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小学校社会科における問題解決学習を支援するハイパーメディア教材の開発と授業改善に関する研究

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(1)平成8年度 修士論文. 小学校社会科における問題解決学習を支援する ハイパーメディア教材の開発と授業改善に関する研究. 兵庫教育大学大学院. 学校教育研究科 学校教育専攻 教育方法コース. M95116B 古 田 哲 也.

(2) 目 次. はじめに・・…………・…・… ……・…・…・・…・・…・・…・1. 第1章 小学校社会科教育における問題解決学習・・……・……・・4. 1.1 学習指導要領における社会科教育の変遷……………・4 1.1.1 1947年から1951年までの学習指導要領の変遷……4 1.1.2 1955年から1977年までの学習指導要領の変遷…… 5 1.2 1989年版学習指導要領の特徴…・…・…………・・…・7 1.3 小学校社会科授業の問題点・…・…・……・・…・……・8. 1.3.1 授業設計における問題点………・……・…・…・8. 1.3.2 「理解」することのとらえ直し………………・10 1.4 これからの問題解決学習のあり方・・………………・・11. 1.4.1 授業設計のあり方………・・………・………・11 1.4.2 「理解」できる問題解決学習のあり方…・……… 13. 第2章ハイパーメディアを利用した授業の設計・・…・…・……・15. 2.1 授業設計の方法……・…………… …・…………15 2.1.1 社会科学習におけるハイパーメディアの利用……・15. 2.1.2 授業設計の手順…・……・…・・…………・…・17. 2.2 授業改善の方法……・・…………・・……………・22 2.2.1 5年生の社会科授業における「理解」のとらえ方…23. 2.2.2 ランパートの実践からの示唆………・……・…・26. 2.2.3 社会科における理解のモデル……………・9…・27.

(3) 2.3. 本単元における授業設計………・………・・…・・…・36. 2.3.1. 単元構想・…・……・…・…… ……・………・36. 2.3.2. 子どもの実態把握…・・……………・………・37. 2.3.3. 学習内容とメディアとの関連づけ…・・…………45. 2.3.4. 単元の流れの構想…・・……………・……・…45. 2.3.5. 子どもの学習活動とメディアとの関連づけ………46. 2.3.6. 教材の機能の明確化・・……・・……・…・…■一…48. 2.3.7. 単元計画・…・………・・…・・……・…・……・49. 2.3.8. 指導案作成………・…・……・・……………53. 第3章ハイパーメディア教材の開発・……………・…・……63 3.1 教材開発の視点……・………・…・・……………・63 3.1.1 提供する情報の分類と構成…・…・…………… 64 3.1.2 問題解決における思考の支援…………・…・…・67. 3.2 開発教材の教育的機i能…………・…・……………70 3.2.1 開発教材に要求される教育的機能…・・…………70 3.2.2 教育的機能の実現・・……・・………・… …・…・80. 第4章授業の実践と改善………・・………・……………98 4.1 授業実践にあたって…・…………・…・…………98 4.1.1 授業改善の視点………………… ……・…・98 4.1.2 授業実践の目的…………・…・…・………・103 4.1.3 本単元におけるメディア活用と学習活動………104. 4.1.4 指導計画…・……・…・…… …………・…107 4.2 授業の展開と子どもの活動……・…………・・…・・108.

(4) 4.2.1 問題解決の前段階………………… ……・・108 4.2.2 問題解決の段階・………………・・……・…115 4.2.3 他のグループを含めた学習活動・………・……139 4.3 授業改善の視点からの考察・………………・・…・・146. 4.3.1 事後調査…・……・………・・……・・・……146. 4.3.2 抽出児童の変容………・…・……・…・……155. 4.3.3 学習の深化…・・…………………………163 4.3.4 情報や知識の集め方,表し方,まとめ方・・…・…167. 4.4 授業設計と開発教材の有効性と問題点………・……170. 4.4.1 授業設計と開発教材の有効性…・……………170 4.4.2 問題点のまとめと改善案・………・………… 174. 4.4.3 授業設計の総括・………………・・……・…178. おわりに…………・…・…・・………・………・… ……181. 引用文献………・……・…・…・…・… ………… …・…184. 参考文献……・……・……・…………・……・・… ……186. 謝辞・・…・………・…・・…・……・・…・・…・…………・187.

(5) はじめに. 新しい時代の学校教育においては,自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体 的に対応できる能力を持った心豊かな人間を育成することが求められて いる。平成元年に改訂された学習指導要領では,国際社会を視野に入 れ,一人ひとりの子どもがたくましく心豊かに,主体的,創造的に生き る力を育てる教育をめざしている。. 小学校社会科教育においても,改訂の趣旨に沿った新しい教育を進め ていく必要がある。国際化,情報化が進展し,さらに激しい変化が予想 されるこれからの社会において主体的,創造的に生きる人間を育てるた. めには,自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力などの能力の育成を重 視し,内発的な学習意欲を喚起することによって社会的なものの見方や 考え方を養い,学習の仕方を身につけさせるような授業を創造していく ことが大切である。このような授業を実現する学習方法の1つとして, 問題解決的な学習がある。. しかし,これまでの社会科授業の一般的な傾向をみると,問題点は少 なくない。小学校社会指導資料(1993年)によれば,これまでの社会科 授業では,子どもの主体的な学習活動を重視することなく,教師が中心 となった黒板とチョークによる授業が多く見られたことを指摘してい る。そこでの子どもは,教師の板書をノートに写したり話を聞いたりと. いった受け身の態度で学習に臨んでいた。したがって,このような授業 を改善し,子どもが主体的に活動できる授業を創造していく必要があ る。また,これまでの授業が知識を暗記することを中心に行われがち で,体系化された指導すべき一定の内容を共通的に身につけさせること を重視し,教師が知識を一方的に教え込む傾向が強かったことを指摘し 一1一.

(6) ている。子どもが学習したことを理解し,学習することの意味を感じる ことができるのは,知識を暗記することではなく,自分がこれからの社. 会を心豊かに生きていくために必要なこと,大切なことを発見し,自分 はどう行動すればよいかを考え,実行しようとするときであると考え る。したがって,知識詰め込み型と批判されている授業を改善し,子ど もが理解できる授業を成立させることが必要である。そのためには,子 どもの日常生活における経験や知識と学校で学ぶ概念的な新しい知識と を何らかの方法で関連づけることが必要である。. 本研究では,従来の教師誘導型,知識詰め込み型の授業を改善し,子 どもの経験:的な知識と概念的な知識とを結びつけることによって,子ど. もが理解できる学習を成立させ,その学習の過程で子どもが主体的に活. 動できる問題解決型の授業の実現をめざす。そのために,子どもの情報 探索における多様な思考に対応でき,教師の意図を教材の教育的機能と して組み込むことができるハイパーメディアを利用する。ハイパーメデ ィアを用いた授業設計のあり方を考え,それにもとづいてめざす授業の. 設計とハイパーメディア教材の開発を行い,実践することによって授業 と開発教材の有効性を検証する。 本論文の構成と概要を以下に示す。. 第1章の「小学校社会科教育における問題解決学習」では,学習指導 要領の変遷からみた戦後の社会科教育について明らかにし,その流れの 中で平成元年版の学習指導要領における新しい社会科教育の考え方を述. べる。また,それに対する従来の社会科授業の問題点を示し,改善のた めの授業設計の方向について述べる。. 第2章の「ハイパーメディアを利用した授業の設計」では,社会科の 学習におけるハイパーメディア教材の利用と,ハイパーメディア教材を 一2一.

