研究科名 研 究 代 表 者 (2015 年 3 月 現 在 のものを記入)
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(2) ※ ホームページ等で公表します。 (様式2-1) 立教SFR-院生-報告. 研究成果の概要(図・グラフ等は使用しないこと。) まずフリーダが描く植物と結合した人間身体、またフリーダの絵画に表現されている自 然 と の 共 存 の 表 れ を 「 植 物 的 身 体 」 並 び に 「 植 物 的 な 生 」 と 定 義 す る 。 1929 年 、 画 家 デ ィ エ ゴ・リ ベ ラ の 妻 と な っ て か ら メ ソ ア メ リ カ に 伝 わ る 神 々 や そ の 思 想 が 作 品 内 に 多 く 表 れ る よ う に な る 。し か し な が ら 重 要 な こ と は フ リ ー ダ の 表 現 ス タ イ ル は 決 し て デ ィ エ ゴ の 模 倣 に 留 ま る こ と は な く 、や が て フ リ ー ダ の 絵 画 の 中 心 と な っ た 痛 み を 抱 え た 身 体 と い う テ ー マ は 産 み 出 す も の と し て の 痛 み 、則 ち 生 命 の 母 へ と 変 化 す る 。フ リ ー ダ が は じ め て 植 物 と 人 間 の 身 体 を 一 体 化 さ せ た モ チ ー フ を 描 い た の は 、1 9 3 1 年 の ≪ ル ー サ ー ・ バ ー バ ン ク ≫ に お い て で あ る 。こ の 年 デ ィ エ ゴ は ≪ カ リ フ ォ ル ニ ア の 寓 話 ≫ と 名 付 け ら れ る フ レ ス コ 壁 画を描い ており 、こ の作品の 中にル ーサ ー・バー バンク も登 場してい る。こ の時 点で フリ ーダの絵画の主題はディエゴからの影響を大きく受けていることが伺える。しかしなが ら 、こ こ で 重 要 な こ と は デ ィ エ ゴ の 作 品 が カ リ フ ォ ル ニ ア の 自 然 や 文 化 、壮 大 な 物 語 と 歴 史 が 描 か れ る の に 対 し 、フ リ ー ダ の 視 点 は 常 に ル ー サ ー・バ ー バ ン ク 博 士 と い う 一 人 の 人 間の物語に向けられている点にある。フリーダの絵画は一人の人物の現実を忠実に描くこと でその身体と共存する世界を表すことに成功する。この作品の他にもフリーダは自身の身体 から根を生やした姿を描いている。このような植物と連結した身体の姿はメソアメリカに共 通 の 概 念 で あ る 世 界 樹 の 思 想 を 思 い 起 こ さ せ る 。 ま ず 、世 界 樹 の 思 想 に お い て 重 要 な 点 は 天. と 地 の 異 な る 次 元 を 1 つ の 身 体 の 内 に 持 っ て い る こ と 、そ し て 、人 間 の 存 在 す る こ の 場 も 地底世界から天に向かう神々の力と天から落ちる神々の力とがぶつかりあう過程にあり 人間は他の生物と同様に神々の力の一連の運動の中に在るという解釈が出来る点にある。 こ の 思 想 は 現 実 が 神 々 の 力 と 常 に 触 れ 合 う 世 界 に あ る こ と が 示 さ れ て い る 。フ リ ー ダ は 植 物 と 連 結 し た 身 体 を 描 く こ と で 、人 間 の 身 体 も ま た 生 命 の 力 を 内 包 し た 存 在 で あ る と い う ことを描いている。 1.フ リ ー ダ の 絵 画 と 民 衆 の 奉 納 画 の 違 い 世界樹の思想から導かれる現実の思想はメキシコの民衆が描く奉納画にも表れている。 奉納画を描く人々は描くことで惨事からの救済を得る。このことから、人々は現世界が 神々の通り道の中間にあり人間もその力の一部であることを体現していると考えられる。 フリーダも多くの作品で奉納画の手法を用いていたが彼女の作品は決定的に他の奉納画 と は 違 う 性 質 を 持 つ 。そ れ は 奉 納 画 を 納 め た 人 々 が 描 い た 時 に は 既 に 救 済 を 得 ら れ て い る と い う 事 実 に 対 し て 、フ リ ー ダ の 絵 画 に 表 さ れ た 苦 痛 は 神 か ら の 救 済 を 得 る こ と な く 続 い て い る 点 に あ る 。こ の よ う な 自 身 の 苦 痛 を 作 品 に 表 し 痛 み の イ メ ー ジ を 描 き 続 け る フ リ ー ダの行為は人々が奉納画において神々の力を表したものよりも更に深く永続的な神々の 世界との繫がりを表している。 