博士(医学)山本有平 学位論文題名
Laserflowgraphy : A new visual blood flow meter utilizing a dynamic laser speckle effect
(レーザ一画像血流計:
レ―ザ―スペックル現象を利用した新しい皮膚血流測定装置)
学位論文内容の要旨
I.研究目的
1970年代よルレ ーザーを応用した血流測定法が開発され、現在、レ ーザー血流計として広く臨床に応用されている。しかしながら、従来のレ ーザー血流計は、一観測点の血流量しか測定することができず、ある面積 を持った観測野全体の血流動態を評価するには十分ではなかった。そのた め、われわれは、観測野全体の血流動態を二次元的に捉え、カラー画像で 表示できる、新しい皮膚血流測定装置を開発した。
本稿では、本血流計の原理ならびに構造、本血流計の測定値の信頼性を 調ぺるために行なった13 3Xeクリアランス法との比較実験、および本血流 計を用いた皮弁微小循環動態の2次元的定量化に関する研究について報告 する。
u.原理ならびに構造
レーザーを皮膚面に照射すると、皮膚内部で散乱し、反射したレーザ ーはイメージセンサー上に、スベックルと呼;fれるランダムな小斑点 模様を形成する。その模様は、毛細血管内の血球が様々な方向に移動 しているため、刻々と形を変えてゆき、血流が早くなれば、その模様 の変化は大きく、血流が静止した状態では、その模様は一定となる。
その模様の変動速度が、測定部の皮膚血流速度を反映し、本血流計は、
この レー ザー スペ ック ル現 象を 利用し てい る。
本 血流 計の 構造 について説明する。レーザーを線上にひろげ、ミラー を介 して 皮膚 表面 に投影し、反射したレーザーを再びミラーを用いて、
CCDイ メ ー ジ セ ン サ ー 上 に 結 像 さ せ 、そ の観 測線 上の 血流分 布を 求め る 。 次 に 、 ミ ラ ーを 回 転 さ せ る こ と によ り、 ある 観測 野の2次元 的血 流 分 布が 得ら れる 。こ の一 連の 操作 を、 マイ クロ コン ピュー ター で行 な い 、 分 析 す る こと に よ り 、 皮 膚 血 流の2次 元的 な定 量化お よび 画像 化 が 可 能 と な る 。わ れ わ れ は 本 装 置 を レ ー ザ ー 画 像 血 流 計 、 英 名:
LASERFI,OWGRAPHY、 得 ら れ る 画 像 をレ ーザ ーフ ロー グラム と称 して い る 。 レ ー ザ ー 画 像 血 流 計 の 本 体 は 、 高 さ36、 幅2 3.5、 奥 行36 cmで 、 重 量 は13Kgで あ る 。 現 在 は 、 出 力20mV、 波 長780nmの 半 導 体 レ ー ザ ー を用 い て 、6X6. 5cmの 範 囲 の皮 膚 血 流 を 約3秒 で測 定表 示で きる 。
III.実験対象および方法
A. レ ー ザ ー 画 像 血 流 計 と ェ3 3Xeク リ ア ラ ン ス 法 と の 比 較 実 験 健 常 成 人4人 の 両 前 腕 屈 側 の 無 毛 部 に15cmの 間 隔 を お い て 、そ れぞ れ2点 、 計16点 を 設 定 し た 。 ま ず 近 位 点 に10万 倍 エ ピ ネ フ ィ リン0.01 mlを 皮 内 注 射 し 、15分 後 、 両 方 の 点 に133Xe水 溶 液0.02ml、200
〜 300メCiを 皮内 注 射 を 行 な った 。注 射針 の刺 入に よる 影響 をを 少な く す る た め 、 皮内 注 射 は マ イ ク ロ シ リ ン ジ と30Gの 注 射 針 を 用い た。
最 初 に 、 シ ン チ レ ー シ ョ ン カ メ ラで と ら え たRIイ メ ー ジ を デ ー 夕 収 録 し 、 ミ ニ コ ンピ ュ ー タ ー で 計算 処理 しデ ィス プレ イす るシ ステ ムを 用 い て 、 設 定 点 の133Xeク リ ア ラ ン ス の 測 定 を 行 な っ た 。CRT上 で 関 心 領 域 を 設 定 し、 時 間 放 射 能 血線 を描 き、Ketyのク リア ラン ス理 論よ り血 流量 を求 めた 。 133Xeクリア ラン ス測定直後に、レーザー画像血流 計 を 用 い て 設 定点 の 皮 膚 血 流 量を 測定 した 。得 られ た結 果を 統計 学的 に分 析し た。
