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福島第一原発敷地とその周辺地域における

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博士学位論文

福島第一原発敷地とその周辺地域における 水文地質状況と地下水流動に関する研究

(Study on hydrogeological conditions and groundwater flow in and around

the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station)

2021 年 9 月

福島大学大学院共生システム理工学研究科 環境共生システム領域

佐藤ひかる

(2)

目次

第1章 序論 ... 1

1.1 鮮新世の地層と堆積環境 ... 1

1.2 ベトナム・メコンデルタにおける堆積環境と水質分布の特徴 ... 3

1.2.1 ベトナム・メコンデルタの地質および堆積環境 ... 3

1.2.2 地下水の水質組成の違いと帯水層区分(Sato et al., 2019) ... 3

1.3 浜通り地域と福島第一原発付近の地下地質(佐藤ほか,2021a) ... 6

1.4 福島第一原発の汚染水問題 ... 10

1.5 研究目的 ... 13

1.6 論文構成 ... 14

第2章 福島第一原発周辺地域における大年寺層D4中の未固結砂層の地質学的・層序学 的検討 ... 16

2.1 はじめに ... 16

2.2 研究手法 ... 18

2.2.1 地質調査 ... 18

2.2.2 火山灰の砂粒組成および主成分元素分析 ... 18

2.2.3 珪藻化石分析による未固結砂層の年代推定 ... 18

2.3 調査地域概要 ... 19

2.4 結果 ... 20

2.4.1 福島第一原発周辺地域で採取した火山灰の特徴 ... 20

2.4.2 南相馬市南部における未固結砂層の地質学的特徴とその層序 ... 22

2.4.3 未固結砂層の分布とその形態 ... 25

2.4.4 珪藻化石による年代層序 ... 28

2.4.5 富岡町小良ヶ浜における大年寺層D4の未固結砂層 ... 28

2.5 考察 ... 30

2.5.1 南相馬市南部に分布する未固結砂層の形成と層序 ... 30

2.5.2 D4a・D4b・D4cの層相・層序関係と未固結砂層との対比 ... 31

2.5.3 南相馬市南部と富岡町小良ヶ浜地域で見られた未固結砂層の地質層序と福 島第一原発敷地における「中粒砂岩層」との対比の可能性 ... 31

2.6 結論 ... 32

第3章 福島第一原発の地下地質 ... 36

3.1 はじめに ... 36

3.2 研究対象地域 ... 37

3.2.1 敷地の地形および地盤改変の概要 ... 37

3.2.2 敷地の地下地質概要 ... 38

(3)

3.3 研究手法 ... 40

3.3.1 公表された柱状図データの取得 ... 40

3.3.2 詳細な層相を反映したボーリング柱状図の作成 ... 41

3.3.3 敷地に隣接した夫沢川での地質調査 ... 42

3.4 結果 ... 43

3.4.1 地下地質解析による福島第一原発敷地内の地質層序 ... 43

3.4.2 敷地内の地下地質構造の解析 ... 48

3.4.3 夫沢川の地質調査による敷地内の地質層序 ... 53

3.5 考察 ... 56

3.5.1 「粗粒砂岩層」とSF11火山灰層 ... 56

3.5.2 「細粒砂岩層」と海底地すべり堆積物 ... 58

3.5.3 福島第一原発敷地内と福島第一原発敷地周辺との地質層序対比 ... 60

3.6 結論 ... 63

第4章 福島第一原発の水文地質 ... 65

4.1 はじめに ... 65

4.2 福島第一原発敷地内の水文地質概要 ... 67

4.2.1 敷地内の帯水層 ... 67

4.2.2 東電等の公表資料にもとづく帯水層係数の評価 ... 70

4.3 研究手法 ... 74

4.3.1 帯水層区分の再検討 ... 74

4.3.2 層相解析 ... 75

4.4 結果 ... 77

4.4.1 柱状図の層相と地質断面図による帯水層区分の再検討 ... 77

4.4.2 地下水位解析による帯水層区分の再検討 ... 79

4.4.3 帯水層区分の再検討結果と各帯水層の構造 ... 81

4.5 考察 ... 84

4.5.1 帯水層別平面・断面地下水位(水頭)分布からみた層相と地下水の特徴 ... 84

4.5.2 三次元帯水層係数分布 ... 86

4.6 結論 ... 91

第5章 詳細な水文地質状況と汚染水対策を考慮した三次元地下水流動解析 ... 92

5.1 はじめに ... 92

5.2 既往研究による三次元地下水流動モデルの概要 ... 93

5.3 詳細な水文地質状況を反映した三次元地下水流動解析 ... 95

5.3.1 三次元地下水流動の課題と目的およびコンセプト ... 95

5.3.2 モデルフレームワーク ... 98

5.3.3 境界条件 ... 98

(4)

5.3.4 帯水層係数 ... 100

5.4 公表資料に基づく各種汚染水対策のモデルへの入力 ... 102

5.4.1 揚水 ... 102

5.4.2 涵養(フェーシング) ... 107

5.4.3 海側遮水壁・陸側遮水壁 ... 108

5.5 モデルに入力した涵養量と揚水量 ... 110

5.5.1 揚水量 ... 110

5.5.2 涵養量 ... 110

5.6 結果 ... 112

5.6.1 三次元地下水流動モデルの検証結果 ... 112

5.6.2 福島第一原発敷地内の水収支 ... 117

5.7 考察 ... 118

5.7.1 汚染水対策による水位(水頭)の変化 ... 118

5.7.2 汚染水対策有無による建屋付近に配置した粒子の移動距離の違い ... 121

5.7.3 汚染水対策有無による「35 m盤」に配置した粒子の移動距離の違い ... 124

5.8 結論 ... 127

第6章 水文地質と地下水流動にもとづく汚染水対策効果の検討 ... 128

6.1 はじめに ... 128

6.2 地下水バイパスの効果の検討 ... 130

6.2.1 地下水バイパスの想定効果と観測孔における実測水位 ... 130

6.2.2 水文地質からみた地下水バイパスの効果低減要因の解析 ... 133

6.2.3 三次元地下水流動解析による地下水バイパスの効果検証 ... 134

6.3 遮水壁の効果の検討 ... 140

6.3.1 海側遮水壁,陸側遮水壁の概要 ... 140

6.2.2 サブドレンの揚水量からみた陸側遮水壁の評価 ... 140

6.2.3 三次元地下水流動解析による海側遮水壁,陸側遮水壁の効果検証 ... 141

6.4 結論 ... 145

第7章 結論 ... 146

引用文献 ... 147

謝辞 ... 159

(5)

1

第 1 章 序論

1.1 鮮新世の地層と堆積環境

鮮新世は,533万年前から258万年までの地質時代である(Cohen et al., 2013 updated).鮮 新統は上部新第三系で,中新世以降,更新世以前に堆積した地層となる.後期中新世から鮮 新世の時期にかけては,海水の酸素同位体比,底生有孔虫から推定した中期鮮新世(3.3-3.0

Ma)の温暖期の海水準は,現在より約−65 mであった3.3 Maから,現在の海水準の平均値

の±20~30 mで変動していた(Dwyer and Chandler, 2009).Shackleton et al.(1995),Williams et al.(1988; 1990)などによる酸素同位体比曲線は,鮮新統や更新統の汎世界的な絶対的海 水準変動の指標として使用されている.

日本における中新統と鮮新統の境界は,不整合になっている場合が多い(星野,1968).

鮮新統と更新統の境界は,氷河時代の開始による堆積層の変化でも読み取ることができる.

