以上のように,本単元では,前半に実物メディアや視聴覚メディアを 多く活用し,後半にハイパーメディアを活用することによって,子ども が抵抗なくメディアを活用した学習を進められるように工夫している。
また,情報活用については図4.1−3に示すように,まず子どもが自分 の目で直接確かめることができる,子どもにとって具体的な身近な地域 の社会的事象を対象とし,その後ハイパーメディア教材に用意された,
子どもにとって抽象的な日本や世界の社会的事象を対象とすることに よって,段階性を考慮した授業設計を行っている。
身近な地域の社会的 柾ロ(具体的)
ミ
固鷺回か
@ ≡ 1〆
情報収集
@ 資料作り
@ (情報の加工)
@ 情報の伝達ロ 一
表4,1−1 本単元のメディア活用と学習活動
メディア
学習のねらい
学 習 活 動■写真(森林) ・単元の学習内容に対 ・年輪を数え,家族の年
■実物 する興味,関心を持 齢と樹木の太さを比較
(樹木を輪切りにして年 たせる。 する。
輪を数えられるようにし 第 たもの)
1 ■VTRr森林教室シリ
[ズ(2)森林の姿と働き」
・学習課題の設定や追
≠ノ必要な基礎的知
・VTRを視聴して森林 フ働きについて理解す
■写真 識を身につける。 る。
段 (天然林と人工林)
。実物
・写真や実物によって樹 リや森林の種類につい
階 (広葉樹と針葉樹) て理解する。
■専門家 ・森林の働きについて ・営林署員の酒向さんの
(営林署員の酒向さん) 振り返るとともに, 話を聞く。
森林破壊についての 問題意識を持つ。
第 ■インスタントカメラ ・身近な地域の森林破 ・地域へ出かけて取材活 2 ■スチルカメラ 壊の現象や森林保護 動を行う。
段 ■ビデオカメラ の活動についてのデ
階 一タを収集する。
■ハイパーメディア教材 ・収集したデータを構 ・取材した内容を写真と
(資料作り機能) 成することにより, テキストで資料として
身近な地域でも森林 構成し,ハイパーメデ 破壊の現象や森林補 イア教材のカードを作
第 保護活動が行われて
「ることに気づく。
成する。
■ハイパーメディア教材 ・学習課題を追求する ・学習課題に関連するキ
(・キーワード探索機能) ために必要な情報を 一ワードを考え,情報
3 (・しおり機能) 収集し,読みとるこ (カード)を収集する。
とによって問題解決 ・重要なカードを読みと
を行う。 り,しおりを挟む。
段 ■ハイパーメディア教材 iまとめ学習機能)
・収集し,読みとった 﨣 を関係づけ,森
・しおりを挟んだカード ラベル化し,グルー 林破壊の原因や森林 プにまとめたり矢印で 保護の活動について 結びつけ,関係図を作
階 の概念を形成する。 成する。
■ハイパーメディア教材 ・学習課題について調 ・しおりを挟んだカード
(まとめ学習機能) べたことをまとめ, を提示する順序を考
わかりやすく発表す え,1枚ずつ提示しな
る。 がら,調べたことを発
表する。
一106一
4.1.4 指導計画
(1)対象児童
対象とする学級児童数は次の通りである。
G県M市○小学校5年2組37名
この学級では,社会科の授業はこれまで一斉学習によって行われてお り,主教材は教科書,副教材は資料集を用いている。学習課題は教師が 設定し,1単位時間のサイクルでつかむ,調べる,まとめるという活動 が繰り返されてきた。したがって,ごく一般的な授業が行われてきてい
るといえる。
コンピュータの経験については,5年生になってからは,算数の計算 ドリルやお絵かき等で,1カ月に2,3回使用しており,ほぼ全員がマ ウスの基本的な操作ができることがわかった。ただし,ワープロの使用 経験はほとんどなく,キーボードによる文字入力が困難であることが予 想される。そのため,休み時間や放課後の利用など,開発教材に触れる 機会をなるべく多く持つようにする。
グループ学習の経験は豊富で,支障なく進められることが期待でき る。しかし,授業実践のために準備できるコンピュータは6台のため,
1台当たり6,7人という多人数で使用することになる。しかも,6台 のうち2台はノートタイプのため,画面が見づらくなることが憂慮され
る。
(2)授業者
授業者は次の通りである。
古田 哲也(本論文の筆者)
(3)授業期間
授業期間は次の通りである。
平成8年7月1日 〜 7月12日
4,2 授業の展開と子どもの活動
4.2.1 問題解決の前段階
(1)第1次〈7月1日(月)第4校時〉 導入
本時は単元の導入で,森林資源に対する興味,関心を持たせることを ねらっている。まず,キャンプや森林浴などの経験を語らせることによ
