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博士(理学)伊藤学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 理 学 ) 伊 藤 学 位 論 文 題 名

Nuclear Basic Proteins in Sperm of An Anuran Amphibian, Rana catesbeiana:Their Structure and Role        in Condensed State of Chromatin

(無尾両生類Rana catesbeianaの精子核塩基性タンパク質の構造及びクロマチン凝縮における役割)

学位論文内容の要旨

  通常 、 動物 の精子核が体細胞 核に比べて強く凝縮してい るのは、精子核ク口マチンを 構成 す る塩 基 性夕 ンパ ク質 が体 細 胞核 のそ れと は 異な るた めで ある と考えられている。す なわ ち 、一 般 に体 細胞核のクロマチ ンが生物種を越えて普遍的 なヒストン群から構成される のと は 対 照 的 に 、 精 子 核 塩 基 性 夕 ン バ ク 質(sperm nuclear basic protem,SNBP) は 単 に ヒ ス卜 ン と異 なる のみ なら ず 、動 物種 ごと に さま ざま なタ イプ が存在するという特徴 を持 つ 。し た がっ て、 多種 多様 なSNBPの性 質を 明 らか にす るこ とは 、精子核凝縮の機構と 生物 学 的 意 味 を 知 る う え で 重 要 で あ る 。 無 尾 両 生 類 の う ち 、 ニ ホ ン ヒ キ ガ ェ ル (Bu′ 〇 Jap〇nJcuみ のSNBPは ア ル ギ ニ ン を40% 以 上 含 む典 型 的な プロ タミ ン、 ア フリ カツ メガ エ ル(Xen〇pusぬeWs)の それ はア ル ギニ ンを 比較 的多 く 含ん だヒ スト ン とプ ロタ ミン の 中 間型 の タン バク 質で ある こ とが 分か って い る。 しか し、 他の 無尾両生類、例えばRana属 で は、 電 気泳 動的解析や組織化 学的観察からプロタミンと は著しく異なる「精巣特異的 」な タ ンバ ク 質が 存在することが示 唆されてはきたが、このタ ンパク質の詳細は不明であっ た。

本 研究 で は、 ウシ ガェ ル(RaJlacaCes6ejana)及 びDjc( )び 〇ssuspjcCusの 成熟 精子 に 含 まれ る 塩基 性夕ンバク質を分 離、同定するとともに、ウ シガェル精子核クロマチンの 特性 を 明ら か にし 、ま た卵 細胞 質 によ る体 細胞 型 ク口 マチ ンへ のり モデリングの誘導を通 じて SNBPの 精 子核 凝縮 にお ける 役 割の 解明 を試 み た。

I.無 尾両 生類 の 精子 核塩 基性 夕ン パ ク質 とク ロマ チン 構 造

  ウ シ ガ ェ ル 及 びDロcCUsの 成 熟 精 子 核 か ら 塩 基 性 夕 ン バ ク 質 を 酸 抽 出 し 、 酸/尿 素 /′rntonx‐100ポ リア クリ ル アミ ドゲ ル電 気 泳動 によ り体 細胞 の核夕ンパク質と比較 した と ころ 、 前者 では体細胞核のコ アヒストン群と同じ移動度 のタンパク質及び体細胞型の ヒス ト ンH1よ り も や や 移 動 度の 大き い 分子 から なり 、後 者 はヒ スト ンを 含め て これ までSNBP と して 報 告さ れて いる どの タ ンパ ク買 とも 移 動度 を異 にす る7つの 成分 か らな るこ とが 分 か った 。 した がっ て、 これ ら のSNBPは ヒキ ガ ェル 、ア フリ カツ メガエルのいずれとも 異な る ユニ ー クな もの であ ると 言 える 。ウ シガ ェ ルのSNBPを逆 相ク ロマトグラフイーで分 画後 各 分画 に つい てア ミノ 酸組 成 を調 べた 結果、体細胞と同一 の4種のコアヒストン(ヒス トン H2A、H2B、H3、H4) が 確 認 さ れ 、 そ の ほ か に ヒ ス ト ンHlと ア ミ ノ 酸 組 成 は類 似す るが り ジン を25% 以上 含む より 強 塩基 性の 特殊 な タン バク 質が 見出 された。後者をトリプ シン で 消 化 し た と こ ろ 、 ト ルプ シン 耐 性部 位を 持ち 、か つ その 耐性 部位 はヒ ス トンH1フ ァミ リ ーに 特 徴的 なア ミノ 酸配 列 を示 した 。以 上 から 、ウ シガ ェル のSNBPは体細胞型コア ヒス ト ン と 、 リ ジ ン に 奮 む 精 子 特 異 的 な ヒ ス ト ンH1か らな ると 結 諭し た。 一方 、DpjcCUsの

