地域認識を育てる歴史教育 : 小学校6年「関ヶ原の戦い」の授業研究を通して
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(2) 目次. 1. 序章… 第1章 地域認識教育の現状・課題と本研究の立場一一一一……………・……一……一…・. 第1節 社会認識教育のあり方一…. 8. 8. 1. 「新しい学力観」とそれをめぐる問題一一一一一一一一一一一一一…一一一一一一一一……………一一一……… 9 (1) 「新しい学力観」が主張するもの一一一一一一…一一一一一一一…一……一一一一…一……・…一一一…一. 10. (2) 「新しい学力観」をめぐる問題…・一………一一一一一一一一一一一一一一一一…一一一一一・……一一一一一…. 2.社会科の学力面一…一………一一一一…一一一一一一一…一一一. 12. 15. (1)基礎的知識と基本的知識………………一一一. 15. (2)学力論争とその展開一……一…一…一一…一一一一一…一…・…一一一一…. 17. 3. 今日の社会認識教育の基本的なあり方(本節の晶晶に代えて)・・…一一一 23 第2節 地域認識教育の現状と課題…………一…・一・一一………一 27 1.学習指導要領や教科書における地域認識教育の位置づけ一一一…… 27 (1)学習指導要領における地域認識教育の位置づけ一一一一一…一一…一…一…. 27. (2>教科書における地域認識教育の位置づけ……一一一一一一一一一…一一一一一……一…. 29. ①平成8年度版教科書の横断的分析一…一…一 ② 東京書籍社の教科書の縦断的分析…一一. 29 32. 2. 地域認識教育の変遷…………一・・………一…一……一一…一………. 35. (1)戦前の郷土教育…一一一一一…………一一……一………一一………. 36. ①文部省・師範学校系の郷土教育一……………・・. 37. 42. ②郷土教育連盟の郷±教育…………一……一……………一一…一一一 (2>戦後の郷土教育及び地域認識教育・…一一一…一一一…・・……一…一…一一……一一一・・一一・47. ①「地域=道具」型の地域認識教育……………一…一一……. 48. ② 「地域=目的」型の地域認識教育・…………一 49 ③「地域=学習拠点」型の地域認識教育一一一・一一一一一……一……一… 52. ④「地域=手段」型の地域認識教育……一…………一一. 56. 3.地域認識教育の基本的なあり方(本節の小声に代えて)一一…一…一・一一一一…一一一・59. 第3節 本研究における地域認識教育一……………・………・一…一・ 1.社会認識の育成のために……一一…………・一一…… 61 (1)山本典人の「独立単元」………一一一…一一一一一一一一一一…一一一一・…一一・一……一. 61 62. ①「独立単元」の主張とその方法…一一一一…一一…一一・一一・一一…一…一一一一…一一 62. ②「独立単元」の問題点と「独立単元的な歴史学習」の提案………一64 ② 久津見宣子の「ものをつくる授業」と藤岡信勝の「直接経験」論一・68 ①久津見実践と藤岡論にみる体験的な活動の意義……一・……・…・…68 ② 体験的な活動の課題…一…一……一一一一一………一一……一……一一一一………”一’’’”…’”71. (3>安井俊夫の「共感」論と藤岡信勝の「分析」論……一一一一…一…一一一一一一一一…一一一一・73. ①安井実践にみる「共感」一一…一…一……・・…. ②「共感」の限界と「分析」の主張……一. 2.地域認識教育の立場一・…一………・……一一一…一……. 73. 74. 76. (1)実践単元でめざすこととそこでの地域の役割…・………………一一一一…一・76 ①「地域性との関わりで理解」すること一…一一一一…一…一一一一一…一…一…一一一……一…・76. 77. ②「歴史を見る目」の育成とその転移一一一 ⑧ 実践単元における地域の役割一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一…一一一一一一一…. 80. (2)戦前戦後の郷土教育及び地域認識教育との関連と指導の立場一一一一…一一一・82 3.本節の小蔀…………一…一…一一一… 85 【第1章の小括】…一一・……一一一一一… 86.
(3) 目次. ①教育目標・教育内容とは……………. 89 89 90 90 90. ②目標の精選化…一一………. 91. 第2章. 「関ヶ原の戦い」の授業設計一一一…一一……. 第1節 授業の基本的要素と先行実践からみた授業の構想… 1.授業の4要素についての立場・一一…一……一一…一一……一……. (1)教育目標・教育内容・……. (2)教材・教具一…一一一・一一一…一一一一一一一一…一一…一………一…一一一一一一一…. ①教材・教具とは………一一一一一・・一…一一一一一一………. ② 地域素材の教材混一…一一一一一一……一…一…………一… (3)教授行為・学習形態…………一一一一一一一一一一一一一一一一…一一…. ①教授行為・学習形態とは…一一一…一一一一・一一一一一…. 92. 92 95 96 96. ② 自己表現ができる学習活動…一……… ③指導の個別化と学習の個性化……一…. 99 100. (4)教育評価……一一一…一……一…一一一一………一・…一. 101. ①教育評価とは・一…一一……・………………… ② 「学び」をとらえる形成的評価一一……………・……. 101. (1)体験的な活動を重視した実践…・……一……一一一一…一一一一一…一一一一. 103 108 108. (2)指導の個別化・学習の個性化を重視した実践……一一一. 111. 3.本節の小括一…………一一一……一一一・一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一…一一…一一一一一一一. 116 117 117 118 118 119 119 119 120 120. 2. 先行実践の分析…一………一・……………一…一一……一……一…一一一. (1)教育目標・教育内容……・一…一一一…一・一……・一…一一……一一……一… (2>教材・教具一一一一一一一一一一…一…一一一…一・……………一一一……………一・・. (3)教授行為・学習形態………・一一一……一一一一一……一………一…一…… (4>教育評価・…・・一一一一………・……一……一……一……………・…一一…一一. 第2節 子どもの実態把握一一………一……一…一……一………一一一………… 1.診断テストの概要・……一…一…一…一一…一…一………一一一一一一一一一一一一一一一一一…一 (1) 目的と手続き…一一一一・一…・…一…・一一一・一…一一一一一一……一……・……一……. (2)問題設定の観点とねらい一・……一一…一一一一…一…一一一一…一一一……一一一. 2.テスト結果とその考察………・一一一……一一一一一一一一一一一…一……一一……. 「社会科学習に対する見方」について………一…一一一…一………. 121 121. 「調べ学習に対する見方」について一………………一……一…一一一. 121. 「歴史学習に対する興味・関心」について………一 「地域(関ヶ原)認識と地域に対する見方」について一一. 122 125 127 129. (1>問題設定の観点別の結果と考察一一一一…………一一一一一一一・…一一…. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥. 「関ヶ原の戦いについての知識」について…一一一…一……一一一一一. 「関ヶ原の戦いに対する興味・関心」についで……・……. ② テスト結果とその考察の小回一一一一…一・一一……一一一……一一……・…. 131. ①社会科学習,歴史学習に対する興味・関心…………… ②地域認識と関ヶ原の戦いに関する知識や興味・関心一一. 131. 第3節 授業設計……………一…一… 1.実践単元の教育目標と教育内容一…………一一…一…………………・一 (1)現行学習指導要領における目標と内容…一… 一一一一…一…一一一…一 (2)教育目標と教育内容の設定一一一一一……一一一一一一一一一一一…一一一一一………一一一一…一. ①教育目標と教育内容の実際一…一…一一…一一一一一一一一一……一一一一一一…. ②教育目標・教育内容を具現するための指導過程…… (3)実践単元の目標の精選化…一…………・…・……一一……. 2.実践単元の授業仮説と授業モデル…一一一……・一……一一. (1)教育目標・教育内容に関する仮説…・………一 (2>教材・教具に関する仮説・一…一……一一一一一一…一…一…一・一一一一…一……. 132 134 134 134 136 136 139 142 145 145 145.