(7) 開発,利用するための授業設計のあり方を示す。また,ランパートの実. 践から社会科における子どもの理解のモデルを示し,それにもとづいた 具体的な授業設計と授業改善の方途について提案する。. 第3章の「ハイパーメディア教材の開発」では,問題解決学習におけ る情報の提供と思考の支援という視点から,ハイパーメディア教材が備 えるべき教育的機能を明らかにし,具体的な教材開発について述べる。. 第4章の「授業改善の成果と課題」では,学習の深化と情報活用を授 業改善の視点とし,実践した授業での子どもの活動の様子から,設計し た授業と開発教材が子どもの活動にどのように関わったか,それによっ. て子どもの思考と行動にどのような変容が見られたかを明らかにし,授 業改善の成果と問題点及びその改善案について述べる。. 一3一.

(8) 第1章 小学校社会科における問題解決学習. 1.1 学習指導要領における社会科教育の変遷. 本節では,1947年の学習指導要領社会科編1(試案)から1977年の 小学校学習指導要領の改訂までを概観し,その特色を探ることによって 戦後の社会科教育がめざしてきたものを明らかにする。. 1.1.1 1947年から1951年までの学習指導要領の変遷. (1)1947年版学習指導要領社会科編1(試案)及び1948凸版小学校社会 科指導要領補説 1947年に戦後初めて発行された学習指導要領社会科編1(試案) (以. 下「1947年版」と記す)及び翌年の小学校社会科指導要領補説(以下 「1948年版」と記す)は,戦前の修身や皇国史観による歴史教育の反省 から,経験主義に立脚し,民主的社会を担う人間の育成を目指したもの. となった。社会科の目標について,1948年版では「できるだけりっぱな 公民的資質を発展させることであります。」と述べ,公民的資質の育成 をその主要目標としている。また,学習方法について,1947年版では, 「その学習は青少年の生活における具体的な問題を中心とし,その解決 に向かっての諸種の自発的活動を通じて行わなければならない。」とし て,問題解決を原理とすることを提唱している。. (2)1951年版学習指導要領社会科編(試案). この改訂では,社会科の目標として「社会科は,児童に社会生活を正 一4一.

(9) しく理解させ,同時に社会の進展に貢献する態度や能力を身につけさせ ることを目的とする。」と述べ,それを実現する学習方法として「実生. 活の中で直面する切実な問題を取りあげて,それを自主的に究明してい くことを学習の方法とすることが望ましい。」として,問題解決学習を. 提唱している。したがって,1951年版は基本的には1947年版を継承し ているといえるが,新しく学習内容や単元の作り方を具体的に明示して おり,その点では1947年版をより発展させたものといえる。. 1.1.2 1955年から1977年遅での学習指導要領の変遷. (1)1955年版小学校学習指導要領. この改訂では,地理,歴史,政治,経済,社会の学習を各学年を通し て系統的に行うこと,第6学年の終了までに中学校における地誌的学習 の基礎やわが国の各時代の様子の理解が身に付くように配慮することを 要点の中で挙げている。これまでの問題解決学習において学力が低下し ていることや,教育の系統性が軽視されているといった批判から,この. ような内容面での改訂が行われたのである。したがって,知識を問題解 決的に習得するという学習方法が採られることになった。問題解決的社 会科から,系統的な知識の習得をめざす社会科への過渡期の学習指導要 領であるといえる。. (2)1958年版小学校学習指導要領. この改訂の要点の1つに,地理,歴史の基礎的理解を得させるため,. 内容と指導方法を再検討することを挙げている。内容として,学年目標 にもとづいて知識・理解内容が設定されている。この改訂によって,従 一5一.

(10) 来の問題解決型の社会科から,系統的な知識の習得を重視する理解型の 社会科への転換が図られた。. (3)1968年越小学校学習指導要領. この改訂では,教科の目標を「社会生活についての正しい理解を深 め,民主的な国家,社会の成員として必要な公民的資質を養う。」と. し,具体目標の1つとして社会生活を理解するための能力である資料活 用力,観察力,思考力の3つを総合した社会的判断力を育てることを挙 げている。この改訂によって,系統性を重視した理解型の社会科とし て,より完成されたものとなった。. (4)1977年版小学校学習指導要領. 改訂の方針として,1978年の小学校指導書社会編で「ともすれば知識 の伝達に偏る傾向にある学校教育の現状を改め,自ら考え正しく判断で きる力を養う教育への転換を図っていこうとするものである」と述べ,. この改訂の柱である「ゆとりと充実」を基盤として内容の精選を図ると ともに,思考力,判断力の育成に重点が置かれている。教科の目標とし. て「社会生活についての基礎的理解を図り,わが国の国土と歴史に対す る理解と愛情を育て,民主的,平和的な国家・社会の形成者として必要 な公民的資質の基礎を養う。」として,情意的側面を重視するととも に, 「社会的生活についての基礎的理解」によって「公民的資質の基礎. を養う」という従来の理解型の社会科を引き継ぎながらも,「考える社 会科」への転換を図っているといえる。. 一6一.

(11) 1.2 1989年版学習指導要領の特徴. 1987年の教育課程審議会答申では,教育課程の基準の改善の方針とし て,次の4点を示している。. ①豊かな心をもち,たくましく生きる人間の育成を図ること ②自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を 重視すること. ③国民として必要とされる基礎的・基本的内容を重視し,個性を 生かす教育の充実を図ること. ④国際理解を深め,わが国の文化と伝統を尊重する態度の育成を 重視すること. この答申を受けて,1989年に新学習指導要領が施行された。そこに は,新しい時代の社会科教育の方向性が示されている。教科の目標は,. 「社会生活についての理解を図り,わが国の国土と歴史に対する理解と. 愛情を育て,国際社会に生きる民主的,平和的な国家・社会の形成者と して必要な公民的資質の基礎を養う。」となり,国際化の進展に対応し て,国際的な視野の育成が大きなねらいとして位置づけられている。 内容については,社会構造の変化に伴って変更が加えられているが, その記述が「…・調べ(観察し)・…理解できるようにする」というよ うに,学習活動を内容として示していることが特徴となっている。これ. は,観察力,表現力,調べ方など社会科の能力の育成につながるもので ある。したがって,学習方法についても,活動や体験が重視されてい る。. 一7一.

(12) 1989年版の学習指導要領では, 「公民的資質の基礎を養う」という小 学校社会科における究極的な目標を保持しつつ,活動や体験を重視し, 子どもによる社会生活の調査・探求によって「社会生活の理解を図る」 と同時に,自ら学ぶ力,すなわち自己教育力を育成しようとしていると いえる。. また,1993年の小学校社会指導資料によれば,今後の社会科授業のあ り方として, 「子供自らが意欲的に学ぶ態度や,思考力,判断力,表現. 力などの能力の育成を重視した社会科教育に基調を変えることが大切で ある。」と述べ,その実現のためには「問題解決的な学習や体験的な活. 動を組み入れる」ことが必要であるとし,学習方法として問題解決学習 を提唱している。. このように,現行の学習指導要領では,従来の系統的な知識を定着さ せる教育から,態度や能力を育てる教育への転換を図っていることが明 らかである。そして,そのための具体的な学習方法として,体験的な学. 習を取り入れるとともに,子どもが主体的に取り組む問題解決的な学習 過程の構築を促しているのである。. 1.3 小学校社会科授業の問題点. 1.3.1 授業設計における問題点. では,教育現場で実践されている問題解決学習には,どのような問題 点があるのだろうか。北俊夫は,次のように指摘している。. ①問題解決学習の形式化 一8一.

