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自動運転システム制御車両の混在比率が異なる交通流に対するドライバーの受容性計測 平成28年度(本報告)タカタ財団助成研究論文 ISSN 2185

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自動運転システム制御車両の混在比率が異なる

交通流に対するドライバーの受容性計測

― 平成 28 年度(本報告) タカタ財団助成研究論文 ―

ISSN 2185-8950

(2)

研究実施メンバー

研究代表者

大阪大学大学院工学研究科

(3)

第 1 部

自動運転システム制御車両の混在比率が

異なる交通流の特性把握

(4)

第 1 部概要

近年,交通事故の削減や交通渋滞の緩和といった道路交通の安全性,円滑性向上を

期待し,自動車の自動運転技術の研究開発が進められている.わが国でも,

2020 年

には高速道路での自動運転を実現することを目標として,社会実装に向けた取り組み

が官民で加速しており,

2017 年には公道での大規模な実証実験が予定されている.

技術開発が進む一方で,自動運転技術を搭載した車両が一般車両と混在した際に,交

通流や周辺車両にどのような影響が生じるのかという,道路・交通管理上の課題は十

分議論されていない.

そこで,本研究では,自動運転技術の根幹をなす

ACC(Adaptive Cruise Control,

定速走行・車間距離制御装置)に着目して,ドライビング・シミュレータを用いた室

内走行実験により,

ACCを搭載した車両が混在した交通流を仮想空間上で作成した.

このとき,

ACC 車両の混在比率が異なる複数の交通流を作成することで,ACC の普

及レベルに応じた影響を把握できるようにした.作成された交通流に対して,車頭距

離,空間平均速度,交通流率に着目して交通流の特性を考察した.さらに,コンフリ

クト指標などの各指標を基に車両挙動への影響を調査した.

その結果,道路線形によらず,混在比率の上昇によって交通流率が高くなる事例を

確認した.そして,このような交通流率の向上は,道路線形の影響を受けず,前方車

両の加減速に緩やかに反応するという

ACC の性質によるものであることを指摘した.

また,車両の横方向挙動や追従走行時の反応遅れは,混在比率による影響を受けず,

むしろドライバーの違いによる影響の方が大きいことを確認した.さらに,コンフリ

クト指標の比較から,サグ部や急カーブにおいて,混在比率の上昇に伴い,追突事故

リスクが低減することも確認した.

以上の知見から,

ACC を搭載した車両の普及によって,交通の安全性・円滑性が

向上する可能性が期待される,

(5)

目 次

第 1 章 はじめに ... 1 1.1 研究の背景 ... 1 1.2 既往研究の整理と本研究の位置付け ... 3 1.3 研究の目的と意義 ... 4 1.4 研究の方針 ... 4 第 2 章 室内走行実験 ... 5 2.1 実験の目的 ... 5 2.2 実験の概要 ... 5 2.3 DS の機構 ... 5 2.4 追従積重ね実験による交通流の再現方法 ... 6 2.5 車両の再現方法 ... 6 2.5.1 MD 車両の再現方法 ... 7 2.5.2 ACC 車両の再現方法 ... 7 2.5.3 衝突被害軽減ブレーキ ... 7 2.5.4 制御パラメータの値と調整方法 ... 8 2.6 作成した交通流のパターン ... 8 2.6.1 ACC 車両の混在比率 ... 8 2.6.2 先頭車両 ... 9 2.6.3 作成した交通流一覧 ... 9 2.7 被験者 ... 9 2.8 走行する道路のモデル ... 10 2.9 実験時の諸条件 ... 11 2.9.1 走行開始時の車線と車頭時間 ...11 2.9.2 先頭車群の作成 ... 12 2.10 実験の手順 ... 12 2.11 DS の再現性 ... 14 2.12 取得データ ... 14 第 3 章 交通流特性の把握 ... 15 3.1 分析方針と分析対象とする交通流 ... 15 3.1.1 分析方針 ... 15 3.1.2 分析対象とする交通流 ... 15 3.2 車頭距離の分析 ... 16 3.3 空間平均速度の分析 ... 18 3.4 中央道区間における交通流特性 ... 19 3.4.1 交通流率の算出 ... 19 3.4.2 交通流特性 ... 20

(6)

3.5 山陽道区間における交通流特性 ... 22 3.6 高松道区間における交通流特性 ... 25 3.7 第 3 章のまとめ ... 27 第 4 章 車両挙動の把握 ... 29 4.1 分析方針 ... 29 4.2 車両の横方向挙動の分析 ... 29 4.2.1 横方向変位の平均値の推移 ... 29 4.2.2 被験者別の横方向変位 ... 30 4.3 コンフリクト指標を用いた安全性評価 ... 32 4.3.1 評価指標と評価方針 ... 32 4.3.2 中央道区間における負値 PICUD 検出率 ... 33 4.3.3 山陽道区間における負値 PICUD 検出率 ... 34 4.3.4 高松道区間における負値 PICUD 検出率 ... 35 4.4 反応遅れ時間に基づく追従挙動解析 ... 35 4.4.1 反応遅れ時間の算出 ... 36 4.4.2 反応遅れ時間の比較 ... 37 4.5 第 4 章のまとめ ... 39 第 5 章 結論 ... 40 参考文献 ... 41

(7)

1

第1章 はじめに

1.1 研究の背景 近年,わが国の交通事故死者数は減少傾向にあり1) 1.12016 年には 3904 人と,1949 年以来初めて 4000 人を下回った2).しかし,政府が目標として掲げる「24 時間死者数 2500 人以下」3)を達成するためには,事故削減に向けたさらなる取組みが必要である.一方,交通 渋滞に関しても,都市間高速道路での渋滞損失時間が年間1.9 億人・時間と報告されるなど4) 依然として社会的・経済的に深刻な問題である. 図 1.1 交通事故発生件数・負傷者数・24 時間死者数の推移1) ここで,交通死亡事故の原因の過半数が,漫然運転や運転操作不適といったドライバーの安 全運転義務違反であること5),また,都市間高速道路での渋滞の約8 割が単路部で発生してお り 6) 1.2,その要因にドライバーの無意識の速度変化が挙げられていることに鑑みれば, これらの問題を解決するためには,ドライバーに焦点を当てた対策が必要と言えよう. 図 1.2 都市間高速道路での道路構造別渋滞発生割合4) そこで,解決策の1 つとして,自動車の自動運転技術が注目されている.現在,情報通信技 術やセンシング技術の目覚ましい発展も相まって,官民を挙げた研究開発が各国で進められて いる.わが国でも,政府7, 8)は,2020 年に高速道路での自動運転を実現することを目標に,2017 0 3,000 6,000 9,000 12,000 15,000 18,000 0 300 600 900 1,200 1,500 1,800 1951 1961 1971 1981 1991 2001 2011 死者数 [人 ] 発生件数, 負傷者数 [千件, 千人 ] 発生件数 負傷者数 死者数(24H) 59.0% 19.5% 12.7% 8.8% 上り坂およびサグ部 トンネル入り口部 インターチェンジ合流部 その他

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2 年には公道での大規模な実証実験を実施することを発表している.また,2016 年 8 月には, 同一車線での自動運転が可能なミニバンが発売されており 9),自動運転技術の社会実装は現実 のものとなりつつある. しかしながら,社会実装に向けた取組みは緒に就いたばかりであり,残された課題は少なく ない.政府は,2016 年 5 月に発表した『官民 ITS 構想・ロードマップ 2016』10)において,今 後検討すべき課題を表 1.1 のように整理している. 1.1 自動運転技術の実用化に向けた課題10) 制度面 システムへの過信に起因する安全性の低下が生じないような HMI (Human Machine Interface)の設計に関するガイドラインの検討 社会受容面 自動運転技術を搭載した車両が消費者や周辺のドライバーに受け入れら

