第2章 「関ケ原の戦い」の授業設計
第2節 子どもの実態把握
授業とは,子どもがそれまでに身につけてきている様々な見方や考え 方,知識などを活用し,それらをさらに高次なものにすることを意図し て行うものである。したがって,単元の授業設計においては,その単元 で扱う学習内容や学習方法に関して,子どもの見方や考え方,知識など の実態を把握する,つまり,診断的評価を行う必要がある。そこで本節 では,そのために実施した診断テストの概要を述べるとともに,その結 果について考察する。
1. 診断テストの概要
(1) 目的と手続き
実践単元は,6年生になったばかりの子どもが初めて歴史学習を行う という,歴史学習の導入単元である。そして,そこでは,地域認識を育 てるために,地域の歴史素材である関ヶ原の戦いを教材化して指導する
ことを意図している。したがって,診断テストでは,①社会科学習やそ こで採用される調べ学習に対する見方,②歴史学習に対する興味・関心
⑧地域認識(関ヶ原認識),④関ヶ原の戦いについての知識や興味・関心 の4点について子ど
【表2−2−1】 診断テスト実施の手続き
もの実態を把握した いと考えて, 【表2
−2−1】に示したよ うな手続きでそれを
実施した。
期 日 対 象
その他
1997(平成9)年1月24日(金)
岐阜県不破郡関ヶ原町立関ヶ原南小学校
第5学年1組(26名・男12,女14。授業の対象学級)
第5学年2組(26名・男11,女15)
・校長と対象学年の学級担任にテスト実施を依頼。
・その承諾を得て,学級担任の監督のもとで実施。
・テスト用紙はB4版用紙1枚(表裏印刷)とし,
子どもに負担にならないようにした。
(2)問題設定の観点とねらい
診断テストは16問で構成されている。各問題の設定の観点とねらいは,
【表2−2−2】に示したとおりである1)。
【表2−2−2】 診断テストの問題設定の観点とねらい 翻 問題設定の観点 問 題 の ね ら い
1 社会科学習に対する見方 社会科の学習が好きかきらいかをその理由とともに問い,子 どもが社会科をどのように見ているかを把握する。
2 調べ学習に対する見方 授業実践校では調べ学習をよく行っている。その調べ学習が 好きかきらいかをその理由とともに問い,子どもが調べ学習 をどのように見ているかを把握する。
3 歴史学習に対する興味・ 歴史の本を読むことの好き・きらい,知っている歴史上の人
〜 関心 物,6年生で行う歴史学習への期待などを問い,子どもが歴 6 史学習にどれくらい興味・関心があるかを把握する。
7 地域(関ヶ原)認識と地 関ヶ原で自慢できること,関ヶ原のことでもっと知りたいこ
〜 域に対する見方 と,関ヶ原が好きかきらいかをその理由とともに問い,子ど 9 もが関ヶ原をどのように認識しているかを把握する。
10 関ヶ原の戦いについての 東西両軍の底心人物名,主な武将が陣を置いた山の名前と位
〜 知識 置,東軍勝利の理由,当時の住民の様子について問い,これ
13 らについて子どもがどれくらい知っているかを把握する。
14 関ヶ原の戦いに対する興 関ヶ原の戦いについての本を読んだ経験,行ったことのある
〜 味・関心 史跡,学習したいことなどを問い,子どもが関ヶ原の戦いに
16 どれくらい興味・関心があるかを把握する。
2.テスト結果とその考察
次に,診断テストの結果2)を示し,それについて考察する。ここでは,
【表2−2−2】に「問題設定の観点」として示した6つの観点別にテス ト問題とその結果を示し,考察を加えることにする。その上で,実際に 授業設計を行うときに配慮すべき事項をあげていくことにする。
D 実際に行った診断テストの問題は,巻末に資料として収載している。
2) 1組では欠席者が1名(女子)いた。この子どもは診断テストを受けていないので,全体の人数から除 いてある。したがって,1組は25名(男12,女13)の結果である。
(1)問題設定の観点別の結果と考察
①「社会科学習に対する見方」について 問題と結果は次のとおりである。
1.社会科の学習が好きですか,きらいですか。次の中からあては まるもの1つに○をつけ,その横に理由を書きなさい。
ア.とても好き イ.少し好き
ウ.どちらでもない エ.少しきらい オ.とてもきらい
【表2−2−3】 問題番号1の回答結果(単位;人)
1組男子 1緻子 2棚子 2組好 計 主 な 理 由 ア.とても好き 1 0 0 1 2 調べ学習ができる。
イ.少し好き 3 3 4 8 18 同上。よくわかる。
ウ.どちらでもない 7 4 6 5 22 調べ学習はいいけど,先生の話を聞きながらやっていくのはいや。
エ.少しきらい 1 5 1 1 8 同上。わからないことがある。
オ.とてもきらい 0 1 0 0 1 つまらない。
【表2−2−3】を見ると,学年全体としては,社会科は好きだという 傾向にあることがわかる。その理由としては,調べ学習ができることを 多くの子どもがあげており,そのことから,社会科では調べ学習を行う
ものという見方があると考えられる。そして,そのことは,次の設問の 回答結果に如実に表れている。そのような中で,1組女子の傾向は逆に なっている。 「わからない」 「つまらない」という理由があり,授業設 計にあたって留意したいことである。特に授業実践の前には,このよう に回答した子どもの思いを個別に聞き出したいと考える。
②「調べ学習に対する見方」について 問題と結果は次のとおりである。
2.調べ学習についてはどうですか。