(13) ②問題解決学習の形骸化 ③問題解決が教師誘導型になっていないか. ①については,一般的な問題解決過程である「学習問題をつくる→予 想を立てる→学習問題について調べる→調べたことをまとめる」という 一連の活動が形式化し,子どもの思考や学習活動を無理矢理形式にあわ. せている授業が多いことを指摘している。②については,1時間の授業 の中で「つかむ,調べる,まとめる」の過程を展開するために,たとえ ば教師が学習課題を設定し,子どもが学習課題をつかまないまま学習が 進められる事態が生じるなど,子どもに問題解決能力が育っていないこ とを危惧している。③については,学習をスムーズに展開しようとして. 教師の意図を強く出したり,指示を多くしたりするため,子どもが受け 身の態度で学習に取り組んでいることを指摘している[北,1993]。 このような指摘は,教師が「問題をつかむ→調べる→まとめる」と いった問題解決の学習過程を固定的にとらえたり,学習活動を形式的に. 位置づけていることに原因があると考えられる。また,これまで態度や 能力を育てることより,系統的な指導内容を共通的に身につけさせるこ とを重視してきたため,教師の指示が多くなり,それが子どもの学習態 度を受け身にし,教師による「教え込み」と指摘される原因になった。. 教材については,特に高学年においては「教科書を教える」という教師 の姿勢が強く,これも教え込みの社会科を助長する一因になっている。. したがって,これからの問題解決学習においては,子どもが自ら学ぶ 態度や思考力,判断力,表現力などのいわゆる問題解決能力を育てるこ とに重点を置くとともに,問題解決の過程における子どもの思考を考慮 し,学習意欲を高める柔軟な授業設計の思想と教材開発が必要になる。. 一9一.

(14) 1.3.2 「理解」することのとらえ直し. これまで,社会科は「暗記教科」であると指摘されることがあった。 それは,系統的な知識を身につけさせることが重視されてきたことによ るが,何かを「暗記する」あるいは「記憶する」ことに対しては,子ど もは, 「何のために暗記するのか」という学習の意味を見いだすことは. 難しいと思われる。子どもにとって意味のあることとは,日常生活の中 で「これは大切だ」と感じ,自分をとりまく社会の中で,自分は周囲に 対して何ができるかを考え,働きかけようとすることであり,そのよう な「大切なこと」を発見できるような学習が意味のある学習であると考 える。. 社会科の学習において, 「理解」するとは,問題解決のために必要な. 情報を収集し,読みとり,関係づけることによって概念を形成し,その 概念から自分の生活や自分をとりまく社会をよりよいものにするために. 大切なことを発見し,自分には何ができるかを考えることである。これ までの社会科授業の問題点の1つは,特に高学年においては,子どもの 日常生活における生活経験や既有知識とは結びつかない,教科書や資料 集などにある社会的事象のみを授業で扱っていたことであり,子どもに とって学習内容と自分の生活や自分をとりまく社会との関わりをとらえ ることが困難であったことである。. したがって,子どもが「理解」できるような授業を実現するために は,従来のように子どもの日常生活とかけ離れた社会的事象の学習に終. 始するのでなく,子どもの日常生活における実感を伴った経験や知識 と,学校で学ぶ新しい知識とを,何らかの方法で関連づけ,子どもに とって意味のある学習を成立させることが必要である。 一10一.

(15) 1.4 これからの問題解決学習のあり方. 1.4.1 授業設計のあり方. 社会科における問題解決能力は,子どもが自ら問題を見つけ,問題を 解決するための情報を収集し,その情報から自分なりに考えたり判断し たりすることによって育っていくと考える。このような学習活動は,教 師が誘導するのでなく,子どもが主体的に進める必要がある。こうした 授業を実現するためには,授業設計において,以下のような手だてが必 要である。. ①子どもが問題意識を明確に持つようにすること. 問題解決は,子どもの問題意識が出発点となる。問題意識が強いほ ど,子どもは自らの考えや既有知識をもとにしながら,それを解決して いこうとする切実感を強くし,追求意欲を高める。したがって,追求の. エネルギーともいえる問題意識を子どもが明確にもち,それを学習課題 に高めるための授業設計上の工夫が必要になる。. ②問題解決過程を弾力的に構成すること. 問題解決能力を育てるためには,子どもが資料を集めたり,それをた んねんに読みとったりするための時間を十分確保する必要がある。1単 位時間において,常に「問題をつかむ→調べる→まとめる」といった一 連の問題解決の過程を固定的に構成するのでなく,子どもの学習状況に 応じて,1時間のすべてを「調べる」時間や「まとめる」時間に当てる など,学習過程を弾力的に構成する必要がある。さらに,小単元全体を 一11一.

(16) 1つの問題解決のサイクルとして構成することも,子どもの問題解決の 時間を保証するためには有効である。. ③子どもの追求意欲を高める学習環境を設定すること. 問題解決においては,子どもが学習課題を解決するために必要な情報 (資料)を収集し,読みとる活動を行う。したがって,子ども一人ひと. りの問題意識や興味,関心,考え方などの違いに応じられるように,豊 富な情報を用意しておく必要がある。また,問題解決を子どもが主体的 に進めるためには,教師が一方的に教材を提示するのでなく,子ども自 身が1画報を選択,収集できるタう参学習環境を設定する必要が凝る・そ れによって,子どもの追求意欲を高め,問題解決能力を育てることがで きる。. ④問題解決における子どもの思考を重視した単元構成を図ること. 子どもが問題解決に主体的に取り組むためには,単元の学習内容に関 わる生活経験:や官有知識,興味,関心,調べ学習に対する意欲など,子. どもの実態を把握し,その上でどのような学習活動がどの段階で必要か を判断し,構成していく必要がある。子どもの実態を把握することで,. 情報収集や読みとり,まとめなど,問題解決における子どもの思考を教 師がどこまで支援するかを判断するめやすにもなる。. ⑤学習活動に応じた学習形態を選択すること. 学習形態には,一斉学習,小集団学習,個別学習が考えられるが,そ れぞれの利点を生かし,どの学習活動でどの学習形態を選択するかを検 討する必要がある。問題解決の学習過程においては,一人ひとりの子ど 一12一.

