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第3章   「関ヶ原の戦い」の授業分析とその改善

第3節 授業分析の実際

 本節では,第1節で述べた授業記録をはじめ授業の様々な情報を基礎 資料とし,第2節で提案した授業分析の全体構想をもとに実践単元の授 業分析を行う。具体的には,まず「子どもは関ヶ原の戦いを地域性との 関わりで理解することができたか」という視点について, 「授業成果の 評価」及び「授業過程・学習経験の評価」を行う。次に, 「子どもは歴 史を見る目をどれくらい身につけたか」という視点について,事前・事 後調査結果の分析を行う。そして,それらを行うことにより,子どもの 地域認識(関ヶ原の戦いの科学的認識)や歴史を見る目の様相を明らか

にし,第2章で設定した仮説の検証を試みる。

1. 授業成果の評価

(1)パンフレットにみる理解の状況

①分析の基本的な立場

 ここでいうパンフレットとは,第13時に単元のまとめとして子どもが 個々に作成したものである。第13時の目標は, 「学習したことを振り返

り,関ヶ原の戦いの案内となるようなパンフレットを作ることを通して,

関ヶ原の戦いについての自分の考えをもっとともに,関ヶ原の戦いにつ いて説明することができるようになる」である。この目標からもいえる ように,ここではパンフレットを作ること自体にねらいがあるのではな い。しかし,板書して子どもに示した本貫のめあては1), 「関ヶ原の戦

D 授業実践校では,どの教科でもその時間の中心になる学習活動や学習内容に関することを, 「めあて」

あるいは「問題」として板書するようにしている。

いの案内となるようなパンフレットを作ろう」であり,子どもはこのめ あてを受けて本時の中心的活動,つまり,今までの学習を振り返ってパ ンフレットを作るという活動に取り組んだのである1)。したがって,パ ンフレットに書かれたことは,子どもがそれぞれに関ヶ原の戦いを案内 するのにふさわしい内容と考えているといえるものであり,ある程度の 理解を伴っていると考えてよいものである。

 しかし,パンフレットの記述内容をもとに子どもの理解の状況を知ろ うとすることは,次の2点で問題がある。1つは,パンフレットを作成 するにあたって,子どもはそれまでの学習を振り返るとともに2),実際

にパンフレットを作成するときにもノートなどの参考資料を使用してい るために,そこに書いたことをすべて理解しているとは言えないことで ある。2つめは,逆に理解している内容であっても,パンフレットには 書いていないということが考えられることである。このように,子ども の理解の状況を知るためにパンフレットの記述内容を用いることには問 題点がある。したがって,ここでは理解の状況の一面を知るための1つ の手段として用いることにする。

 なお,パンフレット作成用紙には,第2章第3節で指導の中心的内容 として述べた3つの内容(西軍の計画や陣形,戦いが進んだ様子,当時 の住民の生活)に関する理解の状況を知ることを意図して,この3つを 項目として設けておいた3)。そこで,ここではこの3つの内容に関する 理解の状況を,子どもの記述をもとに分析していくことにする。

D 当初は,本時中にパンフレットを完成できるようにする予定であった。しかし,子どもの作業の進行を 見て,その日のうちに提出するという条件で休み時間にも活動することを認めた。また,当日の欠席者が

4名いたので,その子どもについては後日提出するということにした(そのうちの2名は未提出)。

2) 詳しくは授業記録参照(T2〜T21, C 1〜C18)。

3)パンフレット作成用紙には,この3つの他に「その他・感想など」という項目も設けておいた。なお,

子どもに配布したパンフレット作成用紙や実際の記述状況は,巻末に資料として収載している。

② 分析の実際

ア.西軍の計画や陣形

 ここでは,西軍は主に山に陣を置いていたこと( 袋のねずみの策 を考えていたこと)と,交通に関すること,つまり,西軍は重要な道路 の近くに陣を置いていたことが記述されることを期待していた。実際の 記述状況は,次のとおりである。

      _地形  笏交通

【表3−3−1】

西軍の計画や陣形の記述状況 内容 人数 割合 備 考 地形 24 100

交通 20 83.3 4名は全く脚てない

(提出者24名)

100 80 60 40 20  0

【グラフ3−3−1】

西軍の計画や陣形の記述状況(%)

 これらの図表からは,子どもは,西軍が山に陣を置いていたことにつ いては全員が,また,重要な道路の近くに陣を置いていたことについて も多くが理解していると考えられる。

イ.戦いが進んだ様子

 ここでは,次の3つのことが記述されることを期待していた。1っは 前半は西軍が戦いを有利に進めたこと,2つ目は前半から後半への変化 の契機(小早川秀秋が東軍についたこと),3つ目は後半は亀甲が不利 になったこと(東軍が勝利を収めたこと)である。実際の記述状況は,