れるための課題の明確化

技術・インフラ面 ダイナミックマップの普及に向けた体制の整備

これらの課題を克服すべく,内閣府が主導する SIP11)Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program,戦略的イノベーション創造プログラム)は,同年 10 月に研 究開発計画を発表し,表 1.1に示した HMI やダイナミックマップを,重点化を図るべき課題 と位置付けている.一方,社会受容面については,受容性醸成のための一般市民への広報に関 しては言及しているものの,周辺のドライバーへの配慮に関する言及は見られない.ここで, 警察庁が同年5 月に発表した『自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン』 12)を見ると,「公道において、いまだ実用化されていない自動走行システムを用いて自動車を走 行させることは、交通の安全と円滑の確保に支障を及ぼす場合があり得る」ことが指摘されて おり,自動運転技術による交通流やドライバーへの影響が懸念されている.このことから,自 動運転技術を搭載した車両(以下,自動運転車両)と一般車両が混在したときに,交通の安全 性や円滑性にどのような影響が生じるのか,また,かりに影響が生じるならば,それは自動運 転車両がどの程度普及した段階で生じるのかということを明らかにする必要があると考えら れる.公道での実証実験を実施するうえで,これらの課題を明確化することが急がれるが,十 分な検討がなされているとは言い難いのが現状である. ところで,自動運転技術には,システムがカバーする領域に応じて,数段階のレベル分けが 様々な機関で提唱されている.代表的なものとして,表 1.2 に示す,SAE13)Society of Automotive Engineers,米国自動車技術会)による分類が挙げられるa.前述のように,部分 的な自動運転技術を搭載した車両が既に販売されている状況を鑑みれば,基盤技術として位置 付けられるレベル 1,2 に分類される車両を対象に,自動運転車両の混在による影響を評価す ることが,道路・交通管理上,喫緊の課題となることは言を俟たない.

そこで,本研究では,レベル1,2の根幹をなすシステムであるACC(Adaptive Cruise Control,

定速走行・車間距離制御装置)に着目する.ACC とは,システムが前方車両との車間距離を

自動的に監視し,前方車両との距離が十分に離れている,或いは前方車両が存在しない場合は ドライバーが設定した速度で巡航し,前方車両との距離がある程度短い場合は,安全な車間距

a 2017 年 1 月時点では,日本政府は NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration,

米国高速道路安全局)が提唱した5 段階のレベル分け15)を採用している.しかし,NHTSA は,2016

年9 月に従来の 5 段階のレベル分けに代わり,SAE による 6 段階のレベル分けを採用することを 公表した16).日本政府も,国際的潮流に合わせ,SAE のレベル分けに変更することを検討してい

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3

離を確保しながら前方車両に追従するシステムのことである(図 1.3).ACC は既に実用化さ れており,搭載台数が急速に増加している17).一方,JAF(Japan Automobile Federation, 日本自動車連盟)が実施したアンケート18)によると,ACC 使用者の約 14%が「ACC 使用中に 注意が疎かになった」と,また,約 5%が「後続車両の流れを悪くした」と感じているなど, ACC による運転や交通流への影響を懸念する意見も寄せられている.以上より,自動運転技 術の社会実装や実証実験に向けた課題を交通の観点から明らかにするうえで,ACC による影 響を調査する意義は大きい. 表 1.2 SAE における自動化レベルの定義13, 14) レベル 定義 レベル0 人間のドライバーが,全てを行う レベル1 車両の自動化システムが,人間のドライバーをときどき支援し,いくつかの運 転タスクを実施することができる レベル2 車両の自動化システムが,いくつかの運転タスクを事実上実施することができ る一方,人間のドライバーは,運転環境を監視し,また,残りの部分の運転タ スクを実施し続けることになる レベル3 自動化システムは,いくつかの運転タスクを事実上実施するとともに,運転環 境をある場合に監視する一方,人間のドライバーは,自動化システムが要請し た場合に,制御を取り戻す準備をしておかなければならない レベル4 自動化システムは,運転タスクを実施し,運転環境を監視することができる. 人間は,制御を取り戻す必要はないが,自動化システムは,ある環境・条件下 のみで運航することができる レベル5 自動化システムは,人間のドライバーが運転できる全ての条件下において,全 ての運転タスクを実施することができる 図 1.3 ACC のメカニズム 1.2 既往研究の整理と本研究の位置付け

ACC の技術自体は 2000 年以前から開発されており,例えば,Tan et al.19)は,ACC を含む 自動運転技術を搭載した車両で隊列走行実験を行っている.もっとも,こうした事例は一般車 両を排除した環境で調査を行っており,あくまでシステム単体への評価にとどまっている.

一方,昨今の技術レベルの向上に伴い,社会実装が進みつつあることから,ACC の導入に

よる交通流への影響を調査した研究も報告されている.例として,サグ部での渋滞緩和を期待

し,ACC の性能や混在比率が異なる交通流をシミュレーションした鈴木ら 20)の研究や,合流

部をボトルネックとする渋滞を対象に,ACC による渋滞緩和効果を検証した Kesting et al.21)

の研究が挙げられる.これらの既往研究では,ACC で制御される車両(以下,ACC 車両)の

比率が増加することで,渋滞発生確率の減少などの渋滞緩和効果が確認されている.また,こ

れらの研究から,ACC 車両の混在比率が交通流の特性に影響を与えていることが確認できる.

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4 しかし,上記の研究では,車両挙動のモデル化によるシミュレーションを基に検討を行って おり,運転頻度をはじめとするドライバーの運転特性の違いは考慮されていない.ここで,大 口・飯田22)は,同一のドライバーからなる均質な交通流を再現した場合,サグ部において渋滞 が発生しないことを指摘している.この知見を援用すれば,多様な運転特性を持つドライバー によって作られた交通流に,ACC 車両が混在したときの影響を把握することが求められる. したがって,ACC 車両と多様な運転特性を持つ一般車両を同時に仮想空間上に描画でき,

かつ,ACC 車両の混在比率という実験条件を統制可能という点で DS(Driving Simulator,

ドライビング・シミュレータ)での調査が有利となる.ここで,DS を用いた既往研究の例と

して,ドライバーの運転挙動に着目したものが多数存在する.例えばVollrath et al.23)は,ACC 使用時に急カーブや霧への対応が遅れることを指摘している.また,Gold et al.24)は,交通密 度が 10 台/km と比較的大きいときは,加速度の増加や追突リスクの高まりなど,安全性が低 下することを示唆している.このように,個々のドライバーの運転挙動を扱った事例は存在す るが,その調査対象は ACC 車両で走行するドライバーに限られている.しかし,周辺車両へ の影響という観点から見れば,ACC 車両が混在した交通流中を走行するドライバー,特に, ACC 車両に追従するドライバーを対象とし,その挙動を明らかにすることも必要であると考 えられる.ところが,そのような研究は見当たらず,まして,交通流全体の特性や ACC 車両 の混在比率と関連付けた研究は存在しない. 1.3 研究の目的と意義 以上を踏まえ,本研究の目的を,「ACC 車両の混在が,交通流や車両挙動に与える影響を交 通の円滑性及び安全性の観点から把握する」こととする.本研究により,自動運転技術が導入 されつつある道路交通を管理・管制するうえで必要となる知見を獲得することはもとより,研 究開発が進む自動運転技術の利活用に向けた示唆を得ることが期待される. 1.4 研究の方針 まず,ACC 車両の混在が,交通流や車両挙動に与える影響を把握するために,DS を用いた 室内走行実験を行う(第 2 章).次に,実験で取得したデータを基に分析を行い,ACC 車両の 混在比率が異なる交通流の特性を把握する(第 3 章).さらに,車両挙動に着目して解析する ことで,ACC が車両挙動に与える影響を把握する(第 4 章).最後に,結論として,本研究で 得られた成果と,さらなる研究への展望について述べる(第 5 章).