日本海は,比較的浅い海峡を介して太平洋に連続するため,氷河や海水準の変動の影響を受 けやすく,その影響が堆積記録に周期的な岩相変化として現れる(Tada,1994;Kurokawa et al., 2019).これは,太平洋側の堆積物にも共通し,日本の沿岸部における鮮新統の地層は海 進-海退の影響により,主に陸成-海成の砕屑物からなる泥岩層や砂岩層,砂岩礫岩層など の岩相によって構成されている.しかしながら,日本のような変動帯での相対的海水準変動 の要因には,氷河性の汎世界的な絶対的海水準の変化だけではなく,沈降・隆起などの構造 運動や堆積量の急激な増加による海退を十分考慮する必要がある(卜部,1999).鮮新統の 多くは,続成作用によって固結度が高い岩石になっている.一方,淘汰のよい砂層や化学的 に固結しにくい地層は続成作用が進んでおらず,現在でも未固結の堆積物で発見されるこ とがある.鮮新統の堆積シーケンス対比には,岩相境界に加えて,火山灰や微化石および古 地磁気を使用した年代対比や広域テフラを使用した対比が使用される.この中の岩相境界 は,堆積環境を理解する上で最も基本的な対比要素であり,粒径や地層の構成物,層序,化 石等によって明らかにできる.粒径の変化は,岩相変化から堆積環境の変化を調べるため1 つの指標となる.鮮新統では,海進と海退の繰り返しと堆積物の運搬距離の関係などにより,

粒径に変化が現れる.海底への堆積物の供給は,陸地から運搬されるもののほかに,波浪の 影響によって深部へと供給されるものがある(斉藤,1989).水深が深くなるにつれて,堆 積する粒径は小さくなっていく.水深が 0 m では後浜とよばれる波浪の影響を受けないエ リアがある.漸間帯は前浜と呼ばれ,高潮線と低潮線の間となる.満潮の時は海となり干潮 になれば陸になる変化の激しいエリアである.水深4~8 mは,上部外浜と呼ばれ,主に中 粒砂を主体とした堆積物から構成される.波浪の影響による大型のトラフ型斜交層理がみ られる.水深15~30 mの下部外浜となると,主に細粒~極細粒砂が堆積し,スウェール(ハ ンモック)状斜交層理が発達する.水深30~50 mの内側陸棚では,細粒砂とシルトの互層 状の堆積物となる.内側陸棚と下部外浜の境界が静穏時波浪限界となるため,静穏時の波浪

(6)

2

の影響が内側陸棚の水深では届かなくなる.したがって内側陸棚は比較的穏やかな環境と なり,生物擾乱や生痕化石が発達することが多い.水深50~80 mとなると暴波浪時波浪限 界となり,波浪の影響がほとんど届かなくなるため,堆積物は細粒なシルトが堆積する.

卜部(1999)は,日本の例えば大阪層群,掛川層群,上総層群,魚沼層群は,層群単位で 1回の海進-海退の変動(第3オーダー:50~300万年)と,さらに高周波の堆積シーケン スやパラシーケンスとして認められる第4~5オーダー(30~50万年)のものがあると説明 している.そして,この第3オーダーと第4~5オーダーは,汎世界的な海水準変動の効果 を反映しているものが多い(卜部,1999).本論の調査地域である福島県太平洋岸に分布す る鮮新統大年寺層においては,近藤ほか(2007)や小佐野ほか(2007)によって海水準変動 や気候変動,堆積作用との関連が検討されている.詳しくは,「1.3 浜通り地域と福島第一 原発付近の地下地質」で説明する.

このように,鮮新統は海水準の変化に伴う堆積物の岩相の変化が大きく,とくに地下水の 観点からは,帯水層になりうる砂(礫)岩層と,難透水層になりうるシルト岩および泥岩が 交互に堆積する.したがって,鮮新統の堆積環境および詳細な層相分布を把握することは,

これらの層相分布が地下水流動や水質形成に影響するため非常に重要となる.

(7)

3

1.2 ベトナム・メコンデルタにおける堆積環境と水質分布の特徴

1.2.1 ベトナム・メコンデルタの地質および堆積環境

ベトナムのメコンデルタは,ベトナムの南部に位置する東南アジアで最も大きなデル タ平野である(Fig. 1-1).メコンデルタは,2つの主要な河川からなり,チベット高原を源 流としてインドシナ半島を流れるメコン川とその支流のバサック川と呼ばれる河川によっ て形成されている.メコンデルタは非常に平坦な地形となっており,地下地質は新第三紀と 第四紀の堆積物によって構成される(Nguyen et al., 2000;AAN and Mekong Group, 2012;

Fabrice and Claidia, 2012).Nguyen et al.(2000)によると,標高はメコンデルタの北部の自 然堤防堆積物で最も高い3~5 mであり,その他の氾濫原の堆積物や沼沢地の堆積物では1

~0.5 mとなる.

ベトナムのメコンデルタに分布する中生代の基盤岩は,ベトナムのメコンデルタ北部で 深度約200 mに現れ,中部では260~300 mまで深くなる(Nguyen et al.,2008).基盤岩の 上部は,主に砂層と粘土層によって構成された新第三系と第四系からなる.AAN and Mekong

Group(2012)は,既往文献や柱状図等の情報から,下部更新統が深度122~218 mで確認で

き,Fabrice and Claidia(2012)は,新第三系の上面深度は約80~200 mであるとしている.

また,DGMS(2004)で示された地下地質断面(Minderhoud et al., 2017)によると,深度100

~200 m付近を第四系の基底深度としている.

新第三紀から完新世に至るまでの間に,メコンデルタが堆積した場所は海進と海退を繰 り返しているため,その地下地質は非常に不均質な層序となっている(Hung et al., 2019).

1.2.2 地下水の水質組成の違いと帯水層区分(Sato et al., 2019)

上記で述べたように,メコンデルタの地下地質は大きく新第三紀と第四紀の堆積物に分 類されることが分かる.しかしながら,メコンデルタにおける新第三系は深度約 200 m 以 深にあり,地下地質の情報は限られている.メコンデルタにおける水質とその分布の特徴を 明らかにするためにボーリングを新たに掘削することは難しいことから,メコン川とバサ ック川流域における地下水水質組成を調査し,既存の地質断面図をもとに水質を深度別に 整理した.メコンデルタの第四系の下底深度がおよそ122~218 mであること,調査した井 戸深度やストレーナ位置が深度約200 mを境に大きく2分されることから(Fig. 1-2)も帯 水層は深度200 mを境に異なることが予想できたため,新第三系と第四系の境界を深度200 mとした.採取した地下水の水質を深度 200 m以浅と以深に分けて,イオンクロマトグラ フによる水質のパターン解析の結果を整理した(Fig. 1-2).その結果,メコンデルタの水質 分布の傾向は,200 m以浅と以深で大きく異なることが確認できた.200 m以浅では,電気 伝導度(EC)が高い(EC >250 mS/m)Na-Cl型や,Mgイオンの多い(Na+Mg)-SO4およ び(Na+Mg)-HCO3型などの海水型や浅層地下水型がみられた.とくに浅層部では Na と Clの高い地域が局所的にみられており,海に近いBen Treでは,深度50 m以浅の地下水に

(8)

4

溶存量の多いNa-Cl型がみられたのに対し,内陸部のVinh Longでは深度100 m前後にNa- Cl型がみられた.これは,デルタの形成にともなう堆積環境の変化によってBen Treよりも 内陸であるVen Treでは,比較的深い深度100 m付近に化石塩水が分布していると考えられ

る.深度200 m以深の深層部では,200 m以浅の水質と比較して,ECが100 mS/m前後と低

い.深度200 m以深の水質は,ECの低いNa-HCO3型に分類される地下水が多いが,Ben Tre

やTien Giangの一部ではECは200 m以浅と比較して低いものの,Na-Cl型に分類されるも

のがみられた.このように,深度200 mを境に,地下水水質の特徴は溶存量やCa濃度の関 係により2分されることが明らかとなった.しかし,第四紀層よりも海水準変動が抑制され ていたため(Poore, 2013)海底で安定的に堆積したと考えられる新第三系の地下水の水質に も,さまざまな水質組成が確認できた.深度 200 m 以深の井戸情報は少ないため詳細は明 らかではないが,メコンデルタの粘土層や砂層などの不均質な分布によって形成されてい る可能性が示唆された.

