• 検索結果がありません。

3.1 運転の注意度と覚醒度の解析

まず,走行後のヒアリングで,各走行をどれくらい注意しながら運転していたか(以降,運 転の注意度)を4段階(0:全く注意していない~3:とても注意した)で問うた結果と,各走 行時の覚醒度を9段階(1:非常にはっきり目覚めている~9:非常に眠い)で問うた結果を自 車両がACCであった場合とMDであった場合とで比較する.

図2.4は被験者がACC車両を運転していた場合(2.4節の条件1, 3, 5,N=60,20人×3ACC 条件/人,以降ACC運転条件)と,MD車両を運転していた場合(2.4節の条件2, 4, 6,N=60, 20人×3MD条件/人,以降MD運転条件)の,運転の注意度の平均を示したものである.運 転の注意度は,ACC運転条件が平均0.87(SD=0.81)であったのに対し,MD運転条件は平 均1.31(SD=0.87)と,MD運転時のほうがACC運転時よりも注意度が有意に高い結果とな った(t(59)=3.43,p<.01).

図2.4 ACC運転条件とMD運転条件の運転の注意度

一方,図2.5はACC運転条件と,MD運転条件の,運転時の覚醒度の平均を示したもので ある.覚醒度はACC運転条件が平均3.10(SD=1.87)であったのに対し,MD運転条件は平 均2.88(SD=1.85)と有意な差は認められなかった(t(59)=0.88,n.s..すなわち,今回の実 験環境においては,速度調整が不要なACCを運転することによる覚醒度の低下という負の効 果は認められなかった.

図2.5 ACC運転条件とMD運転条件の運転中の覚醒度 0

0.5 1 1.5 2 2.5 3

ACC MD

運転の注意度

0 1 2 3 4 5

ACC MD

眠気

7

次に,振り返り走行の各ヒアリングポイント(4.0kp, 5.5kp, 7.5kp, 9.0kp)における運転注 意度の比較を行う.図2.6に示すように,どのヒアリングポイントにおいても,ACC条件と MD条件とで運転の注意度に有意な差は認められなかった.

図2.6 各ヒアリングポイントにおける運転の注意度

3.2 運転中の注意対象物の解析

次に,振り返り走行中,被験者が運転中に気になる対象として発話した内容についての解析 を行う.具体的には,振り返り走行で気になる対象として発話された対象物を「車間距離」「追 い越し車線の車両」「前方車両の挙動」「カーブ」に分類して出現数を各々算出,2.4節に示し た条件間で比較した.

3.2.1 ACC運転条件とMD運転条件の比較

まず,ACC運転条件(2.4節の条件1, 3, 5,N=60)とMD運転条件(同2, 4, 6,N=60) の比較を行う.図2.7はACC運転条件(図2.7左),MD運転条件(図2.7右)で,各ヒアリ ングポイントにおいて被験者が発話した対象物の出現数を示す.

図2.7 ACC運転条件(左)とMD運転条件(右)の発話回数(いずれもN=60)

ACC運転条件とMD運転条件で,各ヒアリングポイントにおける発話回数に差があるのか z検定で比較を行った結果,7.5kpおよび9.0kpにおける車間距離に関する発話回数がACC運

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

4kp評価 5.5kp評価 7.5kp評価 9.0kp評価

運転の注意度

ACC MD

0 5 10 15 20 25

4.0kp 5.5kp 7.5kp 9.0kp

発話数

車間距離 追い越し 前方車両 カーブ

0 5 10 15 20 25

4.0kp 5.5kp 7.5kp 9.0kp

発話数

車間距離 追い越し 前方車両 カーブ

8

転条件はMD運転条件よりも有意に少ない,あるいは少ない傾向が認められた(7.5kp:ACC 運転条件6回,MD運転条件13回,p<.1,9.0kp:ACC運転条件3回,MD運転条件13回,

p<.01).7.5kp以降は,9.5kp付近のR=400のカーブが原因となり,自車両前方の車群全体の 速度が低下する箇所である.この箇所において,ACC運転時に前方車両に対する発話が有意 に減少したことは,被験者がACCによる速度調整機能に一定の信頼をおいて,前方車両に対 する注意をある程度減少させたものと考えられる.すなわち,前方車両に対するドライバーの 注意負荷はACC機能によりある程度軽減されることが示唆される.