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第2章 室内走行実験

2.1 実験の目的 本実験の目的は,「ACC 車両の混在比率が異なる交通流を仮想空間上で作成し,混在が交通 流や車両挙動に与える影響を交通の円滑性及び安全性の観点から把握すること」である. 2.2 実験の概要 実験は,2016 年の 6 月 16 日(木),23 日(木),24 日(金),28 日(火),30 日(木),及 び7 月 13 日(水)~15 日(金),25 日(月)~29 日(金),8 月 1 日(月)~5 日(金),30 日(火)の平日19 日間で実施された.実施場所は,DS が設置されている,大阪大学大学院工 学研究科S1 棟 123 号室である. 2.3 DS の機構 本実験で使用するDS は,ワークステーション,PC,ビデオプロジェクター,多画面スクリ ーン,模擬運転台(以下,運転台),及び音響システムから構成される(図 2.1).多画面スク リーンは,正面が120inch,左右が 150inch のスクリーンから構成されており,対応するプロ ジェクターから前景,左景,右景の映像が投影される.そして,運転台には,左右サイドミラ ー,ルームミラーの役割を果たす3 基の液晶ディスプレイが取り付けられており,後方風景の 映像が表示される.本実験で,運転台は,スクリーンからドライバーの頭部までの距離が 2m となる位置に設置した.以上の装置により,ドライバーは,周辺視を含め200°の視野角が確 保できるとともに,サイドミラー及びルームミラーにより,後方の交通状況が確認できる. 図 2.1 DS の構成 この多画面スクリーンと液晶ディスプレイに映し出される映像に対するドライバーの操作, すなわち,ハンドル,アクセル・ブレーキの使用量は,運転台により分解能 1°(最大値:ハ ンドルは左右それぞれ 160°,アクセル・ブレーキは 22°)で検出され,1/66 秒のフレーム レートでワークステーションに送信される.このアクセル・ブレーキの使用量に基づき計算さ れる加速度に,車両の走行地点における縦断勾配や空気抵抗による加速度を加えることにより, 車両の加速度が算出される.そして,これらの入力情報によって,ワークステーション内にお いて車両の速度,位置,進行方向が決定され,新たな仮想空間の生成が制御される.この仮想 空間に基づき,ワークステーションによって前景の,5 台の PC によってそれぞれ左景,右景, 左右サイドミラー及びルームミラーの映像が生成され,スクリーンと画面に映し出される.ま た,運転台の速度計には,このとき算出された速度が表示される. スクリーン 運転台 ワークステーション 音響 システム PC ドライバーの操作 映像・ 車両の情報

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6 また,車両の速度と地点情報(路面状況など)などから,場面に応じた走行音(ロードノイ ズ,エンジン音)が音響システムで生成され,アクセルペダル横,運転台の左右,及び後部の 4 か所に設置されたスピーカーを通して再生される. 以上の機構により,視覚的にも聴覚的にも,高い臨場感を確保している. また,この DS では,上述したフレームレートでの処理を阻害すること無く,移動物体

(Moving Object,以下 MO)として多数の周辺車両を描画することができる.この移動物体

に対し,初期配置(位置,台数),走行パターン(初速,巡航速度,最高速度,加速・減速特性,

目標車間距離,追越ルール),車種を自由に設定することができる.

また,事前に走行した車両と同一の軌跡で移動する車両を,周辺車両として描画することも できる.これによって描画される車両を再現物体(Reproduction Object,以下 RO)と呼ぶこ

とにする.言うまでもなく,このRO は,MO の制御ロジックの対象外となる. これらの2 種類の物体を定義することで,混雑した交通状況の雰囲気を醸し出すための車両 (後方車両)と,被験者の前方を走行する(追従対象となる)車両を同時に描画することが可 能となる. 2.4 追従積重ね実験による交通流の再現方法 本実験は,運転特性が異なる車両で交通流を作成することを狙いとしている.そこで,本実 験では,大口・飯田 22)が開発した,「追従積重ね実験」と呼ばれる手法を適用した.以下に, その概要を記す. まず,1 人目の被験者に走行してもらう.次に,1 人目の走行軌跡に基づく RO を,2 人目 の被験者の前方車両として描画する.そして,1,2 人目の走行軌跡に基づく RO を,3 人目の 被験者の前方車両として描画する(図 2.2). この試行を積み重ねることで,様々なドライバーが同時に同一の道路空間上を走行する交通 流を作成することが可能となる. ただし,RO は過去の走行軌跡の再現であるため,被験者の車両と衝突しそうになっても, 回避行動はとらない.したがって,被験者はRO である周辺車両と衝突しないように走行する 必要がある. また,被験者の車両の後方には,混雑した交通状況の雰囲気を醸し出すために,被験者の車 両と同じ速度で走行する車両を複数台,MO として描画した. 図 2.2 追従積重ね実験 2.5 車両の再現方法

本実験では,被験者に,ACC 車両と ACC を搭載していないマニュアル操作(Manual Drive)

が必要な車両(以下,MD 車両)の 2 種類の車両を模擬走行してもらった.以下に,各車両の

1人目

2人目

3人目

1人目のRO 1,2人目のRO

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7 再現方法を記し,再現に必要なパラメータの名称を〔 〕内に示す. 2.5.1 MD 車両の再現方法 MD 車両については,2.3 節に記した制御ロジックに基づき,ドライバーのハンドル,アク セル・ブレーキの操作によって車両の加速度,進行方向が決定される. 2.5.2 ACC 車両の再現方法 ACC 車両については,車両の進行方向は,MD 車両と同様にドライバーのハンドル操作によ って決定されるが,加速度は,以下のロジックに基づいて自動調整されるアクセル・ブレーキ 開度によって決定される.  同一車線上で,自車前方の一定距離〔前方車両認識距離〕以内に車両(前方車両)が 存在するか判定する.  前方車両が存在しない場合,設定した目標速度〔ACC 目標速度〕となるように,アク セル・ブレーキ開度を自動調整する(巡航走行,Cruising).  前方車両が存在し,かつ,前方車両の速度が ACC 目標速度より速い場合,前方車両 に追従せず,設定した ACC 目標速度となるように,アクセル・ブレーキ開度を自動 調整する(巡航走行,Cruising).  前方車両が存在し,かつ,前方車両の速度が ACC 目標速度より遅い場合,目標の車 間距離〔ACC 目標車間距離〕で前方車両に追従するように,アクセル・ブレーキ開度 を自動調整する(追従走行,Following). ここで,このアクセル・ブレーキ開度の値は,ACC 目標速度・車間距離に一定の時間〔目 標到達時間〕で到達するように決定される.ただし,ACC でアクセル・ブレーキ開度が 100% となることは,安全性や走行快適性の観点から非現実的と考えられるため,アクセル・ブレー キ開度に上限値〔最大アクセル・ブレーキ開度〕を設けた. また,ドライバーがある閾値〔オーバーライド開度〕以上にアクセル・ブレーキを操作した 場合,ACC よりもドライバーの操作が優先(オーバーライド)される.これは,現時点にお いて ACC はあくまでドライバーの操作を支援するシステムとして位置付けられており,運転 の責任はドライバーにあり,非常時にはドライバーが操作をカバーする必要があるためである. 実際,市販されている車両の ACC でも,ドライバーがアクセル・ブレーキを操作している間 はACC が作動しないようになっている25) 2.5.3 衝突被害軽減ブレーキ

また,ACC の有無に関わらず,車両には CMBS(Collision Mitigation Brake System,衝 突被害軽減ブレーキ)という機能を搭載した.これは,前方車両や障害物と衝突しそうになっ たとき,衝突の回避や衝突被害の軽減を図るために,自動的にブレーキが作動するシステムで ある.CMBS は,本研究で対象とする ACC とは別の安全運転支援システムの 1 つであるが, 現在市販されている車両に広く標準搭載されていることから,本研究で再現する車両にもこの 機能を搭載した. CMBS 発動の評価指標には,一般に TTC [s]26)Time To Collision,衝突余裕時間)が採用 されており 27),本実験でもこれを採用する.TTC は,式(2-1)で定義され,現在の走行状態が 維持されたときに,前方車両との衝突に至るまでの時間を意味する.

