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博士(医学)日下大隆 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)日下大隆 学位論文題名

 Two‑Year Follow up on the Protective Value of Dust IVIasks against Farmer's Lung Disease

( 防 塵マ ス クの 農 夫 肺症 に 対す る予防効果 ―2年間の 追跡調査 )

学位論文内容の要旨

1. 研 究 目 的

農 夫 肺 症 は 抗 原 か ら 隔 離 さ れ れ ば 、 自 然 に 治 癒 す る 疾 患 で あ る が 、 再 暴 露 あ る い は 亜 急 性 の エ ピ ソ ー ド の繰 り 返 しは 、 肺 の線 維 化を 招 く 危険 性 が あ る 。 それ ゆ え、 酪 農 環境 か ら 患者 を 隔離 す ること が推奨さ れた。しか し、

実 際 に は 農 夫 肺 症 に 罹 患 し た 既 往の あ る 酪農 従 事 者の 大 部分 は 主 に経 済 上 の 理 由 か ら 離 職 で き ず 、 酪 農 作 業が 可 能 な予 防 法 を切 望 して い る 。防 塵 マ ス ク の 着 用 は 酪 農 を 離 職 す る こ とな し に 取り う る 現実 的 な予 防 的 手段 の ー っ で あ る 。 し か し 、 通 常 の 酪 農 作業 に お ける 、 防 塵マ ス クの 着 用 のし や す さ や 粉 塵 防 御 に 対 す る 防 塵 マ ス クの 有 効 性は 充 分 には 検 討さ れ て いな い 。 我 々 は 酪農 作 業Ll,Iの防塵 マスクの 実際の使 用状況や 実用性と 農夫肺症の 予 防 千 段 と し て の 防 塵 マ ス ク の 有 効 性 に っ い て 検 討 し た の で 報 告 す る 。

n. 研究 対 象お よび方法

1.研 究対象

我 々 は、1974尓 以降 亅 ヒ 海道 幌 延mrに おい て 農 夫肺 症 検診 を 行 って 来 てい るが 、1984′lr.の時 点まで28名 の農夫肺 症症例を 確認した。その巾今回の研 究 の 承諾 を 得た21観の農犬JliliFの 既ルを何 する酪農 従事者( 男Vt12名、女 性9名 、 F令:jTj.から76j )を対象 とした。

2.研究 カ法

の防塵 マスクの 選定:農 大11iliあt患者 の酪農作 業環境からかびの着いた牧

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草を 採取し、Ander‑sen samplerをJ・nいて 、粉塵の 呼吸器に 沈着しうる分画 を収集した。粉塵粒子の直径の1・い央値は9. 5uであった。直径1.0"以上の粒 子 を99. 996除 塵 で きる 防 塵マ ス ク (シ ゲ マツDR―74、東京 )を選定 した。

@ 防 塵 マ ス ク の 供 与 : 21名 の 農 夫肺 症 の既 往 を 持つ 酪 農従 事 者 全員 に 防 塵マ スクをUヒ与した。酪農作業LI.1あるいtま少なくとも牧草取り扱い中には 着用するように指導した。

◎ ア ン ケ ー ト 調 査 : 防 塵 マ ス ク 着Jn以前 と 着 用後2年 間 の農 夫 肺 症様 症 状 の エ ピソ ー ド の匝1教 を 、ア ン ケ ート や1979年から毎 年行って いる農夫 肺症 検 診 時の 間 診 表、1984年 から2ニF問に7匝1施行し た検診な どから求 めた。さ ら に 、 マ ス ク の 使JW状 況 や 問 題 点 に っ い て ア ン ケ ー ト を 行 っ た 。

@ 環 境 暴 露 試 験 : マ ス ク 着 川 の 有 効 性 を さ ら に 検 討 す る た め に 、 環境 暴 露 試 験 を 対 象 者 全 員 の 同 意 を 得 て施 行 した 。 環 境暴 露 試験 第1日 に 対象 者 に は 普段 ど う り防 塵 マス ク を 着J1亅 して 酪 農作業 を行って もらった 。その4 時 間 から8時 間 後 に問 診 と理 学 的 検査 を 行い 、 胸 部x綜写 真 、呼 吸 機 能検 査

