友人関係からの「はみ出しJに影響する諸要因に関する研究 ー「はみ出し」の定義と尺度作成の試み一
人間教育専攻
臨床心理士養成コース 香 取 満 彦
1.問題と目的
近年,我が国では友人関係の希薄化が指摘さ れ,それに関連して若者は表面的な付き合いを し,似たような者同士で、グルーフ。を作って,は み出さないように行動している。しかしその友 人関係からの「はみ出し」ということを定義し,
その実態を調査した研究はこれまでに見られな かったO また,
r
はみ出し」は状態として類似す る孤立・孤独とは言語の上で区別され,それは どのような状態・現象で,どのようなパーソナ リティ要因と感情が関連しているのだろうか。本研究では集団からの「はみ出し」に関連する パーソナリティ要因として,同調行動と一人で いる能力に着目した。そして①インタビ、ュー調 査で一高知句な「はみ出し」のイメージを調査・
定義し,②質問紙調査で「はみ出しjと感情・
同調・一人でいる能力との関連を調べ,現代の
「はみ出しjの実態の研究を行うことを目的と した。
2.インタビュー調査
方法と対象 :X県の大特完生に協力を募り,承 諾得られた21名(男性11名,女性10名,
M = 28
歳に半構造化面接を行ったO 主な質問項目は,①「はみ出しJの一艇句なイメージ,②「は み出しJのエヒ。ソード,③「はみ出しJから戻 ること,とした。データの分析はグラワンデッ ド・セオリーの手法を参考にして切片化したデ ータをカテゴライズした。
結果と考察:半構造化面接の結果,はみ出しの
指 導 教 員 葛 西 真 記 子
定義を得た。その定義は「友人関係からの『は み出し』とは, w友人関係をもっ集団の中から,
本人がその集団としての規範と相性が良好でな い,また本人と集団が一緒にいることの許容量 を越えたために,集団から排斥を受ける・ある いは自ら離脱し,集団の側から見れば少鋭取も しくは孤独な状態になることj]である。
J
である。次に個別のエピソードの分析から「はみ出し」
には,自分から距離を置く「能動的はみ出しJ, 集団の方からの排斥である「受動的はみ出しJ, 能動・受動性が絡み合う「両関連的はみ出しJ の3つがあることが明らかになったO 次に「は み出しJは感情によって様々に状態が変わるこ とから,感情について調査の必要性が示唆され た。また「はみ出し」の解決について,まず自 分が集団にいる意味や,そのことの価値を磁忍
し
, 自己瑚卒をして成長し,自分の気持を適切 に集団に表現すること・相手に合わせることを 学んで,相互関係を変化させるというモデルが 得られた。そして相談相手や周囲の協力が自己 鵡卒や相互瑚卒の手助けになることが示唆され た。そのためには周囲に求められるだけの魅 力・実力が荷主する重要性も明らかになったO
しかし,
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はみ出し」から戻ること自体への疑問 も語られた。これは場合によってはE
顕在をとる 方が望ましく,戻ることだけが「はみ出し」の 解決ではないと考えられた。全体として,r
合わ せることJ,r
群れることを嫌うことJ,r
集団にいることの手踊尋J,
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集団への親しみ・愛着」がq u
ハU
τi
「はみ出しJに関わることが考えられた。
3.質問紙調査
方法と対象:X県, Y県の大学生・大判完生を 中心(ル子=28.03,有効回答数192)に,質問紙調 査を実施した。尺度は作成した「はみ出しjの 能動・受動判別尺度(5件法)と「はみ出し」に 伴う感情尺度(2件法),そして既存の同調行動 尺度と「一人でいる能力」尺度(ともに5件法) の計4つの尺度から 94項目採用し,フェイス 項目と合わせて質問紙を作成した。
結果と考察:因子分析では能動・受動から「能 動的はみ出し」と「受動的はみ出し
J
,感情から「苦悩感情」・「充足感情」・「嫌警感情J•
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疑問 感情J,同調行動から「イ中間への同調」と「自己 犠牲・追従J,r
一人でいる能力jから「孤高志 向J と「自分らしさ志向Jの計8因子が抽出さ れた。「はみ出しJ経験の有無と向調行動と「一人 でいる能力
J
~こ関連は見られなかったO しかし,「仲間への同調」は「受動的はみ出し」と関連 し,また同調行動は「自分を抑えて相手に合わ せる表面的なもの」であることから「一人でい る能力」を抑制,
r
苦悩感情jを大きくし自己表 現に乏しくさせていることが分かったor
一人で いる能力」は「はみ出し」の能動性を高めてい た。「受動性」の低し、群は「孤高志向Jが高く,相手から「はみ出し」を受けるより先に自分か ら出ることが考えられた。しかしその2つの尺 度よりも,集団への親しみ・愛着の強さが「は み出しJの発生に関連していることが分かった。
「はみ出し」に伴う感情は,さまざまな関連が 明らかになったが,場合によってポジティブな 感情も抱かれること,アンビバレントな感情が 栴主し,心理的防衛によって,表現される行動 が変化することが示唆された。また相談相手の
柄主が,充足感情と疑問感情を高めた。「はみ出 し」は,相手への不安そ殺しみ・愛着がコミュ ニケーションを変化させ,また行った自己表現 が集団に受け入れられるかどうか,そこから抱 く感情が能動性・受動性に影響を与えて,集団 における相互の信頼関係や受容性を問う現象で あると考察した。
4.
総合考察
「はみ出しJの能動・受動判別尺度と「はみ 出し」に伴う感情尺度の作成に関しては,予備 調査を行っておらず,また回想、法ゆえに,回答 の精度に問題を抱えた。また「はみ出し」の状 態・感情の時間的変化や抱かれる強さに対応し 切れておらず,課題が残される結果となったO
現代の友人関係からの「はみ出しJの背景に は,現代人の信頼感の低下と不安による表面的 な関係での,親密な関係における深い自己開示 によって起きる相互の違いの認識そ哩き解の煩雑 さというストレスを回避して「仮の安定」を得 ょうとする若者の心理が考えられる。そして,
集団の関係性の未熟さと,相手への容易な見限 りが「はみ出し」につながっている。「はみ出し」
は一般においても友人関係の適応の問題として 意識されているようで思春期前後に頻発する。
また約半数に相談相手がいなし1。多くは苦悩し,
安心や自信は少なし、。また防衛によってアンビ バレントな感情で葛藤している。「はみ出し」の 解決のためにはまず自己瑚卒をし,次に相互理 解を目指すことが重要で,周囲や相談相手の協 力が望ましいと考えられる。本研究では現代の 友人関係からの「はみ出し」の状態の様相が明 らかになり,集団に受け入れられる自己表現の 重要性が示唆されるとし、う意義を得た。そして,
本研究が友人関係で苦悩する若者八援助と感情 理解への一助となることを願う。
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