(4) 目次. 3.実践単元の指導計画と学習指導案一一…一 (1)実践単元の指導計画一一…. 146 147 148 149. (2)実践単元の学習指導案一…… …一一一一・一一. 151. (3)教授行為・学習形態に関する仮説一一 (4)教育評価に関する仮説一一一一. ① ② 2/15∼ 5/15時間一一 ③ 6/15時間一一 7/15時間一一 ④ ⑤ 8/15時間一一 ⑥ 9/15時間・・ ⑦ 10/15時間一 ⑧ ll/15時間・一 ⑨ 12/15時間一一 ⑩ 13/15時間一 【第2章の小槌】 1/15時間一一. 第3章 「関ヶ原の戦い」の授業の分析とその改善………一一一一一…一 第1節授業の実施状況と授業記録一一一…一一・…一一一…一 ユ.授業の実施状況一一…一一一一一一… 2.. 授業言己録一一一一一一一一・一一一一一・一一一一一一一一一一. (1)授業の情報の収集一一一一一一一一一一………・………・…. ② 授業記録の記述の仕方一・・一 (3)授業記録の実際………一一一・・……一一・……. 第2節授業分析の立場と方法一 1.授業分析の立場一一一一……. 2 授業分析の視点と方法……… (1>授業分析の視点・…・一一 ② 授業分析の方法……一一…一一…. ①〈視点1>の方法一一一一一一 ②〈視点2>の方法一一一一一一 (3>授業分析の全体構想……一一一一・一……・………. 第3節 授業分析の実際……… 1.授業成果の評価一一…一一一一一一一一……. (1>パンフレットにみる理解の状況一……一一一一一…一…・…一…. ①分析の基本的な立場一一…一・………・………一…一…一一一一一……. ②分析の実際一一・………. ③パンフレットにみる理解の状況のまとめ…一……一 (2)総括テストの結果にみる理解の状況……一…一…一 ①分析の基本的な立場……一一一一一…一一一一一一一一一………一一. ②分析の実際…一 ③総括テストの結果にみる理解の状況のまとめ一…一… 2. 授業過程・学習経験の評価………… (1)分析の基本的な立場一一……. (2)分析の実際一…一 (3)授業過程・学習経験の評価のまとめ…………・…一…一一一一一…………. & 事前・事後調査結果の分析…一一一… (1)授業前後の社会科(歴史)学習に対する好意度(期待度)の変化一. ①分析の基本的な立場一一. 151. 153 156 159 160 161 162. 164 166 168 169 172 172 172 174 174 175 176 177 177 179 179 180 180 181 181. 183 183 183 183 185 187 187 187 188 196 196 196 198 243 243 243 243.
(5) 目次. ② 分析の実際一…一…一一一一一一一一一一一一…一一一一・一一一一一一一…. ② 単元の学習の生かし方に関する意識………… ①分析の基本的な立場一一一……一一一一一一・……. ②分析の実際………一 (3)事前・事後調査結果の分析のまとめ・…一……一一一一…一一一一…… 4.本節の小包…・一一一一一……一一一一一一一一. 第4節改善指導案の提案・一一……一・・一一…一一一……一…一一…一一一一…. 19改善点・一………一…一…一一. (1)第1次(歴史を伝えるもの探し一病1時)… (2)第2次(史跡の見学一第2時∼第5時)一…一 (3)第3次(課題作りと課題選択一病6時)…一一 (4>第4次(調べ学習・資料作り・発表練習一高7時∼第9時)一一 (5)第5次の1(1つめの課題のグループの発表一高10時)……… (6)第5次の2(2つめの課題のグループの発表一高11時)………. (7)第5次の3(3つめの課題のグループの発表一高12時)…… 2. 改善指導案一一一一一一一…………一……一…………一一…一一………一一…一…一一一一…一…一…一一一一一一. 1/15時間一一 ① ② 2/15 ∼ 5/15時間・一一 ③ 6/15時間一一 7/15時間一一 ④ 8/15時間一一 ⑤ ⑥ 9/15時間一一 ⑦ 10/15時間一・ ⑧ ll/15時間一一 ⑨ 12/15時間一一 【第3章の小括】 終章一・. 245 251 251 253 254 255 256 256 256 257 257 257 258 259 259 260 261 263 266 269 270 271 272 274 276 278 281. 【参考文献・引用文献】. 288. 【巻末資料】. 292 293. 資料1 学習指導要領の目標・内容(第6学年)一覧一一一一…………・一一一. 資料12 関ケ原の戦いの犠牲者一一…一一一一一一一…一一一一一一……一一一一一一一一…一一一一一一一一一一一一一…. 298 299 300 305 309 313 314 318 318 319 320. 資料13 パンフレット作成用紙……一一一一一一…一一一一一一………一…一一一一一一…一…一一一一一一一. 321. 資料14 パンフレット記述状況一覧一……一……・…一一一…一…一…一……一一一一一. 322 328 332. 資料2 目標と内容を中心とする歴年の学習指導要領の特徴一・… 資料3 平成8年度版各社教科書の比較(第6学年・歴史単元)・ 資料4 歴年の東京書籍社教科書の比較(第6学年)・一一……………・・ 資料5 診断テスト問題……・・一一一一……一一…一…・一一一一一…・一一一一一……一…………一一 資料6 診断テストの結果(対象学級)一一一一一一…一一一一一…一一一一一一…一一一一一一一一一…一一一一・. 資料7 「子ども語り関ヶ原合戦」の歌詞一……一一一一一一・一一一一一…一一・・一一一…. 資料8 学習ノート・一……………一一 資料9 見学メモ…一…一…一一一一一一…・…一一…一一一一一一一一一一一一一…’’’”−”…’’’’’’”……. 資料10 関ケ原観光マップ一一一一……一一一……一一……………一…一一…………一…一. 資料11 調べ学習用ワークシート………………・…………一……一………一一. 資料15 総括テスト問題・…一…一一一…一…一…一…一一一一一一…. 資料16 授業記録……一 謝辞一一. 373.
(6) 序章. 序 章. 算数・数学教育では数学的な見方・考え方の育成,理科教育では科学 認識の育成というように,どの教科にも子どもに育成するべき固有の課 題がある。そして,教師はそれを育成するために,日々の授業実践にあ たる。しかし,その授業実践は一般にそのような「教科の論理」のみに 立脚するものではなく,子どもの「生活の論理」 (子どもの心理状態や. 実生活に規定されるものの感じ方・思い方・考え方・おこない方1))も. 念頭に置いたものである。なぜなら,子どもが「よくわかった,楽しか った」と思えるような授業を展開したいという願いをもって授業実践す るのが一般の教師の姿であり, 「生活の論理」を無視したのではそのよ うな授業は望めないからである。すなわち,教師は, 「教科の論理」と. 「生活の論理」を結合させる授業として,「わかる,楽しい授業」を創 り出すことをめざして実践しているのである。. では,そのことを社会科教育についてみてみるとどうであろうか。社 会科教育の目標や課題,その実践の結果としての子どもの受けとめにつ いて検討してみたい。. 戦後の新教科として社会科が誕生して50年の月日が流れる。この間, 社会科教育が目標としてきたことは,歴年の学習指導要領2)に示された. 1) 田中耕治「教授理論と授業の設計」荒木紀幸編著『新時代の教育の方法を問う』 北大路書房 1993年 P.16. 2) 我が国で最初の学習指導要領(社会科)は,昭和22年5月刊行の『学習指導要領社会科編(試案)』である。. 以来,昭和23年9月の『小学校社会科学習指導要領補説(試案)』,昭和26年7月の『小学校学習指導要領 社会科編(試案)』,昭和30年12月のr小学校学習指導要領社会科編』,昭和33年m月の『小学校学習指導 要領』,昭和43年7月の『小学校学習指導要領』,昭和52年7月の『小学校学習指導要領』,平成元年3 月の『小学校学習指導要領』と刊行されている。なお,本論文では,それぞれの学習指導要領に示された 社会科の目標やその特徴,第6学年の目標・内容等を整理し,巻末に資料(資料1・2)として収載してい る。また,それぞれの学習指導要領の表記は,以下「昭和22年版学習指導要領」というように略記する。. 一1一.