一方,追い越し車線に関する発話数は,4kpではACC運転条件のほうが有意に多かった

(ACC運転条件21回,MD運転条件9回,p<.05)のに対して、9.0kpではMD運転条件の ほうが有意に多い(ACC運転条件6回,MD運転条件16回,p<.05)結果となった.また,

ACC運転条件では,追い越し車線に関する発話数が運転時間の経過とともに減少し,徐々に 周囲に注意を払わなくなる傾向が示唆されたのに対し,MD運転条件ではそのような傾向は認 められなかった.

3.2.2 ACC車両混在比率0%条件での比較

次に,ACC車両の混在比率が0%の交通流におけるACC運転時(N=20),MD運転時(N=20) の注意対象物の比較を行う.図2.8はACC運転時(図2.8左),MD運転時(図2.8右),各 ヒアリングポイントにおいて被験者が発話した対象物の出現数を示したものである.

図2.8 混在比率0%時の発話回数(左:ACC運転時,右:MD運転時,N=20)

ACC車両混在比率0%の交通流では,ACC運転時とMD運転時とで車間距離に関する発話 数に有意な差は認められなかった.2.4節で述べたように,混在比率0%の交通流は,混在比率 50%の交通流と比較すると速度変化が大きい特徴がある.このような交通流においては,ACC 機能による前方車両への注意負荷の軽減効果は,後述のACC車両混在比率50%の交通流と比 較すると限定的であった.今後,混在比率0%と50%の交通流の違いを精査する必要はあるが,

交通流の乱れが比較的小さい状況,すなわち周辺に多くACC車両が存在する状況において,

ACC機能による前方車両への注意負荷の軽減効果は,より大きなものとなる可能性が示唆さ れた.

一方,9.0kpにおいては,ACC運転時よりもMD運転時のほうが,追い越し車両への発話 が有意に多い結果となった(ACC運転時3回,MD運転時10回,p<.05).すなわち,ACC 機能はドライバーの前方車両への注意負荷の軽減に効果がある一方で,前方以外に対しても注 意を払わなくなる負の効果がある可能性が示唆された.カーブに対する発話はMD運転時には 認められなかった.後述のACC車両混在比率50%では,MD運転時にカーブに関する発話が 認められたことから,交通流の乱れが比較的大きくなる混在比率0%条件においては,ドライ

0 5 10

4.0kp 5.5kp 7.5kp 9.0kp

発話数

車間距離 追い越し 前方車両 カーブ

0 5 10

4.0kp 5.5kp 7.5kp 9.0kp

発話数

車間距離 追い越し 前方車両 カーブ

9

バーの注意は道路線形よりも前方車両や追い越し車線の車両など周辺交通条件に向けられる 可能性が示唆された.

3.2.3 ACC車両混在比率50%追従条件での比較

ここでは,ACC車両混在比率50%追従条件の交通流におけるACC運転時(N=20),MD運 転時(N=20)の注意対象物の比較を行う.図2.9はACC運転時(図2.9左),MD運転時(図 2.9右),各ヒアリングポイントにおいて被験者が発話した対象物の出現数を示したものである.

図2.9 ACC混在比率50%追従条件の発話回数(左:ACC運転時,右:MD運転時,N=20)

ACC車両混在比率50%追従条件の交通流では,4.0kpにおける追越車両に関する発話がACC 運転時の方が有意に多い傾向(ACC運転時9回,MD運転時4回,p<.1),9.0kpにおける車 間距離に関する発話はMD運転時のほうが有意に多い(ACC運転時0回,MD運転時6回,

p<.05)結果となった.このことから,ACC車両混在比率50%の交通流においては,ACC機 能による前方車両への注意負荷の軽減効果は,ある程度期待することが出来ると考えられる.

