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博士(医学)伊藤 靖 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)伊藤    靖 学位論文題名

       Lipoprotein Analysis in Transgenic Mice Expressing      Human Apolipoprotein (Apo) A ‑ I and Apo c 皿   : Use of Micromethods in Analysis of Lipoprotein System in Mice

( ヒ ト ア ポ リ ポタ ン パ ク A ― I 及 び

cm 発 現 ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク マ ウス に お け る り ポ タ ン パク の解析 ) 一微量検体を用いてのマウスリポタンパクの評価―

学位論文内容の要旨

I.緒言

  アポリポタ ンパクA―I(アポA―I)は、High density lipoproteinコレステロール(HDL―C)を血中で 搬送 す るア ポタ ン パク の約70:gを 占め 、そ の血中濃度は、HDL―Cの血中渡度と良 く相関することが 知 られ て いる 。  一 方、 アポ リ ポタ ンパ クcm(アポcm)は、血中 の卜リグセライド の大部分を搬送す る very low density llpoproteinくvLDL)のアポタンパ クの約50Xを占め、高トリグ リセライド血症に お いて は 、そ の血 中 濃度 の上 昇 が報 告さ れて いる。  アポタンパ クの産生率が高い 場合、あるいは血 中 から の 消退 率が 低 い場 合に そ の血 中濃 度の 上昇をきたすと考え られるが、産生率 の増加が高リポタ ン パク 血 症の 原因 と なり うる か 否か は不 明で あり、それをヒ卜で 直接研究すること は困難である。  そ こで こ れら をoverexpressす るト ラ ンス ジェ ニ ック マウ ス を作 成し、血中リポタ ンパクに対する影 響 を検 討 する こと に した 。  こ れま でマ ウ スに おけ る りポ タン パ ク実 験法 に つい ての 報告は少ない た め、 従 来ヒ 卜で 使 用さ れて き た実 験法 を マウ スに 応 用し た場 合 の問 題点 お よび 有用 性も併せて検 討 することとし た。

II.方法

  上弖 ン ス2壬 三2ク マウ ス  ア ポA−I発 現 卜ラ ンス ジ ェニ ック マウスは、5 の塩基 配列を5.5kb、 3 のそ れを3.8kb含 む全長l1.5kbのヒト アポAーI遺伝子を マウス授精卵に注 入作成した。  アポcm発 現トラン スジェニックマウ スは、5 の塩基配列を2.5kb、3 のそれを1.lkb含む全長6.7kbのヒ卜アポ C皿遺伝子を用い て作成した。

  ア ポAーI萱 圭 埜Z畫g璽Q金 離 埜 型  超 遠 心 法 に よ ル ア ポHDLお よ び ァ ポVLDLを 分 離 し 、 gelfiltration column(Suprose 12)並び にIon―exchange column(MonoQ) を 用い 分離 精 製し た。

  亘史 ア ポタ ンパ クcD迎 塵  ヒ 卜ア ポA−Iの測 定に は 、ヤ ギ抗 ヒトアボA―I抗体を用いたELISA.マ ウスアポA−Iの測定には、 サル抗マウスアポA―I抗体を用いたelectroimmunoassay、ヒ卜アポC凪の測 定 には 、 ヤギ 抗ヒ ト アポcm抗 体 を用 いたelectroimmunoassay、 さ らに マウ ス アポBの測定には 、家 兎 抗マ ウ スア ポB抗 体を 用 いたelectroimmunoassayを 使用 し た。  ヒ ト アポA―I発 現卜ランス ジェ ニックマ ウスにおけるアポAーIの総量(マウ スおよびヒ卜アポA―Iの累計)は血漿のSDS−PAGEパターン をレーザ ーデンシ卜メータ ーで走査し得られ た曲線下面積より算 出した。

  塑 盤 空2Z!2金 画Q測 定  リ ボ タ ン パ ク 電 気 泳 動 、Air Fugeを 用 い た 超 遠 心 法 お よ び dextran sulfate/Mg2十沈澱法によっ た。

  HDL金 壬 量 Q圃 産   Native gradient gel electrophoresis(GGE)を 用 い た 。   In vivo turnover study  ヒ 卜ア ポA−Iおよ びマ ウ スア ポA−Iをそれぞ れ1251および1311で 標識 し 、 頚 静 脈 よ り 注 入 後 、 眼 窩 よ り 経 時 的 に 採 血 し 、 血 中 よ り の 消 退 曲 線 を 得 た 。