Fig. 1-1 メコンデルタで採取された地下水のサンプリング地点と井戸深度【Sato et al., 2019】

Sampling location of groundwater collected in the Mekong River Delta with well depth【Sato et al., 2019】

(9)

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Fig. 1-2 メコンデルタ地域の深度200 mを境にしたイオン組成の特徴【Sato et al., 2019】

Characteristics of ion composition above/below the boundary 200 m deep in the Mekong River Delta

【Sato et al., 2019】

(10)

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1.3 浜通り地域と福島第一原発付近の地下地質(佐藤ほか,2021a)

本論では,第4章で詳述する福島第一原発の帯水層を構成する鮮新統大年寺層D4(久保

ほか,1990)を重点的に調査・解析しているため,D4が分布する福島県浜通り地域の南相馬

市南部から富岡町までを福島第一原発の周辺地域としている.ここでは,この地域に分布す る地形や地下地質の概要について説明する(Fig. 1-3).

南相馬市から富岡町の西部には双葉断層が発達し,この双葉断層を境に西の阿武隈高地 と東の丘陵地とに地形が大きく区分される.双葉断層の西側には,中生界白亜系の花崗岩類 や古第三系の堆積岩が分布する.しかし,これらの地層は,双葉断層東部では中新統や鮮新 統の堆積岩に覆われるため,地表にはほとんど露出しない.双葉断層の東側は,丘陵地を構 成する鮮新統の堆積岩によって構成されている.低地は,更新統の段丘堆積物と沖積層が分 布する.福島第一原発近辺では,中新統の上部に鮮新統の堆積岩が厚く分布し,更新統の段 丘堆積物がこれらの堆積岩を覆い,河川沿いには沖積層が分布する.

福島第一原発周辺地域を含む福島県浜通りには,上部鮮新統仙台層群が太平洋沿いに広 く分布する.仙台層群は,宮城県仙台市付近を模式地とし,下部の亀岡層・竜の口層と上部 の向山層・大年寺層の陸成および海成の堆積岩からなる(地団研仙台支部,1980;北村ほか,

1986).仙台層群最上部層の大年寺層は,浜通り地域でもっとも広く分布する海成の砂岩・

泥岩からなる堆積層である(久保ほか,1990;1994;2002).大年寺層は,その下位の向山 層に整合関係で重なり,大年寺層の層厚は,調査地域最南の「川前及び井出」図幅では厚さ

350 mにもなる.大年寺層は,岩相の変化によって下位よりD1(砂質岩相),D2(泥岩相)・

D3(砂岩泥岩相),および,D4(薄い砂岩を挟在する泥岩相)に区分される(久保ほか,1990;

柳沢ほか,2003).大年寺層は,約20~40万年周期の世界的な海水準変動と対応し,北方デ ルタの前進・および後退によって海進・海退が起きたとされている(近藤ほか,2007).

D1は,浜通り地域では,砂質岩相として共通している.調査地域北部の南相馬市南部で はD1は粗粒で,南へ向かうほど細粒化する(久保ほか,1990;1994).福島第一原発周辺地 域の「浪江及び磐城富岡」図幅によると,全体的に細粒化し,D1a(砂岩及び砂岩泥岩細互 層),D1b(塊状細粒砂岩),および,D1c(塊状砂質泥岩及び泥質極細粒砂岩)に細分される

(Table 1-1,久保ほか,1990;1994;柳沢ほか,2003).

D2は,塊状の暗青緑灰色の泥岩相で,厚さ数~数10 cmの砂岩の薄層が挟在する場合が ある(久保ほか,1990).下位の砂岩相D1との境界は,D2の最下部に挟在する火山灰層SF11 付近となる(久保ほか,1990).「浪江・磐城富岡」図幅の地域では,上位に分布するD4堆 積前の海底地すべりによって,大部分が削剥されている(久保ほか,1994).

近藤ほか(2007)は,大年寺層D1~D2の気候変動と堆積作用について述べており,D1c下 部~D1c中部を外側陸棚堆積物,D1c上部とD2を内側陸棚堆積物としている.気候変動との 関連については,D1c下部~中部は温暖期,D1c中部を寒冷期初期とし,D1c上部からD2まで を寒冷期としている.

(11)

7

D3はD2上部と同時異相の関係にあり,厚さ数 cm~数 mの中~粗粒砂岩と厚さ数 10~

数 mの泥岩との互層からなる.分布域は南相馬市北部より北に限定され,本研究の対象地 域である南相馬市南部から富岡町には分布しない.

大年寺層最上部のD4は,大規模な海底地すべりによってできた凹地を埋積した地層であ る(久保ほか,1990).その分布域は南相馬市南部から富岡町にかけてであり,大年寺層分 布域の最南端に限定される.海底地すべりブロックの底面は,ほぼ平坦となっている(久保

ほか,1990).南相馬市南部のD4分布域北端では,下部に6~10 mの海底地すべりブロック

が分布するが,南方ではその厚さを減じてD4が直接D2を覆っている(久保ほか,1990).

海底地すべりの層準は,「浪江・磐城富岡」図幅(久保ほか,1994)の地域では分布せず,

直接D2またはD1cを覆う.柳沢ほか(2003)は,D4の海底地すべりは断続的に複数回起き ているとし,D4を異なる海底地すべりを境界とするD4a,D4b,D4cに細分した.この中のD4b

は,D4分布域北部の南相馬市南部から南部の富岡町小良ヶ浜にかけてもっとも広く分布す る.大年寺層D4a,D4b,D4cの地層の重なりは,柳沢ほか(2003)や小佐野ほか(2007)に よって富岡町小良ヶ浜の露頭でのみ確認されており,D4aおよびD4cはこの露頭でのみ確認 できる.

大年寺層の年代対比は,柳沢ほか(1990)の珪藻化石層序によって行われている.柳沢ほ か(1990)よると,D1,D2はAkiba(1986)の北太平洋珪藻化石帯区分のNPD7BからNPD8 に区分され,D4はNPD9に認定される.また,放散虫化石層序(Riedel and Sanfilippo,1978; 長谷川ほか,1993)によると,D2はSphaeropyle langii Zoneの中~上部に,D4はLamprocyrtis

herteroporos Zoneに認定されるため,大年寺層の年代は後期鮮新世と推定されている.また,

小佐野ほか(2007)は,大年寺層D4の記載層序学的観点から,D4が堆積した海底谷の形成

が2.7 Maの海水準低下と同様の時期であるとし,この谷を埋める海底谷ブロックと砂岩層

は2.5 Ma頃の温暖期に対応し,チャネル堆積物とデルタフロントの前進によるスランプ層

の形成は2.3 Ma~2.1 Maの寒冷化に対応する可能性を示している.