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8 𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇 = −𝑉𝑉𝐿𝐿 𝑟𝑟 (2-1) ここに; L:車間距離 [m] Vr:前方車両に対する自車の相対速度 [m/s] 本実験におけるCMBS の制御ロジックを以下に記す.  同一車線上で,自車前方の一定距離〔前方車両認識距離〕以内に車両(前方車両)が 存在するか判定する.  前方車両が存在する場合,TTC がある閾値〔CMBS 警告 TTC〕を下回れば,図2.3 左図のように画面上にオレンジ色で「BRAKE!」と警告が表示される.  TTC がさらに低下して,別に設けた閾値〔CMBS 発動 TTC〕を下回れば,自動的に 一定時間〔CMBS 作動時間〕,開度 100%でブレーキが作動する.CMBS によるブレ ーキが作動している間は,図2.3右図のように,画面上に赤色で「BRAKE!」と警告 が表示される. 図2.3 CMBS による「BRAKE!」の表示(左:警告時,右:発動時) 2.5.4 制御パラメータの値と調整方法 次に,ACC,CMBS の再現に用いた各パラメータとその値を表 2.1に示す. これらのパラメータの値は,ACC 及び CMBS の性能を規定するものであり,両システムに 高い再現性が担保されるよう,その値が決定されなければならない.そこで,ACC を搭載し た車両を普段から運転している共同研究者 2 名(2 名が使用する車両は MAZDA アクセラと BMW である)に,本実験で再現する ACC 車両を運転してもらうことで,試行錯誤的に各パ ラメータの値を決定した. 2.6 作成した交通流のパターン 本実験では,ACC 車両の混在比率と先頭車両の種類が異なる交通流を 5 パターン作成した. 2.6.1 ACC 車両の混在比率 本実験では,ACC 車両の混在比率として,0%(全て MD 車両),10%,50%の 3 種類を設 定した.10%という値は,2014 年での ACC の普及率が 8.4%とされていることから18),現時 点での交通流を再現することを意図して設定した.これと 0%での交通流を比較することで, ACC の導入による現時点での影響が評価できる.また,50%での交通流との比較により,ACC がさらに普及したときに交通流に生じる影響が評価できる.表 2.2 に,各混在比率における ACC 車両及び MD 車両の台数を示す.

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9 表 2.1 ACC,CMBS の制御パラメータ ACC 前方車両認識距離 [m] 120m ACC 目標速度 [km/h] 80,90,100,110,120km/h より選択 ACC 目標車間距離 [m] 0km/h 時:5m,100km/h 時:45m として,速度に応じて直線補間 目標到達時間 [s] アクセル:7 秒,ブレーキ:3 秒 最大アクセル開度 [%] 60% 最大ブレーキ開度 [%] 80% オーバーライド開度 [%] 10% CMBS 前方車両認識距離 [m] 120m CMBS 警告 TTC [s] 4 秒 CMBS 発動 TTC [s] 2 秒 CMBS 作動時間 [s] 3 秒 表 2.2 各混在比率における ACC/MD 車両の台数 混在比率 0% 10% 50% ACC 車両 0 台 4 台 17 台 MD 車両 33 台 29 台 16 台 各被験者がそれぞれの走行で,ACC 車両と MD 車両のどちらを運転するかは,混在比率に 基づき,ランダムに割り当てた.なお,どちらの車両を運転するかは,各走行の前に被験者に 伝え,走行中も,助手席に設置したPC の画面で確認できるようにした. 2.6.2 先頭車両 先頭車両の挙動は,交通流全体の挙動に影響を与えることが想定される.そこで,走行車線 の先頭車両がACC 車両となるシナリオ,及び MD 車両となるシナリオの 2 種類を設定した. ただし,混在比率が0%の場合は,ACC 車両が先頭車両となるパターンを作成していない. 2.6.3 作成した交通流一覧 以上より,ACC 車両の混在比率と先頭車両の種類が異なる 5 パターンの交通流を作成した (表 2.3).本研究では,主に混在比率の違いに着目するため(3.2,3.3 節),このパターンを 「混在比率パターン」と呼称する. 表 2.3 混在比率パターン パターン M0 M1 A1 M5 A5 混在比率 0% 10% 10% 50% 50% 先頭車両 MD MD ACC MD ACC 2.7 被験者 被験者は,運転免許を保有する学生33 名とした.ただし,1 名が実験中に体調不良(シミュ レータ酔い)を訴えたため,実験を中止した.したがって,データを取得できた被験者は 32 名となり,先頭車群(2.9.2 項で詳述)を含め38 台からなる交通流を作成した.

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10 この32 名は,男性 30 名,女性 2 名から構成されている.また,年齢の平均値は 22.0 歳で, 標準偏差は1.2 歳である. 実際の高速道路には,毎日運転するドライバーからペーパードライバーまで,多様なドライ バーが存在していることから,本実験の被験者を募集する際も,運転頻度や高速道路の利用頻 度によるスクリーニングは行わず,多様な運転頻度,高速道路利用頻度の被験者を募集した. 2.8 走行する道路のモデル 本実験で用いた道路モデルの概要を図 2.4に,平面・縦断線形図を図 2.5に示す.この道路 モデルは,既往研究28)で走行結果の現況再現性が確認された複数の区間を,道路構造令・高速 道路設計要領に準拠して設計した区間(以下,調整区間)で結合し,作成した(表 2.4).なお, 本実験のモデルに用いた中央自動車道の区間は,2001 年に行われた拡幅工事 29)より以前の線 形を再現している.したがって,車線数は全区間にわたり片側2 車線である. この道路モデルには,始点(中央自動車道上り 67.5kp)を 0kp として,始点からの距離に 応じたkp の値を与えている. この道路モデルは,サグ部(2.0kp 付近)や R=400m の急カーブ(9.0~9.5kp 付近)など, 多様な線形要素から構成されており,各幾何構造の下での交通流の挙動を調査することが可能 である. 図 2.4 道路モデル概要 2.5 実験で使用した道路モデル 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 R=400 曲線区間 (緩和曲線含む) 曲線区間 (緩和曲線含む) R=3000 R=1500 曲線区間 (緩和曲線含む) 調整区間1 調整区間2 中央道 山陽道 高松道 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 曲線区間 (緩和曲線含む) 勾配 最小 -1.3% 最大 2.5% 平均 1.19% 調整区間1 曲線区間 (緩和曲線含む) 勾配 最小 -0.3% 最大 2.82% 平均 0.85% 勾配 最小 -2.0% 最大 -0.3% 平均 -0.87% 曲線区間 (緩和曲線含む) 調整区間2 中央道 山陽道 高松道 平面線形 縦断線形 中央道区間(4km) 山陽道区間(3km) 高松道区間(3km) 全長11.05km 調整区間2(0.55km) 調整区間1(0.5km)