B. レ ー ザ ー 画 像 血 流 計 に よ る 皮 弁 微 小 循 環 動 態 の2次 元 的 定 量 化 体 重3 kgの 家 兎10羽 を 用 い て 、 耳 介 に 長 さ60mm、 幅15mmの 血 流支 配の 異な る2種 類の 皮弁 を作 成し た。 一方 は、 解剖 学的に 明確 な動 静脈 茎を 有す るaxial pattern flapと し、もう一方は、それを有さない random pattern flapとした。皮弁挙上直後より術後12時間までは毎時、
術 後24時 間 以 降は 毎 日 定 時 に 術 後7日 目 ま で、 本 血 流 計 を 用 いて 両皮 弁の 血流 状態 を経 時的 に測 定し、 術後7日 目に おい て皮 弁生着 域の 判定 を行 った 。
IV.結 果
A. レ ー ザ ー 画 像 血 流 計 と133Xeク リ ア ラ ン ス 法 と の 比 較 実 験 133Xeク リ ア ラ ン ス 法 に よ る 遠 位 点 の 血 流 平 均 値 は6.43土1.40 ml/l OOg/min、近 位点の血流平均値は1.25土0.65 ml/100g/mmであった。
一方 、レーザ ー画像血 流計による 遠位点の 血流平均 値は29.2土2.15now level、近 位点の血 流平均値は19.7土2.66nowlevelであった。133Xeクリ ア ラ ンス 法より求 めた血流 量と本血 流計より 求めた血 流量の相 関係数は O.87で あ り 、 危 険 率0.1% で 有 意 の 相 関 を も つ こ と が 判 明 し た 。 B. レ ー ザ ー 画 像 血 流 計 に よ る 皮 弁 微 小 循 環 動 態 の2次 元 的 定 量 化 A虹 甜panernnapの 術 直 後 、 術 後6時 間 、24時 間 、7日 目 の レ ー ザ ーフ ロ ー グラ ムでは、 皮弁挙上 直後より 、耳介中 心動静脈 が走行す る皮弁中 央 部 にお いて高血 流を示し 、皮弁辺 縁部そし て皮弁に 接した周 囲の皮膚 は 低 血流 を示す、 皮弁の短 軸方向に 沿った血 流の勾配 が認めら れ、その 後 時 間 の 経 過 と と も に そ の 血流 変 化は 消 失 した 。 一方 、randompa眦m napの 術 直 後 、 術 後6時 間 、24時 間 、7日 目 の 皮 弁 の レ ー ザ ニ フ ロ ー グ ラ ムで は、皮弁 の血流は 挙上直後 では全体 に低下し 、その後 皮弁の中 枢 側 より 血流の回 復が見ら れ始め、 皮弁中枢 側が高血 流を示し 、末梢側 が 低 血流 を示す、 皮弁の長 軸方向に 沿った血 流の勾配 が認めら れた。術 後7日 目 では 、 低血 流 を 示し た 部位 に 一致し て、皮弁 の壊死が 生じた。
皮 弁 周 囲 の 皮 膚 血 流 は 、 観 察 期 間 を 通 し て 、 比 較 的 高 値 を 示 した 。 術後7日 目 にお け る 、a虹甜panemnapのsurviv甜lengmは 平均53.5土 3.18mmで 、randompanemnapで は平 均27.0土5.64mmで あった。 耳介中 心 動 静脈 を 含ん だaxiむpanemnapに お いて、統 計学上有 意に、生 着域の 延長 がみられ た。
v.考察
Hollowayら が 開発 し た レー ザードッ プラー血流 計と133Xeクリ アランス 法 との、成 人前腕部 の16の測定点 における 比較実験 では両測 定法の相関 係 数は0.89であ り、野平 らによるレ ーザースペックル血流計と133Xeクリ ア ランス法 との比較 実験では相 関係数は0.85であった 。今回、 レーザー 画 像 血 流計 と133Xeク リア ランス 法との相関 係数は0.87で あり、本 血流 計 は 他 のレ ー ザー 血 流 計と 同様に133Xeクリ アランス 法と高い 相関を持 ち 、信頼性 の高い皮 膚血流測定 装置であ ることが 判明した 。今回の実験