(7) 序章. 言葉を借りれば, 「社会生活の理解」及び「公民的資質の基礎(社会の. 進展に貢献する態度や能力)の育成」と言ってよいであろう。もちろん,. そこに示された内容は,子どもの生活経験を重視するものや系統的で高 度な内容を重視するものなど,学習指導要領によって違いがある。しか し・これらの言葉が昭和22年版学習指導要領で使用されて以来・今日の. 学習指導要領まで脈々と受け継がれてきていることから,この2つのこ とを目標にしてきたと言ってよいと考えるのである1)。また,このよう. な目標を実現するために社会科教育の固有の課題とされてきたのが,基 本的には社会認識を育成することである。したがって,この50年間,全 国の熱意ある教師は,その育成に心血を注いできたと言ってよいであろ う。そして,そこでは,社会認識を育成するための教育内容や教材構成,. 教授方法や単元の授業構成などのあり方を問うことに授業研究の主眼が 置かれ,日々の研究的実践が続けられてきたのである。. しかし,その教育を受けてきた子どもの方をみると,子どもの社会認 識の程度に関係なく,社会科は必ずしも好感的に受けとめられてきたわ げではない。社会科ぎらいの原因を, 「暗記することが多い」 「説明・. 講義の授業が多い」としている児童生徒が多いという事実もある2>。こ. れは,社会科が暗記教科として受けとめられたり,授業自体が教師主導 で子どもの主体的な活動の場がほとんどないものであったことを示すも のである。また,同時にそのような授業は, 「生活の論理」よりも「教. 科の論理」が優先した授業と言えるものであり,子どもにとっては「わ かる,楽しい授業」とは決して言えないものであったと考えられる。す. D この点については,目標・内容に関する特徴を整理した巻末の資料(資料2)を参照されたい。 2) 田中耕治「社会科における学力とは」鈴木敏昭・田中耕治編r社会科のつまずきを生かした授業』 日 本標準 1989年 p.46. 一2一.
(8) 序章. なわち,従来の社会科の授業では知識を伝達することが多く,子どもが 自ら知識を獲得していくことは少なかったと考えられるのであるD。. 以上のことから筆者は,次の2つの要件を満たす授業を設計すること が重要であると考える。1つは, 「教科の論理」と「生活の論理」を結. びつけることであり,もう1つは,授業の中で子どもが自己表現する場 を設定することである。これらのことにより,社会認識を育成する「わ かる,楽しい授業」を創出することができると考えるのである。. 本研究では,以上の問題意識に立って,研究の目的を次のように考え た。それは,地域の歴史素材を活用して地域認識を育てるあり方と,そ のなかで歴史を見る目を育てるあり方を,授業研究によって明らかにす ることである。そして,授業研究の主眼を次のように考えた。それは,. 1教科の論理」と1生活の論理」をどのように結びつけるかという点で 教育内容や教材構成のあり方を問うことであり,また,子どもが自己表 現する場をどのように設定するかという点やそれによって子どもはどう 認識するかという点で授業構成のあり方を問うことである。すなわち,. 授業を構成する基本的な要素と関連させて授業仮説を設定し,その仮説 を検証することを授業研究の主眼としたのである。. 本研究の目的を上のようにしたのは,先に述べた2つの要件を満たす 授業を設計するという考えと授業研究の実践単元に関わる考えに基づい ている。以下,それについて説明しておきたい。. 1つめの先に述べた2つの要件を満たす授業を設計するということに. 1)小西は,著書『消える授業残る授業』 (明治図書 1997年)において,従来の子どもの知的好奇心を生 かして知識を伝達する授業(「入力型」の授業)は,社会の教育機能が発達した今日では学校外でもでき るものであり, 「消える授業」としている。それに対して「残る授業」とは,子どもの社会的欲求を満た す授業(例えば, 「提案する社会科jの授業,モラルジレンマの授業などの咄力型」の授業)だとして いる。 (小西正雄編著『「提案する社会科」の授業2』 明治図書1994年pp.10−34参照). 一3一.
(9) 序章. ついては,次のように考えた。まず, 「教科の論理」と「生活の論理」. を結びつけるという要件については,それができるのは子どもの実際の 生活の場である「地域」であると考えたことと,それを生かした教育内. 容と教材構成を工夫することにより,社会認識の1つである地域認識を 育てようと考えたことである。すなわち,地域認識を「地域の諸相につ いての理解とそれによって生まれる地域に対する肯定的意識・関心」と 定義し1),その育成を図ることは, 「教科の論理」と「生活の論理」を. 結びつけることになると考えたのである。そして,そのための授業構成 を工夫し,その中で筆者が考えるもう1つの要件,つまり,子どもが自 己表現する場を設定することにより,社会認識(地域認識)を育てる「わ かる,楽しい授業」を創出することができると考えた。. 「教科の論理」と「生活の論理」を結びつけるために地域を活用する ことを考えたのは,次の理由による。それは,岩田が「社会認識の形成 は,子どもの経験事象と関係させた形で初めて可能となる」2)と指摘す. るように,認識形成の素材となる社会的事象は,子どもの経験や体験と 関係が強いほど確かなものとして定着するのではないか,そして,その 事象として地域素材を取り上げた方が,子どもはそれを自身の経験や体 験と結びつけやすいがゆえに,認識することも容易になるのではないか と考えたことである。すなわち,地域は,子どもの生活の場であるがゆ えに「生活の論理」としての「子どもの経験事象」が豊富に準備されて. 1) このことをもう少しわかりやすく言えば,地域認識とは,地域の地理,歴史,政治,経済,産業,文化, 自然などを学び,それらの理解を通して得られた知識であり,また,地域を愛する心や地域の一員として の自覚など,その地域に住むからこそ芽生えてくる意識・関心であると考える。なお,地域の種類は区分 目的によって形式地域と実質地域(等質地域及び機能地域)に分けられるが,授業の実践単元で関ヶ原の 戦いを中心に扱うことから,ここでいう地域はその舞台となった地域であり,現在の岐阜県不破郡関ヶ原 町(一部不破郡垂井町)にあたる。 2) 岩田一彦「小・中・高社会科に地域教材という核を!」 『社会科教育』Nα283 明治図書1986年p.l19. 一4一.
