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第3章   「関ヶ原の戦い」の授業分析とその改善

第2節  授業分析の立場と方法

 授業分析とは, 「授業を構成している諸要素を見出し,要素間の関係 や授業の全体的構造的特徴を明確にする技法」であり,そこには大きく

2周忌流れ(「認識論的な授業分析」と「教育工学的な授業分析」)が ある1)。したがって,一口に授業分析と言っても,その立場やそこで用 いる方法には様々なものがある2)。そこで本節では,第3節で実際に行 う授業分析の立場や方法を明らかにする。そして,本節の最後には,単 元の指導過程と関連させた授業分析の構想を図化して提案する。

1. 授業分析の立場

 浅田は, 「授業を分析する,あるいは授業評価を行うということは,

最終的には教師としての進歩向上,すなわち教師の姿勢や態度・能力と いう教師のあり方に結びつかなければならない」と言う。そして,その 理由を, 「授業という場が単に教材内容に関する知識・理解や技能を子

どもが修得することだけを目標にしたものではなく,個々の子どもの人 間的成長の基盤となる自己のあり方を確立することができるような援助 の場であるから」としている3)。すなわち,浅田は,授業は陶冶と訓育 の両側面を担うものであり,したがって,最終的には教師のあり方に結 びつくような授業分析を行うべきことを強調している。そして,浅田は,

1) 倉島敬治「授業分析」東洋・坂元昴・志方守一・永野重史・西之園晴夫編『新教育の事典』 平凡社 1979年 p.439  この中で倉島は,授業分析の目標・課題・研究の方略・方法的枠組について,両者の 違いを述べている。

2) 例えば,佐藤は,授業分析を「反省的実践の授業研究jと「技術的実践の授業分析」の2つに分け,両 者の違いを目的,対象,基礎,方法,特徴,結果,表現の7つの視点から述べている。そして,今日では 特に「反省的実践の授業研究」を重視すべきことを指摘している。 (稲垣忠彦・佐藤学『授業研究入門』

岩波書店 ig96年 p.121)

3) 浅田匡「授業を分析する」梶田叡一編著『教育心理学への招待』 ミネルヴァ書房 1995年 p,90

そのような授業分析を行う目的として次の4つをあげ,その内容や方法 を説明しているD。 【表3−2−1】は,それを筆者なりに整理したもの

である。

①当該単元の授業構成と改善  授業評価における形成的評価の機能

②同一単元の授業改善  ⑧授業一般の改善  ④授業改善の法則性の抽出

【表3−2−1】 教師のあり方に結びつく授業分析の目的・内容・方法

目 的 内       容 方    法

学習到達度だけでなく,子どもの認知的,情意 ・授業者が問題とする観点に 当該単元の 的反応や学級の雰囲気,学習活動などの評価を 基づく授業の録音・VTR 授業構成と 意味した形成的評価を活用するものであり,こ の鏡映的利用法

改善一一授 れからの授業展開や匂油の授業計画を決定する ・授業者,学習者による授業 業評価にお フィードフォワード機能に着目した教師自身に の印象を評価するSD法 ける形成的 よる(1人称の)授業分析。 ・教授行動や学習行動などに

評価の機能 ついての評定尺度法

綿密な授業計画に基づいて授業実践を行い,計 ・授業者による授業録音・V 同一単元の 画されていた指導法や学習活動など授業過程の TRの鏡映二二用法 授業改善 評価と授業目標の到達度という授業成果の評価 ・学習者あるいは観察者によ

による評価情報のフィードバックにより,同一 る評定尺度法 授業における教材,授業計画,あるいは指導法 ・SD法

等を改善しようとするもの。

授業者の授業特性,すなわち,教師自身の授業 ・授業の録音・VTRの鏡映 授業一般の についての考え方や授業の進め方(個人的な教 的利用法  ・自由記述法 改善 授理論あるいは信念)についての授業分析。 ・評定尺度法   ・SD法

・観察チェックリスト法

教科や教材の特性,学習者の特性,授業者の特 ・個々の授業につ

授業改善の 性を超えた一般的な結論づけを目指した授業分 いてのVTRの トータル 法則性の抽 析。1時間1時間の授業だけを問題とするので 鏡映的利用法  に分析・

はなく,校内研究などで行われる授業を体系的 ・自由記述法   評価 に分析することが求められる。 ・評定尺度法

 ここで筆者が行おうとする授業分析の立場を明らかにしておきたい。

それは,浅田の類型に従うならば, 「同一単元の授業改善」を主目的と

1) 浅田匡「授業を分析する」梶田叡一編著r教育心理学への招待』 ミネルヴァ書房 1995年 pp.90−94

するということである。なぜならば,筆者が行おうとする授業分析は,

「綿密な授業計画が授業改善のための評価基準となる」という立場で,

「目標到達度に照らして計画の修正,指導技術の変更」nなどの授業改 善を行うことを目的としているからである。すなわち,授業後の子ども の地域認識(関ヶ原の戦いの科学的認識)や歴史を見る目の状況を明ら かにするとともに,各時間の授業を分析することによって授業の改善点 を引き出し,それをもとに第2章で提案した学習指導案を改善すること を授業分析の目的とするのである。