大年寺層の岩相は,基本的に砂岩相または泥岩相といったシンプルなものであるが,鮮新 統最上部層のD4は,堆積中に断続的な複数回の海底地すべりによって運ばれた粗粒な層相 が存在するなど鮮新世末の寒冷化による堆積作用の変化によって複雑化している可能性が ある.また,佐藤ほか(2019a)は,泥岩主体のD4b中に層厚20~40 mもの厚い未固結な砂 層を南相馬市南部で発見した.福島第一原発敷地内でも,大年寺層D4bが分布しており(久 保ほか,1994),福島第一原発敷地内の「中粒砂岩層」は,この未固結砂層に対比される可 能性がある.また,柴崎(2015)は敷地内の3本の柱状図から,この「中粒砂岩層」には不 連続な泥質層が分布することを示しており,地下水流動に影響を与える可能性があること を指摘している.

しかしながら,大年寺層D4中の砂層は,層序学的位置やその分布・形態に関しては明ら かになっていない.さらに,大年寺層D4は海底地すべりでできた凹地を埋める堆積物であ り,海底地すべりブロックが残存している可能性があることや(久保ほか,1990;久保ほか,

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1994;柳沢ほか,2003),不連続な泥質層を挟在する厚い砂層の存在などによりほかのD4の

サブユニット(D1,D2,D3)よりもより複雑な層相を持つ可能性がある.また,この未固結 砂層が「中粒砂岩層」に対比される可能性があるとすれば,この「中粒砂岩層」を対象に多 くの汚染水対策が行われていることからも厚い砂層の存在は福島第一原発敷地内の地下水 流動を検討する上で重要であり,その層序や層相,分布等を明らかにする必要がある.

Fig. 1-3 福島第一原発周辺の地質図 (地質図:久保ほか,1990;1994)

Geological map of the vicinity of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (Geological Map:Kubo et al., 1990; 1994)

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Table. 1-1 浜通り地域の地質層序と代表的な火山灰層と珪藻化石帯【佐藤ほか,2021a】

(久保ほか 1990,1994;柳沢ほか 2003をもとに作成)

Stratigraphy of Hamadori area with typical volcanic ash layers and diatom zones compiled by Sato et al. (2021a) after Kubo et al. (1990; 1994) and Yanagisawa et al. (2003).

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1.4 福島第一原発の汚染水問題

2011 年 3月 11 日,Mw9.0 の東北地方太平洋沖地震が発生した.福島第一原子力発電所

(以下,福島第一原発)では,発電所内の電力喪失により冷却機能が停止したことにより,

3月12日に1号機で,3月14日に3号機で水素爆発が発生した.2号機は水素爆発まで至 らなかったものの,3 月14日に冷却機能が喪失し放射性物質の漏洩が発生した.放射性物 質は,水素爆発が起きたことによって大気中に拡散された.この福島第一原発事故は,2011 年に国際原子力事象評価尺度(the International Nuclear and Radiological Event Scale [INES])

のレベル7に指定され,世界的に知られるようになった.

放出された放射性核種は,133Xeが多く(11,000 PBq),続いて131I(160 PBq),134Cs(18 PBq),137Cs(15 PBq)となる(環境省,2017).133Xe,131Iの半減期はそれぞれ5日と8日 であり,健康影響上は半減期がそれぞれ30年,29年である137Csや90Srが重要となる.福 島第一原発事故による環境放出量に関しては,多くの研究がなされており(たとえばIAEA,

2015;Buesseler et al.,2017;Aoyama,2018),とくにAoyama(2020)は大気,海洋,陸域 を含めた環境中に放出された放射性物質量に関する議論を行っている.福島第一原発事故 での137Csや90Srの環境放出量は,同じINESでレベル7とされたチェルノブイリと比較し て,それぞれ0.18,0.01倍であった(環境省,2017).燃料が残存しており雨水や地下水流 入によって汚染水が発生し,現在も周辺環境に影響し続けていることは共通している.

福島第一原発敷地外における,フォールアウト起源の福島第一原発事故後の地下水や土 壌水中の放射性物質濃度は,Iwagami et al.(2017a;2017b)などによって研究されている.

Iwagami et al.(2017a;2017b)によると,2011年に観測された山地2地点における地下水の

137Cs濃度は,0.013 Bq/Lおよび0.039 Bq/Lであったが,その濃度は2年後の 2013年には 1/10となった.また,土壌中の137Cs濃度は,地下水中の137Cs濃度よりも高い.これは,大 気放出された137Csが表層土壌の粘土鉱物に強く吸着されるからである(たとえばTakahashi et al., 2015).また,Sakakibara et al.(2019)は,福島県阿武隈山地での地下水や土壌水等の 水年代や同位体比から,地下水中への放射性物質の浸透は、地下水と比較的放射性核種濃度 が高い土壌水や降雨等の地表水との混合によって引き起こされていることを示唆した.敷 地近辺では,Shozugawa et al.(2020)によって,運用基準である1,500 Bq/L(東京電力,2015e)

よりも非常に小さいが,トリチウムに汚染された地下水とは異なる経路で天然に存在する トリチウムの濃度を超える 20 Bq/L のトリチウムが敷地南側の湧水から確認されたと報告 されている.

このように,福島第一原発の周辺地域では,大気・河川・土壌・地下水・海洋などの福島 第一原発事故後の環境放射能について多くの研究が行われてきたが,これらの研究は敷地 から離れた地域における大気由来の放射性核種の影響に関する研究がほとんどであり,福 島第一原発近傍や敷地内の放射性核種濃度に関する実態は不明確な部分が多い.2021 年 3 月時点でも,福島第一原発の建屋地下には高濃度デブリが残存している状態であり,地下水

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11

や雨水が建屋に流入すると容易に汚染水が発生する.したがって,敷地内の帯水層や地下水 流動の実態を把握し,汚染水問題解決に向けて現在の汚染水対策の評価を行うことが非常 に重要となる.

福島第一原発では,東京電力によって敷地の井戸から汲み上げられた地下水や海洋中の 放射性核種濃度が計測されている.とくに海水中の放射能濃度の経年変化は,Aoyama(2018)

によって解析された.Aoyama(2018)によると,沿岸域の海水サンプル地点T-1 における

3H/137Csの活動比は今後増加する傾向があり,3Hと137Csの濃度の減少率が異なることを示 した.さらに,青山(2018)は,福島第一原発近傍で観測されているトリチウム放射能濃度 は,河川水中のトリチウム放射能濃度の数百Bq/m3より1桁以上大きく,福島第一原発敷地 内からの漏えいを反映していることを示唆した.

福島第一原発事故により,冷却のための注入水や破損した建屋の地下に流れ込んだ地下 水が,燃料デブリに流れ込むことで生じる「汚染水」が発生した(ここから,本論の「汚染 水」は地下水に限定する).汚染水は,建屋へ流入する地下水と崩壊した建屋上部から流れ 込む雨水によって生じる.福島第一原発敷地では,2015 年に運用が開始された海側遮水壁 ができるまでは,汚染水は海洋に流出していたと考えられる.海に流出した地下水量は不明 であるが,現在でも高濃度の137Cs,90Sr,3Hが地下水観測孔から検出されており,建屋周辺 の地下水観測孔No.1-6からは92,000 Bq/Lの90Srが検出された(東京電力,2019d).この値 は,90Srの告知濃度限度の30 Bq/LやWHO飲用水水質ガイドライン値10 Bq/L(東京電力,

2015e)を超えている.なお,放射性核種濃度の排出前の運用基準値は,東京電力(2015e)

より,137Cs:1 Bq/L,全ベータ:3 Bq/L,および3H:1,500 Bq/Lである.