(スパイ口グラム、フ『」ーボリl二L―ウム曲線、拡散能力)を施行した。第2日 に は 、マ ス ク を外 し て作 業 す る以 外 は普 段 ど うり に 酪 農作 業 を行 っ て もら い 、 そ の4時 間 か ら8時 間 後 に 第1Hと 同 様 の 問 診 と 理 学 的 検 査 、 胸 部x線 写真、呼吸機能検査を行った。

m. 結 果

1.防 塵 マス ク の 着f刪人 眦 :1984年 か ら1986年 に か けて の2年 間、 対 象 者21 名lJl.117名(81%)が酪農作業tI|マスクをかけていた。4名はマスクの着用が不 快 で あ る こ と 、 ま た マ ス ク を 外し て も 呼吸 器 症状 が な いこ と を理 由 に マス クの着用をLl.I止していた。

2. 農 夫 肺 症 の 急 性 工 ピ ソ ー ド の 調 査 : 対 象 者 は 最 初 の 農 夫 肺症 の 症 状が 出現してから、1q :問に0L亜lから15回のエピソードを起こしていた。しかし、

1984年 から19 86 1!に かけて7回 の検診を 行った2年 間、明ら かな農夫肺症を 発 症 し た 哲 は な か っ た 。18名 の 酪 農 従事 者 は、1985年 以 後一 度 も急 性 の エ ピ ソ ード を 起 こさ な かヮ た 。3名 の酪 農 従事 者 は 軽微 な 症 状を 自 覚し た が 、 酪農作業はi可能であー〕た。

3.対 象 者の 環 境 暴露 試 験ijむ のnf吸 機能 検 査: 対 象 者は 総 体的 に は 正常 あ る い は 軽 度 の 呼 吸 機 能 の 異 常 を示 し た 。96VC 8096以 下 は1症 例で あ った 。 96DLc0 7596以下は3症例であった。

4. 環 境 暴 露 試 験 : 防 塵 マ ス ク を 外 し て 作 業 す る 以 外 は 普 段 どう り に 酪農

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作 業 を 行 っ て も ら っ た 。2名 の 酪 農 従 事 者 は 悪 寒 あ る いは 発 熱 を 起 こ し た が 、 胸 部 理 学 的 所 見 や 胸 部X線 写 真 上 有 意 な 変 化 は 認 めな か っ た 。 肺 機 能 の 変 化 にっ い て は 、 前 値 に 比 較 し てl096あ るい は0.2L以上 の変 化を示 した と き 有 意の 変 化 で あ る と 判 定 す る と 、rvcの 有 意 な 減 少 は3症 例 に、FEVi.o の 有 意な 減少tま5症 例に 、DLcoあ るい は、DL/VAの減 少は6症 例に みられ た。

総 体 的 にpairedtーtestを 行 う と 、FVC( 平 均3.43か ら3.35L) ,DLco

( 平 均19.6か ら18.2ml/torr/min),DL/VA( 平 均5.1か ら4.8(x10・3)/

torr/min)の 有 意 な 減 少 が み ら れ た (P<O. 01) 。

W. 考案 なら びに 結語

非 常 に 過 敏 な 農 夫 肺 症 患 者 に と っ て は 微 量 の 抗 原 吸 人で さ え 再 発 症 す る 可 能 性 が あ る が 、 少 量 の 抗 原 の 持 続 吸 入に よ る影 響よ りも 初回 の発作 の重 症 度 や 有 症 状 の 再 発 の 繰 り 返 し が 、 長 期間 経 過後 の肺 機能 障害 に影響 する と の 報 告 が あ る 。 実 際 、 長 期 間 経 過 を 追跡 し た調 査よ って 農夫 肺症患 者の 大 部 分 は 肺 機 能 の 低 下 を 起 こ さ ず に 酪 農作 業 を継 続し てい た。 それゆ え、

