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博士(医学)伊東 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)伊東 学位論文題名

A Biomechanical Assessment of Spinal Segmental Instability        Quantitative and Quatitative Evaluations

(脊椎不安定性に関する生体力学的研究 定量的,定性的評価法の検討)

学位論文内容の要旨

1.序  論

  近 年,腰 痛が現 代病と して社 会問 題とな ってい る。腰 痛患者の20〜309,6に脊椎不安定性が認め られ るとい われ ている 。一般 的に脊 椎不 安定性 とは, 脊椎間 の異常 な可 動性と定義される。これ まで ,数多 くの 脊椎不 安定性 に関す る判 定法が 報告さ れた。 しかし ,従 来の判定基準は,脊椎可 動域 の個体 間差 やレベ ル間差 を考慮 して いない ため, あらゆ る個体 に適 用できるものではなかっ た。

  脊 椎不安 定性の 主な原 因には ,損 傷や変 性によ る椎間 板機 能低下 が挙げ られる。すなわち,椎 間板 の変形 状態 を見極 めるこ とによって,脊椎不安定性を評価できる可能性がある。本研究では,

脊椎 動態に 重要 な役割 を担っ ている 椎間 板の形 態とそ の運動 機能と の関 係から,個体間差やレベ ル間 差に影 響さ れない 脊椎不 安定性 の定 量的評 価法に っいて 検討し た。 さらに,腰椎の運動様式 をよ り詳細 に評 価する ため, 脊椎動 態を 定性的 に評価 する手 法を検 討し ,正常腰椎と不安定腰椎 との 変形状 態の 相違を 明かに した。

  腰 椎の支 配的運 動は, 前・後 屈時 の矢状 面内運 動とい われ ている 。しか し,付随する回旋・側 屈 運動 の程度 にっい ては報 告者 間に相 違があ る。そ こで ,本研 究の予 備実験 として ,腰 椎の3次 元 ゴ ニ オ メ ー タ ー(CAー6000 Spine Motion Analyzer)を 用 い て 測 定し た 。 被 験 者に は , 脊 椎 疾患 のない 正常男 性15人(19〜23歳)を 選ん だ。そ の結果 ,前・ 後屈 時の矢 状面運 動は平 均10 8° と 大き く , 回 旋 や側 屈 と い っ た付 随 運 動 は その1725に過ぎ なかっ た。こ のこ とから ,本研 究 で は , 腰 椎 部 の 支 配 的 運 動 で ある 前 ・ 後 屈 時の 矢 状 面 運 動 に焦 点 を 絞 り 検討 を 進 め た 。

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2.レ ントゲ ン側 面機能 撮影に よる椎 間板 計上と 変位測 定

  腰 椎 の矢状 面内の 動態の 測定 には, 側面レ ントゲ ン機能 撮影 を用い た。X線源 とフア ルムの 距 離 は2 m50cm,X線 源 の 電 圧 は110kV, 電 流 は140mAsを 基 準 と し た 。X線 源 の 位 置 は ,L2/ 3椎間 板レベ ルとし た。撮 影体 位1ま ,立 体中間 位,最 大前屈 位,最 大後 屈位と した。得られた画 像 には骨 輪郭の 不明 瞭な部 分があ った。 そこで ,画 像を北 海道大 学医学 部附 属病院の画像処理シ ス テ ム (PACS)に組 み 込 ま れ てい るFCR(Fuji Computer Radiography) を 用 い て コン ピ ュ 一 夕 一画像 処理を 行っ た。

  得 られた 画像 をもと に,椎 間板に 隣接 してい る上部 脊椎下 面前方 端点 と後方 端点および下部脊 椎 上 面 前方 端点と 後方端 点の4点か ら椎間 板矢状 面形 状を近 似した 。各椎 間板 レベル に,椎 間板 下 面 後 方 端点 を 原 点 , 椎 間板 下面 に沿っ て前方 にx軸,そ れに 垂直にy軸 とした 座標系 を定義 し た 。4点の 座標値 をデ ィジタ イザー で測定 し,そ の座 標値を もとに ,椎間 板形 状と変 形量を 算出 し た。測 定誤差 の評 価には ,各椎 間板の 上面と 下面 のナょ す角を測定した4端点の位置座標から計 算 し,そ の角度 変化 の総和 と観察 領域に おける 最上 位椎間 板上面 と最下 位椎 間板下面の角度変化 と の差を 誤差と みな した。 その結 果,前屈時には平均2.4%,後屈時には3.9%の誤差が確認され た 。この 程度の 誤差 は,容 認でき ると考 えた。

