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ド イ ツ 民 法 典 に お け る 使 用 者 の 安 全 配 慮 義 務 規 定 の 生 成 に

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(1)

ド イ ツ 民 法 典 に お け る 使 用 者 の 安 全 配 慮 義 務 規 定 の 生 成 に

"‑はじめに

ドイツ民法六一八条の

I t

②ドイツ民法制定前における賠償根拠規定

ドイツ民法制定前の判例︵以

t

ドイツ民法制定時の議論

①第一草案とこれをめぐる論議︵以トヒ巻一一号︶

②第一一阜案の成立と以後の展開

むすび︵以ヒ本号︶

いて

︵ 下 の 二

七九

. 

員 完 ︶

(2)

︹ 提

案 ︱

‑ a

︺﹁権利者は︑彼が

具が

︹提

案一

五パ一条

a

として次の規定を挿入すること︒

案さ

れ︑

第二草案の成立と以後の展開

第 二 委 員 会 に お け る 論 議 議 事 録 よ り

既に見た通り、第一草案は使用者の安全配慮義務の規定を設けなかった。右規定は第一〖委員会においてはじめて提

( 1 3 7 )  

これをめぐる論議がその議事録

( P r o t o k o l l e ) に記録されている︒以下︑①においては第二委員会における諸

提案とその帰趨︑⑮以下において委員会における議論の内容を紹介する︒

( 1 3 8 )  

①第一一委員会における諸提案と委員会の結論

﹁労務が権利者の指示または指導の下に給付されるときは︑権利者は通常の

(t ib li ch )

または事案の状況によって必 要とされる方法で︑労務給付者がその労務遂行に際して︑生命・健康に対する危険から保護されるよう配慮すべき義

務を

負う

︒ とりわけ権利者は︑労務給付のために指定された領域並びに労務給付に際して用いられるべき設備及び器 その危険の防止のために必要な限りにおいて適正な状態にあるよう配慮しなければならない︒この義務の有責

な不履行の場合には︑権利者はそれによって生じた損害につき︑

これに対し︑以下の修正案が提出された︒

︵労務の遂行のために︶供与する領域及び器具の設置・維持︑

口ドイツ民法制定時の議論︵承前︶

ドイツ民法六︳八条の生成

( 1 3 9 )  

第二委員会に提出された原案は︑次の通りである︒

七ニ︱一条ないし七二六条に従って責任を負う︒﹂

並びに彼の指示または指

八 〇

8  I ‑‑80  (香法'88)

(3)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成について(下のニ・完)(高橋)

右の結果は︑第二草案の五五八条として公表された︒文言は以下の通りである︒

こ ︒

t  に修正を加え︑その末尾に次のように付加すること︒

﹁この責任を︑契約によって免除または制限することはできない︒﹂

委員会は︑①提案二に含まれる﹁労務権利者は︑労務給付の性質が許す限りにおいて︑労務給付者を生命及び健康

に対する危険から保護すべき義務を負う﹂という趣旨の修正を加えた上で提案一を採用し︑②このようにして形成さ

れた規定に︑提案五によって強行的性格を与え︑③提案四を︑ ︹提案五︺提案四に従って提案 じないように履行しなければならない︒ 危険から保護されるようにすべき義務を負う︒

導の下に遂行される労務給付の規律につき︑労務給付の性質が許す限りにおいて︑労務給付者が生命・健康に対する

この義務の有責な不履行の場合には︑権利者は生じた損害の賠償義務を負う︒賠償給付の方法に関しては︑七ニニ

条ないし七二六条の規定が準用される︒﹂

( 1 4 0 )  

︹ 提

案 二

b]

本条を︑民法施行法草案四六条一文に引用すべきこと︒

︹提案三︺提案一の﹁もしくは事案の状況によって必要とされる﹂という文言を削除すべきこと︒

︹ 提

案 四

a ︺提案一の文言を﹁生命・風紀

(S it tl ic hk ei t)

及び健康に対する危険から﹂と改めること︒

︹ 提

案 四

b

︺提案一の第三文を削除して︑以下の文言を付加すること︒

﹁雇主が被傭者に住居及び食事を供与する義務を負う場合には︑彼はこの義務を︑被傭者の風紀及び健康に危険が生

雇主がこの義務に違反したときは︑彼は裁判官の裁量に従って損害を賠償すべき義務を負う︒﹂

それが提案一と実質的相違を持つ限りにおいて拒絶し

(4)

健康に対する危険から保護されるように行なう義務を負う︒

備の設置を強制していることから︑使用者があらゆる事情のドで︑

一般原則によれば︑責任の発生する ﹁労務権利者は︑労務給付の性質が許す限りにおいて︑彼が労務の遂行のために供与すべき領域︑設備︑器具の設置・

維持︑また自己の指示または指導の下に遂行さるべき労務給付の規律にあたって︑それらを︑労務給付義務者が生命・

この義務を履行しない場合︑自己に過責あるときは︑彼はこれによって生じた損害を賠償しなければならない︒不

法行為による損害賠償に適用のある七六五条ないし七六九条の規定が準用される︒

この労務権利者の義務は︑予め契約によって排除または制限することができない︒﹂

( 1 4 1 )  

⑮諸提案の基本的立場と立法の目的︵議事録によれば︶諸提案は︑営業令︱︱

‑ 0

a

ないし︱二

0

条c

九一年改正︶に規定されている営業経営者の義務を︑権利者の指示・指導の下に労務給付が行なわれるすべての一雇傭

これに対し︑以下のような原則上の疑問が示された︒すなわち︑営業令が営業労働者の保護のために一定の保護設

この保護設備の存立につき︑私法上の原則に基づ

いて責任を負うという帰結には至らない︒使用者は︑経営のすべての事柄について自ら気を配ることはできない︒経

営の中で︑少くとも若干の労働者に多少とも独立した地位を認めることがしばしばであり︑

は責任を負う必要がない︒

この少数意見の疑問は︑根本的には次のことによって解決される︒すなわち︑ 関係に拡大することを意図している︒

また保護設備や器具の欠 陥については労働者が使用者にこれを知らせることを期待してよく︑労働者がこれを行なわなかった場合には使用者

( 1 4 1 )  