2.フ リ ー ダ が 描 く 母 —子 フリーダが絵画を描くことの重要なテーマとして掲げた 3 つの関心を明確に示した作品 と し て フ リ ー ダ 独 特 の 母 子 像 が あ る 。1 9 3 2 年 、フ リ ー ダ は デ ィ エ ゴ と の 子 供 を 流 産 し そ の 2 ヶ月後に母親を亡くしている。この年に描かれた≪フリーダと流産≫では作品の中心に 裸体のフリーダが在り、フリーダの身体は中央に引かれた線によって左右に分かれてい る。フリ ーダは 涙を 流し 、陰 部から も雫 が滴り落 ちる。この 雫は土の 内部を 湿ら せ地上の 植 物 を 育 ん で い る 。更 に フ リ ー ダ の 左 手 は 2 本 描 か れ て お り 、一 方 の 左 手 に は 心 臓 の 形 を し た パ レ ッ ト が 握 ら れ て い る 。 フ リ ー ダ は 1932 年 以 降 こ の よ う な 心 臓 を 模 し た パ レ ッ ト を 度 々 描 く 。心 臓 は 生 命 の 源 と な る 器 官 で あ り メ ソ ア メ リ カ の 供 犠 の 思 想 に お い て 重 要 な 価 値 を 持 つ と 考 え ら れ て い た こ と か ら 、も う 1 つ の 左 手 は 彼 女 に と っ て 描 く と い う 行 為 そ の も の が 神 聖 な 供 犠 の 儀 式 で あ る こ と を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。ま た 鑑 賞 者 か ら み て 画 面 の 左 側 に は 細 胞 の 形 成 か ら 始 ま る 胎 児 の 成 長 過 程 が 示 さ れ 、そ の 下 に 大 き く 成 長 し た 胎 児 が 描 か れ て い る 。こ の 成 長 し た 胎 児 は 中 央 に 置 か れ た フ リ ー ダ の 子 宮 内 の 胎 児 と 繫 が っ て お り 、フ リ ー ダ に 宿 っ た 胎 児 の 成 長 過 程 を 示 し て い る こ と が わ か る 。 以 上 の こ と か ら フ リ ー ダ は 作 品 の 中 に 流 産 を 経 験 し た フ リ ー ダ を 表 し 、ま た 同 時 に 死 が 再 び 別 の 生 命 へ と 導 かれる姿を描くことで自身の肉体の痛みから解放されると考えていたことがあげられる。.
(3) ※ ホームページ等で公表します。 (様式2-2) 立教SFR-院生-報告. 研究成果の概要 つ づ き ま た 、 1 9 3 7 年 に 描 か れ た ≪ 乳 母 と 私 ≫ に お け る 乳 房 に は そ の 内 部 に流れる乳腺が描かれている。房の内部には多数の乳管と小葉によってつくられる流動 線が延びる。この流動を含む乳房は人間身体の内部にある植物的な生を明らかにするも のである。また、他から与えられる乳房を描いた場面からは、メソアメリカに伝わる死 に関する信仰を当てはめることが出来る。この絵画から想起されるのは、死んだ乳飲み 子が向かう死者の世界の1つとされる「乳母の樹の場所」である。乳母の樹は乳房を果 実として実らせ死んだ乳飲み子はその果実から滴り落ちる乳を飲む。この赤ん坊たちだ けが唯一、この世界に再び戻ってくることのできる死者であり、再び母親の腹に宿る時 を待っている。このようにして、乳母の樹は植物の姿をとりながらも死を経験した生命 に再び大きな恵を与え、この世へ戻すことのできる創造の母なる存在である。フリーダ もまた≪乳母と私≫において植物的な生を内包した母としての<フリーダ>を表し、同 時に死と共にありながらも再び産まれ出ようとする乳飲み子として<フリーダ>を描 く 。こ の こ と か ら 、こ の 作 品 は 死 と 誕 生 の 場 面 を 同 時 に 描 い て い る こ と が 明 ら か に な る 。 こ の よ う に し て 、フ リ ー ダ は 植 物 的 な 生 に 導 か れ る 生 命 の 循 環 を 抱 擁 す る 母 - 子 の 姿 に 表 し て い る と 考 え ら れ る 。フ リ ー ダ に よ る 母 - 子 の 絵 画 に は フ リ ー ダ を 育 ん だ 母 の 記 憶 を 遡 る事で生命の母が表れ、その乳液によって育まれる乳児は大地に生まれでた全ての人間 の始まりの姿であることが示されている。 