次のとおりである。

【表3−3−2】

戦いが進んだ様子の記述状況 内容 人数 割合 備 考 前半 22 91.7 2名は全く触れてない 契機 22 91.7 2名は全く触れて加

後半 22 91.7 2名は全く櫛てない

(提出者24名)

100 80 60 40 20  0

i…前半  勿契機   ≡後半

【グラフ3−3−2】

戦いが進んだ様子の記述状況(%)

 これらの図表からは,前半は戦いを有利に進めた西軍が,小早川秀秋 が東軍についたことがきっかけとなって後半は不利になっていったとい

うことを,かなり多くの子どもが理解していると考えられる。

ウ.当時の住民の生活

 ここでは,住民は逃げていたことと,住民は戦いが早く終わってほし いと思っていたことが記述されることを期待していた。実際の記述状況 は,次のとおりである。

       ii,逃亡  笏思い

【表3−3−3】

当時の住民の生活の記述状況 内容 人数 割合 備 考 逃亡 24 100

思い 20 83.3 4名は全く触れてない

(提出者24名)

100 80 60 40 20  0

【グラフ3−3−3】

当時の住民の生活の記述状況(%)

 これらの図表からは,子どもは,住民が相川山に逃げていたことにつ いては全員が,また,早く戦いが終わってほしいと思っていたことにつ いても多くが理解していると考えられる。

③パンフレットにみる理解の状況のまとめ

 以上,指導の中心的内容としていた3っのことについて具体的にみて きた。子どもは,これらのどれについても高い割合で記述しており,あ る程度理解していると考えられる。そして,このような結果が得られた のは,前時(第12時)までの授業の成果であると考える。しかし,項目 によっては,すべての子どもが記述していたわけではないことも事実で ある。そして,そのような事実を生み出したことについては,それまで の教師の指導が問われるところである。そこで,それについては,各時 間の授業を分析するなかで具体的に明らかにすることにする。

(2)総括テストの結果にみる理解の状況

①分析の基本的な立場

 総括テストは,第2章第3節で設定した教育目標・教育内容に基づい て作成したものである。すなわち, 【表3−3−4】 (次ページ)に示し たように,資料の活用能力をみる問題が一部あるものの,全体としては

「関ヶ原の戦いを地域性との関わりで理解することができる」という到 達目標の実現状況を知るために作成したものであり,指導の中心的内容 としていた3つの内容を中心に出題したものである1)。そこで,ここで

1) 指導の中心的内容としていた3っの内容に関する問題は,その配点を全体の70%あまりにして作成して いる。特に「西軍の計画と陣形」 「戦いの進展の様子」に関する問題が多い。なお,総括テストの問題そ のものは,巻末に資料として収載している。

は分析の対象をこの3つの内容に関する問題に絞り,そこにみられる子 どもの理解の状況を問題番号別に明らかにし,検討することにする。

【表3−3−4】 総括的テストの問題の内容構成と出題意図 出 題 意 図 問題番号 内     容

二二標 指導の中心的内容 その他

1一(1) 陣形図から時刻の読解 資料活用勧

1一(2) 同 武将の立場の読解 資料瀾勧

1一(3) 武将と山の関係及び位置の理解 義軍の計画と陣形

1一(4) 西軍の配陣の理解 西軍の計画と陣形

2一(1)(2) 戦いの進展の様子の理解 戦いの進展の様子

2一(3> 開戦地の意味理解 戦いの進展の様子

2一(4) 当時の住民の理解 当時の住民の様子

② 分析の実際 ア.問題番号1一(3)

〔問題〕

 関ヶ原の戦いで,笹尾山,桃配山,松尾山,南天満山,南宮山に 陣を置いた武将を,前の②の問いの①〜⑧(①大谷吉継 ②石田三 成 ⑧福島正則 ④小早川秀秋 ⑤宇喜多秀家 ⑥徳川家康 ⑦小 川裕忠 ⑧毛利秀元)から選び,番号で答えなさい。

 また,それぞれの山は,陣形図の中のア〜カのどれですか。記号 で答えなさい。

 この問題は,関ヶ原町内やその周辺にある山について,関ヶ原の戦い のときにどの武将がそこに陣を置いたのか,また,その山の位置は陣形 図中でどこにあるのかを探して答える問題である。診断テストでも同様 の問題を出題したが(ただし,南天満山は「天満山」として出題。また,

南宮山は入っていない),山と武将の名前をつなげる問題の通過率が高 いのに対して,山の位置を陣形図から探す問題の通過率が低い(天満山