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三次元地下水流動モデルの検証結果

ドキュメント内 福島第一原発敷地とその周辺地域における (ページ 116-121)

第 5 章 詳細な水文地質状況と汚染水対策を考慮した三次元地下水流動解析

5.6 結果

5.6.1 三次元地下水流動モデルの検証結果

(1) 複数の観測井による時系列地下水位変動

作成した地下水流動モデルによるシミュレーション解析結果の妥当性を検証するために,

汚染水対策前からの実測値がある「35 m盤」,「10 m盤」および「4 m盤」に設置された観 測孔の水位データを使用した(Fig. 5-14).また,「35 m盤」の西部の地下水位も検証するた め,地下貯水槽周辺の2014~2016年にかけての地下水位(東京電力,2016d)も使用した.

Fig. 5-14には,計算期間における観測孔の実測値と計算値の地下水位変動を示す.実測値の

データが多い2015年前半までに着目すると,帯水層ごとの降雨による地下水位の応答が良 く再現できていると判断される.35 m-A-3孔では,最大7 mほどの水位差が生じたが,35

m-A-3孔の北側には「35 m 盤」と「10 m盤」を繋ぐ東西方向の谷が位置しており,同じ帯

水層を測定していると考えられる35 m-B-3孔や35 m-C-3孔と比較しても,水位が10 m弱 低い特徴的な地下水分布を示す.本モデルでは,この35 m-A-3孔付近の地下水位分布を良 好に再現できなかった.しかし,2015年以降の実測値がある「10 m盤」に設置されたH25J- 4~7孔および「4 m盤」に設置された4 m-C-1,C-2孔では,「10 m盤」の西側に設置され たH25J-5孔を除いて水位差は2 m程度であった.Fig. 5-15は,2015年10月22日までの計 算水位と実測水位の比較を示している.この図から,「10 m盤」~「4 m盤」にかけての地 下水頭は比較的良好に再現できたと判断される.2015 年後半以降は,唯一帯水層別に測定 されていた「35 m盤」観測孔の実測値が公表されなくなったため,それ以降の「35 m盤」

における計算水位と実測水位との検証ができていないことが課題として挙げられる.

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Fig. 5-14 シミュレーション期間での数値解析による地下水位変動の計算水位と実測水位の比較【佐藤ほ か,2021d】

計算水位と実測水位は,浪江町の日降水量と一緒に示される.シンボルと番号はそれぞれの汚染水対策が 設置・運用された日を示す.(1) 地下水バイパス運用開始,(2) サブドレン運用開始,(3) 地下水ドレン運 用開始,(4) 海側遮水壁矢板施工完了時,(5) 陸側遮水壁第一段階フェーズ1 凍結開始,(6) 陸側遮水壁第 一段階フェーズ2 凍結開始,(7) 陸側遮水壁第二段階フェーズ1 凍結開始,(8) 陸側遮水壁第二段階フェ

ーズ2 凍結開始,(9) 陸側遮水壁第三段階凍結開始.

Comparison of calculated and actual groundwater level fluctuation by numerical analysis within the simulation period

【Sato et al., 2021d】

Calculated and measured water levels are shown together with the daily precipitation at Namie Town. The symbol and number indicate the date when each contaminated water measures was installed or operated.

(1)Start operation of groundwater bypass,(2)Start operation of sub-drains, (3)Start operation of groundwater drain, (4)Finish the construction of sea-side impermeable wall, (5)1st Stage Phase 1 freezing commences, (6)1st Stage

Phase 2 freezing commences, (7)2nd Stage partial closure (I) freezing commences, (8)2nd Stage partial closure (II) ,(9)3rd Stage freezing commences

Fig. 5-15 シミュレーション期間での数値解析による計算水位と実測水位の相関(2011 年 3 月 11 日~

2015 年10 月22 日)【佐藤ほか,2021accepted】

Comparison of historical simulated heads and actual heads at the FDNPP (from 11 March 2011 to 22 October 2015.)

【Sato et al., 2021accepted】

114 (2) 地下水位(水頭)分布と地下水流動

水位(水頭)分布からもモデルの妥当性を検討するために,東電の透水層区分である「上 部透水層」と「下部透水層」に対応する中粒砂層Ⅰ・Ⅱと砂泥互層における,計算値と実測 値を比較した平面地下水位(水頭)分布図をFig. 5-16に示す.Fig. 5-16aに示した中粒砂層