いずれにせよ︑使用者に対し︑彼の法律上の義務の僻怠を理由として責任を負わせること

を目的とするならば︑特別の規定は必要なく︑これを一般的な内容を持つ規定によって明らかにすれば十分である︑

︵一

1  82  (香法'88)

(5)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成について(下のニ・完)(高橋)

のは使用者に過責がある場合のみであり︑

関する現二五四条︶が適用されること︑使用者が営業令に基づいて負う義務に有責に違反したときは︑彼は法規違反

いずれにせよ既に不法行為の一般原則によって責任を負うこと︑

にのみ適用のある規定をすべての被傭者へと拡大することを問題としている︒また更に上述の営業令規定に対する違

反が

そも

そも

の行

動の

故に

/¥ 

また労働者の過責が競合する場合には︑ニニニ条︵第一草案︒寄与過失に

れているため︑民法典はこの問題の決定を避けることができないのである︒

( 1 4 3 )  

い規定の強行的性格について

れた事柄は以下の通りである︒ である︒ただ諸提案は︑営業労働者

またいかなる要件のドで使用者の私法上の貨任を根拠づけるかという問題が︑判例ヒ頻繁に取扱わ

多数意見は︑被傭者保護の規定に強行性を付与することを決めた︒その際考慮さ

五六二条

a

は︑使用者の義務違反により生命・健康の危険にさらされる被傭者に︑使用者に対する賠償請求権を与

えるものであり︑すぐれて社会政策的な性格を持つ︒被傭者保護の要求は︑使用者の責任を排除する約定の効力を否

定してはじめて︑有効に達成される︒ここには︑本草案を支配する契約自由の原則に対する例外が存するが︑これは

社会政策的根拠から正当化され︑そして委員会は右の根拠を拒絶してはならないのである︒なお︑提案二b

に従

い︑

本条を僕卑令によって︵施行法草案四六条︶変更しえない規定としたとしても︑被傭者の保護は不完全である︒

( 1 4 4 ) ( 1 4 5 )  

⑥風紀上の危険からの保護について風紀上の危険から被傭者を保護するにつき︵提案四

a )

︑特別の規定は不要

である︒この危険については公法の領域で問題にすべきであって︑私法上の損害賠償請求権の承認によって対処すべ

きものではない︒金銭によって調整されうる損害が存しないのが通常であろうし︑また被傭者が道徳的要求に反する

使用者の指示を拒否し︑これを理由として五六六条に基づく解約告知を為しうることも疑いない︒

( 1 4 6 )  

団使用者による住居・食事の供与と損害賠償使用者が被傭者に住居・食事を供与する義務を負う場合につき︑

(6)

右の使用者の義務は︑ その履行によって被傭者に生じた道徳上・健康上の損害の賠償請求権を規定する旨の提案︵四

b)

①保護の程度・範囲について は︑以下の考慮の

下に拒絶された︒

風紀上の危険の問題については既に理由を示したが︑これを別としてもそのような規定を設ける必要はない︒健康 上有害な領域を住居として被傭者に指示する使用者は︑英約に反して行動するものである︒従って︑被傭者はこれを 理由に︑将来に向って契約を解消し︑賃金喪失による損害の賠償を請求することができる︒また契約上の義務の有責

な不履行を理由に︑使用者が一般原則に従って被傭者に損害を賠償しなければならないことも疑いない︒

使用者の配慮義務の範囲について見解の相違があった︒すなわち提案三によれば︑

単に通常の方法によって被傭者を生命・身体の危険から保護することのみが義務の内容となり︑提案一によれば︑通

常のものでなくとも事案の状況によって必要とされる保護を行なうことが義務の内容となる︒提案︱

‑ a

によれば︑被

営業令︱二

0

a

に基づく使用者の義務は今日の法意識の要求するところであり︑営業の領域のみならずあらゆる

この義務の形成にあたって︑民法典は営業令において行なわれて

いるのと同様に︑現在の状況を考慮して作業を進めなければならない︒

( 1 4 8 )  

︱ ︱

‑ 0

a

の原則の遂行が同条d.eにより行政に委ねられる限りで限定を受ける︒行政の

実施にあたっては現在の状況が適切に顧慮されなければならない︒従って使用者の義務は実際上︑取引上通常の範囲 に限定され︑可能な限り危険を防ぐために必要なすべての措置を要求することはできない︒そのような措置は大部分

の使用者には知られておらず︑実際に慣用されてもいない︒ 種類の労務に拡大さるべきである︒

しか

し第

一に︑

( 1 4 1 )  

①﹁事案の状況によって必要とされる方法﹂削除提案 傭者は労務給付の性質が許す限りで保護される︒

提案三の理由説明は以下の通りである︒

八四

8 ‑ 1 ‑84  (香法'88)

(7)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成について(ドのー→.・完)(高橋)

えば︑個々の事業者に新しい保護措置を知らしめ︑事情の許す限りで必要な設備を強制する ことは︑警察官庁の役割である︒この方法は営業の領域外においても可能であり︑

によってのみ可能である︒

措置をしないとしても︑法律が責任を負わせることはできない︒

八 五

また緊急に必要な進歩はこの方法 しかしこの進歩が現実のものとなっていない限り︑個々の使用者が一般的倫理水準以上の

いわば警告例として︑

ニ般的倫理水準を守っている

f

の使用者に補償義務を負担させ︑これを経済的に破減させることによって右の進歩が強制されてはならない︒民 法は進展の現状を所与の基礎として受け人れ︑これにその規定を適合させるべきである︒

第一一に︑被傭者の保護のため︑通常のものと並んで︑事案の状況によって必要とされる配慮を要求する必要はない︒

これを要求する提案一は︑新しい労働分野や事業においては慣習がなく︑通常の配慮を指示しえないと考えている︒

しかし問題は個別的な通常の予防措置ではなく︑危険予防のための﹁通常の方法﹂である︒従って︑新しい事業にお いて求められるべきものは︑類似の労働分野・事業における通常の方法から見てとることができる︒また新たな危険 をもたらす新しい仕事や事業は︑普通は営業の領域に属する︒

そうである限り︑

第三に︑提案一によれば規定の中に一定の不明確さがもたらされる︒すなわち︑事案の状況から必要とされる予防 措置が通常のそれを超えている場合︑この文言からは︑通常の予防措置で十分なのか︑