汚染水量は,汚染水対策の実施により2015年以降やや増加量が減少しているが,2011年 から比べて2020年には1.2×106 m3まで増えていることが分かる(Fig. 1-4).2020年現在タ ンクエリアは限界が迫っており,2023年で満杯になるとされている(福島民報,2021).

Fig. 1-4 福島第一原発での2011年から2019年までの「汚染水」発生量

Occurrence amount of “contaminated water” from 2011 to 2019 at Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (FDNPS)

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2019年12月の中長期ロードマップでは,これらの汚染水量を2020年内には150 m3/day 程度に,2025年には100 m3/day以下に抑制する計画をしていた(廃炉・汚染水対策関係閣 僚等会議,2019).これらの汚染水は,事故が発生してから約10年経過した2021年現在で も問題となっており,汚染水発生量は,2018年以降200 m3/dayを下回っているが,多核種 除去装置で除去できないトリチウムに関しては,希釈して海洋放出を行う予定である(廃 炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議,2021).

福島第一原発では,発生した汚染水について「①取り除く・②近づけない・③漏らさない」

の方針を掲げて複数の汚染水対策が行われている(Fig. 1-5).これらの汚染水対策は,地下 水バイパスやサブドレンなどの揚水井や遮水壁等を建屋周辺に設置することで建屋へ流入 する地下水量や海側への地下水の流出量をコントロールしたり,フェーシングを行うこと で雨水の地表から地下への浸透量を低減させたりすることを目的としている.①取り除く ための汚染水対策としては,多核種除去設備による汚染水浄化,トレンチ内の汚染水除去が 挙げられる.また,②近づけないための汚染水対策としては,地下水バイパス揚水井からの 地下水くみ上げ,建屋近傍井戸(サブドレン)や凍土方式の陸側遮水壁の実施,雨水の土壌 浸透を抑える敷地舗装(フェーシング)が挙げられる.③漏らさないための汚染水対策とし ては,水ガラスによる地盤改良,海側遮水壁の設置,タンクの増設,地下水ドレンからの地 下水くみ上げが挙げられる.

海側遮水壁の設置とサブドレン・地下水ドレンの運用が開始された2015年の後半から地 下水位は低下し(東京電力,2015a),港湾内の一部の海水中の放射能濃度は,WHO飲用水 ガイドライン値である10 Bq/L以下に減少した(東京電力,2015b).Gallaedo and Marui(2016)

は,これらの汚染水対策による効果が見られ,放射性物質の濃度は今後さらに減少するとし た.しかしながら,2021年現在でも建屋に最も近い1~4号機北側・南側海水で10 Bq/Lを 超える値が多雨期に検出されている.

Fig. 1-5 福島第一原子力発電所で行われているさまざまな汚染水対策(2021年3月時点)(東京電力HP:

http://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watermanagement/)【Sato et al., 2021d】

Various countermeasures against contaminated water issues at FDNPS (as of March 2021). (TEPCO’s website:

http://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watermanagement/)【Sato et al., 2021d】

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1.5 研究目的

以上の背景をまとめると,日本沿岸部の鮮新統は,海進・海退のオーダーに加えて構造運 動等によって岩相が変化する(Tada,1994;卜部,1999).日本と同様に海進・海退の影響 を大きく受けるメコンデルタの鮮新統を含む新第三系でも,詳細な岩相の変化は明らかで ないものの,地下水質の分布的特徴からその多様性が示唆された.福島第一原発敷地内に分 布する鮮新統大年寺層も海進・海退によって形成された砂岩・泥岩を主体とした地層である が,鮮新統最上部層のD4は,福島第一原発付近は海底地すべりで形成された凹地を埋積し た地層であり,鮮新世末の海退に伴う複雑な層相を有している可能性があることや,限定的 に分布する厚い砂層の存在によって帯水層の分布や透水性などの水文地質状況に大きく影 響する可能性がある.しかしながら,地下水流動解析に必要な帯水層区分やパラメータ設定 のために,大年寺層と福島第一原発敷地内の地層が詳細に対比されていないことが課題で ある.

また,敷地周辺地域においては,地下水中のフォールアウト起源の放射性核種濃度は低い ことが明らかとなっているが,福島第一原発敷地内やその近傍では汚染水問題が未だ解決 されていない.海水中の放射性核種濃度からも,敷地内から一部汚染水が漏洩している可能 性が示唆されている(青山,2018).福島第一原発では,事故後に重層的な汚染水対策が行 われてきたが,汚染水対策後の流動の変化や個々の対策の効果検討など,事故前と事故後の 総合的な地下水流動の検討は行われていない.さらに,第5章で詳述するが,既往モデルで は,大年寺層D4中の複雑な泥質層の挟在が考慮されておらず,実態にあった水文地質状況 が地下水流動の変化に与える影響が明らかではない.

したがって,本研究は野外地質調査および敷地内のボーリング資料を使用した地下地質 解析によって大年寺層上部D4を主に対象とした福島第一原発敷地内の層序学的検討を行い,

水文地質解析によって得られた帯水層区分や層相分布をもとにD4の複雑な層相を考慮した 三次元地下水流動シミュレーションモデルを構築し,汚染水対策前後の地下水流動の変化 を明らかにすることを目的とする.

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1.6 論文構成

本研究では,大年寺層 D4を対象にした福島第一原発敷地内の水文地質解析とその結果に

基づく三次元地下水流動シミュレーションによる地下水流動解析を行い,地下水流動の変 化と汚染水対策の効果を明らかにすることを目的として,以下の第 2~7 章の方針に従い研 究を進めた.

第2章 「福島第一原発周辺地域における大年寺層 D4 中の未固結砂層の地質学的・層序学 的検討」

福島第一原発の敷地周辺は,鮮新統大年寺層という海成の砂岩および泥岩で構成される.

久保ほか(1994)によれば,福島第一原発敷地にもこの大年寺層が分布する.大年寺層最上 部層の D4 は海底地すべりで形成された凹地埋積した地層であり,南相馬市南部~富岡町ま で分布する.南相馬市南部には D4の下部に泥岩のブロックが存在する.南相馬市南部では,

D4 中に最大層厚 40 m の未固結砂層が発見された(佐藤ほか,2019a;2019b).この未固結 砂層の層厚は,泥岩を主体とする D4としては特異的に厚いものであった.未固結砂層は,

福島第一原発敷地の「上部透水層」である「中粒砂岩層」に対比される可能性があり,この 未固結砂層との関係を明らかにする必要がある.本章は,福島第一原発敷地周辺の南相馬市 南部から富岡町までの地質調査結果から明らかにした大年寺層 D4中の未固結砂層の分布や 形態などの地質学的検討,および火山灰層序や珪藻化石層序を使用した層序学的検討を行 った結果を示す.

第3章 「福島第一原発の地下地質」

福島第一原発敷地の地下地質は建設当初による地質調査および事故後のボーリング調査 によって検討されているが,地層区分には従来の富岡層(須貝ほか,1957)の区分を使用し ており,現在使用されている大年寺層との対応は不明である.本章では,公表されている柱 状図から断面図を作成し,さらに近辺の地質調査を行い,地層層序を明らかにすることを目 的として福島第一原発敷地内の地下地質解析を行った.また,既往の研究成果を用いた敷地 と周辺地域との大年寺層の柱状図対比から,未固結砂層と「中粒砂岩層」の対比や福島第一 原発敷地内の地層対比を行った.