3.脊椎 不安定 性の 定量的 評価法

  脊椎 可動域 の異 なる13人 を被験 者に 選択し た。内 訳は, 若齢者群5人(19―24歳,168ー178cm 58―66kg), 高 齢 者 群8人 (51―59歳 ,168―175cm, 60―85kg)で ある。 被験 者全員 に脊椎 奇形 が な いこ とを確 認した 。しか し, 高齢者 群の5人に ,レン トゲン 画像上 ,椎 間板変 性像が 認めら れ た(Kellgren分 類Gradel:6レ ベ ル ,Grade2:3レ ベ ル ,Grade3:1レ ベ ル ) 。  ゛   まず ,正 常椎間 板の形 状と 変形特 性を検 討する ため ,以下 の2項目を 基準に 正常椎 間板レ ベル と 異 常椎 間 板 レ ベ ルの 判 定 を 行 っ た。 す な わ ち ,従 来の不 安定 性の判 定基準 であるNachemson の基 準を上 回り, かつ 画像上 の変成 像が明 かなレ ベル を異常 椎間板 レベル ,そ の他を正常椎間板 レベ ルと判 定した 。そ の結果 ,高齢 者群の 従来の 基準 で異常 と判定 された 部位 の椎問板が異常な 部位 と判定 された 。

  立位 中間位 にお ける正 常椎間 板矢状 面形 状は, 下位椎 間板レ ベルほ ど前 方が高く後方が低いく さび 形形状 を示し た。 また, 最大前 屈時の 正常椎 間板 の変形 量は下 位ほど 大き かった。後屈時に は, このよ うな関 係は 認めな かった 。椎間 板形状 と前 屈時の 変形量 を詳細 に検 討するため,椎間 板形 状評価 係数と 椎間 板変形 率を導 入した 。椎間 板形 状評価 係数は ,椎間 板の くさび形の度合を

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表す指 標であ る。高 齢者群 の変 形量は 若齢者 群の約70%と ,変形 量には 個体間差があるため,各 椎間板 レベル の変形 量の全 腰椎 椎間板 変形量 に対す る割 合であ る椎間 板変形 率を導入した。正常 椎間板 におけ る形状 評価係 数と 椎問板 変形率 を直線 で回帰すると,強い正の相関関係を認めた(r 二ニO. 879)。こ の関係 に個体 間差やレベル間差はなかった。一方,異常椎間板の分布は,正常椎 間板の 分布か ら遠く 離れた 領域 に分布 した。

  異常椎 間板の 正常 椎間板 分布か らの逸 脱度が ,不 安定性 の指標 となる 可能性がある。そこで,

各椎間 板の正 常椎間 板分布 から の逸脱 度を評 価する ため ,各椎 間板の 回帰残 差を正常椎間板の回 帰直線 をもと に算出 した。 正常 椎間板の回帰残差は,.回帰直線を中心に正常正規分布に従った。

そこで ,各椎 間板の 不安定 度を ,各椎 間板の 回帰残 差と 正常椎 間板の 残差の 標準偏差の割合で表 示した 。その 結果, 正常椎 間板 は土1.8びの間にあるのに対し,異常椎間板は十1.8ロ以上と大き な値を 示した 。そし て,不 安定 度に従 い,そ の値は 大き くなっ た。