(2)

    m.成績

1.ヒ卜アポA―I発現卜ランスジェ ニックマウスにお ける検討

  ヒトア ポA−Iをoverexpressしてい るマウスでは、血清アポA−I値(マウスおよびヒトアポAーIの累計)

が381土18mg/dlと正常のマウ スの153土7mg/dlに比較して 明かな増加を認め た(平均士SEM;各々n 6. p 0.0001)。  こ れに伴い、HDLコレステロー ル値(Air Fugeによる超遠心 分離により測定) も、64X増 加 した(90土3vs. 55土5mg/dl,p O.0001)。  さら にHDLの詳 細を検討するため に超遠心法により得 ら れた りポ タ ンパ ク分 画 の電 気泳 動(GGE)を行 った 。  そ の結 果トランスジェニ ックマウスにおける HDLの 増 加は 、そ の 多く が分 子 量232kd近傍の ヒトHDLaに準じた 、通常のマウスで は殆ど存在しない、

HDLの増加によるこ とが明らかとなっ た。

  これ が、 マ ウス のりポタンパクsyst emにお けるヒトアポA−Iの非生理的な体内 動態によるものか否 か を検 討す る ため 、GGE後のHDLに つ いて、ヒ トアポA―I抗体を 用いて免疫プ口ッ ティングを行った。

こ の結 果、 ヒ トア ポAーIは分 子量 の 大きなHDLにも分 布し、一部のHDLのみに局在 することのないこと が 示さ れた 。  さ らに ヒ トア ポA−Iとマウス アポA―Iの血中動 態の違いを検討す るためにヒ卜および マ ウス アポA−Iタ ンパ ク のin vivo turnover試験を行った。  その結果、血中か らの消退率において 両者に差 は認められなかった 。

  次 に 、 こ の ト ラ ン ス ジ ェ ニ ック マ ウス を用 い て、 脂肪 食 負荷 試験 を 行っ た。  脂肪 工ネ ル ギー 比 を約10%よ り40Xに変 え たと ころ 、HDL−Cに つ いて は65%の上 昇(103土7より170土16mg/dl,n 5, pく0.01; dextran−sulfate/mg2゛沈 澱法)、ヒトアポA―Iについては41%の上昇(244土7より345土16mg/

dl,p<0.01)さらにマウスア ポA←Iについても48%の上昇 (33土8より49土6mg//dl,p<0.Ol)を認めた。

  高脂 肪食 後 の血 漿のHDL―Cの測定 では、Air Fugeを 用いた超遠心法とdextran sulfate/Mg2゛沈澱法 と の間 には 大 きな 差が認められた(127士6 vs. 170土16mg/dl〕 。  このためd<l. 063g/lの 分画をAir Fugeに より 分 離し 電気 泳 動(GGE)を 行っ たところ、脂 肪食負荷後の血漿で はこの分画にHDLを認め、超 遠 心法 によ る 低値 は、 脂 肪負 荷後 に 生じ た軽 比 重のHDLがLDLの 分画 に 混入 する た めと考えられた。

2. ヒ トア ポcm発 現ト ラン ス ジェ ニッ ク マウ スにおける検討

  ヒ 卜 ア ポcmの 遺 伝 子 を 約100コ ピー もつ 卜 ラン スジ ェ ニッ ケマ ウ スで は、 ヒ トア ポcniの濃 度 が 54土llmg/dlと 高 値を 示し こ れを もた な い対 照群 に 比べ 、血 中トリグリセラ イド値も明らかに 増加し た( 平均 士SEM; 959士217,n 6vs.49土6mg/dl,n 7)。  ヒ卜アポcmの遺 伝子を1〜2コピー しかも たな い卜 ラ ンス ジェ ニ ック マウ ス にお いては、血中ヒ卜ア ポcm値は3.1士0.3mg/dl(n 7)と健 常人に おけ る血 中 濃度(7.8土0.7mg/dl,n 8)の半量以下の値で あった。  ー方、 血中トリグリセラ イド値 は、マウス対照群 に比較してわずかな 増加を示した(67土8vs.49土6mg/dl,各々11 7,p O.1)。  こ れら のマ ウ スに おい て 、VLDLの 産 生を 増加 さ せる 生理 刺 激であるlOX蔗糖経 ロ負荷を行ったと ころ、

