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6.3 木造化粧軒裏の加熱実験概要 6.3.1 試験体設計

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Academic year: 2022

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6.3 木造化粧軒裏の加熱実験概要 6.3.1 試験体設計

 前述のように、木造化粧軒裏には遮熱性と遮炎性が必要とされ、各構成部材の断面 寸法や各部材同士の接合方法が防火性能にどのような影響を与えるかを明らかにする 必要がある。防火性能を調べるには、実大規模の軒裏部分を再現した試験体に盛期火 災に相当する火災外力を与えて、その延焼防止性能を確認する必要がある。

 ここでは、このような考え方に基づいて行った実験研究について述べるが、本実験は、

防火的な軒裏を開発する過程によって、大きく2つの段階から成り立っている。まず、

第一段階として、延焼防止性能を有する木造化粧軒裏を実現する見通しをつけるため に、1体ずつ、試験体の設計と実験を繰り返し、前試験の結果を踏まえた上で仕様に 改良を加えて、より防火的になるよう検討を行った。これが、表 6-1 に示す試験体の うち、試験体 A ~Dである。試験体 A ~ D の加熱実験から、木造化粧軒裏で、法令上、

木造で実現可能な最高水準の準耐火構造(60 分)に相当する仕様を達成できる見通し がついたため、次の段階として、試験体 E ~ I は、各構成部材の断面寸法や各部材同 士の施工方法を系統的に変化させ、さらに建物の新築や既存建物の改修といった施工 場面の違いによる施工上の制約等を考慮して、試験体を製作し、それらの違いが防火 性能に与える影響を検討した。

 表 6-1に試験体仕様一覧、図 6-3に試験体の構成、図 6-4に各試験体詳細仕様を示す。

試験体は、指定性能評価機関の「防耐火性能評価・業務評価方法書」6-3)をもとに、軒 裏部分の延焼防止性能が確認できる構成とした。実火災では、垂木や野地板が燃焼し 炭化するため、それら部材の強度が低下し、屋根葺き材の重量に耐えきれずに軒先部 分が脱落する場合があると考えられる。しかし、本実験では、試験装置の制約上、瓦 等の屋根葺き材の再現が困難であったため、文献 6-3に従って、屋根部分をケイ酸カ ルシウム板 25mm 厚の2枚張りとした。そのため、垂木や野地板が炭化し、脱落して も、屋根葺き材の代用であるケイ酸カルシウム板は脱落はしない。そこで、本実験で 再現しようとした加熱が、この勾配屋根(ケイ酸カルシウム板)の有無にかかわらず 一定になるように、実験中の加熱温度を延焼防止上もっとも重要な面戸板付近の温度 をもとに制御することとした。

(2)

表 6-1 試験体仕様一覧

 以下に、すべての試験体に共通する防火的な工夫や仕様をまとめた上で、試験体毎 の概要と設計上の留意点をまとめる。

○共通事項

・面戸板に漆喰や土を塗る仕様では、経年変化や加熱時の漆喰等の脱落を防止して、

遮熱性を確保するために、面戸板の表面をノミで荒らし(ひがき)、さらに、垂木や野 地板にヒゲコ打ちをして漆喰等を塗った。

・部材同士を密着させて隙間の発生を最小限に抑えるために、部材の組み立ては、す べてビス止めとした。特に垂木と桁、面戸板と桁、垂木と面戸板等の隙間が発生しや すい部分の止め付けには長さ 120mm 以上のビスを用いた。

・野地板の厚さは、野地板上部からの火炎貫通を防止するために、30mm 厚または、

2枚張りで計 30mm 厚とした。また、試験体 I のみ、野地板が薄い場合の延焼防止対 策を検討するために 12mm 厚とした。

試 験 体 I(12mm)

を除き、

(3)

図 6-3 試験体の構成

正面図 側面図

・京町家では瓦葺きが多いことを考慮し、屋根勾配を4寸とした。また、試験体 H のみ、

屋根勾配が軒裏の延焼防止性能に与える影響を調べるために、金属板葺き等で採用さ れることがある 1.5 寸勾配6-4)とした。

・垂木寸法は、京町家の実状にあわせて、試験体 E、F が 40 × 42mm、その他は 45mm 角とし、間隔はすべての試験体について、京町家の一般的な柱の芯々寸法(6 尺 3 寸)の 5 等分の 382mm とした。

・試験体材料は、京町家の一般的な仕様を考慮して、垂木、野地板、面戸板は京都美 山産のスギとした。桁は、アカマツ等が使用されることが多いが、材料調達の関係上、

ベイマツとした。

①試験体 A

(4)