Ⅰ中の地下水位は,「35 m盤」の北部で実測水位よりも約4 m高く,「10 m盤」~「4 m盤」

で2 m低く計算されたが,全体的な地下水流動方向は実測値とよく一致した.また,砂泥互 層の計算水頭分布も実測水頭分布とよく一致している.平面地下水流動から読み取れる福 島第一原発敷地内の地下水流動方向は,中粒砂層Ⅰ・Ⅱと砂泥互層で大きく異なることが明 らかとなった.中粒砂層Ⅰ・Ⅱの地下水は,「35 m盤」では南西から北東方向に流動するが,

「10 m盤」から「4 m盤」では西から東へと流動方向が変化する(Fig. 5-16a).この要因と して,1 号機北西に位置する谷が「35 m 盤」北部の地下水位を下げていることが推察され る.また,「35 m盤」から「10 m盤」にかけて地盤標高が大きく変化する場所では,中粒砂 層Ⅰの地下水位等値線は密集し,流速が大きくなると考えられる.「35 m盤」の南部におい て水頭が高いのは,第 4 章で示したように泥質層が影響しているためと判断される.一方 で,砂泥互層の地下水流動は,「35 m盤」から「4 m盤」にかけて全体的に北西から南東に 向かって流動する(Fig. 5-16b).砂泥互層の流動は,中粒砂層Ⅰ・Ⅱでみられた「35 m盤」

北部の谷の影響や,「35 m盤」と「10 m盤」間の地盤標高変化の影響を受けていないことが わかる.

Fig. 5-17に示す断面水頭等値線は,実測値と計算値を比較した断面方向での地下水頭分布

を示す.Fig. 5-17の上部に示したB-B’南北断面は,「35 m盤」の観測孔35 m-A-1~C-1孔を 通る南北断面図である.Fig. 5-17から,「35 m 盤」における中粒砂層Ⅰの地下水位は実測値 よりも低くなったが,砂泥互層から海底地すべり堆積物やSF11火山灰層にかけては地下水 位はやや高くなった.また,35 m-A-1 孔の中粒砂層Ⅰの実測地下水位はその他の観測孔の 中粒砂層Ⅰの水位と比較して低く,さらに砂泥互層の水位は,ほかの観測孔の中粒砂層Ⅰの 水位と同等になっており,35 m-A-1 孔の水位のみ中粒砂層Ⅰと砂泥互層間の水頭が逆転し ていることが特徴的である.これは,谷地形または水路によって,中粒砂層Ⅰの水頭が上下 の水頭と比較して低くなった影響を受けているものと考えられるが,計算値ではこの水頭 の逆転を十分に再現することができなかった.また,Fig. 5-17の下部に示すG-G’断面は,

「35 m盤」観測孔B-1孔を通る東西断面である.この図から,計算水頭や計算地下水流動 はおおむね再現できていると考えられる.しかしながら,上記の平面地下水位分布図でも述 べたように,中粒砂層Ⅰの計算地下水位は実測水位よりもやや低くなった.

時系列地下水位変動の再現に加え,地下水位平面分布図と断面水頭分布図ともに,おおむ ね地下水位と流動方向は再現でき,特に「10 m盤」や「4 m盤」の水頭の再現性は高いこと から,検証されたモデルを使用して流動や汚染水対策を検討することは可能であると判断 した.

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Fig. 5-16 2013528日における建屋周辺の実測水位と計算水位の比較【佐藤ほか,2021dを改変】

a: 中粒砂層 b: 砂泥互層.実測水位は東京電力(2014e)の等高線図をもとに作成した.東京電力

(2014e)で示された実測水位の等高線図には,「35 m盤」A~C孔の「中粒砂岩層」上部の地下水位のみ が使用された.本研究では,「35 m盤」では主に中粒砂岩層上部の値を使用しており,「10 m盤」~「4 m

盤」では中粒砂層下部の地下水位を使用して等高線を作成している.

Comparison of actual and calculated groundwater heads of the Medium sand layer and Interbedded sand and mud around the buildings on 28 May 2013【Sato et al., 2021d partly edited】

The contour map of actual groundwater level (head) was based on TEPCO 2013. Only the groundwater level of the upper part of the "medium-grained sandstone stratum" of the observation wells A, B and C at “35 m ground” was used for the contour map of actual groundwater level shown by TEPCO (2014e). For making contours of calculated

heads, the head of the Medium sand layer II was mainly used at the “35 m ground”, and the heads of the Medium sand layer I was used in the “10 m ground” to “4 m ground”.

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Fig. 5-17 201541日における南北(B-B’)・東西(G-G’)断面の計算水頭と実測水頭の比較【佐藤

ほか,2021d】

比較は,多くの実測データが得られた201541日の地下水頭を使用して行った.

Comparison of actual and simulated groundwater heads along north-south (B-B’) and west-east (G-G’) cross sections as of 1 April 2015【Sato et al., 2021d】

The comparison was made using the groundwater head on 1 April 2015, when many measured data were available.

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