第4章 「福島第一原発の水文地質」

第 3 章で明らかにした地質柱状図や断面図による地下地質解析結果を踏まえ,公表され た実測の地下水位および水頭やその水位及び水頭変動パターンから読み取れる帯水層の特 徴から,原発敷地における帯水層区分を再検討した結果を示す.また,再検討した帯水層区 分をもとに,粘土相率の分布や層相解析によって透水係数・有効間隙率・比貯留量の分布を

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推定し,福島第一原発敷地内の水文地質状況について明らかにした.さらに,公表された地 下水位(水頭)を使用し,敷地内の水文地質と地下水流動の特徴を述べた.

第5章 「詳細な水文地質状況と汚染水対策を考慮した三次元地下水流動解析」

福島第一原発敷地内の汚染水対策前後の地下水流動の変化を実測値と比較し検証するた めに,地下水流動解析コードMODFLOWを使用してシミュレーション解析を行った.この 地下水モデルには,第3,4章に示した水文地質解析をもとに推定した個々の柱状図に基づ く層相分布を入力した.また,モデルの計算期間である2011年3月~2020年3月の時系列 的な涵養量,揚水量,汚染水対策段階的な運用を推定,再現し,これらをモデルに入力した.

本論では,現況再現結果をもとに,汚染水対策前後の水位(水頭)および流動の変化や,地 下水の流路を検討するために配置した粒子の移動経路と移動時間を計算した結果を示した.

第6章 「水文地質と地下水流動にもとづく汚染水対策効果の検討」

敷地内の水文地質状況を考慮した三次元地下水流動モデルを使用し,地下水バイパスお よび海側遮水壁,陸側遮水壁に焦点を当てて,地質学的および水文地質学的観点からその効 果について検証した.

なお,本論で頻出する東京電力の地層区分名や帯水層名,および地盤区分名は本研究の成 果と区別させるために鍵括弧「」を使用する.

※例えば,「中粒砂岩層」,「上部透水層」,「35 m盤」,など

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第 2 章 福島第一原発周辺地域における大年寺層 D

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中の未 固結砂層の地質学的・層序学的検討

2.1 はじめに

福島第一原発敷地には,海成の鮮新統大年寺層が分布する.大年寺層は,岩相によってD1, D2,D3,D4に分かれており(Fig. 2-1),とくにD4は大規模な海底地すべりによってできた 凹地を埋積した地層であるとされている(久保ほか,1990).D4の分布域は南相馬市南部を 北限とし,南限は富岡町小良ヶ浜付近となる(久保ほか,1990;1994;2002,柳沢ほか,2003).

南相馬市南部では,2011 年の東北地方太平洋沖地震の復興工事に関連して大規模な土砂取 場が各所に設けられ,新たな露頭が出現した.大年寺層D4分布域(久保ほか,1990)に最 大層厚40 mに及ぶ未固結砂層を発見した.この未固結砂層は,大年寺層に挟在する数10 cm

~1 m程度の薄層に比べて厚いこと,泥岩をほとんど挟まないこと,鮮新~更新統としては 固結が進んでいないことなど特異である.福島第一原発敷地内でも,東京電力(2013c)に よって厚さ約 20 mもの砂層の存在が示されており,南相馬市南部と同様に大年寺層 D4分 布域に分布していることからも,これらの厚い砂層は層準として対比できる可能性がある.

この砂層は,原子炉建屋に連続する「中粒砂岩層」(東京電力,2013c)といった,福島第一 原発敷地内の「上部透水層」(汚染水処理対策委員会,2013b)を構成することが分かってい る.したがって,福島第一原発敷地内の地下水流動を把握するために重要な帯水層区分やモ デルに入力する帯水層パラメータを決定するためにも,南相馬市南部で確認された未固結 砂層と「中粒砂岩層」の層序や層相を対比して,福島第一原発敷地内における帯水層の連続 性を検討することが重要である.

しかしながら,南相馬市南部の未固結砂層および福島第一原発敷地内の「中粒砂岩層」は,

分布や形態,および層序が明らかとなっておらず,これらの地層対比ができていない.そこ で本章では,まず南相馬市南部の未固結砂層を重点的に調査し,層相や層序,および堆積年 代を火山灰層や珪藻化石から明らかすることを目的とした.さらに,大年寺層D4分布域南 部の富岡町まで調査を拡大し(Fig. 2-2),未固結砂層の分布や層準を他地域でも確認した.

なお,本章の結果は,佐藤ほか(2019a;2019b)および,佐藤ほか(2021a)に示された ものである.

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Fig. 2-1 鮮新統大年寺層の層序と代表的な火山灰層および珪藻化石帯

柳沢ほか(2003)をもとに作成.【佐藤ほか,2021b】

Stratigraphy of the Dainenji Formation with typical volcanic ash layers and diatom zones compiled by Sato et al.

(2021b) after Yanagisawa et al. (2003). 【Sato et al., 2021b】

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2.2 研究手法

2.2.1 地質調査

対象地域の大年寺層D4中の層相や層序,および堆積年代を検討するために,地質調査を 行った.南相馬市南部に分布する大年寺層の露頭を180地点調査した.未固結砂層が堆積す る場所では砂層の粒度・厚さ・色・淘汰度などを記載した.また,未固結砂層下位の泥岩層 との境界が確認できる場所では,砂層と泥岩層との境界の走向・傾斜を測定した.さらに,

砂層と泥岩層との境界に加えて,泥岩中の層理面の走向・傾斜も測定した.砂層が厚く堆積 するところでは地質柱状図を複数作成し,未固結砂層の層序対比に使用した.調査を行った 未固結砂層が分布する露頭をもとに,未固結砂層の分布図や大年寺層D4の中の未固結砂層 と下位・上位の泥岩層との関係を示すために作成した柱状図や地質図から地質断面図を作 成した.

2.2.2 火山灰の砂粒組成および主成分元素分析

火山灰の層相は,露頭においてその層厚・色調・粒度・内部堆積構造などを記載した.採 取した試料は,まず,「わんがけ」法(野尻湖火山灰グループ,2018)によって粘土分を除 去して風乾した.次に,1φ(1/2 mm),2 φ(1/4 mm),3 φ(1/8 mm),4 φ(1/16 mm)の篩 を用いて篩い分けを行い,それぞれの重量を測定した.双眼実体顕微鏡下で2 φ~3 φの粒 子について500粒以上を鑑定することで(野尻湖火山灰グループ,2018),砂粒組成を明ら かにした.火山ガラスの主成分元素組成分析は,福島大学の SEM-EDS(日本電子製 JSM-

6610LV+オックスフォード製INCA x-act SDD 検出器+EDSアナライザー)を使用して,長

橋ほか(2003)および長橋・片岡(2014)による方法にもとづき行った.

2.2.3 珪藻化石分析による未固結砂層の年代推定

柳沢ほか(1990)および柳沢ほか(2003)が構築した大年寺層の珪藻化石層序や年代層序 と未固結砂層の層序を比較し,未固結砂層の堆積年代を推定するために,珪藻化石分析を行 った.珪藻化石は泥岩に良く保存されるため,未固結砂層の上部および下位の泥岩層でサン プリングを行った.試料の処理は,秋葉ほか(1982)にもとづいて行った.まず,プレパラ ート上の任意の測線上で100殻片を同定し,その約10倍の範囲を検鏡した.次に,確認で きた珪藻化石の種を産出表に+印で示した(Appendix table 2-3).なお,Chaetoceros属の休 眠胞子については,100殻片を同定中に出現した数を別途記載した.