(17) もの問題意識や興味・関心に応じ,しかも子ども同士の意見交換によっ て考えを練り上げたり,助け合ったりすることの効果を考えあわせる と,小集団学習を学習形態の基本とすることが望ましい。. 以上述べてきたことを授業設計における基本的な考え方とし,具体的 な授業設計と教材開発を進めることで,教師誘導型,知識詰め込み型で あるとか,形式化,形骸化していると指摘されていた従来の授業を改善 し,子どもが自ら意欲的に学ぶ態度や,思考力,判断力といった能力の 育成を図ることができると考える。. 1.4.2 「理解」できる問題解決学習のあり方. 問題解決学習において,態度や能力を育てることは重要である。しか し,子どもの側からすれば,自らの問題が解決できなければ,その学習 に満足することはできないと思われる。自らの問題意識をもとに学習課 題を設定し,それを追求し,解決できたとき,学習の成果に満足できる と思われる。しかし,単に新しい知識を習得するだけでは, 「暗記」に. 終わったのかもしれず,子どもにとって意味のある学習が成立したとは いえない。. ここで,子どもが「理解」するとはどういう状態であるのか考える必 要がある。佐伯絆は『「わかる」といえるためには,このように,一見 「別の世界」と思える状況同士が,統一的に説明され,うなげられなけ ればならない』と述べている[佐伯,1995]。 「わかる」は「理解」と 同義であると解してよいと思われる。. これを社会科の学習で考えてみると, 「別の世界」とは,1つは学校 一13一.

(18) で学ぶ概念的な知識の世界であり,もう1つは子どもが日常生活の中で 経験的に獲得している実感を伴った知識の世界であると考えることがで きる。したがって,子どもが「理解」するためには,概念的な知識の世. 界と,経験的な知識の世界とを,何らかの方法によってつなぐことが必 要であるといえる。それによって,子どもは自分の周囲の世界に対して どう働きかけたらよいのか,どう行動すればよいのかといった,学習す ることの意味を見いだすことができると考える。. このことから,問題解決の過程で学んでいく概念と,子どもの経験や 既有知識とを結びつけるような学習活動を,新しい問題解決学習の学習 過程として構成していくことの必要性が社会科の授業改善の視点として 指摘できる。. 一14一.

(19) 第2章 ハイパーメディアを利用した授業の設計. 2.1 授業設計の方法. 2.1。1 社会科学習におけるハイパーメディアの利用. 学級が共通の学習課題を追求するような問題解決学習においては,追 求するための情報(資料)はそれほど多くを必要としない。しかし,子 ども一人ひとりの問題意識を重視した授業においては,複数の学習課題. が設定されることが予想される。その場合,教師はそれぞれの学習課題 を子どもが追求するために必要なだけの,豊富な情報を準備しておく必. 要がある。また,5年生の社会科学習では,授業で扱う事例が子どもが 直接観察することができない日本の各地や日本をとりまく世界の抽象的 な社会的事象であり,子どもの生活経験や既有知識の少なさから,その 社会的事象を具体的にとらえることは難しく,深まりのない授業になり. がちである。したがって,授業で扱う遠い地域の社会的事象を子どもに イメージ豊かにとらえさせるためには,できる限り多くの情報を用意 し,映像や音声などによって具体的,多面的にとらえることができるよ うにするとともに子どもの興味,関心,意欲を高めるように工夫するこ とが必要である。開平知識の少ない子どもにとって,授業で事例として 取り上げる社会的事象には初めて出会うことが多いため,特に映像1青報 の提示が有効である。. そこで,従来から多様なメディアを利用する様々な授業設計の方法が 提案されてきた。水越敏行はコースアウトラインを軸にしたジグザグ方 式による授業設計の方法を提案し,メディアの機能と単元構成とをジグ 一15一.

(20) ザグさせて,授業案を絶えず修正していくことの必要性を指摘している [水越,1990]。また,木原俊行はマルチメディアを重視し,教材の収 集や整i理,分析をも含めた授業設計の技法を提案している[木原, 1993] o. 近年,1台のコンピュータで多様な情報を操作し,利用できるハイパ ーメディアが登場し,これを用いて授業を進めていくことが可能になっ た。ハイパーメディアの特性として,まず,静止画,動画,音声,アニ メーションなど,多様な情報をユーザが簡単に扱うことができるという ことが挙げられる。子どもは,これを利用することによって,遠い地域 の社会的事象をより実感的にとらえることができる。また,子どもが調. べたことを映像やテキストなどの形で入力することにより,教師だけで なく,子どもが教材づくりに参加することも可能になる。ハイパーメデ ィアのもう1つの特性は,ファイル間のリンク付けや情報問のリンク付 けが自由にできることである。したがって,教材の構造を柔軟に構築す ることができるため,情報を収集する力を育てたい,たんねんに読みと らせたいといった授業における教師の意図を教材に組み込むことができ る。また,子どもの情報探索においては子どもの多様な思考に対応する ようなナビゲーションができるように設計することが可能になる。. したがって,ハイパーメディアを教材として用いることは,社会科の 学習において有効であると考える。しかし,ハイパーメディアを活かす 授業をどのように設計するか,どのような教育的機能をハイパーメディ ア教材に組み込むかなど,課題は多い。そこで,ハイパーメディア教材 を利用した授業設計の方法について,次に述べることにする。. 一16一.

(21) 2.1.2 授業設計の手順. (1)授業設計の要点. 前述のように,ハイパーメディアはファイル間,情報問のリンク付け が自由にできるという特性から,単元の学習に対する教師の意図を組み 込むことや,子どもの情報探索においては子どもの多様な思考に対応す るようなナビゲーションができるように設計することが可能になる。し たがって,ハイパーメディアを重視した授業設計においては,その単元 で子どもにどのような学習活動を展開させたいのか,子どもにどのよう な能力を育てたいのか,また,教材作成や単元構成等の授業づくりその ものに子どもをどのようにして参加させるかといった,単元の学習に対 する教師の構想がポイントになる。さらに,この構想を実現するために は,ハイパーメディア教材に要求される教育的機能を開発する新しいオ ーサリング技術が重要になる。. (2)これまでに提案された授業設計. ハイパーメディア教材の利用を重視した授業設計と授業実践の研究 は,これまでいくつか報告されている。正司和彦,笹山邦夫は分野探索 を初めとするオーサリング技術の開発により,子どもの情報探索におけ る思考過程を大切にした教材を作成し,ハイパーメディアを用いて子ど もの活動をどうしたいのかという教師の授業に対するねらいを前面に出. した授業設計を行い,実践している[正司,笹山,1996]。この授業設 計の特徴として,授業設計を従来のように目標分析から始めるのでな く,メディアに対する意識を反映した教師のねらいや願いといった単元 構想を出発点としていること,さらに子どもの実態やメディアを関連さ 一17一.

(22) せながら単元構想を洗練し,授業の粗筋,単元構成へと授業の流れを 徐々に明確iにしていくこと,子どもの情報探索活動の特性や思考過程を 重視していることなどが挙げられる。教材開発の面では,カードプロパ ティと動的リンク機構の採用による分野探索機能を実現し,子どもの自 由な情報探索を可能にしている。. このように,笹山はハイパーメディアをメディア教材の中核とする授 業設計を行い,実践することによってその有効性を確かめている。しか し,明確な授業の設計手順を提案するまでには至っていない。また,ハ イパーメディア教材の学習者参加機能として,子どもが自主的に調べた. ことをカード上にまとめ,資料の1枚として加えることができるように している。しかし,この場合発展的な学習の中での学習者参加であり,. 子どもが作成した資料(カード)によって授業のねらいに迫るような位 置づけはされていない。. 上柿直人,長瀬久明,正司は,笹山が実践した授業設計の方法に水越 のジグザグ方式による授業設計理論を取り入れ,より洗練された授業設. 計の手順を提案している[上柿,長瀬,正司,1995]。上柿の授業設計 手順は,学習活動に対する教師の意識とハイパーメディアに対する教師 の意識とを授業設計に関連させ,ジグザグさせながら進めていくことを 特徴としている。この手川頁によって,学習過程の各段階においてハイパ. ーメディア教材にどのような教育的機能を組み込むべきかが明らかにな り,教材開発を子どもの学習活動に対応させて柔軟に設計したり修正し たりしながら進めることが可能になる。上柿はこの授業設計手順の有効. 性を2つの小学校での実践によって確かめている。オーサリング技術の 開発の面では,笹山の分野探索機能を採用することによって子どもの自 由な情報探索を実現し,まとめカードの開発によって学習した情報を整 一18一.