(10) 序章. いる場所であり,地域素材(社会的事象)をその多々ある「子どもの経 験事象」と関係させることによって, 「教科の論理」としての社会認識. をより具体的で濃密なものとして育成することができると考えたのであ. る。そして,そこに社会認識教育の1つとして地域認識教育を行うこと の意義1)があると考え,先の目的を考えたのである。. もう一方の授業研究の実践単元に関わる考えについては,以下のとお りである。実践単元は,小学校第6学年の歴史学習の単元, 「わたした. ちの町の歴史探検一関ヶ原の戦い一」である。この単元は,単元名 にもあるように,地域の「歴史探検」によって,その歴史的トピックで ある関ヶ原の戦いを取り上げ,その学習を通して地域認識を育成するこ とをめざすものである。もちろん,そこでは歴史教育を行うので,子ど もは社会認識の1つである歴史認識を形成していくことになる。しかし, 後述するように,実践単元では,地域認識を関ヶ原の戦いの科学的認識 として育成することを重視し,その詳細についても扱う。したがって,. そこで形成される歴史認識は,関ヶ原の戦いの詳細を学習することによ るものである。このことから,本研究では,その歴史認識は関ヶ原の戦 いの科学的認識であると考え,それを地域認識として育成することを考 えたのである。また,それゆえに地域の歴史素材を活用して地域認識を 育てるあり方を明らかにすることを研究の目的としたのである。. また,この単元は歴史学習の導入単元でもある。すなわち,子どもに. D 地域認識教育の意義については,地域素材を教材化することの意義も含めて様々な見解が提起されてい る。例えば,谷川は, 「地域学習の意義」として,次の4点をあげている。 (谷川彰英「地域学習」奥田. 真丈・河野重男監修『現代学校教育大事典』⑤ぎょうせい1993年p.92) ω個々の事象がとらえやすく,自分とのかかわりを発見するのが容易である (2)事象の原則を理解させる ことが容易である (3)地域の人々と交流できる (4)さまざまな能力を育てることができる. 筆者が考える地域認識教育の意義は,谷川の指摘と基本的に同様のものである。なお,地域素材を教材化 することの意義については,第2章第1節で述べているので,参照されたい。. 一5一.
(11) 序章. とっては初めて歴史を学ぶ単元である。したがって,そこでは,後述す るように,子どもが歴史に興味・関心をもつとともに,その後の歴史学 習に転移するような「歴史を見る目」を育成する1)ことが重要であると. 考えたのである。また,それゆえに,本研究では地域認識を育てるあり 方だけでなく,そのなかで歴史を見る目を育てるあり方も明らかにする ことを目的としたのである。. この単元を実践単元としたのは,次の2つの理由による。1つは,歴 史学習の導入単元において,地域の歴史素材を活用して地域認識を育て る実践を公表している著書や論文は少ないことである。したがって,歴 史教育において地域認識を育てることをテーマとする本研究は,そのあ. り方を示す一指標となることが期待できると考えたのである。もう1つ は,歴史を見る目の育成に関することである。すなわち,小学校第6学 年の時期は,ピアジェ(」.Piaget)が言う形式的操作期,つまり,発達. 段階からみて認識の構造が大きく発展する時期であるため,それを育て ることができたならば,それは小学校だけでなく中学校の歴史学習にも 転移するものであり,子どもに有益なことであると考えたのである。. なお,本論文は3章立ての構成とし,その概要は以下のとおりである。 第1章では,社会科教育(歴史教育)における地域認識教育の現状と課 題を明らかにし,その上で本研究の立場を述べる。そのために,まず,. 本研究では地域認識を育成することを意図しつつも,その実践は社会科 教育によるものであるという立場から,社会認識を育成するための基本 的なあり方について, 「新しい学力観」やいくつかの社会科学力論をも. とに論じる。次に,歴年の学習指導要領や教科書を,歴史学習における. 1)筆者が考える「歴史を見る目」やその転移については,第1章第3節で詳しく述べる。. 一6一.
(12) 序章. 地域認識教育の位置づけを中心に分析し,また,戦前戦後の郷土教育及 び地域認識教育の変遷をたどることによって,地域認識教育の現状と課 題を明らかにする。そして,それらのことを踏まえて,本研究において 社会認識を育成する手法と地域認識教育の立場を明らかにする。. 第2章では,実践単元の授業設計を行う。具体的には,まず授業を構 成する基本的要素のあり方について検討するとともに,それとの関連で 地域の歴史素材を活用した先行実践の分析を行う。また,子どもの実態 を把握するために実施した診断テストの結果を考察する。その上で,第. 1章で述べた本研究の立場を踏まえて,教育目標と教育内容,授業研究 の仮説を設定するとともに,単元全体の指導過程を示す。さらに,授業 仮説を授業研究の仮説と合わせて授業モデルとして明示するとともに,. 指導計画と各時間の学習指導案(子どもの学習活動と意識,その意識を 引き出す教授行為などを明示したもの)を提案する。・. 第3章では,実践単元の授業の分析とその改善を行う。具体的には, まず単元のまとめとして作成したパンフレットや総括テストにみられる 理解の状況を分析する。次に,そのような理解の状況を示すに至ったと. 考えられるそれまでの各時間の授業について,授業記録と自己評価など の子どもの報告をもとにして分析する。さらに,事前・事後調査結果の 分析も行う。そして,それらの分析によって仮説を検証するとともに,. それによって明らかになる指導上及び授業設計上の問題点を整理し,そ れをもとに改善案を改善指導案として提案する。. 一7一.
(13) 第1章. 第1節 社会認識教育のあり方. 第1章 地域認識教育の現状・課題と本研究の立場. 序章でも述べたように,社会科教育の固有の課題は,社会認識を育成 することである。そして,本研究は,その1つとして地域認識を育成す ることをめざして,授業研究を行うものである。しかし,平成元年版学 習指導要領に生活科が新設されたこともあってか,近年では「地域」と いう言葉は社会科教育だけでなく他の教科,他の領域においても脚光を 浴び,そこで地域認識教育が行われている1)。. そこで本章では,社会科教育(歴史教育)における地域認識教育の現 状や課題を明らかにし,その上で本研究の立場を述べる。そのために,. 第1節では,本研究で社会科教育を行う立場から, 「新しい学力観」や いくつかの社会科学力論について検討し,地域認識を包含する社会認識. 教育の基本的なあり方を明らかにする。次に第2節では,学習指導要領 や教科書における地域認識教育の位置づけを明らかにするとともに,戦 前戦後の郷土教育や地域認識教育の変遷をたどり,その課題を明らかに する。そして,第3節では,それらを踏まえて本研究の立場を述べる。. 第1節 社会認識教育のあり方. 宮原は, 「社会科の目標は,社会的な諸事象を正確にとらえ,その背. 景にあるより本質的なものを認識して,・…現在の社会をより良いもの. D 生活科は, 「具体的な活動や経験を通して社会や自然をとらえる教科であり,学習の場は教室にとどま らず,むしろ戸外での学習を中心にした活動的なもの」と言われる(佐島群巳他編『小学校学習指導要領 の解説と展開 社会編』 教育出版 1989年 p.52)。このような性格をもつ生活科が新設されたことは, 学校現場の地域観に大きな影響を与え,各領域で積極的に地域が活用されるようになったと考える。. 一8一.