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11 本研究では,このモデルのうち,線形要素の異なる3 つの区間,すなわち,1.0~3.0kp,5.0 ~7.0kp,8.5~10.0kp を分析対象とし,それぞれの区間をモデルとなった路線名に基づき「中 央道区間」,「山陽道区間」,「高松道区間」と呼称する(図 2.5赤線部,表 2.5).なお,これら の区間には,調整区間は含まれていない. 表 2.4 道路モデルを構成する各区間の諸元 道路名 区間(区間長) 主な曲線半径 [m] 最大縦断勾配 [%] 設計速度の目安 [km/h] 中央自動車道 上り線 67.5kp~63.5kp 700~1500 3.70 100 調整区間1 (区間長:500m) 728~1688 1.20 - 山陽自動車道 下り線 70.9kp~73.9kp 1200~3000 2.84 120 調整区間2 (区間長:550m) 1281~∞ 3.50 - 高松自動車道 上り線 STA205~STA235 400 4.52 80 表 2.5 分析対象区間 区間名 区間(kp) 主な線形要素 中央道区間 1.0kp~3.0kp サグ 山陽道区間 5.0kp~7.0kp 上り勾配 高松道区間 8.5kp~10.0kp 急カーブ 2.9 実験時の諸条件 2.9.1 走行開始時の車線と車頭時間 走行開始時の車線(走行車線,追越車線)は,被験者間条件とし,各被験者に交互に割り当 てた.また,走行開始時の速度は,1 人前の被験者の速度と同じとした. そして,走行開始時の前方車両との車頭時間は2 秒とした.これは,密な交通流を作成する ことで,ACC の影響がより顕著に現れるようにしたためである.この車頭時間は,NEXCO 西日本関西支社管轄の高速道路で,以下の条件を満足する地点での車頭時間を基に決定した.  車線数:片側2 車線  規制速度:100km/h  交通集中渋滞発生件数:年100 回以上  渋滞原因:サグまたは上り坂 上記の条件を満足する地点として,名神高速道路下り線瀬田西 IC 下流(検知トラカン 470.14kp),中国自動車道上り線豊中 IC 下流(検知トラカン 7.35kp)の 2 地点を選定した. 表 2.6に,臨界流における,2 地点での車線別の 5 分間交通量 [台/5 分],車頭時間 [s]の 75% タイル値を平均した値を示す.本実験ではこれにならい,両車線の車頭時間の中間の整数値と して,走行開始時の車頭時間を2 秒とした.これにより,臨界流に近い交通流の作成が期待で きる. なお,走行中に周辺車両との衝突を繰り返す場合は,自然な交通流となることに留意したう えで,走行開始時の車線や車頭時間を調整した.

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12 表 2.6 車線別の 5 分間交通量と車頭時間 車線 5 分間交通量 [台/5 分] 車頭時間 [s] 走行車線 109 2.75 追越車線 161 1.86 2.9.2 先頭車群の作成 本実験では,臨界流に近い密な交通流を作成することを狙いとしているが,交通流の先頭付 近を走行する場合,前方に車両が存在しないため,自然な交通環境であるとは言い難く,被験 者が運転への違和感や速度調整への困惑を覚えることが想定される.そこで,先頭車両を含む 先頭の6 台(以下,先頭車群)については,筆者らが,上述した臨界流を想定して事前に走行 し,車両軌跡を作成した.1 人目の被験者には,これらの車両軌跡に基づく RO を追従しても らう.これにより,初期条件を統一した上で違和感なく密な交通流での模擬走行が可能となる. なお,この先頭車群6 台は,走行・追越両車線に 3 台ずつとした.表 2.7に,その種類(ACC/MD) を,混在比率パターン別に示す. 表 2.7 先頭車群の構成 パターン M0 M1・M5(先頭車両 MD) A1・A5(先頭車両 ACC) 車線 走行 追越 走行 追越 走行 追越 1 台目 MD MD MD MD ACC MD 2 台目 MD MD MD MD MD MD

3 台目 MD MD ACC ACC ACC ACC

注:ACC 車両を橙色で着色した また,1台目のMD 車両については,走行開始時の速度は 95km/h とし,線形に応じて加減 速させた.そして,1台目のACC 車両については,ACC 目標速度は 90km/h とした.ただし, 9.0~11.0kp におけるカーブ付近では,設計速度に準拠し,ACC 目標速度を 80km/h とした. 2.10 実験の手順 実験の手順を図 2.6に示す.まず,被験者に,実験参加に係る注意事項や個人情報の取扱い について説明し,同意書に記名押印してもらう.次に,運転経験や ACC の認知度に関するア ンケートに回答してもらう. 図 2.6 実験の手順 次に,被験者に,DS の使用方法や走行するコース,そして,DS で再現される ACC や CMBS の内容について説明する(図 2.7).また,以下の条件を順守して走行するよう教示する. 同意書・ アンケート 記入 実験の 説明 練習走行 本番走行

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13  前方車両の姿が見えなくなることがないよう,周囲の車の流れに沿って走行する(前 方車両から大きく離された場合は走行をやり直す).  車線変更をしたい場合は車線変更をしてよい.  側壁や他の車両に衝突しないように走行する(衝突した場合は走行をやり直す).  なるべく普段通りに走行する. 図 2.7 実験の説明(左:被験者,右:実験スタッフ) 説明の後,DS の操作及び ACC 車両での走行に慣れるための練習走行を行う.まず,実験で 用いる道路モデルを,周辺車両が走行していない条件下で,MD 車両で走行してもらい,DS でのハンドルやアクセル・ブレーキの操作に慣れてもらう.約5 分間(7km)走行したもらっ た後,DS の操作に慣れたことを確認し,走行を終了する.次に,ACC 車両で走行してもらい, 追従走行や巡航走行,及びオーバーライド時の挙動や操作方法を確認してもらう.このときの ACC 目標速度は,MD 車両での練習走行時の速度や,普段の走行速度を基に被験者に決めて もらう.ACC 車両での走行に慣れたことを確認し,走行を終了する.あわせて,練習走行後, 設定したACC 目標速度に違和感がないかを確認する. なお,被験者によっては,ACC 車両で走行しない被験者も存在する.そのような被験者に は,ACC の説明や ACC 車両での練習走行は実施していない. 練習走行が終了した後,データを記録する本番走行を開始する(図 2.8).本番走行では,表 2.3に示す5パターンについて,2.4節に示した追従積重ね実験により,交通流を作成していく. なお,走行するパターンの順番は,順序効果が生じないよう,ランダムとした.1 走行終える たびに,運転台から降りて,約5 分間休憩してもらう. 5 パターンの走行を終えると,約 10 分間の休憩を取り,その後再び 5 パターンについて, 追従積重ね実験を行う.これにより,同一条件の交通流が2 パターンずつ,計 10 パターン作 成される.ここで,後半の5 走行では,長時間の実験による疲労を緩和するために,実験中に

ラジオを流した.Strayer and Johnston30)によると,運転中にラジオを聴いても,運転パフォ ーマンスは低下しないとされている.この知見に基づき,ラジオを流すことで,被験者が集中 して実験を継続できるようにした.

上記の本番走行におけるドライバーのハンドル操作や頭部の挙動は,実験室に設置したビデ オカメラにより記録されている.

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14 図 2.8 実験風景 2.11 DS の再現性 DS を用いた実験を行う場合,DS に再現性が担保されることが重要である.本実験で使用し たDS は,単独での走行だけでなく,追従積重ね実験に対しても,既往研究22, 31)で高い再現性 が担保されている. 2.12 取得データ 本実験で取得したデータを表 2.8に示す. 表 2.8 取得データ 方法 取得データ アンケート 被験者の年齢・性別 自動車運転頻度・高速道路利用頻度 高速道路走行時に主に利用する車線 追越・車線変更への態度 ACC を知っているかどうか ACC での運転経験 事故経験 DS 車両の車長・車幅・車高 走行時の車線 走行位置(kp)

状態(MD, ACC 巡航,ACC 追従,ACC オーバーライド,CMBS) 速度 加速度 アクセル・ブレーキ開度 車両のx,y,z 座標 ヨー角,ピッチ角 車線中心軸からの変位 前方車両との距離 前方車両の車両番号(何番目の被験者の走行か) 前方車両とのTTC ビデオカメラ ドライバーのハンドル操作や頭部の挙動の映像