血中 トリ グ リセ ライド値は、有 意差はないものの 同様の増加を示し た(141土24 vs. 99土25mg/dl)。

さら に、 経 口脂 肪の ク リア ラン ス を検 討するために400 p1のオリープオイル を、胃内に注入し て卜リ グリ セラ イ ド値 を経 時 的に 測定 し た。  曲線下面積は、卜 ランスジェニック マウスにおいて有 意な高 値 を 示 し た (34,935土3,676 vs. 22,224士2,510mg/dlxmin,p O.01) 。

IV.考案並 びに結論

  これ らの 結 果か らア ポA−Iおよ び ァポc‑mのoverexpressionに より 高HDL血症 お よび高トリ グリセ ラ イド 血症 が 起こ り得 る こと が初 め てin vivoで示 さ れた 。  このことはヒ 卜においても両タ ンパク のoversynthesisが この よう なphenotypeに関 与 する 可能 性 を示 唆す る 結果 であ る 。  測定法 につい て は一 般に マ ウス 一個 体 から 得ら れ る血 清量が少ないこと が問題とされる。  しかし、本試験 で用い た 方法 によ れ ぱ、 血清 を プー ルす る こと なしに、主要な血 中アポタンパクお よびりポタンパク の測定 が 可能 であ る こと が示された。  さらに、in vivo tu工nover試験や脂肪負荷 試験等は、トラン スジェ ニ ック マウ ス が血 中リ ポ タン パク の 静的 な測定のみならず 、代謝研究にも応 用されうる可能性 を示し た 。

  現在 、種 々 のア ポタ ン パク およ び ァポ タンパク代謝酵素 さらにアポタンパ クレセプターの塩 基配列 が 明ら かに さ れて おり 、 これ らを 用 い新 しい卜ランスジェ ニックマウスを作 成することが理論 上可能 で ある 。  従 来、 大動 物 での み行 わ れて いた実験法を、卜 ランスジェニック マウスに応用する 事によ り 、今 後新 た な研 究が 展 開さ れる と 考え られ る 。

170

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 教授

学 位 論 文 題 : 名

Lipoprotein Analysis in Transgenic Mice Expressing Human Apolipoprotein (Apo)A―I and Apo CIII:Use of Micromethods in Analysis of Lipoprotein System in Mice

(ヒ ト ア ポ リ ポ タン パ クA―I及 びCIII発現卜 ランス ジェニ ックマ ウス におけ るりポ タンパ ク の解 析 ― 微 量 検 体を 用 い て の マウ ス リ ポ タ ンパ ク の 評 価 ―)

I研 究 目 的

  ア ポリ ポタン パクA―I(ア ポAーI) は、HDLコ レステ ロール を血中 で搬送 するタンパクの約70Xを 占 め 、 そ の 血 中 濃 度 は 、HDLコ レ ス テ ロ ー ル と 良 く 相 関 す るこ と が 知 ら れて い る 。  一 方 、 ア ポ リ ポ タ ンパ クCIII( アポCIII)は 、血 中のト リグセ ライド の大部 分を 搬送す るVLDLタ ンパク の 約50%を 占 め 、 高 ト リ グ リ セ ラ イ ド 血 症 に お い て は 、 血 中濃 度 の 上 昇 が報 告 さ れ て いる 。 し か し ア ポ タン パ ク の 産 生率 の 上 昇 が 、高 リ ポ タ ン パ ク血 症 の 原 因 とな りうる か否か は不明 で あ り 、 こ れ をヒ ト で 直 接 研究 す る こ と は困 難 で あ る 。  そ こ で 、こ れ らを 多量に 産生す るト ラ ン ス ジ ェ ニ ック マ ウ ス を 作成 し 、 血 中 リポ タ ン パ ク に 対す る 影 響 を 検討 した。  さらに 従来 、 ヒ 卜 で 使 用 され て き た 実 験法 を マ ウ ス に応 用 し た 場 合 の有 用 性 も 併 せて 検討す ること にした 。

H方 法

1) ト ラ ン ス ジェ ニ ッ ク マ ウス :  ア ポA―I発 現 トラ ン ス ジ ェ ニッ ク マ ウ ス は、 全長11.5kbの   ヒ ト ア ポAーI遺 伝 子 を マ ウ ス 授 精 卵 に 注 入し て 作 成 し 、ア ポCIII発 現 ト ラ ン スジ ェ ニ ッ ク   マウス は、 全長6.7kbのヒ トアポCIII遺伝 子を用 いて作 成した 。