し︑提案三を斥けた︒

それとも何が通常のものかを 考慮することなく︑事案の状況から必要とされる配慮が認識されなければならないのかが疑問となるように思われる︒

( 1 4 9 )  

②多数意見の立場

①で述べたように︑委員会の多数意見は提案二

a

による修正を加えて基本的に提案一を採用

提案二

a

に従って﹁労務給付の性質が許す限りにおいて﹂保護義務を負うとされた理由は︑次のように説明される︒

A

0

営業の領域について

これに備えるのは民法の任務ではな

(8)

その修正の機会に︑ ヒ全体に妥当する慣行かという疑間も生じよう︒ 退を意味するであろう︒ ることは誤りであろう︒ すなわち︑提案︱

‑a

の文言と提案一の文言との間には﹁編集上の差異

( e i n

r e

e d

a k

t i

o n

e l

l e

  V 

e r s c

h i e d

e n h e

i t )

﹂が存す

るにすぎないが︑営業令の対応する規定と緊密に符合している点で︑前者がより優れている︑

これに対し︑提案三の説明について多数意見は以下のように述べる︒

提案︱︱一は使用者の配慮義務を狭く限界づけるものであるが︑

そのために営業令により形成された法状態を根拠とす 営業令は確かに︑個々の事業に対する施行条例

( A

u s

f l

i h

r u

n g

s b

e s

t i

m m

  u n

g e

n )

の公布を通じて特定の保護設備の設

置・維持を命ずる権限を︑所管の行政官庁に与えている︒しかしこの権限の中に︑

る趣旨は見出しえず︑

むしろ使用者は︑施行条例による免除がない限り︑当該事業の性質上︱二

0

a¥C

の原則を

実施するために必要なすべての設備を設置すべく配慮しなければならないのである︒

仮に営業令の規定を度外視するとしても︑事業による被傭者の健康侵害を回避し︑あるいは少なくとも可能な限り 軽減するために適切な指図・設備を︑使用者が有貨に怠った場合について︑普通法実務及びプロイセンの実務は︑既 に雇傭契約の一般原則に基づいて被傭者に損害賠償請求権を認めている

(R GZ

8,   151 

18

,  176; 

21 , 

<f g)

︒今︑当該事

業において通常とされる注意の悌怠についてのみ賠償請求権を認めるものとするなら︑

更に

﹁ 通

常 ﹂

という概念は文化・技術の進行に伴い絶えず変化する︒

( 1 5 1 )  

③通常外の予防措置義務否定案﹁秩序に適った注意﹂の位償づけ

また︑問題となるのは地域的な慣行か︑

この論点に関する追加提案が行なわれた︒すなわち︑ 右のような多数意見に基づく案文作成後︑

^ ︱

‑ 0

a

に基づく義務を制限す

それは現行法からの重大な後 五五八条一項に﹁通常の労務給付の場合に

と。

八六

ライ

8  I~86 (香法'88)

(9)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成につし)て(t心)―.・完)(高橋)

ものでない予防措置をとらなかったことについて︑ は︑労務権利者は通常のものでない予防措置を為す義務を負わない﹂ついては︑書面によって以下の理由が付されていた︒

本提案はバイエルン政府の巽議に応えたものであるが︑

八 七

︵通常のものでない︶予防措置が目的に適合し︑

︵こ

れに

ということである︒この見解によれば︑ という文言を付加する旨の提案である︒

これは議事録の引用する判例︑更に多数意見が前提と

する過責の理解に^致する︒疑間となるのは︑←ー該使用者が秩序に適った

(o rd nu ng sm aB ig ) 注意を払っていれ ば︑ある予防措置が可能であり︑目的に適合していることを知るべき場合において︑

その予防措置をとらなかっ

それとも右の措置をとらなかったことは︑秩序に適った注意をもって被傭者の保

( 1 5 2 )  

護に配慮している者ならばその予防措置をとったであろうという場合にのみ過責となるのか︑ということである︒

後者の見解は次のような前提に立つ︒すなわち営業令が一︱

1 0

d.e

にお

いて

一︱

1 0

a

一項の規定を挙げ

ているのと同じく︑本条一項;文の規定には単に﹁原則﹂を見出しうるにすぎないのであって︑使用者はその目

的を実現するために秩序に適った注意を払うべきである︑

原則の実行がいかなる範囲で債務内容に入るかを定める基準となるのは﹁秩序に適った注意﹂である︒

よれば︶通常の労務給付の場合︑通常でない予防措置は何ら要求されない︒これに対して︑本条一項一文がそれ だけで使用者の義務の内容を定めており︑秩序に適った注意は次の場合にのみ考慮されるのであれば︑事情は異

なる︒すなわち︑使用者が秩序に適った注意を払っても︑

彼がとっている他の予防措置によって不要となるものではないことを認識しなかった場合には︑使用者は通常の

例えば︑窓掃除の際︑女中が転落する危険の予防を考えるならば︑ たことに既に過失があるのか︑

その

この法律上の

一 三

1一条による責任を負わないという限りにおいてである︒

それが命綱の使用によって可能となること

に気付かなければならない︒﹁労務給付の性質﹂はこの保護手段の使用を許すのであるが︑

しかし主婦や女中は誰

しここオし

(10)

らすものではない︒

一定の要件の下で事業者は︑保険機関が被害者に対

これを用いることを考えはしない︒これを用いないことは過責であろうか?