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第3章 交通流特性の把握

3.1 分析方針と分析対象とする交通流 3.1.1 分析方針 本章では,交通流を評価する代表的な指標である車頭距離と空間平均速度,交通流率を基に, ACC 車両が混在した交通流の特性を把握する.はじめに,ACC は車間距離と速度を制御する システムであることから,これらに関連する評価指標である車頭距離と空間平均速度を算出し, 混在比率パターン(2.6.3 項)間で比較する(3.2,3.3 節). 次に,線形要素が異なる分析対象区間別に,交通流の特性を考察する(3.4~3.6 節).具体 的には,まず,混在比率パターン間で交通流率を比較した後,車頭距離と空間平均速度を参照 し,交通流率に違いが生じた要因を考察する.そして,速度コンター図(3.4.2 項で詳述)を 基に,車両の走行軌跡からACC 車両の混在が交通流の特性に与える影響を把握する. 最後に,本章のまとめを述べる(3.7 節). 3.1.2 分析対象とする交通流 本項では,分析対象とする交通流の選定方針について述べる. 室内走行実験(第 2 章)では,ACC 車両の混在比率と先頭車両の種類が異なる 5 パターン の交通流を2 セット作成したが,本研究では 1 セット目の交通流を分析対象とする.これは, 2 セット目のパターン A5 において,追越車線の車両(ID15)が急に走行車線へと車線変更を したことにより,走行車線の車両に著しい速度低下(ID16 が 38km/h まで減速)が生じたた めである.このように,ACC 車両の混在比率や道路線形とは関連のない大きな減速が発生し たパターンがあったため,2 セット目は分析対象としない. また,使用した道路モデルは片側2 車線であり,車両は走行車線,追越車線いずれにも存在 するが,本研究では走行車線の交通流を分析対象とする.これは,追越車線を走行する車両の 台数が少なく,区間によっては車間距離が大きく開いている傾向が認められたためである.こ の原因には,被験者に自動車の運転頻度や高速道路の利用頻度が低い者も含まれていたため (表 3.1),走行車線を走行することを選好した被験者が見られたこと,また,周辺車両との衝 突が生じないように,走行開始時の車線を適宜調整したこと(2-9-1 項)が挙げられる.以上 のことから,本研究では,周辺車両が相互に影響し合う交通環境が構築できている走行車線の 交通流を分析対象とする. 表 3.1 自動車運転頻度・高速道路利用頻度に関するアンケート集計結果 高速道路利用頻度 ほとんど 運転しない 年1 回以上 5 回未満 年5 回以上 自 動 車 運 転 頻 度 ほとんど 運転しない 14 5 1 月1 回以上 5 回未満 2 4 1 月5 回以上 2 1 2

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16 3.2 車頭距離の分析 本研究では,車頭距離を,車間距離と前方車両の車長の和により算出する(図 3.1). 図 3.1 車頭距離の定義 各混在比率パターンについて,0.5kp おきに全車両の車頭距離を算出し,平均値と標準偏差 を求める.結果を道路線形図と合わせて図 3.2に示す. このグラフから,パターンM0,M1,A1 では,山陽道区間において車頭距離の平均値が 60m を超える地点が確認される一方,パターンM5,A5 では,車頭距離が 60m を超える地点はほ とんど確認されない.また,パターンM5,A5 の方が,中央道区間や高松道区間を中心に車頭 距離の標準偏差が小さいことも確認できる. これらの結果から,ACC 車両の混在比率が 50%と高いときは,全体的に車頭距離が短くな り,そのばらつきも小さくなると考えられる.ここで,山田32)は,東名高速道路での走行実験 により,ACC 使用時に車間距離のばらつきが小さくなることを指摘しているが,本研究の結 果は,この指摘とも整合する. MD 車両で走行する場合,ドライバーの希望車間距離や運転技能といった運転特性の違いに より,車間距離はドライバーによって大きく異なると考えられる.一方,ACC 車両で走行す る場合,ACC の車間距離制御により,運転特性による違いは生じにくくなる.この結果,混 在比率が50%のときに上述の変化が生じたと考えられる.また,混在比率が 10%の場合,交通 流中のACC 車両の台数が少ないため,MD 車両による影響が卓越した結果,混在比率 0%の交 通流に似た挙動を示したと考えられる. また,いずれの混在比率パターンでも,高松道区間の8.5~10.0kp において,車頭距離が一 度低下した後増加に転じる傾向が確認できる.この区間にはR =400m の曲線区間があること から,曲線区間進入時の減速,曲線区間終了後の加速という運転挙動が強く表れていることが 読み取れる. 一方,パターンM1 と A1,パターン M5 と A5 の間で,車頭距離の推移の傾向に違いは確認 できない.このことから,先頭車両による影響は小さい可能性がある.この要因として,本研 究では 32 名の被験者の走行によって交通流を作成したため,先頭車両の挙動が交通流全体に 与える影響は限定的であったことが考えられる.そこで,図 3.3に示すTime-Space 図から車 両の走行軌跡を確認する.ここで,Time-Space 図とは,縦軸を走行位置(kp),横軸を実験開 始からの経過時刻として,先頭車群(2.9.2 項)の車両を含む各車両の走行軌跡を描画した図 である.走行軌跡の線が途切れている場合は,その地点で車両が車線変更をしたことを表す. また,図中ACC 車両の走行軌跡を太線で示してある. 図 3.3を参照すると,車頭距離が非常に大きい場面が複数確認できる.このような場面をは じめ,個々の被験者による速度・車間距離調整の積重ねの結果,今回の実験では,先頭車両の 影響は交通流全体にまで及ばなかったと考えられる. 車間距離[m] 車長 [m] 車頭距離[m]

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17 図 3.2 車頭距離の平均値と標準偏差の推移 0 20 40 60 80 100 120 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 車頭距離 [m ] kp [km] M0 0 20 40 60 80 100 120 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 車頭距離 [m ] kp [km] M1 0 20 40 60 80 100 120 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 車頭距離 [m ] kp [km] A1 0 20 40 60 80 100 120 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 車頭距離 [m ] kp [km] M5 0 20 40 60 80 100 120 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 車頭距離 [m ] kp [km] A5 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 R=400 曲線区間 (緩和曲線含む) 曲線区間 (緩和曲線含む) R=3000 R=1500 曲線区間 (緩和曲線含む) 調整区間1 調整区間2 中央道 山陽道 高松道 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 曲線区間 (緩和曲線含む) 勾配 最小 -1.3% 最大 2.5% 平均 1.19% 調整区間1 曲線区間 (緩和曲線含む) 勾配 最小 -0.3% 最大 2.82% 平均 0.85% 勾配 最小 -2.0% 最大 -0.3% 平均 -0.87% 曲線区間 (緩和曲線含む) 調整区間2 中央道 山陽道 高松道 平面線形 縦断線形

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18 図 3.3 パターン M5 の Time-Space 図 3.3 空間平均速度の分析 本研究では,地点速度の調和平均値を求めることで33),空間平均速度を算出する.各混在比 率パターンについて,0.5kp おきに空間平均速度を算出する.結果を道路線形図と合わせて図 3.4に示す. 図 3.4 空間平均速度の推移 70 80 90 100 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 空間平均速度 [k m /h ] kp [km] M0 M1 A1 M5 A5 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 R=400 曲線区間 (緩和曲線含む) 曲線区間 (緩和曲線含む) R=3000 R=1500 曲線区間 (緩和曲線含む) 調整区間1 調整区間2 中央道 山陽道 高松道 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 曲線区間 (緩和曲線含む) 勾配 最小 -1.3% 最大 2.5% 平均 1.19% 調整区間1 曲線区間 (緩和曲線含む) 勾配 最小 -0.3% 最大 2.82% 平均 0.85% 勾配 最小 -2.0% 最大 -0.3% 平均 -0.87% 曲線区間 (緩和曲線含む) 調整区間2 中央道 山陽道 高松道 平面線形 縦断線形