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2.3 調査地域概要

調査地域(Fig. 2-2)には,大年寺層D1,D2およびD4が分布する.D1とD2はそれぞれ砂 岩,泥岩で構成され,D4は主に砂岩の薄層が挟在する泥岩からなる(久保ほか,1990;1994;

柳沢ほか,2003).前述したように,大年寺層D4は大規模な海底地すべりでできた凹地を埋 積した堆積物であり,柳沢ほか(2003)は,大年寺層D4を断続的な複数回の海底地すべり によって形成されたD4a,D4b,D4cに細分している(Fig. 2-1).このうちD4bは,南相馬市南 部から福島第一原発がある双葉町や大熊町周辺,南の富岡町小良ヶ浜にかけて広く分布す る.南相馬市南部のD4bの下部には層厚1~6 mの地すべりブロックが見られ,分布域の北 部で厚く,南部では一部欠如すると報告されている(久保ほか 1990).小佐野ほか(2007)

は,大年寺層D4分布域の南部の富岡町小良ヶ浜において,D4中に発達する粗粒砂を伴うス ランプ堆積物の存在を示している.大年寺層D1からD4には火山灰層が複数挟在し,この火 山灰層の岩石学的特徴と年代層序は,柳沢ほか(2003),高橋ほか(2003)および長橋ほか

(2004)によって明らかになっている.柳沢ほか(2003)によると,大年寺層D4bからD4c

の年代は,2.7~2.4 Maとなり,本調査地域の大年寺層は後期鮮新~前期更新世の堆積物と される.また,D4b中に挟在する火山灰層としては,海底地すべりブロック中に挟在するSFBi と泥岩中に挟在するSFα,β,γの4層が確認されている(Fig. 2-1,柳沢ほか 2003).

Fig. 2-2 地質調査地域

背景の地質図は,久保ほか(1990,

1994)を使用.黄色のシンボルは,火 山灰採取地点を示す.

Study area for geological research Kubo et al. (1990, 1994) were used as background of geological maps. Yellow symbol indicates the sampling location of volcanic ash layers.

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2.4 結果

2.4.1 福島第一原発周辺地域で採取した火山灰の特徴

福島第一原発周辺地域における,火山灰層の採取位置を Fig. 2-2に示した.ここでは,

未固結砂層の層序を決定するために使用したSF11,SF18,SFBi,SFα,SFβ,SFγについて 説明する.また,調査地域より北に位置する牛来露頭や福島第一原発の敷地南側に位置する 夫沢川で採取された火山灰層も含めて説明する.作成した砂粒組成とガラスの主成分元素 組成の詳細は,Appendix table 2-1および2-2に示す.

SF11は大年寺層D2の下限に位置し,層厚が約30~50 cmと厚く連続性も良いため,大年 寺層D1とD2の境界を示す鍵層となる.SF11は,南相馬市原町区牛来,浪江町藤橋,大熊 町夫沢川,富岡町小良ヶ浜などで確認した.SF11は,以下の(1)~(4)の3または4つ の層相に区分でき,小良ヶ浜を例に説明すると,(1)中粒~粗粒砂サイズの軽石質ガラス質 結晶火山灰,(2)中粒~細粒砂サイズに級化する軽石質のガラス質火山灰と最上部に白色の シルトサイズのガラス質火山灰の薄層,(3)および中粒~極細粒砂サイズに級化が2度繰り 返す軽石質のガラス質結晶火山灰,(4)弱い成層構造を示す中粒~粗粒砂サイズの軽石質ガ ラス質結晶火山灰からなる.層厚は,(4)が最も厚く23 cmであり,それ以外は6~9 cmで あった.SF11の下部は,長石が最も多く50%を占める(Fig. 2-3a).有色鉱物の中では,普 通角閃石が最も多く,次に直方輝石が多い.SF11 上部は,砂粒組成に関しては上部と同様 であるが,砂粒分布は1 φ(1/2 mm)以下のものが多い(Fig. 2-3b).

Fig. 2-3 SF11火山灰層上部と下部の砂粒組成

a: SF11下部,b: SF11上部.

Grain composition of upper and lower parts of volcanic ash layer SF11 a: upper part of SF11, b: lower part of SF11.

SF18は,南相馬市原町区牛来や小高区耳谷で採取した.SF18は南相馬市南部エリアでは 地表付近に連続的に露出しており,小高区浦尻を含め,浦尻より西側の露頭で確認すること ができる.SF18は,浦尻で層厚25 cmであり,大きく2つの層相に区分できる.下部は,

粗粒砂~中粒砂サイズに級化するガラス質結晶火山灰,上部は中粒砂サイズのガラス質結 晶火山灰層で構成される.砂粒組成の特徴は,無色鉱物は,斜長石(45%),石英(9%),

(25)

21

火山ガラスは軽石型が多い(25%).また,有色鉱物は,数%で直方輝石と単斜輝石からな る.

SFαは,南相馬市小高区水谷,蛯沢,浦尻,浪江町請戸,大熊町夫沢川下流,富岡町小良 ヶ浜北で確認した.層厚は,2~5 cmで,下部の中粒砂サイズのガラス質結晶火山灰(2~3 cm)と上部の極細粒~細粒砂サイズのガラス質結晶火山灰(1~2 cm)からなる.砂粒組成 の特徴として,40%の斜長石と数~10数%の軽石型主体の火山ガラスからなる.石英は,6

~18%である.有色鉱物は,約10%の普通角閃石と数%の直方輝石および単斜輝石を含む.

SFβは,南相馬市蛯沢で採取した.層厚は約3 cmで,極細粒砂サイズのガラス質結晶火 山灰からなる.砂粒組成は,斜長石が30%,軽石型火山ガラスが15%,石英は少量で有色 鉱物は認められない.

SF18とSFβについて,本研究で採取したものと高橋ほか(2003)の火山ガラスの主成分 元素組成を,それぞれFig. 2-4とFig. 2-5に示した.南相馬市小高区耳谷で採取されたSF18 は,高橋ほか(2003)のSF18のガラス組成の結果と一致した.蛯沢のSFβ(Fig. 2-8)のガ ラス組成も,高橋ほか(2003)のガラス組成と一致し,層序との関連からもこのSF18とSFβ の2層は対比できることを確認した.そのほかの火山灰のガラス組成については,火山ガラ スの主成分元素組成だけでは対比が難しいものがあったため,その場合は砂粒組成と火山 灰層が挟在する地層の層序をもとに対比した.

Fig. 2-4 高橋ほか(2003)と耳谷におけるSF18のガラスの主成分元素組成

Major element compositions of volcanic glass shards of SF18 at Mimigai with reference value (Takahashi et al., 2003)

(26)

22

Fig. 2-5 高橋ほか(2003)と蛯沢におけるSFβのガラスの主成分元素組成

Major element compositions of volcanic glass shards of SFβ at Ebisawa with reference value (Takahashi et al., 2003)

2.4.2 南相馬市南部における未固結砂層の地質学的特徴とその層序

未固結砂層は,固結度が低い(草搔き鎌で容易に削れる)粗~細粒砂から構成される.Fig.