あるいは︑本規定がこのより厳格でない見解の趣旨である旨を議事録に明記すれば十分かもしれない︒

委員会は︑書面提案の末尾に示唆されている︑

れば︑個々の事例において︑

より厳格でない見解に賛成することを明らかにした︒この見解によ その保護設備を為さないことの故に使用者が非難さるべきか否かが吟味されなければな ら な い

︒ こ れ に よ っ て

︑ 本 提 案 は 撤 回 さ れ た

( 1 5 3 )  

②保険法との関連について

更に後の会議において︑民法の本規定とライヒ保険法の規定とから使用者に不当な 二重負担が生ずることのないよう︑民法施行法において手当てをする必要がないかという疑問が提示された︒すなわ

( 1 5 4 )  

ち︑事故保険法九五\九七条及び他の法律の関連規定によれば︑

して行なった支出の全部について責任を負い︑

務として特別の注意をより強く要求し︑

しかも彼が出した保険料を差引くことができない︒本条が事業主の義

それに伴って事故保険法九六条の適用要件が拡大するのであれば︑

って使用者に生ずるより高い負担の回避が指示されないのかが問題となるであろう︑

これに対して委員会は︑本条に関連してライヒ保険法を改める必要はないと判断した︒理由は以下の通りである︒

第一に︑使用者が労働者に対して直接に責任を負うのは︑故意に惹起した事故についてのみであり︑

は保険給付額を超える分に限られる︒使用者に故意があり︑

程度厳格化したのは確かであるが︑

と。

それによ

その責任範囲 または業務上特別の注意の解怠について過失があった場 合︑彼は保険機関に対し︑保険給付相当額について賠償義務を負う︒使用者が支出した保険料が考慮されないことに は変わりがなく︑本条によって新たな変化は生じない︒本条が使用者の義務をこれまでの法よりも詳細に示し︑ある

それは現行法の本質的な変更を含むものではなく︑従って保険法規の変更をもた

  / J  

8 ‑ 1 ‑‑88  (香法'88)

(11)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成について(ドのニ・完)(高橋)

多くの雇傭契約において︑被傭者は唯一の経済活動手段である自己の人格を危険にさらしているのであるから︑労

務給付においては被傭者のあらゆる人的物的利益が可能な限り保護される必要がある︒しかし債務者︵ここでは使用

者——ロトマール註)が故意過失について責任を負い(二三三条)、

を違法に侵害して生ぜしめた損害を賠償しなければならない

完全にしか満たされない︒むしろ︑使用者が特別の保護義務を負うことが︑雇傭契約の法的効果として確立さるべき の成果であるとした上で︑以下のように述べる︒ 鑑み︑適切ではなかろう︒

八九

ロトマールは︑本条はメンガーをはじめとする批判者の要求 これを尽したにもかかわらず通常の過失 第二に︑保険法規をそのように変更することは︑何よりも実質的理由から疑問である︒労働者の保険は︑軽過失による損害の賠償責任を使用者から引受ける限りにおいて︑同時に使用者の保険である︒使用者の保険料は右のような損害を補填するものであって︑故意または特別の職業的義務に過失によって違反したことによる損害を補填する目的を有してはいない︒保険法規は︑自己の職業的義務を尽す事薬者を想定し︑

によりまたは過失なくして事故が生じた場合にのみ︑保険会計が補償を負担するのである︒故意ある使用者の賠償

責任免除は明らかに不可能であり︑特別の職業的義務に違反した場合の責任を免除することも︑保険法の基本思想に

伺第二草案以後の展開

修正が加えられている︒以下においては︑ 以上のように第二委員会における検討の結果︑使用者の安全配慮義務に関する規定が第

二草案五五八条として公表されるに至った((①参照︶︒しかし右の案が現行六一八条のように確定するまでに︑更に

︵ 応

まず右の草案に対する反応のひとつとしてロトマール

( L o t m a r )

の論評を

紹介

し︑

その後に立法資料によって右の経過を示す︒

⑥第二草案五五八条の評価!ロトマールの見解

そして各人は︑自らが故意過失により他人の権利

︵七

四六

条︶

という一般規定によっては︑右の要求は不

(12)

であった︒これが営業令︱二

0

a

を範例とする新草案五五八条によって為されたのであり︑この新規定の実際的意 義は︑本条が︑これと異なる私的な︑あるいはラント法上の定めに優先することによって高められている︒

本条の挿入によって草案に改善が加えられたことは明らかであり︑あらためて解明や賞揚の必要はない︒しかし同 時にこの新規定の難点も目につく︒すなわち主として以下の三点である︒

第一に︑本条が使用者に対して︑労務遂行のための領域について安全な設置・維持を義務づけるのみであること︒

よく知られているように︑都市・農村の召使や

F

女︑給仕︑職人や徒弟のために︑使用者は単に労務のための領域の みならず︑居住特に就寝のための場所を供与しなければならない︒また多くのアンケートの教えるところによれば︑

このような家庭に同居する労働者︑並びに仮小屋に宿泊させられる煉瓦焼職人や製糖職人の就寝空間は︑衛生上の要 求を満たしていない場合が少なくなく︑健康に有害で人間にとって相応しくないものも稀ではない︒報酬として住居

この法律によって︑就寝空間に危険なきよう配慮する義務を課されなければなるまい︒

を供与する使用者は︑

第一一に︑本条が被傭者の保護を︑生命・健康に対する危険について認めるのみであること︒名誉︑特に性的名誉の

保護をも含めるべきである︒

また家庭労働者のわずかな財産や︑辛い思いをして得た零細な預金を︑領域の欠陥︑特

に火災によって失う危険から保護すべきことも正当な要求であろう︒

ところで五六五条の解約告知権を指ぷすることは︑右の口点の批判に対する反論として十分なものではない︒この 権利の行使は︑被傭者が五六六条

9

項によって損害賠償を得たとしても︑ 1

一部は刑罰を課する あまりに犠牲が大きい︒

.部は民巾上の法的強制︵損害賠償︶︑第一二に︑施行条例

( A

u s f l i h r u n g s   b e s t   u

1 m m  

n g e n )   への指示を本条に吸収することによって︑本条はより実効性あるものとなろう︒すなわち︑官庁の諸命令が五五 八条の諸原則を個別的要求の形にまで形成し︑衛生警察がその要求の実現を強制することによって︑本条が問題にし

九〇

8 ‑‑1 ‑‑90  (香法'88)

(13)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の牛.成につliて(卜.J)~ ・完)(高橋)

可能である限り﹂とすることであった︒その理由は︑草案は営業令の類推を根拠としているが︑営業経営者以外の使

あり

︑ 用者は︑客観的に適切な保護手段を確認する可能性や最良の予防措置を為す方法・費用を有しないことがしばしばで

( 1 5 9 )  