(14) 第1節 社会認識教育のあり方. 第1章. に育てていこうとする主権者としての意識を育てる教科であると考えた. い」Dと言う。この指摘にもあるように,社会科教育は,社会的事象の 「背景にあるより本質的なもの」を社会認識として育成し, 「現在の社. 会をより良いもの」にしていこうとする意識を育てることをめざすもの であると考える。そして,このことは,社会科教育に携わる者にほぼ共 通する認識であると考える。 七かし,「社会科の誕生以来,基盤となる社会科教育論の違いにより,. 様々な社会科学力論が論争的に生み出されてきている。さらに,文部省 から「新しい学力観」が提唱されるに至り,社会科の学力のとらえ方は 混迷を呈してきている。事実,実際に子どもが身につけていく学力は, 実践現場の教師に委ねられたものになっている2)。そこで本節では,ま ず「新しい学力観」が主張するものやそれをめぐる問題について検討し,. そこから引き出される学力のとらえ方に関する問題について,いくつか の社会科学力論を手がかりにして探る。その上で,今日の社会認識教育 の基本的なあり方を明らかにする。. 1. 「新しい学力観」とそれをめぐる問題. 「新しい学力観」とは,平成元年版学習指導要領に基づいて提唱され た文部省の造語であり,これに対しては様々な見解が提起されている。. ここでは,文部省の見解をもとに,学習指導のあり方や知識・理解,基. D 宮原武夫「小学校社会科の授業論 社会科授業記録の検討」松本金寿・柴田義松編『社会科教育の理 論と実際』 国土社 1981年 p.169 宮原のこの指摘について名雪は,それがそのまま地域学習のめ あてにあてはまることを述べている。 (名雪清治・藤岡信勝『社会科で「地域」を教える』 明治図書 1989年 pp.19−20). 2) 森脇は, 「現実に教師の『学力』観の世界のなかで授業は行なわれている」と指摘し,また,授業で子. どもに育てる力の意味と位置づけを明らかにするために, 「教師のr学力』観」をぶつけあうことが大切. であると述べている。(森脇健夫「学力論争一社会科教育の立場から」r教育』Nα584 国土社1995年 pp.36−37). 一9一.
(15) 第1章. 第1節 社会認識教育のあり方. 礎・基本の位置づけを含めて,「新しい学力観」が主張するものを明ら かにするとともに,それに対する批判的な見解をもとに, 「新しい学力 観」をめぐる問題の論点を探っていくことにする。. (1) 「新しい学力観」が主張するもの. 文部省が言う「新しい学力観」とは, 「自ら学ぶ意欲や思考力,表現. 力などの資質や能力の育成を重視した」学力観であり,それらを「学力 の基本とする学力観」である1)。すなわち, 「新しい学力観」が言う学. 力とは, 「自ら学ぶ意欲や思考力,表現力など」をその基本とするもの. であり,それらを育成していくことが「新しい学力観」が主張するもの であると考えられる。そして,この考え方は,学習指導要領の「総則」. に示された「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育 成を図る」2)ということを受けたものであると考えられる。すなわち, 「自ら学ぶ意欲や思考力,表現力などの資質や能力」というのは, 「総. 則」に示された「社会の変化に主体的に対応できる能力」を具体化した ものと考えるのである。また,その後文部省が「新しい学力観」と銘打 って発行した指導資料3)においてこの文言が多用されていることからみ ても, 「新しい学力観」が主張するものは, 「自ら学ぶ意欲や思考力,. 判断力,表現力などの資質や能力の育成」と言ってよいであろう。. 1) 1992年m月に行われた「小学校教育課程運営改善講座」という伝達講習会では,その研究主題を「子ど ものよさや可能性を生かすことを根底に据え,自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力などの資質や能力 の育成を重視した新しい学力観に立つ教育を展開するための学習指導と評価の構想と展開」としていた。 また,文部省は別なところで,「これからの教育においては,…・自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現 力などを学力の基本とする学力観に立って教育を進めることが肝要である」と述べている。 (『新しい学 力観に立つ教育課程の創造と展開』 東洋館出版社 1993年 p.9) 2) 文部省『小学校学習指導要領』 大蔵省印刷局 1989年忌p.1 3) 指導資料としては,次のものがあげられる。 ・r新しい学力観に立つ教育課程の創造と展開』 (東洋 館出版社 1993年) ・『新しい学力観に立つ○○科の学習指導の創造』 (東洋館出版社 蓋993年) ・『新しい学力観に立つ○○科の授業の工夫』 (大阪書籍 1995年). 一10一.
(16) 第1章. 第1節社会認識教育のあり方. ところで,これらの指導資料には, 「新しい学力観」に立つ学習指導 のあり方が示されている。その中で社会科教育については, 「これから. の社会科授業の在り方」として5つをあげ,それぞれについて「一層の 改善・充実を図っていくこと」を求めている1)。それらの要点を整理す ると,次のようにまとめることができる。 ・問題解決的な学習や体験的な活動を組み入れ,子供たちが社会的事象と進ん でかかわりながら,社会的なものの見方や考え方を身に付けていくことがで きるよう,授業を工夫改善する。 ・問題解決的な学習過程を工夫し,子供が自分の学習活動をつくり出しながら 自分なりに問題解決を図っていくことができるようにするとともに,教師の 子供へのかかわり方や支援の在り方を工夫改善する。 ・教科書の有効な活用を図るとともに,視聴覚教材の効果的な活用をはじめ, 子供の意欲を高める教材の開発などに積極的に取り組む。また地域の素材を 教材化したり社会人を積極的に活用したりするなど,地域教材の開発に努め る。. ・教室の中だけでなく,校舎や校地,地域社会などを学習の場としてとらえ, 観察や見学,調査などの活動をはじめ,体験的な学習活動を積極的に授業に 組み入れる。. ・教師の観察による評価や子供の行動,発言,態度の評価,子供による自己評 価,相互評価などに重点を置き,指導に生かす。. これらは,先に述べた学力観に立って, 「子供一人一人が主体的に学. 習に取り組み,自分なりの社会的なものの見方や考え方を身に付けるこ とができるようにする」2)ために明示されたものであり,その点で「新 しい学力観」に立つ社会科教育が主張するものと言ってよいであろう。 「新しい学力観」における知識・理解の位置づけは,平成元年版学習. 指導要領に即して改訂された指導要録の観点別学習状況の各観点の配列 にみることができる。すなわち,その配列が「関心・意欲・態度」 「思 考・判断」 「技能・表現(または技能)」 「知識・理解」という順序に. 1) 文部省r新しい学力観に立つ社会科の学習指導の創造』 東洋館出版社 1993年 pp.10−12 で3点目と4点目は,地域認識教育に重要であると考える。それについては後述する。 2) 同上書 p。10. 一11一. この中.