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SNBPについても同様にアミノ酸組成を調べたところ、非常に多くのヒスチジンを含む大量 のタンバク質とそれより比較的量が少なく塩基性アミノ酸の含量も低い6種類のタンバク質 からなることが分かった。これらはどれも既知のタンバク質とは異なっており、さらに詳し い研究が必要であろう。さらに、ウシガェルの精子核についてはコアヒストンが存在するこ とから、通常精子核には無いとされるヌクレオソーム構造を持つことが推測された。そこで 精 子 核ク ロ マ チン を ミクロコ ッカスヌ クレア ーゼ(micrococcal nuclease、MNase) で消化し核から遊離するDNA断片を電気泳動したところ、ヒキガエルやアフリカツヌガェ ルの精子核クロマチンはMNaseに耐性であるのに対し、約180塩基対の大きさの断片が得 られたが、体細胞核クロマチンを消化した際現れる梯子状のバ夕一ンは見られなかった。ま た透過型電子顕微鏡によルクロマチンを観察すると、ウシガェル精子核ク口マチンはヌクレ オソームを持っが、体細胞核クロマチンとは異なルヌクレオソームが不規則に並んだ構造を していた。これらのことは、ウシガェルの精子核クロマチンは体細胞のそれに近bゝが、リン カ ー ヒ ス ト ン の 特 性 が 特 異 な 核 凝 縮 を も た ら し て い る こ と を 示 唆 し て い る 。 n.ヌクレオプラズミンによる精子核クロマチンのりモデリング

  受精すると、凝縮した精子核クロマチンは卵内で脱凝縮し、ヌクレオソームが等間隔に並 ぶ体細胞型クロマチンにりモデリングされる。最近このりモデリングの過程には、アフリカ ツメガェルやヒキガェルの卵内に大量に存在する熱耐性の酸性夕ンパク質、ヌクレオブラズ ミン(NP)が関わ ることが報告された。NPによって核クロマチンから除去されることが SNBPの 特 性 で あ る と 予 想 さ れ た の で 、NPに よ るSNBPの 除 去 の 有 無 を 調 ぺ た 。   ヒトの精子核を還元剤処理した後にアフリカツメガェルの卵内に注入すると、精子核は脱 凝縮して前核を形成することが知られている。その際ヒトの精子核に含まれるプロタミンが どの ような 振る舞い をする のかを知 るために 、アフリカツメガェルの卵細胞質(egg‑

extract)中で還元剤処理したヒト精子核をインキュベートしたところ、ヒトプロタミンは 核から完全に除去され、代わりに核にコアヒストンと卵割期特異的ヒストンHl (Hl.X)が 結合した。精製したアフリカツメガェルのNP中でインキュベートすると、核から除去され てNPと複合体を形成したプロタミンが確認された。この条件にさらにコアヒストンを加え てインキュベートした後核をMNaseで消化すると、梯子状パターンが現れ、ヌクレオソー ムを含む体細胞型クロマチンが再構築されたことが分かった。同様に、ウシガェル精子核を ヒキガェルのegg‑extract中でインキュベートしたところ、精子核は脱凝縮しHl.Xが結合 したが、精子特異的Hlは完全には除去されなかった。このクロマチンをMNaseで消化して 遊離レたDNA断片を電気泳動したところ、成熟精子核とは異なり約180塩基対を基本単位 とした梯子状パターンを示し、精子特異的Hlを部分的に持ったままクロマチンが体細胞型 へと再構築されたことが確かめられた。また、ウシガェルの精子核を高濃度の精製NP中で インキュペートすると、核の脱凝縮とともに精子特異的Hlが選択的に除去されたが、この Hlの除 去は完 全には起 こらなかった。NPとSNBPの結合はNPのポリグルタミン酸領域を 介すると考えられており、カェルNPにより生物種の違いを越えてヒトプロタミンが完全に 除去されたのに対し、ウシガェル精子特異的Hlの除去が不完全であったのは、後者の塩基 性が比較的弱く前者に比べてNPに対する結合カが小さいためであると思われる。しかし、

