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遮水壁の効果の検討

ドキュメント内 福島第一原発敷地とその周辺地域における (ページ 144-149)

第 6 章 水文地質と地下水流動にもとづく汚染水対策効果の検討

6.3 遮水壁の効果の検討

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2019 年以降の建屋流入量の減少にはサブドレンによる揚水も寄与している可能性が考えら れる.

Fig. 6-9 サブドレンの揚水量と降水量の関係【塩野ほか,2021a】

東京電力(2021a)

Relationship between discharge from sab-drain and precipitation. 【Shiono et al., 2021a】

This figure is based on TEPCO (2021a).

6.2.3 三次元地下水流動解析による海側遮水壁,陸側遮水壁の効果検証

遮水壁の効果検討に関しては,絶対量に関する課題が残っている.本研究では実態に即し た詳細な層相分布を考慮するために泥質な層相は透水係数を小さくしたため,東京電力

(2019a)が計算した海側遮水壁横断量(約800 m3/day:2016年)よりも本研究の結果(約

400 m3/day:TR4)は小さくなってしまった.上述したように,絶対量については議論せず,

地下水量の増加や減少などの傾向について議論する.

重層的な汚染水対策によって海水中の放射性核種濃度は海側遮水壁が設置された2015年 9月以降減少傾向を示した(東京電力,2016h).汚染水発生量のグラフから,陸側遮水壁を 閉合した2016年から2017年にかけて400 m3/dayから220 m3/dayに減少していることがわ かる(東京電力,2021a).これらの結果から,重層的な汚染水対策の一定の効果は現れてい ると考えられる.しかしながら,汚染水発生量の減少率は鈍化し,中長期ロードマップの 2025年目標値(100 m3/day)には達していない.したがって,これらの原因を解明するため に,本研究によるシミュレーション解析結果から,汚染水対策の実施に伴い陸側遮水壁を横 断して流入する横断地下水流入量と,それぞれの遮水壁で囲まれた範囲の底面から内部に 向かう鉛直地下水流入量の変化を算出した.地下水流入量は,陸側遮水壁(海側)と海側遮 水壁で囲まれたエリア1,および陸側遮水壁で囲まれたエリア2においてそれぞれ推定した

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(Fig. 6-10).ここでは,対策によって変化した地下水量の増減の傾向のみについて議論す る.既往モデルと設定条件が異なるほか,東京電力(2019b)によるとK排水路等による陸 側遮水壁内への流入量があると考えられており,上記に述べた東電が算出した陸側遮水壁 を通過する地下水流入量をそのまま適用することは難しい.したがって,流入量の絶対値で はなく,流入量の変動傾向についてのみ述べる.

陸側遮水壁の全面運用後(TR8)に各遮水壁を通過して流入するエリア1とエリア2へ の地下水量は,汚染水対策実施前(TR1)と比較して,エリアでは1/15,エリア2では1/6 に減少した(Fig. 6-11).遮水壁を介してエリア 1 に流入する地下水量は,陸側遮水壁(海 側)が設置されたTR4から大きく減少した.TR4以降は,エリア1内での揚水量(地下水 ドレン:Fig. 5-13)や陸側遮水壁(海側)および海側遮水壁の設定条件やコンダクタンスな どに大きな変化がないことから,遮水壁を通過してエリア1に流入する地下水量はTR4ま でに大きく低下したのち横ばいとなる.一方,陸側遮水壁は段階的に凍結部を増やしている ため,エリア2への横断地下水流入量は,TR4から全面運用後のTR8まで徐々に減少する.

汚染水対策前におけるエリア 1 とエリア 2 への各底面から内部への地下水流入量(Fig. 6-

10b)は,遮水壁位置を通過して各エリアに流入する地下水量と比較してそれぞれ 1/15 と

1/100となった.しかし,遮水壁底面から各エリア内部への地下水流入量は,海側遮水壁や

陸側遮水壁設置後に増加傾向を示すことが明らかとなった.TR4(陸側遮水壁[海側]の設 置)以降のエリア 1における鉛直地下水流入量は,横断地下水流入量と同様にエリア 1 内 部の揚水量や海側遮水壁の設定条件やコンダクタンスに大きな変化がないことから横ばい になる.一方,エリア2への鉛直地下水流入量は,陸側遮水壁の段階的な運用拡大の効果に より TR5から TR8にかけて増加する.鉛直地下水流入量は遮水面積が増えるほど増加し,

汚染水対策実施前(TR1)に4 m3/dayであった地下水流入量は陸側遮水壁の全面運用時(TR8)

には12 m3/dayとなり,増加量は約3倍となった.このように,底面からの流入量は遮水壁 を横断する量と比較すると少ないが,遮水壁内側での揚水等によってそこでの地下水位が 低下するとその水位低下部に向けて地下水が流動するため,底部からの地下水流入量はさ らに増加すると考えられる.

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Fig. 6-10 陸側遮水壁(海側)と海側遮水壁に囲まれたエリア1と陸側遮水壁で囲まれたエリア2への地

下水の流入【佐藤ほか,2021d】

陸側遮水壁と海側遮水壁は,原子炉建屋やタービン建屋付近の地下水流動を制御している.エリア1は西 の陸側遮水壁「海側」と東の海側遮水壁,エリア2は西の陸側遮水壁「山側」と陸側遮水壁「海側」に囲 まれている.なお,陸側遮水壁「海側」は,エリア12の間にある.エリア1とエリア2への地下水流 入を,それぞれ青と赤の矢印で示す.各遮水壁を通過および各エリアの底部から流入する地下水量を,

Fig. 6-11に示す.

Groundwater inflow to Area 1 and Area 2 surrounded by land-side impermeable wall and sea-side impermeable wall

【Sato et al., 2021d】

Land-side impermeable wall and sea-side impermeable wall control the groundwater flow near the reactor and turbine buildings. Area 1 is bounded by landside impermeable (sea-side) wall on the west and sea-side impermeable wall on

the east, while Area 2 is bounded by land-side impermeable wall (mountain-side) on the west and land-side impermeable wall (sea-side) on the east. The groundwater inflows to Area 1 and Area 2 are indicated by blue and red

arrows, respectively. The amounts of groundwater inflow through each impermeable wall and from the bottom of each area are shown in Fig. 6-11.

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Fig. 6-11 エリア1とエリア2へ流入する地下水量の計算結果【佐藤ほか,2021d】

黒のシンボルは遮水壁を通過してそれぞれのエリアに流入する地下水量,白のシンボルはそれぞれのエリ アの下底からエリア内部へ流入する地下水量を示す.エリアの範囲は,Fig. 6-10に示す.エリア2は陸側

遮水壁で囲まれる範囲に等しい.

Simulated amount of groundwater inflow to Area 1 and Area 2【Sato et al., 2021d】

Solid symbols indicate the amount of groundwater inflow to each area through impermeable walls. Open symbols indicate the amount of groundwater inflow to internal area from the bottom. The area extents are shown in Fig. 6-10.

Area 2 is equal to the internal area of land-side impermeable wall.

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