で は回 帰直 線が 原点 を通 らな かった が、 本血流計の対血流感度特性の設 定 を 変 え る こ と に よ り 、 そ の 点 は 改 善 で き る と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で 作 成 し た2種 類 の 皮 弁 は 、耳 介中 心動 静脈 に栄 養され るaxial pattem flapと解剖学上明確な動静脈に栄養されないrandom pattem flapに分 類され、その生着域に有意差を認めた。レーザー画像血流計を用いて行っ た 両皮 弁の 微小 循環 動態 の2次元的 定量 化に より 、従 来の 血流 計で はわ か らな かっ た皮 弁内 の血 流勾 配の存 在、 および皮弁周囲の皮膚血流の変 化が確認された。このような皮弁微小循環動態の変動は、axial pattern flap で は、 解剖 学的 に明 らか な血 管柄を 皮弁 内に含むことにより、術直後よ り 皮弁 血行 が確 保さ れ、 血管 柄より 離れ た皮弁辺縁部そして皮弁に接し た 周囲 の皮 膚血 流が 相対 的に 減少す るこ とにより生じると考えられた。
Random pattem flapにおいては、皮弁内に明らかな血管柄を含まないこと に より 、術 直後 では 皮弁 血流 が著名 に減 少し、その後、皮下血管網を介 し て、 皮弁 血行 が中 枢側 より 、数時 間を 要して回復し、一方、血管柄を 含 まず に皮 弁を 挙上 する こと により 、皮 弁周囲の皮膚血流は相対的に増 加するためと考えられた。
VI.結語
レ ーザ ース ペッ クル 現象 を利 用し 、皮膚 血流 の2次元 的な 定量 化およ び 画 像 化 を 可 能 と し た レ ー ザ ー 画像 血流計 を開 発し た。 本血 流計 は、13 3 Xeク リア ラン ス法 と高 い相 関を もち、 信頼性が高いことが判明し、ま た、本血流計を用いることにより、血行支配形式の異なるaxial pattem flap とrandom pattern flapにおいて、それぞれ特徴をもった微小循環動態の変 動 が確 認さ れた 。今 後、 本血 流計 は皮膚 微小循環動態の基礎研究、臨床 の 両 面 に お い て 非 常 に 有 益 な 情 報 を 提 供 す る こ と が 期 待 さ れ る 。
学 位 論 文 審 査 の 要 旨
学 位 論 文 題 名
Laserflowgraphy : Anew vlsual blood flow meter utilizlngadynamiClaSerSpeCkleeffeCt
(レ―ザ―画像血流計:
レーザースペックル現象を利用した新しい皮膚血流測定装置)
I.研究目的
従来のレーザー血流計は、一観測点の血流量しか測定することができず、観測野全体の血流 動態を評価するには十分ではなかった。そのため、皮膚血流分布を2次元的に表示可能とした、
新しい皮膚血流測定装置を開発した。本研究は、本血流計の原理ならびに構造を説明するとと もに、13 3Xeクリアランス法との比較実験によって本血流計の測定値の信頼性を証明し、動物 実験において、皮弁微小循環動態の経時的変化を2次元的に分析することを目的として行なっ た。
H.原理ならびに構造
本血流計は、皮膚面に照射したレーザーが反射散乱し、ランダムな小斑点模様を形成するレ ーザースペックル現象を利用している。本血流計の構造は、線状にひろげたレ―ザーをミラー を用いて、CCDイメージセンサ―上に結像させるものであり、この操作を、マイクロコンビ ユーターで制御し、皮膚血流分布を2次元的に定量化およぴ画像化する。われわれは本装置を レーザー画像血流計(英名:LASERFLOWGRAPHY)と称している。
UI.実験対象および方法
A.レーザ一画像血流計と133 Xeクリアランス法との比較実験
健 常成人4名の両前腕屈側に、それぞれ15cmの間隔をおいて2点を決め、計16点を設定 した。まず近位点に10万倍エビネフイリン0.Olmlを皮内注射し、15分後、両方の点に133)く二e 水溶液O.02mI、200〜 300/uCiを皮内注射し、133Xeクリアランスの測定を行ない血流量 を求めた。その直後に、本血流計で設定点の皮膚血流量を測定した。得られた結果を統計学的 に分析した。