り,森林の中で過ごすことの快適さを想起させ,経験のない子にはあこ がれを持たせるようにした。 「空気が涼しい感じがした」, 「気持ちが よかった」, 「気分が落ちつくような気がした」といった意見が出され た。次に,樹齢50年忌ら150年程度のスギとヒノキを輪切りにし,年輪
図4.2−1 年輪調べの様子
一 108 一
がわかるようにしたものを8個提示し,年輪がなぜできるかを説明した 後,グループに1つ与えて自分や両親,祖父母などの年齢に該当する年 輪を数え,その輪をマジックペンでなぞるという作業を15分間行った。
「この木は48才だ」, 「この木はそんなに太くないのに100歳を越えて いる」, 「この木は直径が80センチ以上もあるのに,100才になってい ない」といったっぷやきがあり,子ども達は興味を持って活動に取り組 むことができた。その後,ワークシートにわかったことや考えたことを まとめさせ,授業を終えた。体験的な活動を導入で行うことにより,本 時のねらいを達成することができた。
上位群,下位群の抽出児が書いたワークシートを図4.2−2から4.2
−5に示す。上位群,下位群とも,年輪を数えることによって樹齢がわか ることをとらえ,1の「すごいなあと思いました」,Fの「すごく楽し かったです」,Aの「はじめてしった」等から,興味を持って活動に取
り組んだことがわかる。上位群のSは,樹齢を数えることを通して木の 成長には時間がかかることに気づき, 「身の回りにも木でできたものが たくさんある」, 「木の方がやさしい感じがする」というように,すで にこの時点で,自分の身近な生活の中で樹木をとらえていることがわか る。同じく上位群のAは,木の種類によって年輪の幅が違うことに気づ いている。下位群の1は,木の種類によって同じ太さでも樹齢が異なる ことには気づいているが,自分が調べた種類の樹木から,細いほど樹齢 が高いという誤ったとらえ方をしており,Fは年輪によって樹齢がわか ることに気づくにとどまっている。このように,同じ活動を経験して も,上位群,下位群によってとらえ方は異なっているが,本単元の学習 内容に興味,関心を持たせるという導入としての本妻のねらいは達成で きたといえる。
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図4.2−2 1のワークシート 図4.2−3 Fのワークシート
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図4.2−4 Aのワークシート 図4.2−5 Sのワークシート
(2)第2次の1〈7月2日(火)第2,3校時〉 樹木や森林の種類,
分布,働き
本時は問題解決に必要な知識として,樹木や森林の種類,分布,働き について習得することと,開発教材のリテラシーを身につけることをね らっている。授業の導入として,マツの葉とクヌギの葉の実物を提示 し,針葉樹と広葉樹の違いを発見させた。続いて人工林と天然林の違い を発見させた後,森林の働きを予想させ,ビデオ「森林教室シリーズ
(2)森林の姿と働き」 (20分,林野庁制作)を視聴させた。このビデオ は,緯度や高度による植生の違いや森林の働きについて,子ども向けに わかりやすく解説したものである。
第3校時は第2理科室に設定したコンピュータを用いて,コンピュー タリテラシーを兼ねて森林の働きについて復習した。開発教材の始め 一110一
方,終了の仕方から始め,コントロール部のボタンの使い方など,基本 的な操作について指導した後,第2校時の復習を行った。ここではキー ワード探索は行わず,図4.2−6に示すように,予め「森林の働き」と いう切り込み口を1つだけ用意しておいた。説明に時間がかかったた め,開発教材を使ったのは10分程度である。しかし,子どもはそれまで にコンピュータを利用した授業を経験しているため,すぐにマウスの操 作に慣れたようであった。その後,ワークシートに学習をまとめさせ,
授業を終えた。
予め用意した切り込み口 図4.2−6 切り込み口「森林の働き」
(3)第2次の2〈7月3日(水)第3即時〉 営林署員の酒向さんの話 本時のねらいは,営林署員の酒向さんから森林破壊についての話を聞 き,問題意識を持つことである。話の概要は以下の通りである。
○森林の働き:木材の生産,保安林の働き,水資源の酒養等
○森林の減少:毎年本州の面積に相当する森林が地球上から消えている こと,日本でも減少していること,その原因
○営林署の仕事:国有林を守り育てる,何十年という期間で伐採した森 林を元に戻す
事前の打ち合わせで,森林破壊の原因については子どもが調べるた め,酸性雨や焼き畑等の名称を出す程度で詳しい説明はしないようにし た。話が長くなり,授業を延長したため,子どもが質問するコーナーを