使の 対象 が競 争者 か取 引の 相手 方か によ っ て分 ける こと が適 当で あり
、か つ有 効で ある と考 えら
( )
れる
。
36
⑶
前述 のよ うに、公 正競 争阻 害性 の認 定の アプ ロー チの 仕方 とし ては
、﹁ 公正 な競 争﹂ が成 り立 つた めの 不可 欠な 要素 ない し条 件は 何か をま ず考 え、 それ らの うち 法的 に確 保す べき
、そ して 確保 する こと が可 能な 条件 を取 り 出し
、そ れを 侵害 する 行為 を﹁ 阻害
﹂と 捉え るこ とが 妥当 であ る。 この 公正 な競 争を 可能 なら しめ る条 件と して は、 第一 に、 市場 にお ける
﹁競 争の 実質 的制 限﹂ がな く、 自由 に競 争が 行わ れ、 第二 に、 公正 な競 争の 構成 要素 とし ての 各市 場参 与者 の﹁ 取引 の自 由﹂ が実 質的 に機 能し てい るこ と、 の二 つを 挙げ るこ とが でき る。 第一 の条 件を 満た すた めに
、私 的独 占と 集中 規制
︵企 業結 合規 制︶
、そ れに 不当 な取 引制 限と その 系列 の諸 規制
︵事 業者 団体 規制 や国 際的 協定 規制 など
︶が 設け られ てい る。 第二 の条 件を 満た すた めに 設け られ てい るの が、 不公 正な 取引 方法 であ り、 その 実質 的要 件で ある 公正 競争 阻害 性は
、具 体的 には 取引 の自 由の 侵害 を意 味し てい ると 考え られ る。
⑷
この 取引 の自 由は、三 条件 説に おけ る﹁ 自由 競争 基盤 の確 保﹂
、す なわ ち、 取引 主体 間で の実 質的 自由 の確 保と 一部 重な って いる
。し かし それ 以外 に、 取引 の自 由は
、競 争者 間に おい ても 確保 され る必 要が ある こと を看 過 して はな らな い。 例え ば、 大企 業が 豊富 な資 金力 を背 景に 不当 廉売 を一 定期 間続 ける こと によ って 中小 企業 を当 該市 場か ら駆 逐す る場 合、 ある いは
、少 数の 寡占 的大 企業 が揃 って 専売 店制 をし き、 それ によ って 中小 企業 が販 売チ ャン ネル を失 い、 その 商品 の品 質と 価格 につ いて 消費 者の 選択
・比 較に 供す るこ とが 不可 能に なる 場合
、中 小企 業は 競争 者た る 大企 業に よっ て、 市場 にお いて 自ら の商 品に つい ての 正当 な企 業努 力を 消費 者に 評価 して もら うチ ャン スを はじ め