抗 原 の 吸 入 量 を 確 実 に 減 少 さ せ る こ と ので き る防 塵マ スク の着 用は、 農夫 肺 症 の 発 症 を 予 防 し う る 実 用 的 な 手 段 であ る 。 し か し 、Smythら の 農夫 肺 症 患 者148名の 追 跡 調 査 で は 、 大 部 分 の 酪 農 従 事 者 は 人 型 の 防 塵 マ スク を 窮 屈 で 不 快 で あ る と し て 使 用 せ ず 、 ガ ーゼ フ ィル ター を用 いた 単純な マス ク を 着 用 し て い た 。 そ れ ゆ え 、 酪 農 作 業中 に おけ る実 用性 の検 討は農 夫肺 症 予 防 に 対 す る 防 塵 マ ス ク の 有 効 性 の 検討 と とも に必 要で ある と考え た。

我 々の2年間 の追 跡調 査の 結果 、21名中17名(8196)は酪農作業巾の防塵マス ク の着 用に 支障 を感 じなか った 。2年間の調査期間rl・1 21名巾20名には新た な 重 篤 な エ ピ ソー ドは 起き なか った 。また 農夫mij症の 急性 のエ ピソー ドの 頻 度 も 著 明 に 減 少 し た 。 こ れ ら の 結 果 から 我 々が 選定 した 防塵 マスク は実 用 的 で 農 夫 肺 症 の 発 症 を 予 防 で き る 性 能を 持 っこ とが 示唆 され たが、 マス ク 着 用 の 有 効 性 を さ ら に 検 討 す る た め に 、 環 境 暴 露 試験 を 行 っ た 。DLco の 減 少 は 農 夫 肺 症 急 性 期 に は 大 部 分 の 症例 で みら れ、 呼吸 機能 検査の 中で 最 も 鋭 敏 な 指 標 と さ れ て い る が 、 今 回 の 暴 露 試 験 で もDI,coあ る い は , DL/VAのl096以上の低下が21名中6名(2996)と高頻度にみられた。個々の症例 で は21名q亅11名 (5296) に何 らかの呼吸機能異常がみられ、総体的にpaired t−testを行うと軽度ながら、危険率0.01未満でFVC,DI」co,DI」/VAの有意な 低 下 を 認 め た こ と か ら 、 防 塵 マ ス ク の 予 防 効 果 が 示 唆 さ れ た 。 今 回の 研究 の主 要な 結果は 、(1)着用するように指導した防塵マスク(DR―

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74)の実用性が認められたこと、(2)防塵マスクの着ffJを指導した2年間21 名中20名において新たなエピソードは起きず、防塵マスクを一時的に外し て酪農作業を行った環境暴露試験で呼吸機能検査の有患な低下を認めたこ とから、農夫肺症の予防手段として防塵マスクが有効であることが示唆さ れたことである。これらの結果から、今川試験したI竃度のt′l三能を行する防 塵マスクを若用することにより、酪農を離幟することなしに農夫肺症を予 防できるものと推察した。

(5)

学位論文審査の要旨 主 査 教 授

副 査    教授 副 査    教授

川 上 義 和 小 山 富 康 小 林 邦 彦

学 位 論 文 題 名

 Two‑Year Follow up on the Protective Value of Dust Masks against Farmer's Lung Disease

( 防 塵マ ス ク の農 夫 肺 症に 対す る予防効 果―2年間 の追跡調 査)