4.脊椎 不安 定性の 定性的 評価法

  物体 内の 変形状 態を表 す工学 的手法 のー っにひ ずみ分 布があ る。 本研究 では,不安定性の定性 的評 価のた め,各 椎間 板内に 生じる ひずみ 分布 を算出 し,正 常腰椎 と不安 定腰椎の変形状態の相 違 を検 討した 。椎 問板内 のひず みの算 出に は,通 常の有 限要素 法解析 で用 いられ る4節点ア イソ パ ラ メ ト リ ク 形 の 形 状 関 数 と , 大 変 形 解 析 で 用 い ら れ るLagrangeの ひ ず み を 用 い た 。   総て の椎間 板レベ ルが正 常と判 断さ れた8人の 被験者 を正常 腰椎群 とし た。正 常腰椎 群の前 屈 時に おける 各椎間 板内 ひずみ 分布に は,個 体に よらず 一定の 傾向を 認めた 。すなわち,等ひずみ 線の 分布は ,どの レベ ルでも 均一と なり, 圧縮 も引張 もかからない。8y二二ニOの位置は,下位レ ベ ル ほど 後 方 に 移 動 した 。 ま た , せん 断 ひ ず み の分布 では, £xyーOの 位置は ,下位 レベル ほ ど 前方 に移動 した 。しか しなが ら,異 常椎 間板を 有した 不安定 腰椎群5人 のひず み分 布パタ ーン は, 正常と は明か に異 なった 。異常 椎間板 レベ ルのみ ではな く,そ の他の レベルの等ひずみ線の 分 布 状況 も , レ ベ ル 毎に 異 な る 不 均一 な 分 布 と なっ た 。 £y二ニOや とxy=0の位置 も, 正常腰 椎群 で見ら れた規 則性 は認め られな かった 。

5.考  察

  脊柱 変形量 には ,個体 間差や レベル 間差が 存在 するが ,椎間 板の形 態に応じ前屈時の変形量が 各レ ベルに 分散さ れる関 係は ,あら ゆる個 体に共 通し ている 。脊椎 不安定性とは,変性や損傷に よ り , 脊 椎 動 態 と 解 剖 学 的 形 態 の 密 接 な 関 係 が 破 綻 し た 状 態 だ と い う こ と が で き る 。

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6.結  論

  本定量 的評価 法は ,従来 の判定 手法と も矛盾 せず ,不可 能であ った脊 椎不安定性の定量的評価 を可能 にした 。椎間 板内ひ ずみ 分布に よって ,正常 腰椎 の一定 の変形 様式が確認された。不安定 腰椎で は,異 常椎間 板レベ ルだ けでは なく, 周囲の 椎間 板レベ ルの変 形状態も正常とは明かに異 なった 。

学位論文審査の要旨

  この研 究は, 腰痛の 原因 のーっ として 重要な ,脊 椎不安 定性の 新しい 生体力 学的評価法を検討 し たも のであ る。従 来の評 価法 では, 脊椎可 動性の 個体間 差や レベル 間差が 考慮されていなかっ た ため ,適応 に限界 がある だけ でなく ,不安 定の度 合いを 評価 できな い欠点 があった。また,脊 椎 動態 を定性 的に評 価する 手法 も確立 されて いると はいえ なか った。 この研 究の特徴は,脊椎動 態 に大 きな役 割を担 う椎間 板の 変形状 態に焦 点をあ て,個 体間 差やレ ベル間 差に影響されない新 し い脊 椎不安 定性の 定量的 評価 法を検 討した ことで ある。 また ,脊柱 の変形 状態を固体力学の観 点 から 観察し ,椎間 板に生 ずる ひずみ 分布に よって 定性的 に評 価する 手法を 開発したことも,こ の 研究 の独創 的特徴 である 。

  こ の 研 究で は , 予 備 実験 とし て,3次元 ゴニ オメ一 夕ーを 用い, 脊柱腰 椎部 の3次 元動 態を明 か にし た。そ の結果 ,脊柱 腰椎 部の支 配的運 動は, 前後屈 時の 矢状面 内運動 であり,その際の前 額 面内 ,横断 面内の 運動は 無視 できる程小さいことが判明した。その結果を踏まえ,本実験では,

13人の年 齢の異 なる被 験者 の腰椎 側面レ ントゲ ン機 能撮影 を用い て,各 椎間板 レベルの椎間板形 状 と椎 間板変 形量を 立体中 間位 を基準 にして 算出し た。定 量的 評価法 では, 椎間板のくさび形形 状 と 前 屈時変 形量の 関係に 着目し ,統 計学的 手法を 用いて ,各 椎間板 レベル の不安 定度(S値 ) を 定 量 化した 。定性 的評価 法では ,有 限要素 法で用 いられ る4節点ア イソ パラメ トリッ ク形の 形 状 関 数 を 用 い ,大 変 形 解 析 で用 い ら れ るLagrangeの ひ ず み式 に よ っ て ,各椎 間板レ ベルの 変 形 状態 を算出 した。 その結 果, 以下の ことが 明かと なった 。

