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博士(工学)伊藤 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)伊藤 学位論文題名

亜 硫 酸 ガ ス 含 有 湿 潤 空 気 中 に お ける 銅 の初 期腐 食 の定 量 的解 析

学位論文内容の要旨

  銅ならびに銅合金は、建築材料および電子機器材料として古くからいろいろな用途で 用いられており、その腐食も多くの研究者によって調べられてきている。近年の電子機 器およぴ電気機器に用いられる電子部品などの小型化が進むにっれ、その中に使われる 材料のわずかな腐食が性能の劣化および故障の原因となってきている。そのような僅か な腐食を防ぐためには、そのメカニズムを明らかにすることが重要である。これまでの 研究は比較的腐食量が多い場合に関するものが多く、微量の腐食が研究の対象にされ始 めたのは十年ほど前からである。しかし、微量な腐食生成物を同定し、その生成量を定 量的に求めた報告は非常に少ない。そこで、本論文の目的は亜硫酸ガス含有湿潤空気に おける銅の初期腐食で生成する腐食生成物を同定し、その生成量を定量的に求めること である。

  本研究では、銅の微量腐食を調べるために、次のニつの手法を適用した:高感度反射 吸収赤 外分光法(IR‑RAS)ならびに 水晶微量 天秤法(QCM)。二次元解析赤外分光法 (2D‑IR)およびIR‑RASとQCMの併用 により、IR‑RASスペクトル から腐食 生成物の 同定および生成量の決定を可能にする手法を開発した。その手法を用いて、材料側およ び環境側の両方に注目し、それぞれの因子について初期腐食に与える影響を明らかにし た。

  本論文は以上の内容を含む全7章から構成されている。以下に本論文の内容をまとめ と以下のようになる。

  第1章では、気相腐食の概論、銅の気相腐食に関するこれまでの研究、これまでの問 題点を示し、本論文の目的および構成について述べた。

  第2章では、IR‑RAS.QCMその場同時測定装置の構築および気相腐食への応用の可 能性について調ベ以下の知見を得た。

・IR‑RAS.QCMその場同時測定が充分nmオーダー厚さの腐食生成物に適用可能であ る こと を、湿潤 窒素中で 金表面に吸 着する水 の挙動を 調べるこ とで確か めた。

・亜硫酸ガス含有湿潤空気中における銅の初期腐食挙動の測定への応用の可能性を llppm S02、80%RHの空気環境で調べた結果、湿潤窒素ガス中同様、亜硫酸ガス含 有空気中でも装置は正常に機能し、腐食挙動の測定に使用できることを確かめた。

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  第3章 お よ び 第4章 では 、腐 食生 成物 を測 定 したIR‑RASス ペク トル の解 析に おけ る 問題点を解決 し、以下の知見を得た。

・IR‑RASスペ クトルに現れるピークシフト量を、腐食生成物として考 えられる硫酸塩、

亜硫酸塩につ いて光学物理モデル計算を行った。赤外反射吸収ピーク が通常の透過吸収 ピークと比較 して高波数側にシフトし、誤った解析を行わないために はこのピークシフ ト量を考慮す ることが重要である。

腐 食生 成物 のバ ンド が重 な り合 って 現れ るス ペク トル に対 して2D‑IRを適 用して、吸 収バンドの帰 属ならびに成長性を明らかにした。その結果をもとにピ ーク分離を行い、

亜 硫酸 ガス 含有 湿潤 空気 中 (1〜20ppm S02,60〜90%RH)で 銅表 面に 形成 する腐食生 成 物 をChevreul塩(CuS03CU2S03・2H20)お よ び 硫 酸 銅5水 和 物 (CuS04.5H20)と 同定した。

・IR‑RASとQCMの 結 果 を 比 較 し 、IR‑RASス ペ ク ト ルに 現れ るバ ンド 強度 と質 量変 化 の 関 係 か ら 、 バ ン ド 強 度 の み か らCuS03Cu2S03・2H20とCuS04.5H20そ れ ぞ れの 生 成量および水 膜を形成している水の量の決定を可能にした。