3. 生 命 の 抱 擁 に よ る 山 の 形 成 1 9 4 2 年 に 描 か れ た ≪ 愛 は 抱 擁 す る 、 宇 宙 、 大 地 ( メ キ シ コ )、 デ ィ エ ゴ 、 私 、 セ ニ ョ ー ル・ソ ロ ツ ル を ≫ は 抱 擁 す る 母 - 子 の 姿 が や が て 生 命 の 循 環 を 表 す 山 = ピ ラ ミ ッ ド の 姿 へ と変化した作品である。作品の中心に描かれているのは<赤子の姿をしたディエゴを抱 くフリーダ>と彼等を抱く<植物的なフリーダ>そして、それら<全てを包み込むフリ ーダ>という抱擁の連鎖である。作品に表れるフリーダ=母による抱擁の連鎖には、太 古から続く大地という過去、テワナ衣装を着るフリーダという現在、ディエゴの額に描 かれた第三の目の見据える未来という時空間が共存している。これらのモチーフは円錐 形に配置され、その姿はメソアメリカ思想の創造において重要な山=ピラミッドを連想 させる。時空間の形成を古代メキシコ人は山をモチーフにした建造物であるピラミッド によって表しており、ククルカンの神殿のような暦の周期が完了した事を祝う場所とし ての役割を持ったピラミッドは「周期ごとに、既存のピラミッドを壊さずに、もう一回 り 大 き な ピ ラ ミ ッ ド を 古 い ピ ラ ミ ッ ド を 包 む よ う に 建 設 し 」て い た (加 藤 薫『 デ ィ エ ゴ ・ リ ベ ラ の 生 涯 と 壁 画 』 岩 波 書 店 、 2011 年 、 523 頁 )。 こ の よ う に し て 、 周 期 ご と に 建 設 さ れるピラミッドは常に過ぎ行く時代を幾重にも内包している。このことと同様に、フリ ー ダ の 絵 画 に 表 れ る 母 −子 、 生 −死 と い う 生 命 の 循 環 も ま た 、 線 的 に 連 な る も の で は な く 内包によって常にある層に含まれ、含んでいる。フリーダによって植物的な抱擁の連鎖 はやがて集合体である山の姿へと導かれていく。フリーダの絵画は個人の痛みを描く事 から始まる。この個人の痛みは則ち、それだけで人間の痛みであり、人間は母なる存在 の内に常に含められている。彼女の絵画に表れているのは常に何かに内包されながら自 らも創造に関わる生命の循環である。また、本研究で示されたフリーダによる生命の循 環 に つ い て の 思 想 は 、 1945 年 に 描 か れ た ≪ モ ー ゼ ≫ に お け る 死 と 誕 生 の 場 面 に お い て も 同様に表されていることを明らかにした。 結論 フリーダが描く自身の身体は植物へと擬態しているが、それは身体から伸びる根を描 いたものに留まらず乳房の内にある乳腺、乳管と小葉に至るまで詳細に描く事で人間身 体を形成している植物性を露にする。フリーダが作品に描く自身の身体は植物的な生と の繫がりを強く表し、この植物的な繫がりが生命の循環を示唆するものである。また、 彼女が自画像を描く理由は生命の循環を提示する事でフリーダという一生命を神格化 し、死と隣り合わせにあった彼女の肉体を永遠のものとするという行為にある。この、 フレーム内に表されたフリーダは世界の中心である世界樹の内部へと向かうための道と なる。それは、絵の中の世界と現実世界とを葉脈を介して地続きにする植物的な思想で あった。この互いに繋ぎあう世界が、フリーダの主張する現実である。 ※この(様式2)に記入の成果の公表を見合わせる必要がある場合は、その理由及び差し控え期間等を 記入した調書(A4縦型横書き1枚・自由様式)を添付すること。.
(4) ※ ホームページ等で公表します。 (様式3) 立教SFR-院生-報告. 研究発表 (研究によって得られた研究経過・成果を発表した①~④について、該当するものを記入してください。該当するものが多い 場合は主要なものを抜粋してください。 ) ①雑誌論文(著者名、論文標題、雑誌名、巻号、発行年、ページ) ②図書(著者名、出版社、書名、発行年、総ページ数) ③シンポジウム・公開講演会等の開催(会名、開催日、開催場所) ④その他(学会発表、研究報告書の印刷等). ① 小 松 い つ か 、「 フ リ ー ダ ・ カ ー ロ - 人 間 身 体 か ら 植 物 へ の 擬 態 − 生 命 の 循 環 — 」、『 立 教 映 像 身 体 学 』、 第 3 号 、 2 0 1 5 年 、 2 8 - 5 1 頁 。.
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