図 6-4 試験体の詳細図(次頁に続く)

●は熱電対設置位置を示す

(5)

図 6-4 試験体の詳細図

1.5 寸勾配 1.5 寸勾配

●は熱電対設置位置を示す

(6)

 最初に行う実験の試験体であったため、まずは、延焼防止性能のある木造化粧軒裏 の実現可能性について見通しをつけるために、部材の断面寸法としては、若干過剰と も思える面戸板 60mm 厚、野地板 30mm 厚とし、垂木のみ一般的な京町家とほぼ同 じ 45mm 角とした。さらに、面戸板部分を介しての延焼を防止する工夫として、図 6-4のように、面戸板の表面を漆喰 20mm で防火被覆(A-1 仕様)したり、面戸板 と野地板の取り合い部の隙間を防止するため、面戸板と野地板の納まりを面戸板勝ち

(A-2)とした。

②試験体 B

 試験体 A の実験結果より、面戸板 60mm 厚の表面に漆喰を塗れば、60 分間の室内 側への延焼防止を達成できることがわかった。さらに、面戸部分の納まりについて、

屋外側から漆喰を防火被覆として塗る仕様は防火的効果は大きいが、面戸部分が屋根 勾配に沿って狭くなるため、施工が困難なであり、漆喰塗り部分が化粧として外部か ら見えるため、左官職がこの部分を施工する必要があるなど、施工上の制約が大きい こともわかった。面戸部が木材のみの仕様では、垂木周辺より火炎貫通することも確 認できたので、これを防止するために面戸板裏面に防火充填材として漆喰を塗ること も有効と考えた。そこで、試験体 B では、面戸板の厚さが遮熱性に与える影響を調べ るために 30mm 厚の面戸板とした上で、面戸板部の納まりを試験体 A と同様の 2 仕 様(B-2、B-3)とし、それに加えて、面戸板裏面から漆喰を充填する仕様(B-1)の 合計3仕様とした。

③試験体 C

 試験体 B では、30 分間の延焼防止性能を達成できなかったが、これは、面戸板の 厚み(30mm)がやや小さかったのに加えて、軒裏を構成する部材同士の接合方法が、

突きつけであったために施工精度によっては、垂木と面戸板の取り合い部が防火上の 弱点となることがわかった。そこで、試験体Cでは、面戸板を 45mm とした上で、試 験体 A、B で火炎貫通が起こった垂木と面戸板の取り合い部の納まりを突き付けでは なく、垂木に面戸欠きをすることにより、接合性を向上させて、隙間の発生を予防した。

面戸板の納まりは、試験体 B で試みた3仕様のうち、面戸板裏面に漆喰を塗った仕様

(C-1)と面戸勝ちとした仕様(C-2)の2仕様とした。

(7)

④試験体 D

 試験体 C の結果より、面戸板 45mm の裏面に漆喰 20mm を塗った仕様で 60 分間 の延焼防止性能を達成できた。試験体 D では、試験体 C の仕様の延長上で、より、裏 面の漆喰の防火充填材としての効果を向上させるために、漆喰を塗る部分の桁、垂木、

野地板にしゃくり(溝)を入れて、その部分にも漆喰を充填した。この仕様では、防 火性能は向上するが、施工上の手間が増加することが予想されたので、大工職の施工 手間についても同時に検討した。

⑤試験体 E

 試験体 A ~ D において、木造化粧軒裏で、法令上の準耐火構造に相当する 60 分間 の延焼防止性能を達成できる見通しが立ったので、この仕様を踏まえて試験体 E ~ I では、軒裏部の各部仕様を変化させた時に、防火性能がどのような影響を受けるかを 系統的に解明することを目的とした。試験体 E では、既存町家の改修時に、面戸板付 近の野地板の取り替えを前提に、屋根面からのみ施工可能な場合を想定し、既存面戸 板 12mm 厚の裏面(堰板で土の流れ留めを設ける)に土を屋根面より 45mm 充填した。

この際、野地板は、30mm 厚を1枚張りした場合(E-1)と既存の野地板の上に新た に野地板を張って、合計厚みを 30mm とした場合(E-2)についてそれぞれ防火性能 に与える影響を検討した。

⑥試験体 F

  試 験 体 F で は、 面 戸 板 を 既 存 町 家 に 近 い 15mm 厚 と し た 場 合 に、 裏 面 に 土 を 40mm 充填することにより、防火性能を確保可能か検討した。この際、試験体 E と同様、