(17) 第1節 社会認識教育のあり方. 第1章 ’. なり,それまでは最上位であった「知識・理解」が最下位になったこと である。このようになったのは, 「新しい学力観」が「自ら学ぶ意欲や 思考力,判断力,表現力などの資質や能力」を重視しているからであり, 「知識・理解」は,まず学ぼうとする「関心・意欲・態度」があって,. 次に「思考・判断」が働き, 「技能・表現」を通して獲得されるという 筋道が, 「新しい学力観」によって強調されたからであるとみることが. できる。そして,このことは,当時文部省小学校課教育課程企画官であ った高岡が, 「知識・技能はもちろん大事だが,…・単に知識や技能だ. けではなく,思考・判断,学習意欲,そういったものの総体が基礎・基 本だ」1)とし,また, 「基礎・基本と個性重視の教育」のあり方につい て論じている2)ことからも指摘できるものである。. (2) 「新しい学力観」をめぐる問題. 「新しい学力観」の提唱は,学校教育の内外に反響をよび,論議をか もし出している。例えば,雑誌『教育』 (Nα5621993年)では「新学力 観」と題した特集を企画し,その中で梅原は, 「その本質を主に学習の とらえ方にかかわって」次のように批判的に検討,整理している3)。. 1) 奥田真丈・高岡浩二他『絶対評価の考え方』 小学館 1992年 pp.55−56 高岡とは別に宮原は,「学 力1」(「アチーブメントテストで測られる人間(子ども)の能力」)と「学力2」(「アチーブメントテストで測 れない学力」)をあげ,両者はともに「基礎・基本」であるとし,高岡と同様な見方をしている。 (宮原修. 「新学習指導要領と『学力観・授業観』」 『小学校教育』Vol.4Nα9教育開発研究所1991年pp.25−26) 2) 高岡浩二「基礎・基本と個性重視の教育」 『新しい学力観読本』 教育開発研究所 1993年 pp.26−27 ここで高岡は,次の3点を指摘している。 ・新しい学力観にたつ教育は,これまでの基礎・基本や個性教育の考え方を根本的に見直すことを求めて いる。. ・基礎・基本は子どもたちがこれからの時代において生きていくために必要なものとして身に付けるべき 自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力など資質や能力を中核としたものとしてとらえる必要がある。 ・新しい学力観にたつ教育においては,基礎・基本を身に付けることと個性の育成とは一体的なものとし て考えることが大切である。 3) 梅原利夫rr新学力観』の展開と教育実践の課題」 『教育』M562 国土社 1993年 pp.6−7 この 中で梅原は, 「r新学力観というモンスターは,明確にある方向にバイアスのかかった学習概念と学習形 態をもってすすんでいる」 (傍点は原文)と述べている。. 一12一.
(18) 第1節 社会認識教育のあり方. 第3章. ①ものごとを知ることや理解すること(知識・理解)と,関心・意欲・態度と を意図的に分離させ,しかも後者を第一義的に強調する。 (その結果)→意 欲・態度の一人歩きと,知識・理解の貧弱化,習得格差拡大をもたらす。 ②学習の対象である情報やものを個々人の「思いつくまま」に操作し「自分な りに」表現させる。→対象の背景や土台にある文化的な価値の吟味を簡略化 することによって,結果的には上から与えられたり社会に一般的に流布して いる傾向に順応しがちとなる。 ③これまでの教育を「学問の論理が前面に押し出され」た「知識伝達主義」の 教育であったと批難し,これからは個性・特性に見合った自己学習であるこ とを強調する。→伝達や教授の過程にも,文化的価値の吟味・発見の契機・ ものごとをとらえる認識のわくぐみの創造など,学習の本質がはらまれてい ることを過小評価してしまう。. では,それぞれについて考察してみよう。①の見解は, 「新しい学力. 観」が「自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力などの資質や能力の育 成」を重視するあまりに,それがかえって一人歩きし,結果的に知識軽 視になっていることを指摘したものと思われる。すなわち,関心・意欲 ・態度だけではなく,知識・理解にも光をあてるべきことを主張したも のと思われる。そして,その点で, 「主権者として生きていくうえでの. 基礎的な力量をどうすべての子どもに獲得させるか,という切実な課題 を放棄している」1)という指摘に通じるものがあると考えられる。. ②の見解は,「新しい学力観」が「個性を生かす教育」を重視するあ まりに,操作や表現などの活動のすべてが子ども任せになってしまった り,あるいは,それを強調しておきながら,結局は教師の押し付けの教. 育になっていることを指摘したものと思われる。梅原の別の指摘に従え ば, 「r個性を大切にする』と言いながら,どことなく『やらせ』に似 た活動になっている」2)ということである。. ③の見解は, 「知識伝達主義」の教育に代わって「個性・特性に見合. 1)主張「子どもの危機を克服する新しい学力観の解明を」 『教育』Nα562 国土社 1993年 p.5 2) 梅原利夫「『新学力観』の展開と教育実践の課題」 『教育』Nα562 国土社 1993年 p.9. 一13一.
(19) 第1章. ・第1節 社会認識教育のあり方. つた自己学習」を強調することは,知識軽視になることを指摘したもの と思われる。すなわち, 「個性・特性に見合った自己学習」では,知識. を獲得する方法が子どもによって違うために共通な知識を伝達すること. が困難であり,そのことが知識を伝達する教育を否定していくことにな ることを危惧したものと思われる。その点で, 「『個性伸長』の美名の. もとに,・…子どもたちがそれぞれの“分”に応じてその体制に素直に. 順応するようにしむけるためのイデオロギー」が「新しい学力観」の主 要な側面であるとする見解Dに通じるものがあると考えられる。. このようにみてくると,梅原の論点は,関心・意欲・態度と個性重視 の強調による知識・理解の軽視にあるといえよう。また,これに類する 見解は他にも提起されており2),このことは「新しい学力観」をめぐる. 問題の1つといってよかろう。しかし,水越が「『新しい学力観』とし て各地で提唱され,論議されているものの中で,案外と見過ごされてい るもの,そして一番肝心なもの,それは学力をとらえるパラダイムそれ 自体が,大きく転換したということである」3)と指摘するように,学力 をどうとらえるかということによって, 「新しい学力観」に対する見方 はそれを見る人によって違いが出てくるのではなかろうか。すなわち, その解釈の仕方によって, 「新しい学力観」が知識・理解を軽視してい. るとは言えないこともあると考えるのである。そこで,次に学力のとら え方について,社会科の学力論を中心にみていくことにする。. 1) 須藤敏昭「『新学力観』とはなにか」『教育』Nα562 国土社 1993年 p.16 2)雑誌r教育』(Nα562国土社1993年)に掲載された座談会(「新学力観のねらいと本質jpp.18−30)には, そのような見解が見られる。また,これとは別に市川は, 「新しい学力観には疑問がある」として,それ を5点あげて批判的に述べている。 (市川昭午「新学力観を再考する」 『指導と評価』Vol.4Nα2図書文 イヒ. 1995年号 pp.12−14). 3) 水越敏行「新しい学力をめざす教育活動の組織と展開」 『教育展望』臨時増刊Nα25 教育調査研究所 1993年 p.20). 一14一.
(20) 第1章. 第1節 社会認識教育のあり方. 2. 社会科の学力論. 社会科の学力のとらえ方の争点は,大きく2つあると考える。1つは, 社会科の学力の中心を基礎的知識に限定するか,それに基本的知識を加 えるかということであり1),もう1つは,社会科の学力を知的認識に限 定するか,それに意欲や態度などの訓育面を加えるかということである。 そこで,社会科の学力問題がどのように展開されてきたかということを, この2つの側面から探っていくことにする。. (1)基礎的知識と基本的知識. 遠山は,社会科の学力を, 「社会についての科学的認識のための基礎. 的な知識と基礎的な思考力の習得」と定義している2)。すなわち,遠山 は,基礎的知識だけでなく「基礎的な思考力」を社会科の学力に含めて 考えており,その点で基本的知識を基礎的知識とともに重視していると 考えられる3)。. それに対して本多は,勝田や中内の見解4)に学び, 「社会科の学力の. 中心を占めるものは基礎的知識であり,その学習到達度を学力と呼ぶ」. と述べている。そして,遠山の「基礎的な思考力」について,「勝田学 力論でいう“学力を計測可能なもの”という狭い解釈に限定した場合,. 1) 本多は, 「基礎的知識とは,知識の構造の土台となるもので,状態・用語・事実・現象の把握にとどま り,概念を含まない。基本的知識とは,自由な思考の働きのもとで,豊かな表象(イメージ)をもち,言 語で説明できるもので概念を含む」と定義している。 (本多公栄『社会科の学力像一教える学力と育て る学カー』 明治図書 1980年 p.65) 以下,この2つの用語を使用する際は,本多の定義に従う。 2) 遠山茂樹『歴史学から歴史教育へ』 岩崎書店 1980年 pp.106−107. 3)筆者は,遠山が言う「基礎的な思考力」について,その思考とは基礎的知識をもとに行うものであり, その思考の結果得られた知識が基本的知識であると考える。その点セ遠山は,社会科の学力の中心を基礎 的知識だけでなく基本的知識にもおいていると考えられる。 4) 勝田の見解とは,学力を「計測可能なように組織された教育内容を学習して到達した能力」とする見解 である。 (勝田守一「学力とは何か」 『勝田守一著作集』第四巻 国土社 1972年 p.374) また,中. 内の見解とは,学力を「モノゴトに処する能力のうちだれにでも分かち伝えうる部分である」とする見解 である。 (中内敏夫『増補 学力と評価の理論』 国土社 1976年 p.54). 一15一.