2. 授業分析の視点と方法

(1)授業分析の視点

 そもそも本授業実践は,下記の授業研究の仮説に基づいて行ったもの

である。

 地域の歴史的事象である関ヶ原の戦いについて,下の3点を指導の中心的内 容として指導することにより,子どもは関ヶ原の戦いを地域性との関わりで理 解して地域認識を豊かにするであろう。また,歴史を見る目を身につけていく であろう。

〈指一的内容〉

 そこで,第3節で行う授業分析では,この仮説を受けて,次の2点を 授業分析の視点として設定する。

<視点1> 子どもは関ヶ原の戦いを地域性との関わりで理解することができ      たか。

<視点2> 子どもは歴史を見る目をどれくらい身につけたか。

D 浅田匡「授業を分析する」梶田叡一編著『教育心理学への招待』 ミネルヴァ書房 1995年 p.92

(2)授業分析の方法

 く視点1>及びく視点2>の分析をそれぞれ次のように行う。なお,

ここでは簡便に述べるにとどめ,詳しくはそれぞれ第3節で「分析の基 本的な立場」という項目を掲げて述べる。

①<視点1>の方法

 基本的には, 【表3−2−2】に示した梶田の「授業評価の3側面」1)

についてみていく。すなわち,まず「授業成果の評価」として,第13時 に作成したパンフレットと第14時に実施した総括テストの結果から子ど もの理解の状況を明らかにする。次に, 「授業過程の評価」及び「学習 経験の評価」として,そのような理解の状況を生み出すに至った直接の 原因ともいえる毎時間の授業について,授業記録や子どもの報告(ノー

トやプリント類2),自己評価など)を手がかりにして分析する。

       【表3−2−2】 授業評価の3側面(梶田,1980)

授業過程の評価 学習経験の評価 授業成果の評価 評価対象 ・指導過程,ただし学者

メ側の反応も含む

・学習者側の学習経験,

スだし指導との関連も ホ象とする

・指導されて学習した結 ハとして学習者の側に カじたもの

主要評価観

̲

・指導内容,方法の適正・授業過程の雰囲気・学習者側の反応

・学習課題への心理的関

^(コミットメント)・学習活動の積極性,持

ア性・学習過程での情緒的満

ォ性

・認知的,情意的,技能

I目標の達成・コストの問題・教職員や学校,地域等

ノ対する影響

学習者に対 キる見方

・全体として ・個々人として ・全体として・個々人として

評価の基準 ニなる資料

・第三者による観察

@(教師自身の反省)

@(学習者による観察)

・学習者の報告

@(教師による観察)

@(第三者による観察)

・教師,第三者による測 閨C評価(学習者によ 骼ゥ己評価)

1) 梶田叡一r現代教育評価論』 金子書房 1980年 PP.91−93

2) 本単元で使用したノートやプリント類(見学メモ,調べ学習用ワークシート,その他子どもに配布した  資料)は,巻末に資料として収載している。

②<視点2>の方法

 単元の学習後の子どもの「歴史を見る目」の状況を,次の2つの方法 で把握,分析する。1年忌,実践単元後の歴史学習に対する期待度を事 後調査によって把握し,それを事前調査で得られた社会科学習に対する 好意度や歴史学習に対する期待度と比較分析することである1)。これは,

社会科(歴史)学習に対する好意度(期待度)は,社会(歴史)を見る目に影 響を与える一要素であると考えて行うものである。もちろん,歴史学習 が未経験の段階(事前調査の段階)と経験した段階(事後調査の段階)とで は,社会科(歴史)学習に対する好意度(期待度)といっても,それらは文 脈が異なるものであり,それを単純に比較することは問題であるという

ことを指摘できよう。しかし,本授業が初めての歴史学習であるからこ そ,それによって子どもがその後の歴史学習をどのようにみるかという

ことを知ることは,本授業の1つの成否を問うものになると考える。そ こで,この立場から授業前後の変化の状況をみることにする。

 もう1つは,関ヶ原の戦いの学習をその後の歴史学習にどのように生 かそうと考えているかということを事後調査によって把握し,その結果 を分析することである。これによって, 「歴史を見る目」の状況を明ら かにしたいと考える。

(3)授業分析の全体構想

 以上述べてきたことから,授業分析の全体構想を【図3−2−1】 (次 ページ)のように提案する。これは,単元の指導過程との関連でとらえ た全体構想図である。

1)事前調査とは,診断テストを指す。また,事後調査は,総括テストの実施時に同時に行ったものである。