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19 このグラフから,空間平均速度は中央道区間では 80~90km/h,山陽道区間では 90~ 100km/h の間で概ね推移していることが読み取れる.また,高松道区間ではどの混在比率パタ ーンも極めて似た推移の傾向であることが確認できる.したがって,速度は道路線形に応じて 変動していると考えられる. そして,中央道区間の2.5kp ではパターン M1 と A1 の,山陽道区間の 6.5kp ではパターン M5 と A5 の空間平均速度が低いことも確認できる.よって,空間平均速度も車頭距離と同様 に混在比率の影響を受けていることが示唆される. また,空間平均速度についても,パターンM1 と A1,パターン M5 と A5 の間で,推移の傾向 に違いは確認できない.前節で指摘したように,先頭車両からの影響が交通流全体には及ばな かったと考えられる.したがって,以降の分析では,先頭車両の違いは考慮せず,ACC 車両 の混在比率0%の交通流が 1 パターン,混在比率 10%と 50%の交通流がそれぞれ 2 パターンず つあるとみなし,分析を行う. 3.4 中央道区間における交通流特性 3.4.1 交通流率の算出 本節からは,これまでに求めた車頭距離と空間平均速度に加えて,交通流率も算出し,分析 対象区間別に道路線形と3 つの指標の関連性を考察する.本研究では,交通流率をその定義に 基づき次の式(3-1)により算出する(図 3.5). 𝑞𝑞𝑥𝑥=𝑡𝑡 𝑁𝑁𝑥𝑥 𝑁𝑁𝑥𝑥,𝑥𝑥− 𝑡𝑡0,𝑥𝑥 × 3600 (3-1) ここに; 𝑞𝑞𝑥𝑥:地点𝑥𝑥での交通流率 [台/h](1 車線当り) 𝑁𝑁𝑥𝑥:地点𝑥𝑥を通過した車両台数 [台] 𝑡𝑡𝑛𝑛,𝑥𝑥:地点𝑥𝑥において,𝑛𝑛台目の車両が通過した時刻 [s] 𝑡𝑡0,𝑥𝑥:地点𝑥𝑥において,先頭車群の最後尾の車両の通過時刻 [s] 図 3.5 交通流率の定義 各混在比率パターンについて,0.5kp おきに交通流率を算出する.結果を道路線形図と合わ せて図 3.6に示す.中央道区間の2.0~3.0kp(サグ部の上り勾配区間)や高松道区間の 9.0~ 9.5kp(曲線区間)で,交通流率が低下している傾向が読み取れる.また,全体的に,パター ンM5 と A5 で交通流率が高い傾向が確認できる.このように,道路線形や混在比率が,交通 流率にも影響を与えていることが示唆される.

・・・

・・・

1台目

台目

地点

台目

先頭車群の最後尾

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20 図 3.6 交通流率の推移 3.4.2 交通流特性 はじめに,中央道区間とその前後における,交通流率,車頭距離,空間平均速度の推移と縦 断線形図を図 3.7 に示す.交通流率に着目すると,サグ部の上り勾配区間である 2.0~3.0kp において,パターンM1 の交通流率が大きく低下していることが読み取れる.一方,パターン M5 と A5 では,2.0kp では M1 と同程度の交通流率が確認でき,その後低下しているが,M1 ほど顕著には低下していない.そこで,空間平均速度を参照すると,M1 では 2.5kp で 80km/h まで低下した後,急激に上昇している.この速度変化に伴い,2.0kp では 50m 未満であった M1 の車頭距離の平均値が,3.0kp では約 70m にまで増加したと考えられる. そこで,速度コンター図を参照し,車両の走行軌跡から,上記の現象の発生状況を確認する. ここで,速度コンター図とは,各車両の地点速度を計算することで描画される等速度線を Time-Space 図に重畳した図である.速度コンター図には,縦断線形図若しくは曲率図を併記 し,必要に応じて被験者のID を赤色の数字で示した.なお,等速度線の算出には統計ソフト ウェアのR を用いた. パターンM1 と M5 の速度コンター図を図 3.8,図 3.9に示す.図 3.8から,ID19(MD 車 両)は2.0kp,つまり,サグ底部付近から減速を始め,2.1kp 付近では 70km/h まで減速して いることが読み取れる.一般に,サグ部の上り勾配区間では,勾配変化への反応が遅れて速度 低下が生じることが知られており34)ID19 より前方の車両も 2.0kp 以降で 80km/h まで減速 している.したがって,ID19 は前方車両との車間距離を維持しようとした結果,70km/h まで 減速したと考えられる.これに伴い,上り勾配であることも相まって,2.1kp 以降で ID19 の 1200 1400 1600 1800 2000 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 交通流率 [台 /h ] kp [km] M0 M1 A1 M5 A5 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 R=400 曲線区間 (緩和曲線含む) 曲線区間 (緩和曲線含む) R=3000 R=1500 曲線区間 (緩和曲線含む) 調整区間1 調整区間2 中央道 山陽道 高松道 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 曲線区間 (緩和曲線含む) 勾配 最小 -1.3% 最大 2.5% 平均 1.19% 調整区間1 曲線区間 (緩和曲線含む) 勾配 最小 -0.3% 最大 2.82% 平均 0.85% 勾配 最小 -2.0% 最大 -0.3% 平均 -0.87% 曲線区間 (緩和曲線含む) 調整区間2 中央道 山陽道 高松道 平面線形 縦断線形

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21 車頭距離が増加している. 一方,ID19 の 2 台後方を走行する ID21(ACC 車両)は,車頭距離を一定に維持したまま 追従しているのが確認できる.これは,ACC 車両が道路線形の影響を受けず(ACC の効果①), かつ,前方車両の加減速に対して遅れることなく緩やかに反応して追従すること(ACC の効 果②)に起因すると考えられる.そこで,図 3.9を参照すると,図 3.8で指摘した速度低下や 車頭距離の増加はほとんど見られない.ACC 車両の混在比率の上昇に伴い,前述の効果①, ②の発現頻度が高まったことが寄与していると考えられる.さらに,ACC 車両の後方を走行 するMD 車両も,車頭距離を維持しながら追従していることが確認でき,交通流全体の整流化 につながっている.以上のメカニズムによって,交通流率が低下しやすいサグ部を有する中央 道区間において,ACC 車両の混在比率が 50%のとき,交通流率が向上したと考えられる. 図 3.7 中央道区間における交通流特性と縦断線形図 注:縦断線形図では図中の区間内での標高の最低地点を基準とした高さを記している(以下も同様) 70 80 90 100 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 空間平均速度 [k m /h ] kp [km] 30 50 70 90 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 車頭距離 [m ] kp [km] 1200 1400 1600 1800 2000 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 交通流率 [台 /h ] kp [km] M0 M1 A1 M5 A5 0 5 10 15 20 25 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 高さ [m] kp [km]

縦断線形図

(28)

22 図 3.8 中央道区間におけるパターン M1 の速度コンター図 3.9 中央道区間におけるパターン M5 の速度コンター図 3.5 山陽道区間における交通流特性 次に,山陽道区間とその前後における,交通流率,車頭距離,空間平均速度の推移と縦断線 形図を図 3.10に示す. 交通流率に着目すると,パターンM0 では,6.5kp(上り勾配)を最低値として,4.0~6.5kp において交通流率が大きく低下しているのが確認できる.一方,パターンM5 と A5 の交通流 率は,4.5kp ではパターン M0 とほぼ同程度であるが,その後の 5.0~7.0kp では M0 で見られ Height [m] Height [m]

(29)

