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三次元地下水流動解析による地下水バイパスの効果検証

ドキュメント内 福島第一原発敷地とその周辺地域における (ページ 138-144)

第 6 章 水文地質と地下水流動にもとづく汚染水対策効果の検討

6.2 地下水バイパスの効果の検討

6.2.3 三次元地下水流動解析による地下水バイパスの効果検証

「6.2.2 水文地質からみた地下水バイパスの効果低減要因の解析」では,中粒砂層Ⅰ中に 挟在する泥質層が要因であることが示された.しかしながら,東京電力(2012a;2012c)で

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示された地下水バイパスの想定効果は,東京電力(2013c)で改良された「はさみ層」を考 慮しないで検討された可能性がある.したがって,本研究で作成した,泥質層の不均質性を 考慮した三次元地下水流動解析モデルを使用して,地下水バイパスによる水位低下量とそ の範囲について検討した.

地下水バイパスの効果は,モデル上で地下水バイパスの条件のみを変更し,揚水がある場 合とない場合の 2 種類のシミュレーション結果によって得られた地下水位の水位差から,

地下水位低下量と低下範囲を推定することで検討した.東京電力(2014g,2014h)が 2014 年8月21日までの30日間累計降水量と水位の相関から算出した10 m盤観測井における地 下水位低下量と比較するために,地下水バイパス運用後から2014年8月22~31日までの 計算を行った.この期間で入力した揚水量の変化をFig. 6-6に示す.

Fig. 6-6 モデルに入力したストレスピリオド(10日間)ごとの揚水量と涵養量の日平均値【塩野ほか,

2021a】

Daily averages of recharge and discharge for each stress period (every 10 days) input to the model

【Shiono et al., 2021a】

泥質層を考慮したモデルによるシミュレーション解析によって推定した水位低下量を,

Fig. 6-7aおよびFig. 6-8に示す.Fig. 6-7の水位低下量の平面分布図は,地下水バイパスのス トレーナが入っており,かつ建屋に連続する中粒砂層Ⅰのみの計算水位を使用して算出し た.Fig. 6-7aの結果から,地下水バイパス近辺の推定水位低下は最大約10 mであり,地下 水バイパスによる水位低下は,地下水バイパス近辺に集中した.また,この時の建屋におけ る水位低下量は最大約20 cmとなった.Fig. 6-8では,地下水バイパスの効果を検討するた めに設置された10m-A,10m-B,10m-Cを通る東西断面を示している.地下水バイパスによ る観測孔での推定低下量は,それぞれ,20,80,70 cmであった.10 m-Aは東京電力(2014g;

2014h)で算出された水位低下量に近い結果となったが,10 m-Aと比較して地下水バイパス

との距離がそれぞれ40 m,80 mと近い10m-B,10m-Cの水位低下量は東京電力(2014g;

2014h)で算出された水位低下量よりも大きい結果となった.また,Fig. 6-7aに示した建屋

西側の断面において推定した地下水流入量は,14 m3/dayのみであると推定され,10 m-A~

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Cで確認された水位低下が東京電力(2014g)よりも約50 cm大きくなったのにもかかわら ず,東京電力(2015d)による80 m3/dayと比較してさらに小さい結果となった.

