3.1 教材開発の視点
教材開発にあたっては,次の2っの視点に立って開発する。第1は,
子どもが学習課題を解決するために必要とし,教科の目標を達成させる 内容の情報(カード)を提供することである。本研究では,子どもの問 題解決能力を育成するという観点から,一人ひとりの問題意識を重視
し,グループごとに学習課題を設定する。したがって,異なる学習課題 を追求し,解決させるためには,どのような内容の情報が必要かを検討 しなければならない。
第2は,情報の収集,読みとり,関係づけといった問題解決における 子どもの思考をどのように支援するかということである。事前調査か ら,社会科の学習でわからないことがあったときの解決方法として,80
%以上の子どもは家族や友達に聞くと答えている。このように,社会科 における問題解決を人に頼ってきた子ども達にとって,小集団で学習課 題を追求していくことには,困難を伴うことが予想される。したがっ て,問題解決における子どもの思考をいかに支援し,問題解決能力を育 てていくかを考える必要がある。ハイパーメディア教材には,子どもが 簡単に情報を収集したり読みとったりできるような機能ではなく,情報 収集や読みとりといった学習活動をナビゲーションしながらも,子ども
にある程度の負荷をかけることによって問題解決能力を育てることが可 能な教育的機能を用意することが必要である。
この2点について以下に述べる。
3.1.1 提供する情報の分類と構成
本単元は,1989年版の学習指導要領によって,環境教育の充実という 観点から新しく加えられた内容である。したがって,社会科における環 境教育という視点で教材の構成を考えていく必要がある。文部省から発 行されている環境教育指導資料(小学校編) (1992)によれば,環境教 育の視点からとらえた社会科の学習内容として,以下の6点が挙げられ
ている。
ア イ
ウ
寸 土 カ
児童の生活から環境を見つめる
生産,消費,廃棄のサイクルの視点からとらえる 計画的・協力的な活動の視点からとらえる
文化・開発の様子からとらえる 環境としての国土の理解を深める
日本と世界との関わりを考える
アは,地域に存在する水や樹木が資源としても重要であることに目を 向けさせ,自分の生活との関わりに気づかせることをねらうもので,環 境教育が自分の足下を見つめさせることを重視することを示している。
イは,日常生活が様々な商品を消費することで成り立っており,子ども の生活もまさに生産,消費,廃棄のサイクルの中にあることに気づか せ,環境保護の視点で自分の生活を見直し,改善していくことをねらっ たものである。ウは,環境を守る人々の活動を取り上げ,国や地方公共 団体,民間など,様々なレベルで多様な環境保護の活動が行われている
ことに気づかせようとするものである。エは,先人の働きや文化遺産の
一64一
学習を通して,文化遺産を尊重し,保護していこうとする態度を育てよ うとするものであるが,ここでは,よりよいくらしを求めて開発を進め た結果,環境破壊・自然破壊が進行したという事実に気づかせる必要が ある。オは,5年生の国土の学習を指している。特に,森林資源が国土 の保全や水資源の酒養などのために大切であることに気づかせることを ねらっている。カは,子ども達の生活が外国とのつながりで成り立って おり,貿易においては日本は外国から様々な資源を輸入しているが,そ れが環境問題にも関わりがあることに気づかせること,また,酸性雨や 地球の温暖化などの問題は世界的な課題になっていること,そのため,
こうした問題を解決するために,国際的な協力が必要であることに気づ かせることをねらっている。
以上,アからカは,環境教育の視点からとらえた小学校社会科の学習 内容を総括的に掲げたものである。したがって,これらの学習内容は本 単元においてはどのように位置づけられるかを検討し,再構成する必要
がある。
本単元の学習内容は,以下の4点で構成される。
①生産活動と森林資源との関わり
②子どもの生活と森林資源との関わり
③森林資源の保護のための働きかけ
④資源としての森林の働き
①は,国際的にみると,先進国では工業化が酸性雨の問題を起こして いることや,発展途上国では人口増加のため焼き畑を行ったり,先進国 への輸出によって森林を減少させていること,また,木材の最大の輸入
国がわが国であること,国内では,木材を原料とする工業製品が大量生 産されていることなど,主として産業と森林破壊の問題との関わりにつ
いての学習内容であり,イ,カに該当する。
②は,子どもが日常生活の中で紙や鉛筆などを使い捨てにしたり,便 利で快適なくらしを求めて道路や宅地を建設したり,スキー場などのレ
ジャー施設をつくることなど,子どもの生活に関わりのあるところでも 森林破壊が進んでいるという学習内容であり,ア,イ,エに該当する。
③は,民間レベルから世界的な取り組みまで,森林資源の保護のため の多様な活動についての学習内容であり,ウ,カに該当する。
④は,木材を生産したり自然環境を守るという森林の資源としての働 きについての学習内容であり,森林の種類や分布などもここに含む。オ
に該当する。
本単元の学習内容は,以上の4つの内容に大別できる。したがって,
子どもの問題解決のために提供する情報は,この4つの内容のいずれか に該当するものでなければならない。しかし,この4っの分類では,1 つの内容に含まれる情報の種類が多くなるため,それぞれの内容をさら に3つに分類する。ここで,大きく4つに分類された学習内容に属する 情報の集合をグループと呼び,3つに分類された学習内容に属する情報 の集合をサブグループと呼ぶことにする。グループの名称は,子どもに わかりやすくするため,学習内容①に該当するグループを「産業」,学 習内容②に該当するグループを「わたしたちの生活」,学習内容③に該 当するグループを「工夫・努力」,学習内容④に該当するグループを
「森林の働き」とする。以上述べた本単元における学習内容の構成を図 3.1−1に示す。
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環境教育からとらえ
た社会科の学習内容 本単元の学習内容 グループ サブグループ
イ。生産,消費,廃棄 のサイクルの視点か らとらえる
ア.児童の生活から環 境を見つめる 力 日本と世界ととの 関わりを考える
①生産活動と森林資 源の関わり
②子どもの生活と森 林資源との関わり
〉
工文化・開発の視点 からとらえる ウ 計画的・協力的な
活動の視点からとら える
オ環境としての国土 の理解を深める
③森林資源の保護の ための働きかけ
④資源としての森林 の働き
工業の発達
産 業 日本の工業生産
食料不足の国
わたしたち
フ生活
使い捨て ヨ利なくらし レジャーを楽しむ
@大切な資源 工夫・努力 自然環境を守る
木材を生産する
森林の働き
世界での活動 坙{(国)の活動
人々の活動
図3.1−1 学習内容の構成
3.1.2 問題解決における思考の支援
子どもが問題解決を進めていく上で困難を伴うことが予想されるの は,学習課題を追求するために情報を収集し,それを読みとっていくこ
と,読みとった情報を関係づけ,概念形成を図ることである。したがっ て,この原因を明らかにして,学習活動における子どもの思考を支援す
る必要がある。さらに,本研究においては,3つの世界を結びつける手 だてとして身近な地域の取材と資料づくりという学習活動を設定してい る。資料づくりとは,取材によって得たデータを子どもがハイパーメデ ィア教材のカードの1枚として作成することである。ここでは,子ども が短時間でカードを作成できるように,技術的な支援が必要である。子
し
どもの思考の支援が必要と考えられる学習活動を図3.1−2に示す。
問題解決の学習過程
資料づくり》欄の収集》欄の読みとり》繭の関係づ・ナ