(23) 理し,グループの構成員全員が判断に加わって学習のまとめを行うこと を可能にしている。. 上柿の提案によって,ハイパーメディアを重視した授業設計の手順の あり方が明確になった。しかし,教師が意図する学習活動を実現するた めにハイパーメディア教材にどのような教育的機能が必要か,その教育 的機能によって学習活動をどのように修正できるかといった学習活動と ハイパーメディアとの関連づけが密接でなく,実践においても明らかに されていない。また,子どもは用意されたハイパーメディア教材を受動. 的に利用するのみであり,笹山が実践したように子どもが教材作成に参 加し,調べたことをカード上にまとめて交流したり,さらに子どもが作 成したカードをもとにして追求するような機能は用意されておらず,単 元計画にもそのような学習は計画されていない。. (3)本研究における授業設計の考え方. 本研究においては,基本的に笹山,上柿の授業設計の手順を踏襲す る。特に上柿の提案する子どもの学習活動に対する教師の意識とハイパ. ーメディアに対する教師の意識を授業設計に関連づけながら進める手順 は,水越のジグザグ方式を取り入れることによってハイパーメディア教 材の機能を子どもの学習活動と密接に関わらせ,授業設計と教材開発を 並行して進められるという利点があり,ハイパーメディアを教材の核と. する授業設計の方法として有効である。そこで,上柿の授業設計の手順 を導入し,学習活動とハイパーメディアの授業設計への関連をさらに強. 化するために若干の変更を加え,具体的な授業設計を行う。変更点を以 下に示す。. ・単元構想の次の段階で子どもの実態把握を行う。これは,単元の学習 一19一.

(24) 内容に関わる子どもの生活経験や既有知識を把握し,学習活動とハイ パーメディア教材の教育的機能を検討するときの重要な資料とするた めである。ここで検討された学習活動とハイパーメディア教材の教育 的機能をもとにして単元の流れが構想される。. ・学習活動とハイパーメディア教材の教育的機能を授業設計の初期の段 階から検討し,構想する。子どもの実態把握を行った直後から検討を 始め, 「この学習活動を行うためにはハイパーメディア教材にどのよ うな教育的機能が必要か」, 「この機能によってもっと発展的な活動. ができるのではないか」というように,学習活動の明確化と修正,ハ イパーメディア教材の機能の明確化と開発,修正を繰り返し,授業設 計に密接に関連づけながら進めていく。. 前述のように,ハイパーメディア教材には子どもにどんな知識を身に つけさせたいのか,どんな能力を育てたいのか,そのためにどのような. 学習活動をさせたいのかといった教師のねらいや意図を教材の教育的機 能として組み込むことが必要である。このためには,ハイパーメディア. 教材に要求される教育的機能を明らかにして,それを実現するための新 しいオーサリング技術を開発する必要がある。同時に授業設計において は,その単元における知識や能力を身につけさせるために必要な学習活 動と,この学習活動を支援するハイパーメディアを密接に関連させるこ とが重要である。. 授業設計といえば,詳細な目標分析から始めるのが従来の一般的な方 法であるが,ハイパーメディアを教材の中核とする授業の設計において は,学習指導要領及び指導書から導き出したその単元で身につけさせた い知識や能力と,ハイパーメディアが子どもの学習活動をどこまで支援 一20一.

(25) できそうかということを考えあわせ,教師のねらいや願いといった単元 構想を出発点とする。次に,単元に対する子どもの興味・関心や既有知 識,調べ学習に対する態度や意欲など,子どもの実態を把握することに よって,どの段階ではどのような学習活動が必要か,その学習活動を実. 現するためにはハイパーメディアにどのような教育的機能が必要か,他 にもっと適切なメディアはないのか,といったことを検討し,単元の大 まかな流れを決める。学習活動が明確になれば,どのようなメディアを. 利用するかが決まってくる。また,ハイパーメディア教材に組み込む教 育的機能も明らかになるので,学習活動における子どもの思考を念頭に 置きながら,その開発にとりかかる。さらに,単元計画,指導案作成と. 進め,授業設計を具体化していくが,ここではそれぞれにハイパーメデ ィア教材の教育的機能を関連させ,授業設計が具体化されることによっ て教材の機能を修正したり,逆に,教材に新しい機能を加えることに よって単元計画や指導案を修正したりしていく。単元計画では,子ども の実態やハイパーメディア教材,学習活動などから具体的な授業展開を 計画する。それによって,ワークシートなどのハイパーメディア教材の. 補助的教材や発問などが具体的に明らかになるので,学習指導案を作成 して位置づけていく。授業を実施する段階では,子どもの反応を見なが ら,教材を変更したり,子どもが作成したカードを教材に加えることに より,子どもにとってより操作しやすく,学習意欲を高めることができ るように配慮する。ハイパーメディア教材は,動的オーサリング法[正. 司,笹山 1995]等により,授業展開中でも容易に変更できるようにす る。このような授業設計の手順を図2.1−1にまとめる。 このように,学習活動とハイパーメディアを授業設計に関連させ,問 題解決の過程における子どもの思考を常に念頭に置いて授業を設計し, 一21一.

(26) 実践することによって,子どもの学習意欲を高め,変容させることが期 待できる。. 〈学習活動〉. 、く授業設計の回れ≧...〈ハイパーメディア〉. 子どもの 思考特性. 子どもの学習活 動とメディアと の関連づけ. 授業実施. 教材の変更. 図2.1−1 授業設計の手順. 2.2 授業改善の方法. 本研究で実践する授業では,小学校5年生社会科の森林資源の保護に 関する単元を取り上げる。この単元は1989年版の学習指導要領で新しく 加えられた内容であり,実践が少ないことから,本研究がこの単元の授 業の1つの方向性を示すことができると考える。また,この単元で扱う 日本や世界の森林破壊や森林保護に関わる抽象的な社会的事象が,子ど もの身の回りの生活や子どもが住む身近な地域の中に観察可能な具体的 な事象として存在しており,そうした具体的な事象と本単元で学習する. 一22一.