  第5章 およ び第6章 では 、 第4章ま でで 確立 した 測定 手 法お よび 解析 手法 を用いて、

亜 硫 酸 ガ ス 含 有 湿 潤 空気 中に おけ る銅 の初 期 腐食 につ いて 調べ 以下 の知 見を 得た 。

・初期段階の 腐食速度は腐食試験開始時に表面に存在する酸化物の量 および性質に大き く 影響 され る。 試片 準備 段 階で 表面 に形 成さ れる酸 化物は2種類あるがいずれも1価の 銅 の酸 化物 であ る。1っは長時間の大気との接触によ り形成した化学量論組成の酸化物 (Cu20)、もう 一方は短時間の大気暴露あるいは短時間の水との接触で 形成される非化学 量 論組 成の 酸化 物(Cu2‑y0)であ る。 いず れの 酸化物 も亜硫酸塩、硫酸塩の形成を遅ら せるが、特に 前者はその効果が著しい。

・腐食生成物 である亜硫酸塩および硫酸塩は主に局部アノードサイト からの溶解で生成 した銅イオン と、気相中の亜硫酸ガスが水膜中に溶解することで生成 した酸性亜硫酸イ オンあるいは 酸性硫酸イオンとの反応により形成する。

・相対湿度の 増加により腐食速度が増加するのは、反応場である表面の水膜が厚くなり、

水膜内でのイ オンの移動が容易になるためである。

・亜硫酸ガス 濃度が高くなると腐食速度が増加するのは、亜硫酸ガス の水膜内への溶解 量 の 増 加 に よ り 表 面 水膜 のpHが低 下す るこ と なら びに 酸性 亜硫 酸イ オン 濃度 が増 加 するためであ る。

  第7章は本論文で得られた結果の総括で ある。

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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主 査

副 査 副 査 副 査 副 査

教 授 教 授 教 授 教 授 助 教 授

大 塚 俊 大 澤 雅 尾 瀬 眞 高 橋 英 佐 々 木

学 位 論 文 題 名

俊(触媒化 学研究センター)

浩 明 健

亜硫酸ガス含有湿潤空気中における銅の初期腐食の定量的解析

  銅 な ら び に 銅 合 金 は 、 建 築 材 料 お よ び 電子 機器 材料 と して 古く から い ろい ろな 用途 で用 い ら れ て お り 、 そ の 腐 食 も 多 く の 研 究 者 によ って 調べ ら れて きて いる 。 近年 の電 子機 器お よ び 電 気 機 器 に 用 い ら れ る 電 子 部 品 な ど の小 型化 が進 む にっ れ、 その 中 に使 われ る材 料の わ ず か な 腐 食 が 性 能 の 劣 化 お よ び 故 障 の 原因 とな って き てい る。 その よ うな 僅か な腐 食を 防 ぐ た め に は 、 そ の メ カ ニ ズ ム を 明 ら か にす るこ とが 重 要で ある 。こ れ まで の銅 腐食 に関 す る 研 究 は 比 較 的 腐 食 量 が 多 い 場 合 に 関 する もの が多 く 、微 量の 腐食 が 研究 の対 象に され 始 め た の は 十 年 ほ ど 前 か ら で あ る 。 し か し、 微量 な腐 食 生成 物を 同定 し 、そ の生 成量 を定 量 的 に 求 め た 報 告 は 非 常 に 少 な ぃ 。 そ こ で、 本論 文の 目 的は 亜硫 酸ガ ス 含有 湿潤 空気 にお け る 銅 の 初 期 腐 食 で 生 成 す る 腐 食 生 成 物 を同 定し 、そ の 生成 量を 定量 的 に求 める こと であ る 。

  本 研 究 で は 、 銅 の 微 量 腐 食 を 調 べ る た めに 、次 のニ つ の手 法を 適用 し てい る: 高感 度反 射 吸 収 赤 外 分 光 法 くIR‑RAS)な ら び に 水 晶 微 量 天 秤 法(QcrvD。 二 次 元 解 析 赤 外 分 光 法 (2D‑IR)お よ びIR‑RASとQCMの 併 用 に よ り 、IR‑RASス ペ ク 卜 ル か ら 腐 食 生 成 物 の 同 定 お よ び 生 成 量 の 決 定 を 可 能 に す る 手 法 を 開発 した 。そ の 手法 を用 いて 、 材料 側お よび 環境 側 の 両 方 に 注 目 し 、 そ れ ぞ れ の 因 子 に つ いて 初期 腐食 に 与え る影 響を 明 らか にし てい る。