(21) 第1節 社会認識教育のあり方. 第1章. 思考力を計測できるのか」と疑問視している1)。さらに,思考力を計測 可能なものとして「無理に評価することによって,子どもの認識の高ま り,意欲,創造性を摘みとってしまう」と指摘している2)。. しかし,本多は,思考力そのものを否定しているのではない。むしろ, 「知識の問題」として,次の3つのことを述べている3)点では,思考力 (基本的知識)を重視していると考えられる。 ①基本的知識というのは,学習者が基礎的知識を土台にし,豊かなイメージの もとに,自由な思考の働きによって,ある概念を組み立てることをいう。基 本的知識の中には一般性と学習者の創造性の両面が含まれる。 ②そのようにして学習者が組み立てる知識の構造は,社会の諸事象を把握する にとどまらず,社会のしくみに迫っていくものでなければならない。 ③社会のしくみに迫る知識の構造を学習者の内面に定着させること(認識・能 力の形成)は,新しい世の中づくりに参加する人間を育てるための前提とし て重要なことである。社会科の全体目標をそのような内容を含めて主権者意 識を育てることと定めることは,憲法・教育基本法にそったものである。. すなわち,本多は,基本的知識を「社会のしくみに迫る知識」ととら え, 「新しい世の中づくりに参加する人間を育てるための前提」として. それを定着させることを重視しているのである。このことは,本多が描 いた「社会科の学力の構図」 (次ページの【図1−1−1】)4)にも「教. える学力」及び「育てる学力」として表れており,ここに本多の社会科 学力論の主張があるといえよう。. ところで,本多が以上の内容を含めた「主権者意識を育てること」を 社会科の全体目標とし,その立場から社会科の学力をとらえていること. 1) 本多公栄r社会科の学力像一教える学力と育てる学カー』 明治図書 198G年 pp.38−46 なお,勝田の学力規定は, 「計測されたものが学力である」という誤解を生じやすいが,決してそうでは ない。このことについては,次の論文を参照されたい。 田中耕治「学力モデル再考」 『授業の探究』第4号 兵庫教育大学学校教育学部 1993年 pp.10−11 2) 同上書 pp.52−53 3) 同上書 p.87. 4) 同上書 p.203 なお,本多は3回にわたって学力の構図を描いている。この図はそれまでのものを 修正した3回目のものである。1回目,2回目のものも上記の著書に掲載されている。. 一16一.
(22) 第1章. 第1節 社会認識教育のあり方. 社会科の学力の総体. (生涯学習 認識・能力の形成. 人格の形成. 地 域. 住 子 民 ど ・ も. 国⇒の⇒ 民 学 の 習 教 権 育 要 求. 無限の知識群. 塵罫. 基礎的知識(習. (用語・事実・現象など). 基/\づイ 知礎. くメ. 識的. り1. \ /ン 基本的知識 (概念の形成). →. 知識を集め,引き出す 技能(習熟) →. の目標). ↓. ↓ 文化の継承という知力. 国民的教養を豊かに持 つ人間. 社会生活に順応できる 情報処理能力. 人間. 文化創造・社会変革の. 新しい世の中づくりに 参加できる人間. (訓練). 基本的知識組み立てに一ラ 至る思考力. 倉. 社会のしくみに 迫る知識の構造. 能力. 育て・学力⊃㈱社藷識の形成. ↑ 主権者意識の形成. 社会科の全体目標. 【図1−1一ユ】 社会科の学力の構図(本多,1980). は,本多が学力に訓育面を含めていることを示すものである。そこで,. 次に学力に訓育面を含めるか含めないかという論争とその展開について みてみることにする。. (2)学力論争とその展開. 学力に訓育面を含めるか含めないかを争点として論争になったのが, 1975年に坂元忠芳と鈴木秀一・藤岡信勝との間で起きた学力論争である。 すなわち,この論争では, 「学力規定における態度の位置づけ」が中心. テーマとなったのである1)。この論争の当事者の言葉を借りれば,坂元 が「学力を,学校で教えられる内容によって発達する『わかる力』 (認. 識能力)を中心に規定し,さらに学力と人格との関連,とりわけ学力を. 1) 田中耕治『学力評価論入門』 法政出版 1996年 pp.88−89. 一17一.
(23) 第1節 社会認識教育のあり方. 第1章. ささえる意欲などを問題にしたこと」1)に対して,鈴木・藤岡がそれを 「態度主義」として批判し,学力を「成果が計測可能でだれにでもわか. ち伝えることができるよう組織された教育内容を,学習して到達した能 力」2)と規定したわけである。. この論争は,その後広く学力研究に関わる人々を巻き込んで展開され ている3)。例えば,鈴木敏昭は,到達度評価を重視する立場から, 「学. 力形成と人格形成とは,相補う側面があるにもかかわらず,明確に異る 内容である」とした上で,「社会科の学力とは,せんじつめていえば,. 子どもたちが社会について科学的に認識できるための基礎的な知識と基 礎的な思考力との習得・習 【表1−1−1】 社会科の学力要素(鈴木,1981). 熟である」と述べている。. 基礎的知識. 社会的事実や現象に対する知識・基本的な用語・ 記号・約束などに対する知識. 技術・技能. 社会的な事実や現象を解き明かし,より深い理解 に達するための方法. 知識・理解. 教科の本質・目標・内容に照して欠くことのでき ない科学的で系統的なひとまとまりの知識・理解. そして,その「学力要素」. を【表1−1−1】のように 示すとともに,学力の構図. を【図1−1−2】のように 学力の. 描いている4)。これらの図. 学. 力. 基本性. 発. 展性. @ 態様 齔[まり. 表からは,鈴木が学力に訓 育面を含めていないこと,. 学力の. 基礎的. 技術・. 知識・. @ 要素. @ 知識. @ 技能. @理解. @ 習熟. 【図1−1−2】 社会科の学力(鈴木,[98D. 1) 坂元忠芳r子どもの能力と学力』 青木書店 1976年 p.6 2) 鈴木秀一・藤岡信勝「今日の学力論における二・三の問題一坂元忠芳氏の学力論批判一」 r科学と 思想』Nα16 1975年 鈴木・藤岡の批判に対して坂元は, 「鈴木・藤岡氏は,教育内容の研究問題を, 能力としての学力の研究問題へと移す地点で一面性におちいっている」と反批判している。 (詳しくは, 「今日の学力論争の理論的前提をめぐって一鈴木・藤岡論文への反論」 『科学と思想』Nα19,20参照) 3) 田中耕治『学力評価論入門』 法政出版 1996年 p.88 ここで田中は,この学力論争では「1970年. 半代になって顕在化し始めた学力問題の質をめぐって,またその問題の解決方法に関わって,1960年代の学 力研究の内実が問われた」と述べている。. 4)鈴木敏昭r社会科到達度評価の理論と方法』 明治図書 豆981年 pp.56−59 なお,鈴木の社会科 の学力規定は,先の遠山の規定とほぼ同様である。また,この中で鈴木は, 「基礎的な思考力」を社会科 の学力に含めていることにふれて,社会科の学力の到達度を評価することは難しいとしている。. 一18一.