むしろ通常性という基準が取引の合理的な要求に合致する︑ということである︒

R論議は︑第一にバイエルンの︑

E

張する義務の程度の緩和について︑第二に保険給付と損害賠償給付との調整をめ

ぐって行なわれた︒

義務の程度の緩和については次のような対立があった模様である︒ ハンブルクの動議は︑この規定の

ている損害の発生自体がなくなることこそが必要なのである︒

第ご草案五五八条は連邦参議院において審議された︒以ドはその概要である

︵この段階で︑同条

ハンブルクはこの規定に対する修正動議を提出した︒

バイエルンの動議は︑第二草案五五八条二項の﹁労務給付の性質が許す限りにおいて⁝⁝保護されるように﹂とい

う語句に代えて﹁通常の方法で⁝⁝保護されるように﹂とすること︑文言を変更しないならば︑ドイツ連邦諸国にお

ける状況の相違を考慮して︑施行法四六条の中で︑本条をラント立法によって自由に変更しうるものとすることであ れを適用することには疑問がある︑自分

1人で仕事をする場合には施さないのが普通である保護措置を︑

よって強制され︑使用者が新たな負担を負う結果となる︑ということである︒

この

﹁労務給付の性質が許す限り﹂という語句に代えて﹁通常の注意の行使によって

った︒その理由は︑この規定が被傭者保護の方向に行き過ぎており︑

すなわち︑草案擁護の立場に立つ委員は︑ この規定に

とりわけ僕卑関係︑特に農業使用人の関係にこ

④連邦参議院司法委員会において︑ は

六二

0

条とされている︶︒

⑮連邦参議院・ライヒ議会の論議

①連邦参議院

バイ

エル

ン︑

(14)

規定は明示的に使用者の過責を要件とするのであり︑少くとも普通法上何ら新しいものをもたらすものではないと主 張する︒これに対し︑緩和を主張する委員は︑普通法におけるライヒ裁判所の判例が既に行き過ぎであると評価する

ようである︒結局バイエルンの動議は否決されたが︑

その際︑連邦参議院で義務の程度を緩和しても︑ライヒ議会で この修正が認められる見込みがないということも考慮された模様である︒また﹁政治的状況︵時代の動き︶

本草案の堅持を余儀なくされるとの見解が優位を占めた﹂との報告もある︒

保険給付との関係については︑疾病保険・事故保険による補償を受けた被害者は︑

請求権を有しないという追加条項を︑民法典に設けるか否かが問題とされた︒被害者が保険給付を受けた場合には︑

既に損害が存しないのであるから損害賠償請求権は生ぜず︑従って追加条項を定めるまでもないとの見解があり︑

れに対して︑保険による補償は部分的なものであるから当然にはそれ以上の補償の請求を拒絶するものではなく︑事 故保険が拡大し︑事故保険法九五条のような規定が為されてはじめて使用者は責任を免れるのである︑

為された︒結局この点については︑﹁六一〇条につき︑覚書の中で︑法律上の義務を根拠とする疾病保険または事故保 険に基づいて労務義務者に与えられるべき金額の範囲においては︑労務義務者は労務権利者に対して損害賠償を請求 することができない旨を明言すべきである﹂という決議が行なわれた︒

而 ︶

( l o ②覚書

l )  

t

器具

かくして第二草案五五八条は︑文言に修正を受けることなく草案六一〇条としてライヒ議会に提出され これとともに提出された覚書

(D

en

ks

ch

ri

ft

)

もはや使用者に対する損害賠償 は︑使用者の安全配慮義務について以下のように述べている︒

営業令一

1 1 0

a

︱項を範例として︑草案は︑労務給付の性質が許す限りにおいて被傭者を生命・健康の危険から 保護するための配慮を使用者に義務づけている︒この配慮義務は︑使用者が労務遂行のために供与すべき領域・設備・

並びにその指示または指導の下に遂行さるべき労務給付の規律に及ぶ︵六一〇条一項一文︶︒この義務に対する

という反論が

}

 

によって

8 ‑ 1 ‑92  (香法'88)

(15)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成について(下のニ・完)(高橋)

﹁労務権利者の家政あるいは農場における 同年六月 六一八条・六一九条の体裁が概ね整った︒

③ライヒ議会

ライヒ議会の第︱二委員会及び総会における論議の中で︑現行六一八条二項にあたる家庭内労働

者の保護に関する規定が挿入され︑

また規定の強行的性格に関する部分が独立の規定とされた︒これによって︑現行 以下︑④においては一八九六年三月に行なわれた委員会における諸提案と審議の結果︑⑥においては総会に対する

二日付の委員会報告書︑①においては総会における議論を︑参照しえた資料に見られる限りで紹介する︒

( 1 6 4 )  

④委員会における諸提案と審議の結果

m

家庭内︑または農場で働く被傭者の保護に関連して︑二つの提案が為された

ひとつは︑六一〇条一項一文の後に次の文言を挿入するという提案である い

︵六

一〇

条二

項︶

も守られなければならない︒それ故に草案は︑ 違反は使用者の損害賠償義務を根拠づけるが︑

それは彼に過責のある場合︵六一

0

条一

項二

文︶

すなわち︵二七

0

一項によれば︶その違反が故意または取引上必要な注意の悌怠による場合においてである︒賠償給付の範囲と性質は︑

不法行為による損害賠償の規定に従って定められる︵六一

0

条︱項三文︶︒事故の結果︑法律上の義務を根拠とする疾

病保険または事故保険から被害者に何らかの給付が為された場合においても︑使用者がいかなる範囲でなお賠償義務

( 1 6 2 )  

︵一

八八

︱‑

.年

疾病

保険

法五

七条

︑ を負うかについては︑関連法規の定めるところによる

( 1 6 3 )  

以下

参照

︶︒

このようにして法律上規定される配慮義務の目的は達成されなければならず︑従ってそれは当事者の契約自由から

この義務を予め排除ないし制限するあらゆる合意の有効性を否定して

( i n   de m  H a u s h a l t   o d e r   W i r t h s c h a f t )

5g

紐 口 の 埠

勿 ム ロ ︑

( G r o b e r )

この義務 ︵括弧内は提案者名

│̲N

ぞー

同じ

︶︒

一八八四年事故保険法九五条

(16)

育 ( e l t e r l i c h e Z uc ht )