2) .7ポA‑Iお よ び ァ ポCIIIの 金 離 精 製 :gelfiltration column(Suprose 12)並 び にIon―     exchange coltunn(MonoQ) を用い て分離 精製し た。

3〕 血 主Z丞 空ZZ!2Q瀏 定 : ヒ ト ア ポA−Iの 測 定 に はELISAを 使 用 し た 。 マ ウ ス ア ポA−I,     ヒ トア ポCIII、 マ ウ ス ア ポBの 測 定 に は、electroimntunoassayを使 用した 。  ヒ トアポA‑I   発 現 ト ラ ンス ジェニ ックマ ウスに おける アポA―Iの総 量(マ ウス および ヒトア ポA‑Iの累計 )は   血 漿 のSDS−PAGEパ タ ー ン をレ ー ザ ー デ ンシ ト メ ー タ ーで 走査し 得られ た曲線 下面 積より 算出     した 。

4) リ ポ タZZ!2金 画 堕 型 産 : リ ポ タ ン パ ク 電 気 泳 動 、Air Fugeを 用 い た 超 遠 心 法 お よ び     dextran sulfate/Mg2十 沈澱 法によ った。

5) HDL金 壬 量Q瀏 定 :  Native gradlentgeleleCtrophoresis(GGE) を 用 い た 。 6)Invivo塑£ 旦Q塑竺≦ !塑立 :  ヒ トアポAー1およびマウスアポAーIをそれぞれ1251および1811で   標 識 し 、 頚 静 脈 よ り 注 入 後 、 眼 窩 よ り 経 時 的 に 採 血 し て 血 中 よ り の 消 退 曲 線 を 得 た 。

   

   

(4)

m 結 果

1 )ヒヒ7A‑I 発現ヒ乏と墨ジェ三22 翌空丞(‑ お泣釜桧言立

   ヒトアポA ―I をoverexpress しているマウスでは、血清アポA −I 値(マウスおよぴヒトアポA ―I    の累計)が381 土18mg/dl (平均士SEM) と正常のマウスの153 土7mg/dl に比較して明らかな増加を    認めた(p=0 .0001 )。これに伴い、HDL コレステロール値も、55 土5mg/dl から90 土3mg/dl へと    増加した(p=0 .0001 )。またトランスジェニックマウスにおけるHDL の増加は、その多くが分子    量232kd 近傍のヒトHDL8 に準じたHDL の増加によることが明らかとなった。更にヒトアポA ―I と    マウスアポA ―I のin vivo turnover 試験では、血中からの消退率において両者に差は認めら    れなかった。

   次に、このトランスジェニックマウスを用いて、脂肪食負荷試験を行った。脂肪エネルギー    比を約10% より40;C に変えたところ、HDL コレステロール及びヒトアポA ーI 、マウスアポA 一I のい    ずれについても上昇を認めた。

2 )ヒヒZ ij<clll 発現ヒ量2 スジェ三22 里空スにおt 墨桧i 童

   ヒ トアポCIII の遺伝子を約100 コピーもっトランスジェニックマウスでは、ヒトアポcm の濃度    が高値を示し、これをもたない対照群に比較して、血中トリグリセライド値も49 土6mg/dl から   959 土217mg/dl へと明らかに増加した。   ヒトアポc 皿の遺伝子を1 〜2 コピーしかもたないトラ    ンスジェニックマウスにおいては、血中ヒトアポCIII 値は健常人における血中濃度の半量以下    の値であったが血中トリグリセライド値は67 土8mg/dl と、マウス対照群の49 土6mg/dl に比較し    てわずかな増加を示した(p=0 .1 )。

IV 考 案およ び結語

1 .これらの結果からアポA −I およびアポC −III のoverexpression により高HDL 血症および高トリグ      リセライド血症の起こり得ることが初めてin vivo で明らかとなった。   このことはヒトにお    いても何らかの機序で両タンパクの産生が増加した場合、このような高脂血症の生じる可能性    が示唆される結果と考えられた。

2 .測定法については一般にマウス一個体から得られる血清量が少ないことが問題とされるが、

   本研 究で確立された方法によれば、血清をプールすることなしに主要な血中アポタンパク    およ びりボタンパクの測定が可能であり、トランスジェニックマウスをin vivo turnover    試験や脂肪負荷試験等の代謝研究に応用しうることが示された。

   以上本研究は、高脂血症の発生機序の解明に寄与するものであり、博士(医学)の学位論文とし て妥当なものと判断される。

‑ 172

参照

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