23 る大きな低下は確認できない.特に,A5 の交通流率は約 1700~1800 台/h と比較的高い値で 推移している.ここで,車頭距離を参照すると,M0 では 4.0kp から車頭距離の平均値が増加 し,6.0~6.5kp において 70m 近い値であることが読み取れる.また,M5 と A5 では,車頭距 離は50~60m の範囲を概ね維持している一方,空間平均速度は 6.5kp で他のパターンより低 い値を示しており,特に A5 では顕著に低いことが確認できる.これらのことから,M0 では 車頭距離の増加によって交通流率が低下した一方,M5 と A5 では車頭距離が短かったことで, 速度が低くても交通流率が高いままであったと考えられる. 図 3.10 山陽道区間における交通流特性と縦断線形図 30 50 70 90 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 車頭距離 [m ] kp [km] 70 80 90 100 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 空間平均速度 [k m /h ] kp [km] 0 5 10 15 20 25 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 高さ [m] kp [km] 縦断線形図 1200 1400 1600 1800 2000 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 交通流率 [台 /h ] kp [km] M0 M1 A1 M5 A5

(30)

24 そこで,前節と同様に,速度コンター図を確認する.パターンM0 と A5 の速度コンター図 を図 3.11,図 3.12に示す.2 つの図の比較から,M0 では車頭距離が大きい場面が多数確認で きる.また,A5 の方が,全体的に速度が低いことも確認できる. 例えば,パターンM0 の ID5(MD 車両)は,6.0~6.3kp において 100km/h 以上で走行し ている一方,後方のID7 の速度は 100km/h 未満であり,ID7 の車頭距離が大きいことが確認 できる.ここで,この山陽道区間は,最大勾配2.82%の上り勾配区間を有するものの,平面曲 線は緩やかであり,設計速度は 120km/h と,高速で走行しやすい区間である.ドライバーが 各自の希望速度で走行した結果,車頭距離が増加する場面が多数生じたと考えられる. 一方,図 3.12から,パターンA5 では 80~90km/h で走行する車両が多数を占めていること が確認できる.ACC 車両は道路線形の影響を受けない(ACC の効果①)ということは,オー バーライドしない限り設定した ACC 目標速度(2.5.4 項)を超える速度で走行することはな いことを意味する.「ACC があると操作が楽になるので,オーバーライドして加速しようとは 思わない」という被験者(ID5)の発話も考慮すると,ACC 車両で走行する被験者の多くが ACC に速度制御を委ね,さらに,MD 車両で走行する被験者が ACC 車両に追従した結果,空 間平均速度が混在比率 0,10%のパターンよりも低くなったと考えられる.しかし,同時に, ACC の効果②によって車頭距離の平均値も低く維持されたことで,パターン A5 の交通流率は 高い値を維持したと考えられる. このように,高速で走行しやすい道路線形の場合,ACC 車両の混在比率が高くなると,ACC の速度制御によって,混在比率が低いときに比べて速度が相対的に低くなるものの,ACC の 車間距離制御により交通流率の低下には至らないことが確認された. 図 3.11 山陽道区間におけるパターン M0 の速度コンター図 Height [m]

(31)

25 図 3.12 山陽道区間におけるパターン A5 の速度コンター図 3.6 高松道区間における交通流特性 最後に,高松道区間とその前後における,交通流率,車頭距離,空間平均速度の推移と平面 線形図を図 3.13に示す. 交通流率に着目すると,緩和曲線から円曲線にかけての9.0~9.5kp において,パターン A1 と A5 で交通流率が低下しており,特に A1 で顕著に低下していることが確認できる.空間平 均速度を参照すると,どのパターンも9.0~9.5kp(曲線区間進入時)において低下し,その後 9.5~10.0kp(曲線区間終了後)において上昇していることが読み取れ,混在比率パターン間 で目立った違いは認められない.一方,車頭距離の平均値を参照すると,どのパターンも 9.0 ~10.0kp において増加する傾向が認められるが,A1 でその増加が際立っていることが確認で きる.これが,A1 の交通流率の低下につながったと考えられる. そこで,パターンA1とA5の速度コンター図から,個々の車両の走行軌跡を確認する(図 3.14, 図 3.15).図 3.14から,ID26(MD 車両)が 9.2kp 付近で 50km/h まで減速した後,車頭距 離が増加しているのが読み取れる.この減速は,急カーブのために前方車両が減速したことが 要因と考えられる.その減速後,円曲線区間で車頭距離が増加し,緩和曲線区間を過ぎても車 頭距離が大きい状態が続いている.同様の状況はID11 や ID32(ともに MD 車両)でも確認 できる.一方,ID30(ACC 車両)は,急カーブであっても前方車両と車頭距離を一定に維持 したまま追従しており,ID26 などで観察された車頭距離の増加は見られない.これは,3.4.2 項で指摘したACC の効果①,②によるものと考えられる.その結果,ACC 車両の混在比率が 50%の A5 では,車頭距離増加の要因となる MD 車両の割合が低下することで,図 3.15のよ うに,交通密度の増加,つまり車頭距離の平均値の減少が生じたと考えられる.以上のことか ら,高松道区間において,ACC 車両の混在比率が上昇すると,ACC の車間距離制御により, 交通密度が増加し,交通流率の低下が抑えられることが確認できた. Height [m]

(32)

26 図 3.13 高松道区間における交通流特性と平面線形図 70 80 90 100 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 空間平均速度 [k m /h ] kp [km] 30 50 70 90 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 車頭距離 [m ] kp [km] 1200 1400 1600 1800 2000 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 交通流率 [台 /h ] kp [km] M0 M1 A1 M5 A5 平面線形図 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 R=400 曲線区間 (緩和曲線含む)

(33)

27 図 3.14 高松道区間におけるパターン A1 の速度コンター図 3.15 高松道区間におけるパターン A5 の速度コンター図 3.7 第 3 章のまとめ 本章では,交通流を評価する代表的な指標である車頭距離,空間平均速度,交通流率に着目 して,ACC 車両の混在比率が交通流の特性に与える影響を調査した.その結果,混在比率が 50%のときに車頭距離が短くなり,かつ,ばらつきも小さくなることを確認した.また,空間 平均速度の推移から,サグ部を有する中央道区間では,混在比率が10%のパターンで速度が低 Curvature R =400 Curvature R =400

(34)

28 下する傾向が,比較的道路線形の緩やかな山陽道区間では,混在比率が50%のパターンで速度 が低くなる傾向が認められた.そして,車頭距離と空間平均速度はともに道路線形の影響を受 けることを指摘した.そこで,これらの知見を踏まえて,混在比率の違いが交通流の特性に与 える影響とその発現過程を分析対象区間別に考察した.減速などの擾乱が生じやすい中央道区 間,及び高松道区間では,混在比率が0%或いは 10%ときに確認された交通流率の低下が,混 在比率が50%のときには緩和されることを確認した.また,道路線形が緩やかで高速で走行し やすい山陽道区間では,混在比率が50%のときの方が 0%,10%に比べて速度が低くなるもの の,車頭距離が短いため交通流率の低下には至らないことを確認した.そして,これらの変化 は,道路線形の影響を受けず,前方車両の加減速に緩やかに反応するという ACC の効果に起 因することを指摘した. 以上の知見から,ACC 車両の導入によって,交通流率の向上など,道路交通の円滑性の向 上が期待される.また,そのような効果は混在比率が 50%のときに発現し,混在比率が 10% のときには顕在化しないことを確認した. なお,本研究では,混在比率が0,10,50%の交通流を対象としたため,上記の効果は混在 比率がどの程度まで上昇すれば顕在化するのかということまでは明らかになっていない.今後 の調査により,10%と 50%の間を補完することが交通管理・管制の観点から必要と思われる. 加えて,ACC 車両の混在比率が 90%以上と,MD 車両が僅かに混在する交通流では,速度の 分散が大きくなるという報告35)もあり,混在比率が交通流の特性に与える影響については,さ らなる知見の蓄積が必要であろう.

図   4.7 中央道区間における運転経験別の反応遅れ時間

参照

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