(24) 第1節 社会認識教育のあり方. 第1章. つまり,鈴木が言うように学力形成と人格形成とを異なる内容としてい ることが明らかである。. それに対して市川は,藤岡らの規定を「教育を歪め計量困難なことの 指導を回避し,教育の営みをますます知識の詰め込みに走らす危険があ る」1)と批判している。そして,学力を「学習によって“学問の力量”. を高めて,問題の解決に積極的に行動しうる力」とした上で,社会科の 学力については, 「主権者として,社会的問題の解決に必要とされる諸 能力を,自己の生き方とかかわらせて,個性的に統一をもって獲得し, 問題解決に生かすことのできる力」と定義して, 【図1−1−3】 (次ペ. ージ)のように「社会科の学力の構造」を描いている2)。この図には, 社会科の学力の柱として, 「社会的知識・認識」だけでなく, 「問題探. 究力」と「社会的実践力」が掲げられており,そのことは市川が学力に 訓育面を含めていることを示すものである。. さらに,坂元と鈴木・藤岡の論争の広がりは一次的なものではなく,. 二次的な広がりをみせて展開されている。すなわち,坂元,鈴木・藤岡 の論に対する賛否の見解やそれに関わる新たな学力規定が示されるだけ でなく,そこで示された学力規定に対してさらに賛否の見解が示される 形で論争が展開されている。ここでは,鈴木・藤岡の学力規定に同意し,. 独自の「社会科の学力の構図」を描いた本多3)のその学力のとらえ方に. 1) 市川博「社会科の学力の構造(その1)」 『社会科教育』Nα223 明治図書 1981年 p.124 2) 同上書 pp.126一正27 市川は,この図の中で「個性的な社会的問題解決能力」を学力として掲げてい る。そこには市川が属する社会科の初志をつらぬく会の社会科教育論,つまり,個性的な問題解決学習に 基づく人間形成を基本目標とする論理が表れていると考えられる。 3)本多は,社会科の学力の中心を基礎的知識におく立場から,藤岡らの規定を「学力規定」ではなく「基 礎学力規定」と解釈し,それに同意している。 (本多公栄『社会科の学力三一教える学力と育てる学力. 一』 明治図書 1980年 p.83) ただし,本多の「社会科の学力の構図」は,藤岡らの学力規定に同 意する立場から描かれたものではない。本多が中学校の社会科教師として実践していくなかで,その構想 が生まれていったものである。. 一19一.
(25) 第1章. 第1節 社会認識教育のあり方. 主権者として社会的問題の解決に必要とされる諸能力を,自己の生き方とかかわらせて,個性的な 統一をもって獲得し,問題解決に生かすことのできる力→自己の確力* 社会的知識・認識. ・文化遺産の中から抽出された基本的知識と対決しながら,個々人が社会的問題の解決に必要と考 える基礎的知識を獲得することを通じて,個性的に深めた社会認識 問題探究力 個 性 的 な 社 会 的. 感繁鍛綴蓋繍}} ・事実に基づいて考える力. ・事実を仔細に観察できる力 ・問題意識をもって事実を見つめることので. 問. きる力. 題. 解 決 能. 社会的諸問題を科学的に考察しうる方法の獲 得. ・虚心に事実をみつめることのできる力 ・みえる事実から,みえない事実・事象を見透 す力. ・直感力 ・想像力. 力 ↓. ・事実と事実を関連させて考えていける力. ・論理的に考えていける力. 自. 己. ・仮説提立力 ・仮説に賭ける力. の. ・構想力,構成力(知識・経験を一定の視点. 確 立. で論理化,体系化する力) ・論理の矛盾に気づく鋭敏さ ・探究している問題,及び探究方法の社会的 意義について問い直しつづけられる力 ・自己の切実な問題に全身全霊を打ち込んで,. 息長く探究できる力. ・集中力 ・持続力. ・いかなる権威も恐れず,自分の納得のいか ないものには断じて屈しない強い意志 ・自分の主張を明確に表現できる力 ・価値多元のもつ価値についての深い理解 ・他者の立場,生き方を理解できる力 ・他者の考えを自分の認識の形成にとり込め. ・集団思考のできる力(学び合える力). る力. 社会的実践力. 醐霧搬繍づくりに’独自の} ・自己の切実な要求・主張を明確に表現できる力 ・他者の切実な要求・主張を認める寛容さ ・みんなが幸せになれる社会づくりへの関心 ・自分の問題を独力で解決していける力. 社会的態度の習得. ・意志. ・集中力. ・問題を集団で解決していける力. ・指導力,説得力 ・他者への誠実さ,おもいやり ・規律性,協調性 ・孤立(少数派)に耐える力 ・明朗さ. 【図1−1−3】 社会科の学力の構造(市川,1981) (* 原典は「自己の確力」となっているが, 「自己の確立」の誤りであると思われる). 一20一.
(26) 第1節 社会認識教育のあり方. 第1章. 対する賛否の見解についてみてみたい。. まず批判的なものとしては,次の宮本の見解をあげることができる。 すなわち,本多が社会科の学力を「「教える学力」と「育てる学力」の2 つに区分したことについて,それは, 「短絡的・形式的に区分け」した ものであるとし,.「教育の本質から言って,『教えること』と『育てる. こと』とは一つのことであり,一体なのである」と述べていることであ る1>。この批判は,宮本が「社会科教育の相対的独自性ないしは社会科 教育の役割は, 『科学的で客. 社会科教育. 観的な社会認識』と『平和的 陶. で民主的な社会的資質』にあ. 7台. 白川. 育. i実質陶冶・形式陶冶). る」とし, 「社会科教育は社. 社会的人格の形成 社会科学力の形成. 社会的資質. 会認識内容と社会認識方法と. i平和的・民主的). 社会認識 i科学的・客観的〉. 社会的資質とを個々ばらばら. 社 会 性. にではなく,統一的に子ども に身につけさせなければなら ない」とする立場2)からなさ. ?共 性 A 帯 性. 社会認識内容. ミ会認識方法. 父間竺. (知 性). 社会的知識. ミ会認識知能 ミ会認識技能. れたものと考えられる。そし. ←一一 社会的感情. 社会的関心・態度 一一→ 社会的行動・行為. 統 一. て,それは宮本が提示した学. 社会的人間の形成. 力の構図(【図1−1−4】)3) にも表れている。. 【図1−1−4】社会科の学力の構図(宮本,1989). 1) 宮本光雄「社会科『学力』の再検討」 『社会科教育研究』Nα60 日本社会科教育学会 1989年 p.9. 本多はこの批判に対して, fこの二つの学力は,後頭葉で受け止める知覚に相当するのがr教える学力』 であり,前頭葉で受け止め=育てるのが『育てる学力』と,筆者は,大脳生理学的に峻別したまでであ る」と応じている。 (本多公栄『新社会科の学力像』 明治図書 1994年 p.48) 2) 宮本光雄r子どもが生きる社会科授業一実感的社会認識の育成一』 明治図書 1985年 pp.正5−16 3) 前掲書D p.14. 一21一.
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