Hlが部分的に除去されてはじめて精子核クロマチンの脱凝縮とりモデリングが誘導された ことは、精子核の凝縮した状態を保つためにはSNBPが不可欠であることを示しており、ま たSNBPが少なくとも胚の初期発生において部分的にりンカーヒストンとしての役割を持つ 可能性があることを示唆している。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    片 桐 干 明 副 査    教 授    鈴 木 範 男 副 査    教 授    高 橋 孝 行

学 位 論 文 題 名

Nuclear Basic Proteins in Sperm of An Anuran Amphibian, RaTza catesbeiana:Their Structure and Role        in Condensed State of Chromatin

(無尾両生類Rana catesbeianaの精子核塩基性タンパク質の構造及びクロマチン凝縮における役割)

   動 物 の成 熟 精 子核が著 しく凝縮し ているの は、体細 胞核に普 遍的なヒ ス卜ン群 を

欠き し た がっ て ヌクレ オソーム構 造をとら ないこと と共役し ていると 信じられ てい

る。 し か しこ れ ま で断 片 的に 報 告 され て いる 精 子 核塩 基 性夕 ン バ ク質 (SNBP) の多

様性 か ら みて 、 典型的 な強塩基性 核夕ンバ ク質であ るプロタ ミンをも つ魚類、 哺乳

類な ど の 精子 核 につい て提唱され た上記仮 説が一般 性をもち うるか否 かは検討 を要

す る 。 伊 藤 透 提 出 の 学 位 論 文 は 、 無 尾 両 生 類 Rana catesbeiana の SNBP の 組成 と

ク口 マ チ ン構 造 を解明 し、さらに これを体 細胞型ク 口マチン ヘと転換 させる試 みを

通 じ て 精 子 核 凝 縮 の 仕 組 み の 解 析 を 試 み て お り 、 以 下 の 諸 点か ら 評 価さ れ る 。

   ま ず 、申 請 者 はこ の 動物 の SNBP が りジ ン に富 む 精 子特 異 的な Hl と位 置 づけ られ

る塩 基 性 夕ン パ ク質を 除けば体細 胞におけ るそれと 区別のつ かないコ アヒスト ン群

を含 む こ と、 ま た平行 して行われ た同様の 解析から 他の両生 類 Discog ^) Ssus 皿 ms

の SNBP が ヒ ス チジ ンに富む これまでに 報告のな いユニー クな塩基 性夕ンパ ク質を含

むこ と を 見出 し た。こ れらの発見 自体、新 しい SNBP の組 成を提示 したとい う価値を

もっ も の では あ るが、 申請者はさ らに R . ca 絶 s ぬぬ na 精子 のクロマ チンがヌ クレオ

ソー ム 構 造を も つこと を直接証明 する電子 顕微鏡像 を提出し ている。 これらに 基づ

いて 提 唱 され て いる、 おそらく SNBP の りンカー としての 特性のゆ えにヌク レオソー

ムコ ア が 不規 則 な間隔 で並びそれ が精子に 固有の高 度の凝縮 をもたら すという モデ

ルは 、 精 子核 の 凝縮の 仕組みに一 石を投ず るもので ある。つ いで申請 者は、精 子核

の脱 凝 縮 と体 細 胞 型ク ロ マチ ン ヘ のり モ デリ ン グ の相 関 を無 細 胞 系を 用 いて 解析

し、 典 型 的な プ ロタミ ンのみから なるヒト 精子では 両者が強 い相関を 示すこと 、ま

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た その際 ヌク レオプラズミン(NP) によるSNBP の完全な除去が伴うことを証明し た。ところが R . catesbeiana では、脱凝縮が誘導された精子核であってもNP を非生 理的濃度に高めた条件下ですら精子特異的H1 は完全には除去されず、むしろ後者を 部分的に残したまま完全に体細胞型クロマチンヘの転換が起きる得る、という証拠 を提出している。この観察は、ここで見出された精子特異的Hl が精子クロマチンの 凝縮および初期胚におけるりンカーとして、 2 重の役割をもち得ることを示唆する ものとして注目される。

   以上の研究成果は、新しいタイプのSNBP を提示するのみならず、それを通じて精

子核に固有のク口マチン凝縮機構について新たな提案を含んでおり、精子核ク口マ

チンの研究に重要な貢献をするものである。申請者に対する最終試験は、平成9 年

6 月12 日に多数の大学院担当教官の出席のもとに論文の口頭発表と質疑応答の形

で行われ、満足すべき結果であった。したがって、審査員一同は申請者が博士(理

学)の学位を受けるに十分の資格があるものと認める。

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