2-6は,Loc. 42,31,37,172(164),173(位置はFig.2-7参照)での地質柱状図を示す.Loc.

42では,粗粒砂層が挟在する中~細粒砂が主体を成し,上部には厚さ約 1.5 m の固結した 連続性の良い泥岩層が挟在する.未固結砂層には不明瞭なスウェール状斜交層理が認めら れ,粗粒砂層は偽礫を伴うことが多い.未固結砂層の最下部はコンボルート構造のように波 打っていた.未固結砂層の下位は固結した泥岩となっており,細粒砂が混じり,細粒~極細 粒砂層が挟在する.Loc. 42の未固結砂層と固結した泥岩との境界面の走向,傾斜はN80°E,

10°NWで,北方に傾斜する構造を持つ.Loc. 42から南東方向に70 m離れたLoc. 164では,

Loc. 42の下部の泥岩と連続する泥岩に挟在する火山灰層の走向,傾斜がN29°W,10°NEで

あり(Fig.2-7),北東に傾斜する.これらのことから,未固結砂層より下位の泥岩の構造と 未固結砂層の底面の構造は斜交していることが明らかとなった.

大年寺層D4分布域の北端に位置するLoc. 31は,標高20 mまで火山灰層を複数挟在する 泥岩~砂質シルト岩からなる.上部の中粒砂層と下位の泥岩との境界の走向,傾斜は,

N80°W,26°SWで,高角度で南に傾斜している.また,この境界面より下位約4 mに挟在

するガラス質火山灰層の走向,傾斜はN29°E,3°SEと緩く南東に傾斜しており,下位の泥

(27)

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岩の構造と未固結砂層の底面の構造は一致しない.Loc. 37は,調査地点の中で未固結砂層 がとくに厚く堆積している地点である.この地点の未固結砂層は,下位から上位に向かって 粗粒砂から極細粒砂に上方細粒化する.露頭下部の暗灰色泥岩ブロックの上面は複雑に波 打っており(観察した範囲で高さが最大2 m),この層準の砂層中には堆積構造がみられな い.標高約16 mから細粒砂サイズとなり,上部は泥岩が挟在する極細粒砂となる.標高15

~20 mでは平行葉理が発達し,標高約30 m付近からスウェール状斜交層理をもつが,明瞭 でない.標高30 m付近から偽礫を多く含み,その標高はLoc. 42の偽礫を含む層準の標高 と同様である(Fig. 2-6).Loc. 37の最上部には,Loc. 42と同様に泥岩が挟在している.こ の泥岩は,露頭下部で確認された変形した泥岩と比べるとやや軟質であった.

Fig. 2-7の図中央に位置するLoc. 172,173では,未固結砂層より下位の泥岩が露出する.

これらの露頭では,D2の上部に挟在する火山灰層SF18を確認した.この2地点での観察と 柱状図の対比から,未固結砂層は大年寺層 D2と D4下部の泥岩よりさらに上位であること が確認された.柱状図の対比から,未固結砂層の下限は局所的な凹凸はあるものの西から東 に向かって標高が低くなる.それに対し,未固結砂層の上部の泥岩および偽礫が挟在する高 さは,少なくともLoc. 42からLoc. 37の間では標高約40 mと同様の高さであることが明ら かとなった(Fig. 2-6).

(28)

24

Fig. 2-6 Loc. 42,31,37,172(164),173における柱状図の対比【佐藤ほか,2019b;佐藤ほか,

2021a】

柱状図の位置はFig. 2-7に示す.走向,傾斜の記号は,北が上として表示.

Loc. 172,173では,D2上部に含まれる火山灰層であるSF18を確認した.

Correlation of columnar sections of Locs. 42, 31, 37, 172 (164) and 173【Sato et al., 2019b; Sato et al., 2021a】

The locations are shown in Fig. 2-7. The symbol of strike & dip follows north-up. SF18 which is the volcanic ash layer in the upper part of D2 unit was found at Locs. 172 and 173.

(29)

25

2.4.3 未固結砂層の分布とその形態

未固結砂層の下限の標高や,境界の走向,傾斜から推定して作成した未固結砂層の分布域

をFig. 2-7に示す.地質調査結果により,未固結砂層は長軸が西南西-東北東方向で,長さ

4.5 km,幅1 kmの分布域をもつことが明らかとなった.この未固結砂層は,大年寺層D4分

布域の北限に沿って堆積していることが明らかとなった.未固結砂層の分布域の西部は,幅

300 m程度であるが,東部ではその分布を南北に拡大する.未固結砂層と砂層下位の泥岩と

の境界は,基本的に分布域の北部では南傾斜を示し,南部では北傾斜を示していることから,

東北東方向に延びるチャネル状を成すことが明らかとなった.また,未固結砂層下位の泥岩 の構造と未固結砂層と下位の泥岩との境界の構造は一致しないが,緩く傾斜する点でやや 調和する(Fig. 2-7).未固結砂層の上部では,厚さ数mの泥岩層が挟在するかまたは泥岩層 が未固結砂層を覆い,東部では砂層を段丘堆積物が覆う.

Fig. 2-8には,Fig. 2-7の分布域をもとに作成した断面図を示す.大年寺層D1,D2,D4の 地層の境界線は,地質調査結果と久保ほか(1990)をもとに引いた.A-A’断面は,未固結砂 層分布域の長軸方向に沿った断面である.A-A’断面から,未固結砂層の下限は,約 1°の傾 斜で東北東方向に傾斜していることが分かった.未固結砂層は,大年寺層D4の下限よりも

上位10~20 m以内に堆積している.A-A’断面上では,未固結砂層は大年寺層 D4中の泥岩

を削り込んで堆積していることが分かる.未固結砂層の層厚は,西南西から東北東に向かっ て厚くなり,最大層厚は約40 mとなる.西側では尾根沿いに数mの厚さで堆積しているの みであり,大年寺層D4の分布域の北西端で砂層は分布しない.B-B’断面とC-C’断面は,そ れぞれ短軸方向に北北西-南南東方向と北北東-南南西方向の断面である.A-A’断面では 未固結砂層の下限が比較的緩い傾斜で東北東方向に向かって下がるが,B-B’断面と C-C’断 面における北と南の側面が,それぞれ南と北に高角度で傾斜している.このように南北それ ぞれの側面の境界が,チャネルの側面を形成している.また,これらの断面図は,未固結砂 層が大年寺層D4の泥岩を削り込んで堆積していることを示す.

これらの平面図や断面図から,未固結砂層の層厚がC-C’断面とA-A’断面の交点付近でも っとも厚くなり,この付近で A-A’断面線に沿うようにチャネルの軸が存在すると推測され る.また,未固結砂層は,西部では稜線沿いに数m~十数 mの厚さで分布するのに対し,

東部で分布域を大きく南北に拡げ,層厚も厚くなることがチャネルの特徴を示している.C- C’断面よりも東側の調査地の南東部には未固結砂層は分布しないが(Fig. 2-7),この付近は 標高が低く段丘堆積物が分布することから,この段丘堆積物によって削剥された可能性が ある.

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Fig. 2-7 南相馬市南部の未固結砂層の分布図

【佐藤ほか,2019;佐藤ほか,2021a】

Distribution map of unconsolidated sand at the southern area of Minamisoma City

【Sato et al., 2019; Sato et al., 2021a】

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Fig. 2-8 南相馬市南部の未固結砂層の分布図【佐藤ほか,2019;2021a】

Distribution map of unconsolidated sand at the southern area of Minamisoma City【Sato et al., 2019; 2021a】

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