B.レーザ一画像血流計による皮弁微小循環動態の2次元的定量化
家 兎10羽の 耳介に 長さ60mm、幅15mmの血流 支配の 異なる2種類の 皮弁を 作成した 。 ー方は、解剖学的に明確な動静脈茎を有するaxial partem flapとし、もう一方は、それを有さ
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彦 修之 武 紘 浦物 藤 大劒 加 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
ないrandom pattern flapとし た。皮 弁挙上 直後よ り術後12時間ま では毎時、術後24時間以降 は 毎日 定 時 に 術後7日 目 ま で 、本 血 流 計 を用 い て 両 皮弁 の 血 流 状態 を 経 時 的に測 定した 。
rv.結果
A.レ―ザ一画像血流計と133冫く二eクリアランス法との比較実験
13 3Xeクル アラン ス法に よる遠位点の血流平均値は6.43土1.40 ml/100g/min、近位点の血流平 均値は1.25土0.65 ml/100g/minであっ た。一 方、レ ーザ―画像血流計による遠位点の血流平均 値は29,2土2.15nowlevel、近位点の血流平均値は19.7土2.66nowlevelであった。133冫く二eクル アラン ス法よ り求め た血流 量と本 血流計 より求め た血流 量の相 関係数 はO.87であり、危険率 O.1%で有意の相関をもつことが判明した。
B.レーザ一画像血流計による皮弁微小循環動態の2次元的定量化
Axi甜pattemnapでは 、皮弁 挙上直 後より 、耳介 中心動 静脈が走 行する 皮弁中 央部に おいて 高血流 を示し 、皮弁 辺縁部 そして 皮弁に 接した周 囲の皮膚は低血流を示す、皮弁の短軸方向に 沿 った 血流 の勾配 が認め られ、 その後 時間の 経過と ともに その血流 変化は 消失し た。一 方、
randompanemnapでは、 皮弁の 血流は 挙上直 後では 全体に 低下し、 その後 皮弁の 中枢側 より血 流の回 復が見 られ始 め、皮 弁中枢 側が高 血流を示 し、末梢側が低血流を示す、皮弁の長軸方向 に沿っ た血流 の勾配 が認め られた 。皮弁 周囲の皮 膚血流は、観察期間を通して、比較的高値を 示した。
V.考察
Hollowayらや野平らが開発したレーザー血流計と133冫く二eクリアランス法の相関係数はそれぞ れ0.89、0.85であり 、本血 流計で はO.87で あった 。本血 流計は 他のレ ーザー血流計と同様に 13 3Xeクル アラン ス法と 高い相 関を持ち 、信頼 性の高い皮膚血流測定装置であることが判明し た。本研究で得られた所見は、axial pattem flapでは、解剖学的に明らかな血管柄を皮弁内に含 むこと により 、術直 後より 皮弁血 行が確 保され、 血管柄より離れた皮弁辺縁部や周囲の皮膚血 流が相 対的に 減少す ること により 生じる と考えら れた。Random pattem flapにおいては、皮弁 内に明 らかな 血管柄 を含ま ないこ とによ り、術直 後では皮弁血流が著名に減少し、その後、皮 下血管 網を介 して、 皮弁血 行が中 枢側よ り回復し 、一方、血管柄を含まずに皮弁を挙上するこ と に よ り 、 皮 弁 周 囲 の 皮 膚 血 流 は 相 対 的 に 増 加 す る た め と 考 え ら れ た 。
VI.結語
皮 膚 血 流 の2次元 的 な 定 量化 を 可能とし たレー ザ一画 像血流 計を開 発した 。本血 流計は 、 133)く二eクリアランス法と高い相関をもち、信頼性が高いことが判明し、また、本血流計を用い
.るこ とによ り、血 行支配 形式の異なる2種類の皮弁において、それぞれ特徴をもった微小循環 動態の 変動が 初めて 確認さ れた。 今後、 本血流計 は皮膚微小循環動態の基礎研究、臨床の両面 において非常に有益な情報を提供することが期待される。
以上のことから博士(医学)学位に妥当なものと判断される。