に服

する

ひとつは 設けること 4

0

は︑労務義務者の健康・道徳・宗教を保護するために必要な︑居住・就寝空間︑食料︑衣服を調えること︑及び

労働時間・休息時間の配慮に及ぶ︒﹂

もうひとつは︑六一〇条を次のように表現するという提案である

にあ

たり

(F ro hm e,   St ad th ag en

)

﹁使用者は︑労務遂行︑居住・就寝︑休憩中の滞在のために彼が供与すべき領域・設備・器具を設置・維持する

また自己または自己の代理人の指示・指導の下に遂行さるべき労務給付を規律するにあたり︑家庭共 同体︑農場経営︑営業経営の性質が許し︑善良の風俗維持のために要求される限りにおいて︑それらを被傭者が 生命・健康の危険から保護されるように行なう義務を負う︒この義務を履行しなかった場合︑彼はそれによって

生じた損害を︑不法行為による損害賠償に関する八︱︱六条ないし八三

0

条の規定に従って賠償しなければならな

( 1 6 5 )  

委員会においては前者が可決され︑後者は斥けられた︒

い使用者の懲戒権について︑次のような二つの提案が行なわれた︒

ひとつは︑﹁労務給付義務者の懲戒は︑労務権利者の権限に属さない﹂という規定を設けること

( G r o b e r )

とつは︑﹁懲罰権または懲戒権を︑使用者は労働者に対して有さず︑労働者は使用者に対して有さない﹂という規定を

(F ro hm e, t   S ad th ag en )

であ

る︒

( 1 6 6 )  

委員会において後者は斥けられたが︑前者については︑同趣旨の規定を施行法に取入れる旨が決議された︒

り若年労働者と使用者の関係について︑次のような二つの提案が行なわれた︒

﹁一六歳以下の労務義務者が労務権利者の家庭に同居する場合には︑

その者は労務権利者の親としての訓

一六歳に達した労務給付義務者の懲戒は︑労務権利者の権限に属さない﹂という規

九四

もうひ

8 ‑ 1 ‑94  (香法'88)

(17)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成について(下のニ・完)(高橋)

切右の論議から三ヶ月の後︑第二読会において︑身体・健康侵害︑自由剥奪による非財産的損害の賠償請求権を認

めた八三一条︵現八四七条︶をも準用することが提案された しかしこれらの提案は斥けられた︒ に

対応

︶︒

0

条d

に対

応︶

いう規定を設けること

九 五

( F r o h m e .   S t a d t h a g e n )

が︑斥けられた︒

︵営

業令

︱︱

‑ 0

e

に対

応︶

定を設けること

( B u c h k a , H i m b u r g ,  

v .  

M a l t z a n )

︑もうひとつは﹁一八歳以下の労働者を使用する使用者は︑労働関

( 1 6 7 )  

係の規律にあたり︑健康及び道徳について︑当該労働者の年齢から必要とされる特別の配慮を行なう義務を負う﹂と

持義

務︑

( F r o h m e , t   S a d t h a g e n )   れも

F r o h m e , S t a d t h a g e n

) ︒

であ

る︒

しかし両提案はいずれも撤回された︒

口具体的な措置の実行体制について︑当時の営業令

( 1

八九

︱年

改正

第一に︑警察官庁が︑被傭者保護のために必要かつ実行可能な措置を命じうること︑その際︑当該措置を行なうた

めに一定の期間を与えるべきこと︑右命令に対して異議を申立てる権利が存することを定める規定である

第二に︑連邦参議院が特定の種類の事業について被傭者保護のための規定を公布しうること︑その際︑関係する同

業組合に意見を述べる機会を与えるべきこと︑連邦参議院が労働時間・休憩時間の規律に関する規定を定め︑その実

施のために必要な命令を発しうること︑連邦参議院の制定した規定はライヒ法律公報に公示され︑ライヒ議会に報告

さるべきことを定める規定である

第三に︑被傭者保護規定の実施を監督するために︑ラント政府が特別の官吏を任命すべきこと︑

正規の警察官庁との権限調整︑その活動に関する年次報告書について定める規定である その権限と秘密保︵営業令一三九条b

︵営

業令

の規定を取入れることが提案された

︵い

(18)

総会に提出された委員会報告書は︑本条の審議を以下のようにまとめている︒

第一点︒六一〇条一項の後に一条項を挿入することが提案され︑右条項は議論の中で次のように表現された︒

﹁義務者が家庭に同居する場合には︑労務権利者は︑居室及び寝室︑給食︑並びに労働時間及び休憩時間につい

て︑義務者の健康︑風紀︑宗教上必要な設備及び規律を行なわなければならない︒﹂︵註現六一八条二項と同 じ文言である︶

提案者はその理由として︑健康と風紀にとって寝室の状態が重要であることを指摘し︑休息と宗教的義務の履行に 必要な時間を僕卑に与えるべき雇主の義務を強調した︒この提案に対する反論は︑主として以下の考慮に基づく︑す なわち︑宗教に関する一般的表現は種々の疑問を引起こすのであり︑これは詳細な僕卑令においてのみ正確・満足に

規律されうる問題である︑

果で

ある

と︒この提案は九対八の多数で承認された︒第二項の編集上の変更は︑この決議の結 これによって第三項となった文言の意味に関して疑問が提出され︑政府代表︑委員会構成員一致のもとに︑次のよ

うに確認された︒すなわち︑これは一項の場合における損害賠償義務を予め契約によって排除・制限することを禁じ ているだけではない︒六一八条一項によって労務義務者に認められている生命・健康の危険に対する保護に向けられ た権利を︑労務義務者は﹁予め﹂︑

すなわち︳雇傭関係が完全に終了するまでの間︑有効に放棄することができないとい

( 1 6 9 )  

第二点︒委員会構成員及び政府代表の間で︑本草案六一〇条と同様︑六

0

九条

a

の規定も強行的性格を持たなけれ

ばならないという了解が為された︒そこで本草案六一〇条の最後の項に代え︑次のような六一〇条

a

が採用された︒

うことをも定めている︑

と ︒

( 1 6 8 )  

R六月︱二日付委員会報告書

九六

8 ‑1 ‑96  (香法'88)

(19)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成について(下のニ・完)(高橋)

皿まとめ シュタットハーゲン

( A

u e

r )

等によって新たに提出されたが︑否決された︒

( 1 7 1 )  

