An EmpiricaI Study on the Feasib温tyofTeaching English Fundamental Vocabulary Emphasizing Core Meaning
教 科 ・ 領 域 教 育 専 攻 言 語 系 ( 英 語 ) コ ー ス
炭 山 あ ず み
1. はじめに
文部科学省が平成 14年度に f英語が使える 日本人の育成のための戦略構想jを策定してか ら、 4年が経過した。この戦略は、世界の人々 と協調して、国際交流を積極的に行うことがで きる資質と能力を養うための観点から、「実践的 コミュニケーション能力jの育成を目標に掲げ られたものである。現行の英語教科書において も、これを目標に作成されている。しかし、こ こには1つの問題がある。それは、英語教科書 の中で扱われている英単語だけでは、コミュニ ケーションを図るのに不十分ではないかという ことである。
英語の運用能力を上げる、いわゆる「英語が
指 導 教 員
山 森 直 人表現するには、心構えとして、『単語が足りない』
という幻想を捨てる必要がある。単語が足りな い、というのは単なる『ないものねだりJに過 ぎない。英語の運用能力を上げるためには、単 語の量を増やすより単語の質を高め、知ってい る単語を使いきることが重要である。jと述べて いる。
以上のことから、本研究では、少ない語業(基 本語葉から構成される句動詞)を用いて、効果的 にコミュニケーションを図る能力を育成するた めに、語句のコア・イメージを重視した語集指 導の可能性を追究することを目的とした。
使える日本人jになるためには、語実総量が大 2. 概要
きいほど好ましい。しかし、平成10年度に改訂 研究の背景・動機及び目的を述べた第1章に された新学習指導要領の外国語編(中学校)では、 続き、第2章では、語葉指導の先行研究を基に、
中学校3年間での必須語実数は、約900語と定 められており、それは、前述の目標を達成する ためにはあまりに少ないと考えられる。馬本 (1989, p.37)は、「中学生や高校生くらいになる と、学校で習った単語の力だけで、自分の伝え たいことを表現できるはずがない。Jと述べてい
るo ‑
しかし、十分なコミュニケーションを図るた めには、単語数のみではなく、単語の質が重要 だと考えられる。田中(2006,p.243)は、「英語で
従来からの語実指導の特徴について考察を加え ている。その結果、次の2点が明らかになった。
①従来の語嚢指導は、単語の綴りや単語の意味 の理解・暗記など、いわゆる受容面を中心に 行われており、学習者自身が、単語のイメー ジを膨らませながら単語と単語を組み合わせ て語句を創造したり、既習の単語を実際に使 用する、いわゆる産出面に焦点を当てた語葉 指導は、ほとんど行われていない。
②特に我々日本人は、「英単語=日本語の意味J
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これらの特徴が原因となり、学習者は必要な時 に既習の単語を十分に使い切れない、という事 態を引き起こしているのである。
第3章では、前章で述べた語集指導の問題を 解決するために、語句のコア・イメージを基に した語業指導及び学習法の必要性を明らかにし た。そして、コア・イメージと基本語実のつな がり、基本語糞の中の基本動詞の重要性、そし て、基本動詞と句動詞の密接な関係について述 ぺた。
第4章では、どの程度英語学習者は語句をイ メージすることができるのか、語句のコア・イ メージを基にして、学習者の語句の意味を「推 測Jする能力、語句を「創造jするための能力 を測るべく調査を行った。調査対象は、徳島県 内の国立大学の生徒(計 110名)である。その結 果、以下の3点が明らかとなった。
①英語テストの成績上位者と下位者を比較する と、句動詞の意味の「推測」、句動詞の「創造J、 いずれも成績上位者が高い得点を示した。
②学習者にとっては、句動詞の「創造」をする よりも、句動詞の意味を「推測jする方が、
はるかに易しい。
③学習者が句動詞を「創造jすることは、不可 能ではない。確かに、被験者にとって、低頻 度の意味の句動詞を「創造jすることはかな り難しいものであったと考えられるが、約半 数の被験者が高頻度の意味の句動調を「創造j することに成功していることを考慮すると、
今後コア・イメージをもとにした語集指導を 行いながら、語句の「創造jに焦点を当てた 訓練をすれば、さらなる効果が期待される。
3. 教育的示唆
語業指導に関する先行研究の概観、そして調
査の結果を基に、コア・イメージを用いた語集 指導に関して、以下の教育的示唆を挙げる。
まず、コア・イメージを用いた語業指導は、
英語学習初心者よりも英語学習上級者に即効的 な効果が期待できるということである。そして、
実際のコア・イメージの指導に関しては、初心 者か上級者かにかかわらず、まずは、コア・イ
メージを用いて語句の意味を「推測Jをさせる ことから導入すると効果的だと考えられる。ま た、語句の「創造jに関しては、高頻度の意味 の句動詞を中心に、単語と単語を組み合わせて 語句を「創造Jする訓練を重ねることが得策と 思われる。
4. 今後の課題
本研究から、以下の3点を今後の課題として 示す。
①調査対象を大学生のみならず、中学生や高校 生など、幅広い世代を対象とした調査を行う。
②英単語を、「英単語=日本語訳」形式に機械的 にあてはめて学習した場合と、単語のコア・
イメージとともに学習した場合では、語業の 習得にどのような差が生じるのか、さらなる 研究が必要である。
③教育現場における実践のためにも、コア・イ メージを指導する際の具体的な方法や教材の 開発が必要である。
《参考文献〉
田中茂範・佐藤芳明・何部ー(2006)
r
英語感覚が身につく実践的指導由コアとチャンクの活用 法』大修館書庖
馬本勉(1989)
r
ティーンエイジャーの語業一学 生を自己表現に導く英語教材を求めて』中国地 区英語教育学会研究紀要‑289‑