Enhancing Junior 1五ghSchool Students' Autonomous Learning through Questioning"泊Eng1ishLanguage Classes
教 科 ・ 領 域 教 育 専 攻 言 語 系 ( 英 語 ) コ ー ス 山 地 京 子
1研究動機と目的
自己肯定感や自己表現力,生涯学習にむけて の自己学習カなど.
r
自己jという概念が強調さ れる現在.中学校英語指導においても,学習者 の自己即ち「主体性jを重視した指導が求められている。
本研究は,中学校における英語授業実践の事 例研究をもとに.主体的な学びを促進する発問 のあり方を問うことを目的とした。類似した教 材・活動を扱っていても,育成される生徒の主 体性は教師によって左右される。そうした相違 を引き起こす主たるものが,教師の教育観を最 も反映する発問であると考えた。どのような発 問が,生徒の主体的な学びを促進するのか。様々 な教材や活動を活かす指導技術の根本として,
発問の見直しを図る必要性を感じる。
2先行研究の概観
第2章では.哲学的見地からの先行研究を概 観し.
r
主体的な学び」について考察した。「学 びjとは,さまざまな価値と出会うことで自己 が成長していく過程であり,ゆえに「主体性Jは学習自体に価値を感じることで促される。
学習の価値を体系化するために, 2つの観点 を挙げた。他者との関係づけを通した多角的な 視野の広まり{wholeness}と,より良いものを追 求 し よ う と す る 自 己 向 上 や 陶 冶 の 価 値 らoline凶)である。また,脳科学や認知心理学を 参考に,情意(heart)や認知(血nd)の両側面に働
指 導 教 員 山 森 重 人
きかける価値が,最も学習効果が高いことを検 証した。
第3章では,英語学習において生徒が重視す る価値が入試とコミュニケーションに二極化し ている現状を踏まえ,新旧の高校入試における 発問を分析した。入試問題の変容や,言語本来 のコミュニケーション機能の考察を通して,生 徒の判断や思考の変容を重視するべきであると いう傾向が読み取れた。
次に,発問に関する先行研究を概観し,以下 の前提を問題として捉えた。1)知識や理解だけ を問う発問 (=DQ)よりも,応用・分析・統 合・評価などの思考を必要とする発問 (=RQ) を意義づけする傾向が見られる。しかし.発問 研究のほとんどは発問内容に関する量的研究で あり,教師の発問の意図や,発聞が生徒にもた らす意味についての質的研究は少ない。 2)発問 研究は読解力育成を目的とするものが多く,
DQからRQへと徐々に段階づけるべきである という固定した順序が窺える。 3)生徒からの発 聞を理論的には意義づけながらも,依然,発問 の主体を教師と捉えており,生徒からの発問を 促す具体的な方策については述べていない。
3事例調査
先行研究の概観から,第4章では質的研究に よる事例調査を行った。経験豊富な日本人英語 教師 2名の教育観を問う事前インタビューと,
計
16時間の授業観察から2つの事例を抽出し‑304‑
た。そして,ビデオ再生法による事後インタビ ューを行い,教師の発問の意図と,抽出した 6 名の生徒の英語学習に対する意識を検証した。
以下に. 3つの調査課題と,それぞれに対す る結果,及び,教育的示唆を述べる。
1
r
生徒の主体性を促す発問とはどのようなも のか~: 自己向上や学習の価値を認識させる発 問が共通して見られた。価値認識のwholeness の視点からは,生徒の実体験を引き出し自己表 現を促す発問,生徒同士の関わりを増やす発問 が挙げられる。また.holinessの視点からは,英語への興味を喚起する発問,主体的な学習を 可能にする学習ストラテジーの獲得を意図した 発聞が読み取れた。生徒の主体性を高める発問 には,教師の教育観が大きく影響する。育てた い生徒像や最終的な学習到達度を念頭に置いた 上で生徒の現状を把握し.必要な人間力や学力 を身につけさせるために発聞を用いている。
2
r
知識や理解を問う発問 (=DQ)から,応用・分析・統合・評価を問う発問(=Rゆへと進める べきとする発問順序の固定化はあるのか~: 事 例では.RQで学習の価値を認識させながらDQ
を交えて理解を確認したり.既習事項を問う DQを通して学習内容の分析・統合を引き出し て理解につなげたりしていた。発問順序は易か ら難よりも.むしろ生徒の興味を喚起すること に配慮した順序で行われている。
3 r どのように生徒からの発問を促すか~: 生 徒からの発問とは,主体的な学習の表れである。
その促進のために,疑問点の明確化を促す発問,
自問の機会を増やす発問など,受け身的な学習 にしない工夫がなされていた。また.follow.up questionsにより集団での意識の流れを作りだ
したり,発問によってペア学習を活性化させた りと,共に学び合う学習集団作りが図られてい
た。生徒が発問できるように不安を減らしたり,
ラポールの構築を図ったりといった社会性の重 視も見られた。
なお,分析を通して,考慮、すべきと思われた ことを2点付記しておく。
1 発問の捉えなおしの必要性: 発問は,指 示の形での問いかけや,生徒の発話に対する responseの形でも表れた。疑問形か否かといっ た文体のみで区別するのではなく,発問は生徒 の認知や情意に影響を及ぼすもの,指示は活動 のきっかけや行動化へとつなげるものと捉えな おした。発問を「生徒の思考を引き出し,伸長 するもの。また,生徒と他者との関係づけや学 習事項の統合を促し,新しい意味を創り出すも のであるJと定義しなおす必要性を感じた。
2 研究手法: 発問の意味を問うためには,
発問内容の分類による学習効果の量的検証だけ ではなく,質的研究の意義は高い。調査課題で はないが,生徒の不安の軽減知識の統合とい ったDQの持つ意味も合わせて考察することが できた。多数ある教材・活動の用例集をいかに 授業で活用し,生徒の価値認識の琴線に触れさ せることができるかは,教師の教育観と人間関 係に基づく発間にあると認識した。
4.今後の課題
量的研究と質的研究を融合した研究手法が課 題として挙げられる。それにより,インタビュ ーでは語りえない暗黙知の部分を引き出したり.
調査対象・材料を多様化して一般化を求めたり することもできたのではないかと思われる。
また.同一校における英語科経営など,共通 が図られた事例調査であれば,より理論と実践 を合わせた研究となる。アクション・リサーチ も取り入れ,今後の教育現場における課題とし たい。
uハ ﹁ ひ
q u