速記録によれば︑採決にあたって次のような議論が為されている︒

一八歳以下の労働者に対する特別の配慮義務の提案は営業令︱二

0

条Cに一致する旨を述べ︑

旨は営業令の枠を超えて民法典に取入れられるべきであると主張した︒

これに対してエンネクツェルス

( E

n n

e c

c e

r u

s )

は︑右の趣旨は自明のことであるとした上で︑

これに反対した︒そして︑もし右のような規定を設けるならば︑当議院の意見として︑

このような義務の対象から外されるものではない旨を確認することを希望した︒

この後採決が行なわれ︑右の提案が否決︑委員会提案の六一〇条︑六一

0

条a

が承認された︒

以上が第二草案以後の展開である︒第一草案においては規定が設けられず︑営業令による法実務を背

景として︑安全配慮義務を民法典に規定する必要の有無が議論の中心となった︒これに対して第二草案以後において

てまとめに代える︒その際︑

九七

は議論が一歩進み︑提出された原案に基づいて規律の内容と民法典に取り入れる範囲が具体的に検討されている︒参

照した資料の制約により︑議論の全容を明らかにすることはできなかったが︑若干の論点毎に議論の推移を振り返っ

メンガーの提案のうち若干の点が︑客観的に見て第二草案以後の議論の争点になってい

理由

から

一八歳以上の者が

ける

こと

は︑

一八歳以下の労働者の状況を改善するよりも︑一八歳以上の労働者の状況を悪化させる結果を招くとの

フロ

ーメ

は︑

総会では︑委員会においてフローメ︑

@総会における審議 で

きな

い︒

の行なった全提案がアウアー

0

九条

a

︑六一〇条によって労務権利者に課せられる義務は︑予め契約によって排除または制限することが﹁ 六

( F

r o

h m

e ,

  St ad th ag en ) 

その趣

そのような規定を設

(20)

体がなくなることこそが必要であると述べ︑施行条例への指示を本条に含めることを主張する︒ライヒ議会において

も︑労働者保護規定の施行体制について︑営業令と同様の規定を民法に設けることが提案されたが︑結局否決された︒ て

いる

ょ ︑

'  

この法益は損害賠償になじまず︑

また被傭者からの解約告知も可能であることを理由に︑特別の規定は不要であ

ると判断された︒これに対して規定を設ける必要を説く見解もあり︵ロトマール︶︑結局ライヒ議会において︑住込み

の被傭者に対する配慮義務の保護法益として明文化された

①官庁の発する行政規定・命令と本条文との関連についても議論となった︒

詳細に定めることは困難であるが︑

その原則の実現のために行政官庁が法規を制定しうる旨を明らかにするよう求め ロトマールは︑官庁の諸命令によって安全配慮義務の原則が具体化され︑行政の強制によって損害の発生自

R風紀ないし性的名誉の保護につき︑ られた

︵現

1

条二

項︶

るため︑論点の整理についてはこれを出発点とする︒

なおライヒ議会の審議の結果︑現在の六一八条︑六一九条の体裁が整った︒ただ︑ライヒ議会に提出された草案に は︑賠償責任の要件として使用者の過責を要する旨の文言が存したが︑現六一八条では削除されている︒この点につ き︑施行直後において議論が為された模様である

︵現

六一

八条

一一

項︶

④被傭者を住込みで就労させる場合の使用者の配慮義務については︑既にメンガーが︑僕卑・産業労働者に供与さ

れている住宅がしばしば非衛生的であることを理由に︑明文規定の必要性を指摘していた︵第五項︶︒第二委員会の審

議では︑契約違反の一般原則による処理が可能であるとして明文化が否定された︒しかしこれに対して非衛生的な住

居の実態を理由に明文規定の必要を説く見解もあり︵ロトマール︶︑結局ライヒ議会において規定を設けることが認め

メンガーはこれを配慮義務の保護対象に含めている︵第二項︶︒第二委員会で

︵四

参照

︶︒

メンガーは第八項において︑民法典が 九八

8 ‑‑1 ‑98  (香法'88)

(21)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成について(ドのニ・完)(高橋)

を 提案を受入れなかった︒

九九

④使用者の配慮義務に強行性を持たせることを︑メンガーは第六項で主張し︑契約自由の原則は人格的利益保護の

ために制限さるべきであると述べる︒これは第一一委員会の段階で承認され︑規定の社会政策的性格から契約自由の原

則に対する例外を認めるものと説明された︒更にライヒ議会においてもその内容の確認が行なわれた︵現六一九条︶︒

R使用者の懲戒権の否定は︑メンガーが第九項で主張したところである︒この問題はライヒ議会において扱われ︑

民法施行法︵現九五条︶に取入れられることとなった︒

①配慮義務の内容として︑どの程度の措置をとる必要があるかについては︑粘り強い議論が行なわれた︒メンガー は︑事物の通常の経過に従うならばそれによって労働者の人格的利益の侵害を防ぎうるようなすべての外部的予防措 置をとるべきことを主張する︒第二委員会ではまずこの義務を緩和しようとする提案が為された︒その理由は︑営業 令による規律は︑現在の実情を顧慮して取引上通常の範囲に限定されており︑危険防止のために可能・必要なすべて の措置を求めてはいない︑民法典もこの現状を無視してはならないとするものである︒これに対して多数意見は︑営 業令規定の原則的立場と︑ライヒ︑プロイセンの確立した判例実務の立場から後退することはできないとして︑右の

その後においても︑義務の緩和を主張する提案が為されている︒すなわち案文修正段階で︑

更に連邦参議院の審議において︑ バイエルン政府の異議

に応え︑﹁通常のものでない予防措置を為す義務を負わない﹂旨の文言を付加する提案が為されたが︑結局撤回された︒

バイエルンからは本条の規律を僕卑・農業使用人に適用するのは適切でないとの批 判があり︑地域的な特性を顧慮しうる措置が要求された︒またハンブルクからは︑営業経営者の為すべき注意の水準 般化することは適切でないとして︑義務内容を﹁通常の注意﹂に限定する提案が為された︒いずれも採用されな

かったが︑その際︑ライヒ議会に修正案を提出しても実現の見込みがないという情勢判断も行なわれた模様である︒

(22)

( 1 3 7 )

田山・前掲﹁六一八条論﹂︵本稿︵中︶註

( 6 8 )

︶八九頁以下において︑既に議事録の内容が紹介されている︒

( 1 3 8 )  

P r o t o k o l l e   Bd . 

