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人 間 教 育 専 攻 人 間 形 成 コ ー ス

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大学生における自尊感情の様相が過剰適応に及ぼす影響 一客観的な自己理解力に着目して

人 間 教 育 専 攻 人 間 形 成 コ ー ス 砂 歩 美

1.問題と目的

近年,児童生徒の不適応に関わる心理変 数として, 過剰適応"が注目されている。

桑山 (2003)は,過剰適応を 外的適応が 過剰なために内的適応が困難に陥っている 状態"と定義している。過剰適応行動は必 ずしも不適応を導くわけではないが,スト

レス反応(石津,2008),抑うつ(石津,2007) と正の関連をもつことが示されている。と くに自尊感情の低さについては,多くの指 摘がされている(益子 2010;浅井 2014)。

その自尊感情については,以下のような 研究がされている。伊藤・小玉(2005;2006)  は, Kernis (2003), Deci & Ryan (1995) 

らの主張をもとに,自尊感情を 随伴性自 尊感情"と 本来感"に弁別し,それぞれ を測定する尺度の肉発を行った。随伴性自 尊感情は不適応を,本来感は適応を導くこ とから,本来感を高め,随伴性自尊感情を 低めることが,過剰適応行動を低減する可 能性がある。ただし,自尊感情を自ら高め る作業は難しいことが指摘されており(伊 藤, 2007),過剰適応への介入因子として,

自らコントロール可能な要因を探る必要が ある。

そこで今回は過剰適応行動をやめられな い要因の1つとして,客観性が欠如した,

主観的判断傾向の存在を示したい。客観性 の欠如が不適応を導くと予想、できること

指導教員 内 田 香 奈 子

(Zeman, Shipman, & Suveg, 2002  Rieffe, Oosterveld, Miers, Terwogt, & Ly,  2008) ,客観的視点が well‑beingを高める 可能性があること(木島, 2007;中村・大 塚,2014)などの知見がある。さらにKernis

(2003)は,本来感を高く感じている者は 客観的な視点を持つ傾向を指摘しており,

過剰適応と本来感とは負の相関が確認され ている(益子, 2009)ことからも,本来感 が高く適切な客観性が持てることは,過剰 適応行動を低減する可能性が考えられる。

本研究ではこの仮説について検討を行った。

2 .

方 法

対象者:京都,徳島2校の大学生・大学院 生185(女子107,男子78)名を対象とした。

使用尺度

過剰適応:桑山 (2003)による過剰適応尺 度を用いた。 対白因子" 対他因子"の2 因子からなる。

客観性:青柳・寺沢 (1983)による創造的 構えテストを用いた。 自己信頼感 客観 性 細 心 さ " 挑 戦 性 持 久 力 ' ¥ 探 究心"の6因子からなる。このうち, 客観 性"のみを抽出し,使用した。

本来感:伊藤・小玉 (2005)の本来感尺度 を用いた。 1因子からなる。

自 己 価 値 の 随 伴 性 Paradise& Kernis  (1999)のContingentSelf‑Esteem Scale  の翻訳版である伊藤・小玉 (2006)の自己

(2)

− 22 − 価値の随伴性尺度を用いた。 l因子からな

る。

3 .

結果

先の仮説を検証するため,重回帰分析で 結果が得られた過剰適応対自因子のみに的 を絞り,媒介分析を行った。その結果,全 体ならびに男女ともに,本来感から過剰適 応対白因子へ負の影響が確認された。同時 に,本来感から客観性へ正の影響が確認さ れた。しかし,客観性から過剰適応対白因 子へは,全体と女性は正の因果が,男性も 有意ではないが正の標準偏回帰係数が確認 された。つまり,本来感から過剰適応対自 因子への媒介変数として設定された,客観 性の完全ならびに部分媒介は予測された方 向で確認、されなかったが,客観性を媒介し た場合,過剰適応対自因子に対して正の影 響が見られた。つまり,客観性は過剰適応 を低減することが予測されたが,結果は逆 の方向を導いた。

また,媒介分析によって得られた結果の 全体像を確認するため,共分散構造分析を 行った。その結果,まず対自因子において,

全体ならび男女ともに,本来感から過剰適 応対自因子へ負の影響が,本来感から客観 性へ正の影響が見られた。さらに女性のみ において,客観性から過剰適応対自因子へ 正の影響が見られた。また,全体において,

本来感から客観性へ正の影響が,客観性か ら過剰適応対他因子へ間接的な正の影響が 見られた。

4.考察

過剰適応対他因子については,男性では 本来感を正に,女性では負に関連するなど,

男女で異なる結果が確認された。このよう な性差は,過剰適応者へのアプローチを変

容する必要性を示唆するものであり,今後 も詳細な検証が望まれる。

媒介分析の結果では,予測とは逆の方向 が導かれた。しかしここから,客観性には 本来感に共通する要因と,過剰適応対自因 子に共通する要因が含まれている可能性が 考えられる。だが,客観性を測定する尺度 そのものの信頼性は他の尺度に比べて低 い値を示すことや,項目内容についても,

本来感,随伴性,そして各過剰適応行動と 交絡した内容を持つ可能性がある。今後は,

これらの問題をクリアした上で, 客観性"

が持つ特質について,さらなる検討が望ま れる。

また,伊藤・小玉の自己価値の随伴性尺 度および本来感尺度は,あくまで意識され た自尊感情を測定するものである。近年,

感情や態度などの心的特徴をインプリシッ ト(Implicit,潜在的)とエクスプリシット (explicit,顕在的)に弁別してとらえる動 きが一般化しつつある。今後は,過剰適応 とインプリシット

SE

との関連も検証して いく必要があるだろう。

その他にも,集団変数の考慮,変数測定 聞に期間を設ける予測的研究による検討や,

発達段階を考慮した縦断的検討の必要性が 課題として挙げられる。

最後に,本研究の結果から,本来感は過 剰適応を低減することが示唆されている。

よって本来感を高めることが,過剰適応行 動を低減する可能性を持つ。また,その他 の介入因子としては,感情をコントロール する術を身につけることなどが挙げられる。

今後はこれらを踏まえ,過剰適応行動の 予防を視野に入れた介入研究の構築と実施 が必要である。

参照

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