(27) 抽象的な社会的事象とをハイパーメディア教材で結びつけることで,本 単元の学習内容の理解を促進することのできる対象として適している。. 1.3.2及び1.4では,社会科の学習において子どもが「理解」する とはどういう状態であるかをとらえ直すことと,子どもが「理解」する ためには,概念的な知識の世界と経験:的な知識の世界とを何らかの方法. で結ぶことが必要であることを述べ,それを授業改善の視点として指摘 した。本節では,本研究において子どもが「理解」することをどのよう にとらえ,授業改善にどのように活かしていくかを明らかにする。. 2.2.1 5年生の社会科授業における「理解」のとらえ方. 5年生社会科においては,現在日本や世界で現実に起きている社会的 事象を事例として取り上げ,問題解決的な学習を通してその仕組みを学. んでいく。ここで扱う社会的事象には2種存在する。1つは子どもが直 接観察し,具体的にとらえることのできる身近な地域の社会的事象であ る。もう1つは,子どもが直接観察できないため,資料等で間接的にし かとらえることのできない日本の各地や世界に存在している社会的事象 である。本研究では,このように子どもにとって身近な直接的事象と日 本,世界で実際に起きている間接的であるゆえに抽象的な社会的事象と を合わせて「現実的世界」と呼ぶことにする(図2.2−1)。. また,社会科の学習で目標とするのは,現実的世界の個々の社会的事 象をとらえ,それらを関係づけることによって知識を習得すること,す なわち概念の形成であり,知識を習得するための能力を育てることであ る。さらに形成された概念から興味,関心を持って現実的世界を見直. 一23一.

(28) 現実的世界 直接観察することができない 日本や世界の社会的事象. 。. 面. 〔コ〕〔ココ. 具体的にとらえること ができる身近な地域の 社会的事象. 曽. 薩響翻. 社会的事象 図2.2−1 現実的世界. し,自分は日常生活の中でどうすべきか,どう働きかけたらよいかを考 えること,すなわち自分と現実的世界との関わり方を見いだすことであ る。本研究では,単元の学習を通して習得する概念的な知識の世界を 「概念的世界」と呼ぶことにする(図2.2−2)。 社会的事象. 概念的世界. 陰 図2.2−2 概念的世界. 小学校指導書社会科編では,第5学年の目標として図2.2−3に示す 3点を掲げ,その中で「理解」に関わる目標は(1)と(2)である[文部 省,1989]。. 5年生に回ると,中学年における地域学習から,日本の産業の特色や 国土の様子,さらには貿易などを通した世界の国々との関わりにまで視 野を広げた学習が展開される。また,指導書には内容としてそれぞれの 産業の盛んな地域を具体的事例として調べていくことが示されているこ とから,各教科書は日本の各地から具体的事例に該当する地域を取り上 一24一.

(29) (1)我が国の食料生産,工業生産の特色及び運輸通信などの産業の様子やこれ らの産業と国民生活との関連について理解できるようにし,我が国の産業の発 展に関心を持つようにする。 (2)我が国の国土の様子について理解できるようにし,環境の保全と資源の重要 性について関心を深めるようにするとともに,国土に対する愛情を育てる。 (3)地図,年表,統計などの基礎的資料を効果的に活用することができるように するとともに,社会的事象の意味について考えるようにする。. 図2.2−3 第5学年の社会科の目標. げ,掲載している。したがって,これらの地域における社会的事象の学. 習を通して,わが国の産業や国土の様子について学習し,概念の形成を 図るのがこれまでの一般的な授業の方法である。. 一方,子どもが直接的にとらえることのできる社会的事象は,日常生 活の中で実物を見たり触れたりすることのできる経験的な事象であり,. その地域的な広がりは,5年生の子どもにとってはせいぜい自分が住む 市町村の範囲にとどまると思われる。したがって,授業では,子どもは 自分にとって具体的,経験:的ではない遠い地域の抽象的な社会的事象を. 学習しなければならず,教師の側にもこうしたギャップを埋め合わせる. 工夫はされていない。このような授業は,教師が用意した資料や教科書 の記述,資料集など,限られたごく少ない情報によって,抽象的な知識 の伝達という形で行われることになる。このことが,5年生社会科の学 習を難しくし,高学年になるほど社会科が「暗記教科」と批判される原 因の1つになっている。. したがって,子どもが単元の学習内容を理解するためには,子どもに とって抽象的な現実的世界の社会的事象を具体的にとらえることができ. るようにする工夫が必要である。また,自分と現実的世界の関わりを見 いだすためには,学校で学ぶ新しい知識,すなわち単元の学習内容であ る概念的世界と子どもの日常生活における具体的・経験:的な現実的世界 一25一.

(30) とを結びつけることが必要である。本研究では,この点を授業設計の基 盤をなすものとしてとらえ,両者を結びつける手だてを模索していく。. 2.2.2 ランパートの実践からの示唆. M.Lampertは,小学校4年生の多位数のかけ算の教授方法で,数学的 探求を子どもの日常的知識と連続したものにしようとし,計算方法を理 解するということを「直感的知識Intuitive Knowledge」, 「計算的. 知識 Computational Knowledge」, 「具体的知識 Concrete Knowledge」, 「原理的知識 Principled Knowledge」という異な る4つの知識を交互に行き来させ,分かち難く結びつけることとして想. 定した[M.Lampert,1986]。ランパートのこの考え方は,図2.2−4 のように表すことができる。. ランパートは,子どもが暗黙のうちに持っている教室外の世界に関す る知識から出発し,その知識とかけ算の問題解決とを関連させることに よって,子どもが納得できる皇位数のかけ算の学習を実現した。. 本研究においても,子どもが本単元の学習内容である森林破壊の原因 や森林を保護する活動などについて理解するためには,ランパートの考 え方を適用し,子どもが日常生活の中で具体的,経験的にとらえること. 直感的知識. 計算知識. 具体的知識. 原理的知識. t. t. 図2.2−4 4つの知識を行き来させた理解. 一26一.

(31) のできる現実的な世界と概念的な世界とを何らかの方法によって結びつ. ける授業改善を行うことにより,子どもの経験をもとにして抽象的な社 会的事象の理解を深めることが可能と考える。. 2.2.3 社会科における理解のモデル. (1)3つの世界. 5年生の社会科では,わが国の産業及び国土が学習内容となってお り,事例として取り上げる現実的世界の現象は子どもが直接観察するこ とができない,子どもにとって抽象的な日本の各地や世界の社会的事象. のため,子どもがこれを具体的にとらえるようにするためには,まず適 切な資料が必要となる。子どもは,資料によって現実的世界の抽象的な 現象を間接的にとらえ,概念的世界を形成していく。. これまでの一般的な社会科の授業では,資料として教科書や資料集, あるいは授業の目標を達成するために教師が用意する資料が使われてい る。一斉授業で同一の学習課題を追求していく授業であればそれで事足 りるが,問題解決能力の育成をめざし,子ども個々の問題意識を重視し. て,異なる学習課題を追求する授業においては,教科書や資料集だけで は子どもの追求に応え,問題を解決させることは難しい。また,教科書. や資料集に掲載されている資料は,必ずしも教師の指導観に合うものば かりではない。. また,激しい変化が予想されるこれからの社会を問題解決的に生きる ためには,自分の目で確かめることのできない日本や世界の各地での出 来事,政治,経済の動きなどを的確に把握していかなければならない。. そのためにはテレビやラジオ,新聞などからの様々な情報,すなわち資 一27一.