ア.とても好き イ.少し好き
ウ.どちらでもない エ.少しきらい オ.とてもきらい
【表2−2−4】 問題番号2の回答結果(単位:人)
1湖子 丁丁 2組肝 2緻子 計 主 な 理 由
ア.とても好き 6 5 5 8 24 自分で資料をさがして調べるのがおもしろい。自分で調べてよくわかる。
イ.少し好き 6 6 4 6 22 同上。
ウ.とちらでもない 0 1 2 0 3 ちゃんと調べられるときもあるけど,そうじやないときもある。
工.少しきらい 0 1 0 1 2 調べてもよくわからないことがある。
オ,とてもきらい 0 0 0 0 0
「ア」または「イ」を選んだ子どもが学年全体で46名(90.2%)おり,子 どもは全体に調べ学習が好きだといえる。理由としては,自分で資料を 探して自分で調べていくことにおもしろさを見出したり,その方がよく わかるとしている子どもが多く,意欲的に学習しようとする姿勢が感じ られる。このような結果になったのは,平成5年度から校内研究の対象 教科の1つに社会科をあげ,,調べ学習を日常的に採り入れて実践してき た授業実践校の取り組みの成果といえよう。また,この学年の子どもは 生活科が完全実施された年の1年忌であったことから,活動的な学習に 慣れているとともに,そのような学習に高い関心があったからであろう。
いずれにしても,調べ学習に対する好意的な見方は子どもの特徴といえ ることなので,本授業実践においても,その進め方を丁寧に説明し,そ のよさを体得することができるようにしたいと考える。
③「歴史学習に対する興味・関心」について 問題と結果は次のとおりである。
3.歴史の本(歴史マンガもふくむ)を読むのは好きですか,きら いですか。次の中からあてはまるもの1つに○をつけなさい。
ア.とても好き イ.少し好き ウ.どちらでもない 工.少しきらい オ.とてもきらい
4.歴史上の人物の名前を知っているだけ書きなさい。
5. 6年生で行う歴史の勉強は楽しみですか,いやですか。次の中 からあてはまるもの1つに○をつけ,その横に理由を書きなさい。
ア.とても楽しみ イ.少し楽しみ ウ.どちらでもない 工.少しいや
オ.とてもいや
6. 日本の歴史には,主に下の時代があります。この中でどの時代 のことを勉強するのが楽しみですか。2つ選び,記号に○をつけ
なさい。
ア.縄文(じょうもん)時代 イ.弥生(やよい)時代 ウ.古墳(こふん)時代 工.飛鳥(あすか)時代 オ.奈良(なら)時代 力.平安時代
キ.鎌倉(かまくら)時代 ク.室町(むうまち)時代 ケ.戦国時代
コ.江戸時代 サ.明治時代 シ.大正時代 ス.昭和時代
【表2−2−5】 問題番号3の回答結果(単位;人)
1観子 1組好 2組男子 2緻子 計 ア.とても好き 2 3 2 4 11
イ.少し好き 5 6 3 9 23
ウ.どちらでもない 5 4 5 1 15
エ.少しきらい 0 0 1 0 1 オ.とてもきらい 0 0 0 1 1
【表2−2−6】 問題番号4の回答結果 人物名 人数 人物名 人数 人物名 人数
徳川家康 23 宇喜多秀家 6 エジソン 3 石田三成 21 武田信玄 6 夏目漱石 3 小早川秀秋 17 坂本龍馬 5 卑弥呼 2 豊臣秀吉 14 徳川家光 5 弁慶 2 織田信長 13 明智光秀 3 松尾芭蕉 2
*ここにあげた人物は,2名以上の子どもが回答したものである。また,1組のみ示したが,2組も1組とよく似た傾向である。
ここでは,学年のすべての子どもが最低3人を書くことができていた。
【表2−2−7】 問題番号5の回答結果(単位;人)
襯男子 1緻子 2組男子 2組好 計 主 な 理 由
ア.とても楽しみ 5 7 6 4 22 歴史が好き。昔のことを知りたい。
イ.少し楽しみ 6 4 3 6 19 同上。
ウ.どちらでもない 1 1 1 4 7 同上。勉強してみないとわからない。
エ.少しいや 0 1 1 1 3 難しそう。
オ.とてもいや 0 0 0 0 0
【表2−2−8】 問題番号6の回答結果(単位;人)
1組男子 1組好 2鯛子 2舷子 計 1娚子 1組好 2潮子 2組好 計
縄文 4 3 2 4 13 室町 1 3 0 1 5
弥生 1 2 0 2 5 戦国 6 8 7 7 28
古墳 0 1 0 1 2 江戸 9 4 7 6 26
飛鳥 0 0 1 0 1 明治 2 1 1 3 7
奈良 0 0 0 1 1 大正 0 2 0 玉 3 平安 0 0 0 1 1 昭和 0 0 0 1 1 鎌倉 1 2 0 2 5
日本の歴史の学習経験のない子どもであるが, 【表2−2−5】を見る と,「ウ」を選んだ子どもも含めてほとんどの子どもが歴史の本(歴史マ ンガを含む)を読んでいることがわかる。これは,それだけ歴史に興味
・関心があることを示すものである。
このことは,次の設問の回答結果にも表れている。すなわち,知って いる歴史上の人物として,すべての子どもが最低3人を書くことができ たのは,マンガを含めて歴史の本を読んだりテレビのドラマを見るなど,
歴史への興味・関心が高いからであると考えられることである。中には,
16人の人物名を書いた子どももいるほどである。また, 【表2−2−6】
の上位3人の人物は,関ヶ原の戦いと関係が深い人物であり,ここに地 域性が表れていると考えられる。
このような歴史への興味・関心の高さは,6年生の歴史学習に対する 期待の高さ(【表2−2−7】)にも表れている。「ア」または「イ」を選んだ