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三次元地下水流動の課題と目的およびコンセプト

ドキュメント内 福島第一原発敷地とその周辺地域における (ページ 99-102)

第 5 章 詳細な水文地質状況と汚染水対策を考慮した三次元地下水流動解析

5.3 詳細な水文地質状況を反映した三次元地下水流動解析

5.3.1 三次元地下水流動の課題と目的およびコンセプト

実際の水文地質状況を反映した帯水層係数の入力や非定常計算による地下水位の変化を 地下水流動モデルを使用して再現することで,福島第一原発敷地内の地下水流動の実態を 把握したり,汚染水対策による地下水環境の変化や効果の検討を行ったりすることができ る.しかしながら,既往モデルでは詳細な地下地質構造や重層的な汚染水対策が反映されて おらず,汚染水対策に伴う地下水流動の変化や効果の検討が十分に行われていないことが 課題である.

そこで本研究では,福島第一原発の地下水位の把握と汚染水対策による地下水位や地下 水流動の変化を検討することを目的として,福島第一原発における実際の水文地質状況と,

各種汚染水対策を反映した三次元地下水流動モデルを作成してシミュレーション解析によ る検討を行った.シミュレーション期間は,福島第一原発事故の発生した2011年3月11日 から2020年3月22日までの約9年間とした.福島第一原発の水文地質状況をモデルに反 映するために,第4章で示した帯水層区分ごとの層相解析(Shibasaki,2016)を使用して,

透水係数や有効間隙率などのシミュレーション解析に必要な帯水層係数の三次元分布をモ デルに入力した.とくに,福島第一原発敷地内の主要な帯水層となっている「中粒砂岩層」

の下部に対比された中粒砂層Ⅰには,複数の泥質層が不規則に挟在しており,地下水頭や地 下水流動に大きく影響しているため,そのモデル内への反映は必須であると考えた.モデル 上では,層相解析により中粒砂層Ⅰの不連続な泥質層の挟在などの地層の不均質性を反映 した.また,本研究では既往モデルとは異なり,水位の時間変化を考慮できる非定常計算を 行った.既往モデルが行った定常計算は時間に依存しない計算方法であり,一定の涵養量や 揚水量が入力されている.この一定の涵養量および揚水量の状態が無限に継続したときの 安定した地下水位が,定常計算の結果として得られる.現実には涵養量や揚水量の時間変化 によって水位や水収支は日々変動しており,福島第一原発敷地内では事故後,重層的かつ段 階的に汚染水対策が行われため,地下水位や水収支は対策実施前と比較して大きく変化し たと考えられる.したがって,実態に近い地下水位変化の状況を再現するために,涵養量や 揚水量を公表資料からできる限り収集・推定してモデルに入力した.汚染水対策についても,

段階的に実施されたことを再現するために,MODFLOW内の複数の流動パッケージを応用 した.地下水流動解析ソフトは,Processing Modflow(Simcore Software,2012)8ver. 8.0.45を 用いた.解析コードには,MODFLOW-2005(Harbaugh 2005)を使用した.MOFLOW-2005 を選択したのは,地下水シミュレーションによる研究論文で世界的によく用いられており

(吉本ほか,2019),セルごとにパラメータを異なる値で入力できることや不均質性を考慮 したパラメータを入力しても計算が安定していることが理由である.MODFLOW では,以 下の三次元地下水流動基本方程式を,差分法を用いた離散化法を使用して解いている.

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𝜕

𝜕𝑥

(𝐾

𝑥𝑥𝜕ℎ

𝜕𝑥

) +

𝜕

𝜕𝑦

(𝐾

𝑦𝑦𝜕ℎ

𝜕𝑦

) +

𝜕

𝜕𝑧

(𝐾

𝑧𝑧𝜕ℎ

𝜕𝑧

) − 𝑊 = 𝑆 s

𝜕ℎ𝜕𝑡 1

ここで,𝐾𝑥𝑥,𝐾𝑦𝑦は水平方向の透水係数(L/T−1),𝐾𝑧𝑧は,鉛直方向の透水係数(L/T−1) を示す.𝑊は単位体積あたりの流入または流出の体積フラックス(T−1),ℎは地下水位(水 頭)(L),𝑆s(L−1)は比貯留量,𝑡は時間(T)を示す.計算された水位を実測水位と比較し,

モデルの検証を十分に行った後,地下水の流動方向や流速を検討するために,粒子追跡コー ド PMPATH(Chiang and Kinzelbach 1994)を使用した.

