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汚染水対策による水位(水頭)の変化

ドキュメント内 福島第一原発敷地とその周辺地域における (ページ 122-125)

第 5 章 詳細な水文地質状況と汚染水対策を考慮した三次元地下水流動解析

5.7 考察

5.7.1 汚染水対策による水位(水頭)の変化

海側遮水壁は汚染水の海への流出を防ぐため,陸側遮水壁は地下水の流動を制御して建 屋への流入量を削減し,汚染水の発生量を抑制するために設置された.Fig. 5-19は中粒砂層

Ⅰ・Ⅱと砂泥互層のシミュレーション期間における地下水位(水頭)差を平面図で示したも のであり,Fig. 5-20は初期値と最終値の地下水頭とその水頭差の分布を断面図に示したもの である.

Fig. 5-19に示すように,中粒砂層Ⅰ・Ⅱにおける汚染水対策による水位低下は3,4号機

付近で6~7 mとなり,1,2号機付近の2~3 mと比較して大きくなった.この水位差は,

原子力規制委員会のHPに公開されていた2017年11月までのデータと,東京電力(2021a)

に示された陸側遮水壁周辺の地下水位変化の画像から読み取った水位変動と比較すると,

これらの実測値でも陸側遮水壁山側での遮水壁内側の観測井RW5,RW8,Rw16およびCi- 3では,T.P. 6 mからT.P. 1~3 mまで変化しており,約3~5 mの水位差が得られたことを 示している.本研究でも,3,4号機近辺の水位変化は6~7 mと大きいものの,全体的に2

~4 mの変化であり,東京電力(2021a)の結果と類似した結果となった.また,陸側遮水壁 山側の外側では,35 m-B-1孔の東で水位が高くなる傾向が現れた.この水位上昇の原因は,

第4章Fig. 4-10の粘土相率にも示されるように,3,4号機付近の陸側遮水壁のすぐ西側に

は,「10 m 盤」に分布する中粒砂層Ⅰの粘土相率が 30%未満の場所が一部存在することか ら,もとの地下水経路が陸側遮水壁により妨げられたことで,地下水位上昇量が大きくなっ たためと推察される.一方,北側は地下水バイパスの効果により地下水位は低下傾向を示す が,低下範囲は地下水バイパスNo.1~No.4付近のみである.しかしながら(東京電力,2021a)

の水位差はCo-3D,4Dで高く,本研究では地下水バイパスの影響が実際よりも効きすぎて いる可能性がある.

砂泥互層では,汚染水対策による水位低下は3,4号機付近で大きいが,陸側遮水壁の内 側エリアでの水位低下量は中粒砂層Ⅰと比較して小さい.陸側遮水壁の山側では,Go-6Dや

Go-5D付近で水頭差が大きい傾向にあり,約2~3 mの上昇がみられる.東京電力(2021a)

の水位差では,Go-4Dが最も高く,中粒砂層Ⅰと同様に遮水壁外側の北方の再現性はやや悪 い.

Fig. 5-20には,汚染水対策前後の断面方向の地下水頭分布と水頭差を示す.南北断面(Fig.

5-20a1-a3)をみると,汚染水対策前(Fig. 5-20a1)では「10 m盤」の地下水頭は標高T.P. 約 5 mであったが,汚染水対策後(Fig. 5-20a2)は陸側遮水壁によって内部の水頭が低下し建 屋近傍では標高T.P. 0 mよりも下がる場所が出現した.陸側遮水壁外部の北側と南側では,

遮水壁によって水頭が 1 m 程度上昇したのみで,後述する東西断面と比較して遮水壁内外 の水頭差は発生しない(Fig. 5-20a3).東西断面(Fig. 5-20b1-b3)をみると,汚染水対策前(Fig.

5-20b1)の地下水は「35 m盤」から海側に向かって流動し,「10 m盤」付近で中粒砂層Ⅰよ

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りも砂泥互層以深の地下水頭が高くなることで,上向きの流動が生じていることが分かる.

汚染水対策後(Fig. 5-20b2)は,サブドレンや陸側遮水壁の効果により遮水壁内部の地下水 頭が低下し外部との水頭差が大きくなった.さらに,水頭等値線の傾きも水頭低下部に向か って大きくなることから,遮水壁設置前と比較して遮水壁底面から遮水壁の内側への上向 きの地下水流動が強められる可能性がある.汚染水対策前後の東西断面の中粒砂層Ⅰにお ける水頭差は,陸側遮水壁(山側)の外側で6~8 mとなった(Fig. 5-20b3).水頭差は砂泥 互層から下位に向かって徐々に小さくなる.これは,中粒砂層Ⅰは下位の帯水層と比較して 透水係数や層厚の観点から地下水流動量がもともと多いため,遮水壁によって地下水流が せき止められたことによる水頭差の上昇が原因であると推察される.

Fig. 5-19 福島第一原発における汚染水対策実施前と実施後の水位(水頭)差の平面分布【佐藤ほか,

2021d】

a:中粒砂層Ⅰ・Ⅱ,b:砂泥互層.対策前と対策後の水位(水頭)差を推定するために,TR1のストレス

ピリオド1(2011311日)の地下水位(水頭)とTR8のストレスピリオド330(2020322日)

の地下水位(水頭)を使用した.平面で示す水位(水頭)差は,同じ帯水層間の水位(水頭)差の平均値 である.図内の南北(a-a’),東西(b-b’)断面線は,Fig. 5-20に示す断面図の位置である.

Planar distributions of differences in groundwater level (head) before/after operation of the countermeasures against contaminated water at FDNPS【Sato et al., 2021d】

a: Medium sand layers I, II, b: Interbedded sand and mudstone. The groundwater level (head) of stress period 1 in TR1 (11 Mar 2011) and that of stress period 330 in TR8 (22 March 2020) were used to estimate the difference in

groundwater level (head) before and after operation of countermeasures against contaminated water. The plane differences in groundwater level (head) were the average of the water level (head) differences in the same aquifers.

Cross sections along north-south (a-a') and west-east (b-b') lines are shown in Fig. 5-20.

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Fig. 5-20 汚染水対策実施前と実施後の地下水頭と水頭差の断面分布【佐藤ほか,2021d】

a:南北断面,b:東西断面.a1,b1:汚染水対策前(TR1,初期水頭)の水頭等値線.a2,b2:汚染水対策

後(TR8,最終水頭)の水頭等値線.a3,b3:汚染水対策前(TR1)と対策後(TR8)の水頭差.地層名は Fig. 5-17参照.

Cross-sectional distributions of groundwater heads and head differences before/after operation of the countermeasures against contaminated water【Sato et al., 2021d】

a: north-south cross section, b: east-west cross section. a1, b1: groundwater head distributions before operation (TR1, initial head). a2, b2: groundwater head distributions after operation (TR8, final head). a3, b3: difference in groundwater

head between TR1 and TR8. Labels for geological name are shown in Fig. 5-17.

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