野地板を 30mm 厚の1枚張りとした場合(F-1)と既存の野地板の上に新たに野地板 を張って、合計厚みを 30mm とした場合(F-2)についてそれぞれ防火性能に与える 影響を検討した。

⑦試験体 G

 試験体 G では、試験体 B でも検討した面戸板 30mm の場合について、試験体 B で 火炎貫通した部材同士の取り合い部の隙間を垂木の面戸欠きをすることにより、防火

(8)

的改良を加えた。試験体 B 同様、面戸板に漆喰を防火被覆として加熱側に塗る仕様

(G-1)と防火充填材として面戸板裏面に漆喰を塗る仕様(G-2)とした。

⑧試験体 H

 試験体 H では、屋根勾配の違いが防火性能に与える影響を調べるために、緩勾配の 施工が可能な金属屋根のうち、最小勾配と考えられる 1.5 寸とした。他の試験体の4 寸勾配と比較するために、面戸部分の仕様は試験体 G-1 と同様に 30mm の面戸板裏 面に 20mm の漆喰を塗った仕様(H-1)と、もう一仕様は垂木に面戸欠きを付けた場 合に木材の面戸板のみの防火性能を確認するために 45mm 厚の面戸板(H-2)とした。

⑨試験体 I

 試験体 I では、野地板の厚みが防火性能に与える影響を検討するために野地板を 12mm 厚とした。野地板厚が薄くなると、瓦葺きの場合のように野地板と屋根葺き材 間に隙間がある場合、その野地板上部を介して室内側に延焼する恐れがある。その影 響を調べるために、野地板上部に 25mm の通気層を設けた場合(I-1)と、同様に通 気層を設け、漆喰を面戸板直上の野地板と屋根葺き材の間にファイヤーストップ材と して充填した場合(I-2)、野地板上部に通気層がない場合(I-3)の3仕様とした。

6.3.2 試験体の製作

 表 6-2に試験体の製作時期、養生期間、試験体構成部材の含水率の一覧を示す。試 験体の製作は、京都府建築工業協同組合が行い、木材は平衡含水率(約 15%)に近い 材料を使用し、漆喰は塗り作業後、十分に乾燥養生した。

(9)

6.3.3 実験方法

 実験は、試験体 A ~ D、I が(財)日本建築総合試験所、試験体 E,F,H が(財)日本住宅・

木材技術センター、試験体 G が(財)建材試験センターの耐火炉をそれぞれ使用して行っ

写 真 6-2  試 験 装 置 全 景

(左:耐火炉、右:試験体)

写真 6-3 軒部詳細 表 6-2 試験体の製作時期と含水率

(10)

た。写真 6-2、写真 6-3に試験装置の全景、試験体を示す。

6.3.3.1 加熱方法

 加熱は、ISO834 に規定する標準加熱曲線に従って行った。可燃材で構成された化 粧軒裏では、加熱開始から 10 分程度は、試験体が着火と消炎を繰り返す。そのため、

耐火炉内の温度制御が困難となるが、加熱用バーナーの燃料供給を調節しながら、可 能な限り、標準加熱曲線に一致させるよう試みた。

6.3.3.2 測定項目

 図 6-4に示す位置に、φ 0.68mm の K タイプ(CA)熱電対を最大 58 点(試験体 仕様により異なる)設置し、30 秒間隔でデータロガーを用いて計測した。熱電対は、

防火上の弱点になりやすい部材同士の取り合い部や野地板上部、面戸板裏面にそれぞ れ設置した。さらに、遮熱性、遮炎性上の弱点部分が可視化されるよう、試験体非加 熱面の温度分布を赤外線サーモグラフィー装置(TVS-600、測定温度 -20 ~ 1200℃、

日本アビオニクス株式会社製)を使用して記録した。その他、炉内温度の測定、試験 体表裏面の目視観察、ビデオ及びカメラによる映像記録を行った。また、軒裏の防火 性能には、構成部材である垂木、野地板、面戸板、漆喰、土の含水率が影響するので、

試験体毎にサンプルを作成し、それぞれ、絶乾法で含水率を測定した(表 6-2)。

6.3.4 防耐火性能の評価

 軒裏における防火上の弱点は、試験体 A の実験結果から、桁・垂木・野地板・面戸 板のすべての部材が取り合う部分であることがわかった。そのため、遮熱性、遮炎性 の評価は以下の基準で行うこととした。

①遮熱性

 面戸板裏面の温度(特に垂木との接合部分の温度)が、文献 6-3に規定する平均温 度(初期温度+ 140℃)もしくは最高温度(初期温度 +180℃)を越えた時間

②遮炎性

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