一方でMD運転時にはカーブに関する発話が4件あったのに対し,ACC時には発話はなか った.

3.2.4 ACC車両混在比率50%クルージング条件での比較

つぎに,ACC車両混在比率50%クルージング条件の交通流におけるACC運転時(N=20), MD運転時(N=20)の注意対象物の比較を行う.図2.10はACC運転時(図2.10左),MD 運転時(図2.10右),各ヒアリングポイントにおいて被験者が発話した対象物の出現数を示し たものである.

図2.10 ACC混在比率50%クルージング条件の発話回数(左:ACC運転時,右:MD運転時,N=20)

ACC車両混在比率50%クルージング条件の交通流では,4.0kpにおける追越車両への発話 がACCの方が有意に多い(ACC運転時6回,MD運転時1回,p<.05)ほかは,差は認めら れなかった.3.2.3節のACC車両混在比率50%追従条件と比較すると,MD運転時の車間距離

0 5 10

4.0kp 5.5kp 7.5kp 9.0kp

発話数

車間距離 追い越し 前方車両 カーブ

0 5 10

4.0kp 5.5kp 7.5kp 9.0kp

発話数

車間距離 追い越し 前方車両 カーブ

0 5 10

4.0kp 5.5kp 7.5kp 9.0kp

発話数

車間距離 追い越し 前方車両 カーブ

0 5 10

4.0kp 5.5kp 7.5kp 9.0kp

発話数

車間距離 追い越し 前方車両 カーブ

10

に関する発話や追い越し車線に関する発話が少なくなっていることが分かる.この理由として,

ACC車両混在比率50%クルージング条件は前方車両が90km/h設定で遅いため,カーブ手前 での減速度合いが他の条件よりも緩やかであった可能性が考えられる.一方で,ACC運転時 には,追従条件,クルージング条件いずれの場合も車間距離に関する発話は少なく,両条件間 で差は認められなかった.このことから,自車両がACC機能を搭載している場合, MD運転 時よりも早い段階(交通流がより乱れた状態)でドライバーの注意負荷を軽減できる可能性が 示唆された.

3.3 アイカメラデータの解析

本節では,アイカメラデータを用い,被験者の走行中の注視行動の解析を試みる.本報告書 では先行的に解析を行った被験者10名分のアイカメラデータを,ACC運転条件(2.4節の条 件1, 3, 5)と,MD運転条件(2.4節の条件2, 4, 6)とで比較する.なお,機器調整の不備な どの理由により一部アイカメラデータの解析が出来なかったため,今回解析対象としたのは ACC運転条件が27個,MD運転条件が25個である.本研究では先行研究1)の知見を援用し,

視線がある対象の上に165msec以上留まっている場合,その対象を注視しているとみなした.

そして注視していた対象物を「追越車両」,「メーター」,「左ミラー」,「ルームミラー」,「右ミ ラー」,「カーブ先」,「左風景」,「右風景」,「前方」,「前方車両」に分類し,注視回数と注視時 間を算出した.

図2.11,図2.12はそれぞれ1試行あたりの平均注視回数,平均注視時間を示す.図2.11

を見ると,ACC運転条件ではMD運転条件と比較すると前方の注視回数が少ないことが分か る(ACC運転条件43.0回,MD運転条件74.1回).その一方で,図2.12を見るとACC運転 条件ではMD運転条件と比較すると前方の注視時間そのものは長い(ACC運転条件133.6秒,

MD運転条件127.3秒).ACC運転条件とMD運転条件とで運転時間そのものに大きな差はな いことから,ACC運転時はMD運転時よりも前方(前方の車両ではなく,単に前方)を長時 間,他に視線を移動することなく見ていることが分かる.

図2.11 1試行あたりの平均注視回数 0

10 20 30 40 50 60 70 80

平均注視回数

ACC(27) MD(25)

関連したドキュメント