  本 論 文 は 以 上 の 内 容 を 含 む 全7章 か ら 構 成 さ れ て い る 。

  第1章 で は 、 気 相 腐 食 の 概 論 、 銅 の 気 相 腐 食 に 関 す る こ れ ま で の研 究 、こ れま での 問題 点 を 示 し 、 本 論 文 の 目 的 お よ び 構 成 に つ い て 述 べ て い る 。

  第2章 で は 、IR‑RAS.QCMそ の場 同時 測定 装 置の 構築 およ び気 相 腐食/丶 丶の 応用 の可 能性 に つ い て 調 べ 以 下 の 知 見 を 得 て い る 。

・IR‑RAS.QCMそ の 場 同 時 測 定 が 充 分nmオ ー ダ ー 厚 さ の 腐 食 生 成 物 に 適 用 可 能 で あ る 。

・ 亜 硫 酸 ガ ス 含 有 湿 潤 空 気 中 に お け る 銅 の 初 期 腐 食 挙 動 の 測 定 への 応用 の可 能性 をllppm

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S02、80%RHの空気環境で調べた結果、湿潤窒素ガス中同様、亜硫酸ガス含有空気中でも 装置は正常に機能し、腐食挙動の測定に使用できる。

  第3章 および第4章 では、腐 食生成 物を測定 したIR‑RASス ペク卜ル の解析 における 問 題点を解決し、以下の知見を得ている。

・IR‑RASスペク卜ルに現れるピークシフト量を、腐食生成物として考えられる硫酸塩、亜 硫酸塩について光学物理モデル計算を行った。赤外反射吸収ピークが通常の透過吸収ピー クと比較して高波数側にシフ卜し、誤った解析を行わないためにはニのピークシフト量を 考慮することが重要であるとの結論を示している。

・腐食生成物のバンドが重なり合って現れるスペクトルに対して2D‑IRを適用して、吸収バ ンドの帰属ならびに成長性を明らかにした。その結果をもとにピーク分離を行い、亜硫酸 ガス 含 有 湿潤 空 気 中(1〜20ppm S02 60〜90%RH)で 銅 表面 に形成 する腐 食生成物 が Chevreul塩(CuS03Cu2S03・2H20)お よび 硫 酸 銅5水 和 物(CuS04.5H20)から な る こと を明らかにしている。

・IR‑RASとQCMの結 果 を 比較 し 、CuS03Cu2S03・2H20とCuS04.5H20そ れ ぞ れの 生 成 量 お よ び 水 膜 を 形 成 し て い る 水 の 量 を 定 量 的 に 求 め る 手 法 を 開 発 し て い る 。   第5章 および 第6章 では、第4章 までで確 立した測 定手法 および解析手法を用いて、亜 硫酸 ガス 含有湿潤 空気中 における 銅の初 期腐食に ついて 調べ以下 の知見を 得てい る。

・初期段階の腐食速度は腐食試験開始時に表面に存在する酸化物(Cu20)の量および性質に 大きく影響される。

・腐食生成物である亜硫酸塩および硫酸塩は主に局部アノードサイトからの溶解で生成し た銅イオンと、気相中の亜硫酸ガスが水膜中に溶解することで生成した酸性亜硫酸イオン あるいは酸性硫酸イオンとの反応により形成する。

・相対湿度の増加により腐食速度が増加するのは、反応場である表面の水膜が厚くなり、水 膜内でのイオンの移動が容易になるためである。

・亜硫酸ガス濃度が高くなると腐食速度が増加するのは、亜硫酸ガスの水膜内ーの溶解量の 増加によ り表面 水膜のpHが 低下す ることならびに酸性亜硫酸イオン濃度が増加するため である。

  第7章は本論文で得られた結果の総括である。

  これを要するに、著者は金属表面/大気界面で進行する微量な腐食反応を解析するため にIR‑RASなら びにQCMを併用 した新 しい手法 を開発す るとともに、その手法により亜硫 酸ガス含有湿潤空気中で起こる銅の腐食反応と詳細なメカニズムを明らかにしたものであ り、腐食防食工学の分野に貢献するところ大である。

  よって 著者は、 北海道 大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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