モデル化の手順を Fig. 5-2 に示す.地下水流動解析コードとして MODFLOW-2005

(Harbaugh,2005)を選択した.次に,モデルの設計として,モデル構造を決定し,境界条 件,初期条件,パラメータを設定した.境界条件や初期条件の設定水位やコンダクタンスを 概略的に絞り込むための試行計算は定常計算で行った.次に,シミュレーション期間での非 定常計算を行い,境界条件や帯水層係数,涵養量,揚水量などの複数のパラメータの微調整 を行った.複数のパラメータの微調整を行いながら,計算水位を実測水位に合わせていくキ ャリブレーションを行い,実測値と計算水位がおおよそ一致するまで検証計算を繰り返し た.その後,パラメータの最終決定を行い,現況再現を終了した.この現況再現結果を使用 して,敷地内の地下水流動の把握や汚染水対策による水位・流動の変化および粒子追跡の検 討を行った.

非定常計算では,モデル上で地下水流動を計算する際の時間間隔(ストレスピリオド)を 設定する.地下水位の変化は設定したストレスピリオドごとに計算される.本研究では,約 9 年間のシミュレーション期間を 1 ストレスピリオド=10 日間に区切り,計 330 ストレス ピリオドの計算を行った.しかしながら,海側遮水壁と陸側遮水壁(凍土壁)を設定するた めに使用した水平流障壁(Horizontal Flow Barrier)パッケージは,モデル内での時系列な境 界条件の変化(位置や透水性の変化)を考慮することができない.そのため,段階的な遮水 壁の閉合を再現するために約 9 年間のシミュレーション期間を 8 期間に細分し,汚染水対 策の設定条件のみが異なる 8 種類のモデルを構築した(Fig. 5-3).汚染水対策に関係しない 水文地質条件に関する帯水層パラメータや境界条件の設定は変更していない.海側遮水壁 においては,鋼管矢板の施工完了時期に地下水位が変化し,海側へ流出する地下水流動量が 大きく減少したと推定され,その後に行った継手部のモルタル注入と遮水ゴムの施工(東京 電力,2016f)の影響は小さいと推測された.したがって,海側遮水壁は 1 ストレスピリオ ドのうちに壁が設置されたと仮定できる.一方で,陸側遮水壁は,海側,山側,山側の一部 を徐々に凍結させていった過程があることから,非定常計算の期間を Fig. 5-3 のように細分 して,陸側遮水壁の完成をモデルでも段階的に設定する必要があった.したがって,モデル は計 8 つ(TR1~TR8)に分け,各モデルの最終水位は次の期間のモデルの初期水位として 入力した.このようにモデルは期間ごとに変更されるが,モデルの構造や水平流障壁以外の 条件を変えないことで,合計 9年の地下水流動の計算を可能にした.

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Fig. 5-2 本研究での地下水流動シミュレーション解析のワークフロー【佐藤ほか,2021d】

Workflow of simulation analysis for groundwater flow in this study【Sato et al., 2021d】

Fig. 5-3 汚染水対策の運用開始日と非定常計算モデルおよび期間の関係【佐藤ほか,2021d】

Relationship between operation dates of countermeasures against contaminated water and transient simulation models with period【Sato et al., 2021d】

シミミュュレレーーシショョンン全全体体のの時時間 Simulation time

モデデルルのの名名称

Name of model TR4 TR5 TR6 TR7 TR8

ストトレレススピピリリオオドド (10日毎毎))のの数

No. of stress period (every 10 days) 7 18 9 17 95

3 Jul 2012 9 May

2014 16 Sep 2015 5 Oct

2015 24 Mar 2016 2 Jun

2016 29 Nov 2016 27 Feb

2017 16 Aug 2017

49 113 166 171 185 192 210 219 236

フェーシング Waterproof pavement

海側遮水壁 Sea-side impermeable wall

地下水バイパス Groundwater bypass サブドレン Sub-drains

地下水ドレン Groundwater drains 陸側遮水壁 フェーズ1(海側)

Land-side impermeable wall Phase 1 (sea side) 陸側遮水壁 フェーズ1(山側)

Land-side impermeable wall Phase 1 (mountain side) 陸側遮水壁 フェーズ2 第1段階

Land-side impermeable wall Phase 2 (Step 1) 陸側遮水壁 フェーズ2 第2段階

Land-side impermeable wall Phase 2 (Step 2) 陸側遮水壁 フェーズ2 第3段階

Land-side impermeable wall Phase 2 (Step 3)

△海側遮水壁工事着工 start construction of sea-side impermeable wall

海側遮水壁鋼管矢板施工 start construction of sheet pile for sea-side impermeable wall 計算算開開始始年年月月日日とと開開始始スストトレレススピピリリオオドド番番号

汚染染水水対対策策  

Date of simulation started and start stress period No.

Countermeasures against

contaminated water 1

11 Mar 2011

48

11 Mar 2011 - 22 Mar 2020 (約99年about 9 years)

TR1 TR2

117

TR3 19

98

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