S .  

28 9

.  ; 

Mu gd an d   B . 

S .   9

04 f.  

( 1 3 9 )  

Ja co bs   u .   S c h u b e r t ,   D ie   Be ra tu ng e   d s  B t i r g e r l i c h e n

e   G se tz bu ch s  i n   s y s t e m a

t i s c h e r   Z us am me ns te ll un g  d er   un v e r o f f e n t l i c h e n   Q u e l l e n , R   ec ht   de r  S c h u l d v e r h a l t n i s s e   I I  

(1 98 0)  S .   7 83 f.

 i出口の予碑四安昌〖仝ぢにおいて店心宰Cが作成された際、次のよは、ライヒ司こ辻 うに解されていたとする︒すなわち︑使用者のこの責任が雇傭契約の本質に合致すること︑及び責任の範囲に関する限り︑被傭者 の身体傷害ないし死亡が︑芙約上の義務の有責な違反によって惹起されたか︑契約外の過責によって惹起されたかによって区別は

ありえないことである︒

( 1 4 0 )

﹁民法六四条ないし七一条︑ニ︱︱四条︱︱項︑五六四条︑七︱一条ないし七一三条︱二七七条を別として︑僕卑法に属するラント

法規定は依然影響を受けない︒とりわけ︑僕卑に対して労務を違法に放棄するようそそのかし︑あるいはなお僕卑関係が存するこ とを知ってこれを雇った者︑または正しくない僕卑勤務証明書を与えた者の損害賠償義務に関するラント法の規定も︑依然影響を

稿

( 1 1 0 ) )

( 1 4 1 )  

P r o t o k o l l e   B d . 

S .  

29 0f

.  ; 

Mu gd an d   B . 

S .  

90 5f

 

( 1 4 2 )   P r o t o k o l l e   Bd .  S .   291

は :

Ar be it ge be

r"

Mu gd an Bd .  S .  

9 0  c:'Arbeiter"•と記す︒文脈から前者を採った︒

( 1 4 3 )  

P r o t o k o l l e   Bd . 

S .  

29 3f

.  ; 

Mu gd an d   B . 

S .   907 

が為

され

た︒

これ

は︑

保険法の関連法規によって定められるものとされた︒

こ ︒ これに対しては保険法の趣旨が説明されるとともに︑ 配慮義務を強化するならば︑それによる使用者の負担の増大に対して何らかの措置が必要であるとの意見が出された︒ ⑧保険法との関連についても議論が行なわれた︒第二委員会においては︑

連邦参議院においても︑ 保険機関が労働者に対して行なった出費について責任を負うが︑

本条によって現状に変化が生ずるものではないことが説明され 保険による補償がある場合に使用者に対する損害賠償請求権を否定することにつき議論

覚書

の中

で︑

わら

ず︑

一定

の要

件の

下で

民法典が使用者の安全 使用者は保険料を負担しているにもかか

1 0 0  

8 ‑ 1‑100 (香法'88)

(23)

ドイツ民法典における使用者の安全配慮義務規定の生成について(ドの.^・完)(高橋)

1 0  

( 1 4 4 )   P r o t o k o l l e   B d .  

S .  

291; 

Mu gd an d   B .   S .  

906 

( 1 4 5 )   P r o t o k o l l e ,   M ug da n

' d e n Sc hu tz   de s  D i e n s t b e r e c h t i g t e n "

となっているが︑文脈から見ると疑問であり︑本文のように修 ( 1 4 6 )   ( 1 4 7 )   ( 1 4 8 )  

P r o t o k o l l e   Bd . 

S .  

294 

Mu gd an d   B .  

S .  

907 

P r o t o k o l l e   Bd . 

S .  

29 2f .;  M ug da n  B d .

 

S .  

90 6f . 

営業令

:‑

d0﹁管轄権ある警察官庁は︑個々い施設に関する処分い方訊により︑

. .

.  

0aないし

^:

0C

に含まれる原則 の遂行のために必要であり︑かつ施設の性質に従えば実行可能と思われる措置をとるよう命ずることができる︒右官庁は︑食事を とるために︑労働領域外の適切な︑寒い時期には暖房を施した領域を労働者に無償で使用させるよう命令することができる︒

命ぜられた措置が生命・健康に対する第迫った危険の除去を目的とするのでない限り︑その実行のために適切な期間が許与され

なければならない︒

本法公布の際に既に存在する施設に対しては︑拡張または改築が行なわれない限り︑労働者の生命・健康または道徳を危険にさ らす菫大な欠陥の除去のために必要な︑または過度の出費なくして実行可能と思われる措置のみを要求することができる︒

この警察官庁の処分に対し︑営業経営者は︑.一週間以内に上級の行政官庁に異議を申立てることができる︒上級行政官庁の決定

に対しては︑四週間以内に中央行政官庁に異議を申立てることが許され︑これが最終的な決定を下す︒この処分が権限ある同業組 合によって発せられた事故防止規則と矛盾するときは︑同業組合の理事会も︑当該営業経営者に許与された期間内に前記の法的手

段をとることができる︒﹂

同ニ︱〇条

e﹁連邦参議院の決議により︑特定の種類の施設において︑ニ

‑ 0

aないしーニ0C

に含まれる原則を遂行する ために満足さるべき必要条件に関する規定を公布することができる︒

右の規定が連邦参議院の決議によって公布されないときは︑ラント中央官庁の命令または公布権限ある官庁の警察命令によっ てこれを公布することができる︒右の命令・警察命令を公布する前に︑関係同業組合または同業組合の関係部局の理事に︑意見を 述べる機会を与えなければならない︒これについては︑一八八四年七月六日の労働者事故保険に関する法律七九条一項の規定︵ラ

ィヒ法律公報六九頁︶が適用される︒

連邦参議院の決議により︑一日あたりの労働時間の過度の継続によって労働者の健康が危険にさらされる営業について︑一日あ たりの許される労働時間及び与えらるべき休憩の継続時間︑開始及び終了を規定し︑この規定の実行のため必要な命令を発するこ

参照

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