(32) 料によって現実的世界を正しくとらえていく能力を育てることが必要で ある。逆に自分が直接観察できる現実的世界をより正確にとらえ,資料 にし,その資料によって他へ伝達していく能力も重要になる。そのため には,具体的な現実的世界の現象を資料にまとめる能力を育てることが 必要である。. したがって,5年生社会科の学習においては,現実的世界の抽象的な 社会的事象を具体的にとらえ,概念的世界を形成するためには,まず,. 子どもの興味・関心に応じ,子どもが必要に応じて収集できるような豊 富な資料を用意することが必要である。また,ランパートの考え方の適 用として,子どもが日常生活の中で具体的,経験的にとらえることので きる現実的な世界と概念的な世界とを資料を通して結びつけることが必 要である。本研究では,現実的世界の社会的事象から概念的世界を形成 するために,両者の橋渡しの役割を担う世界として, 「資料の世界」を 考える。. 以上のように,本研究においては,現実的世界,概念的世界,資料の. 世界という3つの世界を考える。ここで,本単元において3つの世界が 指すものは何かを述べる。. (2)現実的世界. 現実的世界とは,開発や焼き畑,酸性雨などによって森林が破壊され ている現象や,植林,紙のリサイクル,会議や条約によって森林を保護 しようとする多様な活動の世界である。現実的世界にある森林破壊や森. 林保護の活動には,子どもにとって抽象的な日本や世界の各地に存在す るものと,子どもが自分の目で直接確かめることができ,具体的にとら えることが可能な身近な地域におけるものとがある。 一28一.

(33) しかし,身近な地域にあるこうした社会的事象について,ゴルフ場の 建設や廃品回収が行われていることは知っていても,子どもはこれまで の生活の中でそれらを気にとめることもなく見過ごしており,それに よって森林が破壊されていることや森林の保護に役立っているといった. 事実に気づくことは少ないと思われる。したがって,このような事実に 気づかせるためには,取材活動を設定することによって問題意識を持っ. てそれらを見直し,データを収集することと,資料づくり活動を設定す ることによってそのデータをまとめ,社会的事象を的確にとらえること. が必要である。それによって子どもは身近な地域の社会的事象が森林破 壊の原因になっていたり森林の保護に役立っていることに気づき,概念 が形成され,自分の生活を振り返って自分はどうすべきかを考えるよう になることが期待できる。また,取材,資料づくりという経験をもとに して,抽象的な社会的事象の理解を深めることができる。. 本単元における現実的世界の考え方を図2.2−5に示す。この図は,. 現実的世界に存在する子どもが直接観察し,具体的にとらえることので きるゴルフ場の建設や廃品回収などの身近な地域の社会的事象と,子ど もが直接観察することができないため,資料等で間接的にしかとらえる ことのできない酸性雨や焼き畑などの日本や世界の社会的事象を示して いる。. 現実的世界 日本や世界における森林破壊 の現象や森林を保護する活動. 國 [郵 医詞コ 画コ [蚕郵. 薩蚕麹薩錘蓼 身近な地域における森 林破壊の現象や森林を 保護する活動. 図2.2−5 本単元における現実的世界. 一29一.

(34) (3)概念的世界. 概念的世界とは,本単元で取り上げる個々の社会的事象がどのような 現象であるのかをつかみ,それらを原因と結果の関係や類似した関係,. 対立する関係などに関係づけることによって習得する知識の世界であ る。したがって,単元の目標との関わりが深い。図2.2−3に示した小 学校指導書社会編では,本単元に関わる目標として「我が国の国土の様 子について理解」させ,「環境の保全と資源の重要性について関心を深 め」させる学習を通して「国土に対する愛情を育てる」ことを挙げてい る。また,内容(4)では「国土の保全や水資源の酒養などのために森林. 資源が大切であることに気づくようにする」とし,その解説の中で「森 林資源の働きを人間生活や産業との関連から考えさせること」, 「森林. 資源が人間の生活や産業に欠かせないものであり,その育成や保護が大 切であることに気づかせるようにする」と述べている。これを受けて,. 各教科書では林業の盛んな地域を事例として取り上げ,林業に携わる人 の工夫・努力や森林の働き,さらに日本や世界における森林破壊の様子 や森林を守るための様々な活動について共通して記述されている。. したがって,本単元における概念的世界は,森林破壊,森林保護,森 林の働きという3つの概念から構成される。問題解決の学習過程におい ては,まず森林の働きを知り,その大切さを認識した上で,なぜ森林が 破壊されているのか,どのようにして森林を守っているのかを追求して いくのが子どもの思考の流れである。したがって,3つの概念は,図2. 2−6のように位置づけられる。. 一30一.

(35) 概念的世界. 森林保護. 森林破壊 近年,森林は人口増加や開 発,工業化の進展などに よって減少している. t. 森林資源を保護するためには,一 人ひとりの努力と人々の協力が必 要であり,現在様々な活動が行わ れている. , 森林保護. 森林は木材を提供し,災害の防止や水資源の酒養,生活 環境の保全などの役割を果たし,人間の生活にとって大 切な資源である. 図2.2−6 本単元における概念的世界. (4)資料の世界. 資料の世界とは,本単元では現実的世界の抽象的な森林破壊や森林の 保護,森林の働きに関する社会的事象を子どもが具体的にとらえるため に教師が用意する資料と,身近な地域の社会的事象であっても子どもが. 見過ごしている事実に気づくために,子ども自身が作成する資料を指. す。本単元では,実物,VTR,写真などの資料を用意するが,中心と なる資料は主として画像とテキストで構成するハイパーメディア教材で ある。中心資料としてハイパーメディア教材を取り上げるのは,オーサ リング技術を開発することによって以下のような点が可能になることに よる。. 第1に,ハイパーメディア教材は画像やテキストを初めとして多様な 情報を1枚のカードに集約して表示できる。しかも,スクリプトやコン トロール用のボタン類,提示する情報の配置を最初に決めておけば,後. は同じ形式のカードを簡単に作成できるので,子どもの問題解決に必要 一31一.

(36) なカードを豊富に用意することができる。第2に,ハイパーメディア教 材は単に情報を提示するだけでなく,教育的に考慮された機能(これを 教育的機能と呼ぶことにする)を組み込むことによって子どもの問題解 決における情報収集や関係づけなどの思考の支援ができることである。 このような子どもの思考を支援することによって,子どもの問題解決能. 力を育てることが可能になる。第3に,ハイパーメディア教材は教師だ けでなく,子どもがカードを作成し,教材づくりに参加すること,すな. わち学習者参加型の授業も容易にできることである。したがって,身近 な地域を取材し,資料づくりをするとき,資料を1枚のカードとして作 成することができ,しかも作成したカードをコピーすることによって,. 他のグループがそのカードを使って調べることも可能になる。 開発するハイパーメディア教材の詳細については,第3章で述べる。. 本単元における資料の世界を,図2.2−7に示す。この図は,子どもが 身近な地域のゴルフ場や道路の建設などの社会的事象を取材し,それに. よって得たデータを構成し,資料として作成したハイパーメディア教材 のカードと,子どもが直接観察することができないため,間接的にとら えることができるように,教師が作成した焼き畑や酸性雨などの日本や 世界の社会的事象を表すハイパーメディア教材のカードを示す。. 資料の世界. 歴』唾』 唾動 歴』[劉. 調画数 子どもが作成したカード. 教師が作成したカード (日本や世界の社会的事象に関するもの). (身近な地域の社会的事象 に関するもの). 図2.2−7 本単元における資料の世界. 一32一.