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清  

  和

田 部

金 阿

授 授

教 教

査 査

主 副

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  l. 腰 椎 下位 レベ ルほ ど,正 常椎間 板の矢 状面形 状は くさび 形形状 となり ,前 屈時の 変形量 が 大きか った 。椎間 板変形 量には 年齢間 差や 椎間板 レベル 間差を 認め たが, 各椎間 板レベ ルの全腰 椎変形 量に 対する 割合で は,年 齢によ る差 を認め なかっ た。論 文中 ,申請 者は, 後屈時 の検討も 行って いた 。後屈 時に, 前屈時 のよう な一 定の傾 向を認 めない 理由 に,複 雑な形 態を持 つ後方要 素の影 響を 挙げた 。

  2. 正 常 椎間 板レ ベル で確認 された 椎間板 形状と 椎間 板変形 率との 関係は ,個 体間差 ひやレ ベ ル間差 に依 存しな かった 。異常 な可動 性を 有する 椎間板 レベル での 不安定 度は, 正常レ ベルの分 布 から の 逸 脱 度(S値) で定量 的に 評価で きると した。 年齢 やレベ ルに依 存しな い正常 な椎 間板 の 形 態 と 機 能 を 明 確 に し た 上 で , 異 常 可 動 性 の 程 度 が 客 観 的 に 評 価 さ れ た 。   3. 従 来 の脊 椎動 態の 評価は ,剛体 力学に よるも ので あった 。この 研究の 定性 的評価 法では , 固体力 学と いう新 しい視 点から 脊柱の 変形 状態を 評価し た。正 常腰 椎群の 前屈時 には, 一定の変 形様式 を示 すのに 対し, 不安定 腰椎群 では ,不安 定なレ ベルの みで なく, その周 囲のレ ベルの変 形状態 も正 常とは 異なっ た。こ の手法 によ って, 各椎間 板内に おけ る,圧 縮,引 張,せ ん断変形 といっ た変 形状態 が,一 目瞭然 となっ た。 従来の 手法で は,変 形様 式を視 覚的に 表現す ることが 不 可能 で あ っ た が, 申 請 者 の 手法 に よ り 変 形 様式 の 視 覚 化(visualization)が可能 とな った。

  この 研究は ,脊柱 の変形 に重 要な役 割を果 たす軟 組織の 椎間 板の形 態とそ の機能 との関係に着 目し, 従来 不可能 であっ た脊椎 不安定 性の 定量的 評価を 可能に した 上,固 体力学 という 新しい観 点から 複雑 な脊柱 の変形 様式を 視覚的 に表 示した 。口頭 発表に 際し ,宮坂 和男教 授から 椎間板の 面 積 の 変 化 に っ い て , 椎間 板 レ ベ ル 間に お け るS値の 逸 脱 状 況 ,阿 部 弘 教 授 から 椎 体 の ず れ (translation)は ど の よう に と ら え ら れる の か , 各 疾患 へ の応 用, 高度な 変性の 場合に も申請 者 の手 法 が 適 応 可能 で あ る か 否か ,S値 と 症状 と の 関 連 , 田代 邦 雄 教 授 からMRIでの椎 問板変 性の度 合と の関連 ,頚椎 への応 用など にっ いて, それぞ れ質問 があ ったが ,申請 者は概 ね妥当な 解答を した 。その 後,申 請者は ,阿部 弘教 授,宮 坂和男 教授か ら個 別に審 査を受 けた。 個別の審 査 の中 で は , 椎 体の 前 後 方 向 のず れ(translation)や椎 体 間の 角度 変化(an gulation)も ,申 請者の 手法 で総て 評価可 能であ ること が強 調された。個別審査後,各教授から合格と判定された。

  本研 究は, 脊椎不 安定性 の生 体力学 的評価 法にっ いて検 討し ,新し い定量 的,定 性的評価の手 法を提 案し たもの である 。本手 法は, 従来 不可能であった不安定度の定量的評価を可能にした上,

不安定 腰椎 におけ る異常 な変形 状態の 詳細 な評価 も可能 にした 。近 年,腰 痛が社 会問題 となって おり, その 重要な 原因の ーっに 脊椎不 安定 性があ る。こ の研究 は, 脊椎不 安定性 の評価 に新しい 工学手 法を 取り入 れた独 創性豊 かな研 究で あり, この分 野では 新知 見を示 した。 よって ,博士の

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