次に,地下水バイパスによる水位低下の量や範囲に対して,不規則な泥質層の有無が与え る影響を検討するために,中粒砂層Ⅰの透水係数を一律にして,上記と同様の方法で地下水 バイパスの効果を検討した.横方向の透水係数は,東京電力(2013c)の横方向の透水係数 の値である2.6 m/day,縦方向の透水係数は本モデルで検討した比率をそのまま使用し,横 方向の透水係数の1/4である0.52 m/dayを入力した.その結果,泥質層の挟在を考慮した場 合と比較して,地下水バイパスによる水位低下量は,揚水井近辺で最大約 4 m と小さくな った一方,建屋付近では約 50 cm となり水位低下範囲も大きく広がることが明らかとなっ た.この結果は,泥質層の挟在が地下水バイパスの揚水による水位低下量や影響範囲に大き く影響していることを示し,泥質層の挟在が地下水バイパスの効果を低減させる 1 つの要 因である可能性を示している.泥質層を考慮しても10m-Bと10m-Cの計算された水位低下 量が実測値よりも大きくなった要因としては,Table 6-2 に示したように揚水井での水位低 下が実測と比較して3 m小さくなってしまった結果から(1)地下水バイパスを掘削した際 のボーリング柱状図やスライムによる記載が公表されていないため,入手した柱状図のみ による泥質層の再現がまだ不十分のところがあること,(2)実際には10 m盤に埋設された 構造物や揚水によってさらに効果が低減されている可能性が考えられる.シミュレーショ ン解析で算出された水位低下量は,実際と比較してやや課題評価となってしまったものの,

東京電力(2012a;2012c)の想定よりは小さくなった.実際の観測孔での水位低下は上記に 示したように,20~30 cmと推定されているとすると,建屋への水位低下量の影響はさらに 小さくなっていると考えられる.

以上の実際の水文地質状況を考慮した三次元地下水流動解析により,地下水バイパスが 設置されている中粒砂層Ⅰ中の不規則な泥質層の挟在が,地下水バイパスの影響を低減さ せていることが明らかとなった.

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Fig. 6-7 ストレスピリオド127(2014 年8 月22 日~31 日)までの地下水バイパス運用による水位低下量

の範囲【Sato 2021 accepted】

a:実際の層相分布を再現した場合.赤線は建屋への地下水流入量の変化量を計算した範囲を示す. b:

中粒砂層Ⅰの泥層層の挟在を排除した場合.

Extent of drawdown by groundwater bypass operation until stress period 127 (22~31 August, 2014) 【Sato 2021 accepted】

a: The case reproducing the actual facies distribution. Red line shows calculation area of the change in groundwater inflow to the buildings. b: The case eliminating the intercalations of muddy layers in the Medium sand layer I.

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Fig. 6-8 「10 m 盤」観測孔を通る3 つの東西断面図におけるストレスピリオド 127(2014 年8 月 22~31

日)までの地下水バイパス運用による水位低下量の範囲【塩野ほか,2021a】

「10 m 盤」観測孔10 m-A,10 m-B,10 m-C の位置をFig. 6-2 に示す.a:10 m-A を通る断面,b:10 m-B を通る断面,c:10 m-C を通る断面.1:実際の層相分布を再現した場合.2:中粒砂層Ⅰの泥層の挟在を 排除し,砂層に一律の透水係数を与えた場合.青線は,建屋へ向かう地下水流動量を計算した断面位置を

示す.

Extent of drawdown by groundwater bypass operation until stress period 127 (22-31 August 2014) along 3 west-east cross sections through the observation wells “at 10 m ground” 【Shiono et al., 2021a】

The locations of 10 m-A, 10 m-B and 10 m-C of observation wells “at 10 m ground” were shown in Fig. 6-2. a:

along 10 m-A. b: along 10 m-B. c: along 10 m-C. 1: Case reflecting the actual facies distribution. 2: Case eliminating the intercalations of muddy layers in Medium sand layer I and assigning uniform hydraulic conductivity. Blue line:

location of cross section for calculating groundwater flow rate to the buildings.

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Table 6-2 東京電力(2014g;2014h)と本研究での地下水バイパスによる水位低下量の比較【塩野ほか,

2021a】

Comparison of drawdown by groundwater bypass in this study with TEPCO (2014g; 2014h)【Shiono et al., 2021a】

地下水バイパス

建屋

東京電力

(2014g, h)

g h

本研究

(泥質層考慮)

最大10 m

本研究

(泥質層なし)

最大4 m

50~100 cm 水位低下量 Drawdown

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