(37) (5)3つの世界と授業改善. 本研究では,図2.2−8のように,子どもが3つの世界を結びつける 活動や思考ができたとき,理解したと考える。. 図2.2−8において,まず,子どもは現実的世界の身近な地域の森林 破壊の現象や森林保護の活動を問題意識を持って調べ,調べたことをハ イパーメディア教材を使って資料にまとめる。この資料づくりの活動を 通して,子どもはそれまで見過ごしていたゴルフ場や道路の建設,ある いは廃品回収や牛乳パックの回収などが,実は森林破壊の原因になって いたり森林保護に役立っているということに気づき,概念的世界の形成 を図ることができる。ここでは,子どもが地域に出かけて社会的事象を 観察し,取材したことを資料にまとめるという体験的な活動によって,. 自らの生活を振り返ることが期待できる。すなわち,概念的世界から現 実的世界を見ることが可能になる。また,こうした経験をもとにして,. 子どもは現実的世界の抽象的な社会的事象をとらえることが可能になる と考える。. 次に,子どもは現実的世界の抽象的な社会的事象を,教師が用意した. ・情報の収集 ・情報の読みとり. ・情報の関係づけ. 日常生活の申で 自分は何をすべ きかを考える 資料づくり. 現実的世界の何 を表しているか をとらえる. 図2.2−8 社会科における「理解」. 一33一.

(38) ハイパーメディア教材の資料(カード)を通して追求していく。ハイパ. ーメディア教材の1枚のカードが1つの社会的事象を表す。子どもはグ ループで設定した学習課題を追求するために,ハイパーメディア教材の. 機能を利用して必要な情報を収集し,読みとり,個々の社会的事象が森 林破壊や森林の保護にどのように関係しているかを考え,それらの社会 的事象の関係を明らかにすることによって問題を解決し,概念を形成す る。すでに身近な地域の取材と資料づくりを経験し,取材した事象につ いての概念が形成されていると考えられ,ここで子どもが収集する抽象 的な社会的事象の読みとりや関係づけを深めることが可能になる。ま. た,多様な社会的事象を表す豊富なカードを調べることによって,資料 が現実的世界の何を表しているのかを考える力を養い,現実的世界をと らえ,見るための基礎を作ることができる。. 本研究では図2.2−8において,現実的世界から資料の世界を結ぶ資 料づくりと,資料の世界から概念一世界を結ぶ情報収集,情報の読みと り,情報の関係づけという学習活動にハイパーメディアを用いる。それ. は,新しいオーサリング技術の開発によって,以下の3点が実現できる ことによる。第1に,資料の世界を主としてハイパーメディア教材で構 成することにより,単に教師が用意した資料を見るだけでなく,子ども が資料(カード)を作成することで資料の世界に積極的に関わることを. 容易にすることである。第2に,本単元において問題解決を行う上で重 要な能力,すなわち情報を収集し,それを読みとり,関係づけるといっ た能力を育てたいという教師の意図を教材に組み込むことができること. である。第3に,子どもの情報探索においては,子どもの多様な思考に 対応するナビゲーションができるような設計が可能になることである。. 資料の世界から現実的世界を結ぶ能力,すなわちある資料を見て,そ 一34一.

(39) れが現実的世界の何を表しているかをとらえる能力は,本単元において はハイパーメディア教材に用意するカードを調べ,問題解決を進めるこ. とによってその基礎を作ることができる。しかし,この能力は1つの単. 元で育てられるものではなく,1年間あるいは小学校6年間といった長 い期間を通して育てるべきものである。したがってハイパーメディアだ けでなく,子どもの発達段階に応じた資料を用意し,継続的に指導して いく必要がある。. 資料の世界を通して現実的世界から概念的世界を結び付け,概念の形 成を図った後,理解するために重要なことは概念的世界から現実的世界 を見ることである。森林の資源としての重要性,森林が減少している事. 実,森林資源を保護するために行われている様々な活動を調べて概念を 形成し,自分の生活を振り返って,森林資源を守るために自分は何がで きるか,周囲の世界に対してどのように働きかけたらよいかを考え,自. 分なりの方法で行動しようとすることが大切である。本研究において は,子どもにこのような思考ができたとき,理解したと考える。. 従来の社会科における問題解決学習は,子どもの日常生活での経験や 既有知識とは結びつかない,教科書や資料集などにある抽象的な社会的 事象のみを扱い,しかも教師が設定した学習課題を教師が指示するごく 少ない資料で追求する授業が一般的で,教師誘導型,知識詰め込み型の. 授業であるとの指摘がなされてきた。本研究では,問題解決過程に3つ の世界を結びつける学習活動を設定することにより,従来の授業の改善 をめざす。. 一35一.

(40) 2.3 本単元における授業設計. 2.3.1 単元構想. 2.1で示した授業設計の考え方に基づき,本研究で実践する小学校5 年生の社会科授業の具体的な設計手法を明らかにする。ハイパーメディ. アを重視した授業設計においては,メディアに対する教師の意識と,教 師のねらいや願いといった単元構想とが出発点となる。すなわち,この 単元でハイパーメディアを用いて子どもの活動をどのようにしたいのか といった教師の学習指導に対する考え方が出発点となる。. (1)ハイパーメディアの特性. 問題解決学習においては,学習課題を追求するための情報収集,読み とりといった調べ学習が重要になる。ハイパーメディアは画像情報とテ. キスト情報を1枚のカード上に提示できるので,調べ学習におけるデー タベースとしての活用ができる。しかも,オーサリング法として動的リ ンク機構を導入することにより,子どもの思考にあわせ,情報空間を自 由に行き来しながら探索することが可能になる。. また,ハイパーメディアは単なるデータベースとしての利用だけでな く,情報の読みとりや関係づけなど,問題解決における思考の支援とし. ての活用が期待できる。したがって,いくつもの機能を合わせ持ったハ イパーメディアを重視し,単元の教材の核として利用することを意識し て授業設計を進める。. 一36一.

(41) (2)教師がねらう子どもの学習. ハイパーメディアの特性を考え合わせ,本単元では次のようなねら いを定めて授業を計画する。. ・問題解決の学習過程に現実的世界,概念的世界,資料の世界の3つの 世界を結びつける学習活動を設定することにより,問題解決能力を育 て,子どもが理解できる授業を実現する。. ・子どもがハイパーメディア教材の作成に参加することによって,興. 味,関心,意欲を高め,資料をつくる能力を育てる。また,資料を見 てそれが現実的世界の何を表しているかを見抜く力を育てる。 ・ハイパーメディア教材に問題解決における子どもの思考を支援する機. 能を組み込み,子どもが主体的に調べ,問題解決ができるようにする ことにより,調べる方法を知り,さらに自ら求めて調べようとする態 度を育てる。. 2.3.2 子どもの実態把握. (1)調査の目的と内容. 単元の学習内容に対する子どもの生活経験やイメージ(調査A),調. べ学習に対する態度(調査B),問題解決における思考(調査C)につ. いて調査することを目的として,平成8年4月24日,授業を実施するO 小学校5年2組(37名)に対して質問紙調査を行った。質問項目を図2 3−1に示す。なお,調査B,Cについては,子どもの変容を調べるた め,授業実施後にも行う。調査Cの分析では4件法を用いる。その理由 は,5件法を用いた場合,興味,関心や意欲のない子は中央の「どちら でもない」に集中すると考えられることによる。4件法を用いた場合,. 4つの値の間隔が等しくならないという統計処理上の問題が生じる。し 一37一.

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