目 的 : 防 塵 マ ス ク の 着 用 は 酪 農 を 離 職 す る こ と な し に 取 り う る現 実 的 な 予防 的 手 段の ー っで あ る 。し か し 、通 常 の酪 農 作 業に お ける 、 防 塵マ ス ク の着 用 の しや す さや 粉 塵 に対 す る 防塵 マ スク の 有 効性 は 充分 に 検 討さ れ て いな い 。 本論 文 は酪 農 作 業中 の 防 塵マ ス クの 使 用 状況 や 実用 性 と 農夫 肺 症 の 予 防 手 段 と し て の 防 塵 マ ス ク の 有 効 性 に っ い て 検 討 し た も ので あ る 。 対 象 : 幌 延 町 を 中 心 と す る 北 海 道 北 部 酪 農 村 で1974年 か ら1984年 ま で に 確 認 さ れ た 農 夫 肺 症 の 既 往 を 有 す る 酪 農 従 事 者21名 を 対 象 と し た 。 方 法 : 農 夫 肺 症 患 者 の 酪 農 作 業 環 境 で 、Andersensamplerを 用 い て 、 粉 塵を 収 集 した 。 直径1. Ou以上 の粒子を99.9%除塵で きる防塵 マスクを 選定 した 。21名 の 対 象者 全 員に 防 塵 マス ク を供 与 し 、酪 農 作業 中 に 着用 す る よ う に 指 導 し た 。 防 塵 マ ス ク 着 用 前 と着 用 後2年 間の 農 夫肺 症 症 状の エ ピ ソ

―ド の 回 数を 、 アン ケ ー トや1979年 から 毎 年 行っ て い る農 夫 肺症 検 診 時の 問診 表 、1984年か ら2年 間に7回 施 行 した 検 診な ど か ら求 め た。 さ ら に、 マ スク の 使 用状 況 や間 題 点 にっ い て アン ケ ート を 行 った 。 マス ク 着 用の 有 効 性 を さ ら に 検 討 す る た め に 、 環 境 暴露 試 験 を施 行 し た。 環 境暴 露 試 験第1 日 に は 普 段 ど う り 防 塵 マ ス ク を 着 用し て 酪 農作 業 を 行っ て もら い 、 第2日 には マ ス クを 外 して 作 業 する 以 外 は普 段 どう り に 酪農 作 業を 行 っ ても ら っ た 。 両 日 と も 酪 農 作 業 の4時 間 から8時 間 後に 問 診 と理 学 的検 査 、 胸部X線 写真 、 呼 吸機 能 検査 を 行 った 。

結果 :2年 間 の追 跡 調査 の 結 果、21名中17名 (81?6) は酪農作 業中の防 塵マ

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スクの着用に支障を感じなかった。2 年間の調査期間中21 名中20 名( 95 %)に は新た な重篤なェ ピソードは起きなかった。また農夫肺症の急性のエピソ ー ドの 頻 度も 著 明に減少し た。環境暴 露試験では 、FVC の減 少は3 例 に、

FEVt .0 の減少は5 例に、 DLco あるいはDL/VA の減少は6 例にみられた。個々 の症例では21 名中11 名(5296) に何らかの呼吸機能異常がみられ、総体的に pairedt ― test を行うと軽 度ながら、危険率O .01 未満でFVC ,DLco ,DL/VA の有意な減少を認めた。

結 語: 着 用す る ように指導 した防塵マ スクの実用 性が認めら れた。有効 性にっいては、防塵マスク着用中の2 年間21 名中 20 名(95?6 )において新たな 重篤な エピソード は起きず、防塵マスク非着用下の酪農作業により呼吸機 能の有意な減少を認めたことから、防塵マスク着用の有効性が示唆された。

以 上の 結 果か ら 、防塵マス クは農夫肺 症の予防手 段として有 用であると 結論した。

口 答発 表 にあ た り、小林邦 彦教授より 農夫肺症の 原因の環境 調査にっい て、お よび気候と 農夫肺症症状のエピソードとの関連にっいて、小山富康 教授よ り環境暴露 試験におけるDLco およびVA の変化にっいて、古館正從教 授およ び齋藤和雄 教授より防塵マスクの性能に関連して、それぞれ質問が あった。申請者は概ね妥当に答えたと思う。

ま た、 小 林邦 彦 教授、小山 富康教授よ り個別に審 査を受け、 合格とのご 返事をいただいている。

こ れま で 長期 間 にわたって 実際の酪農 作業中の防 塵マスクの 実用性およ

び有効 性にっいて 検討し、有効性についてはさらに環境暴露試験を行って

検討し た報告はな く、防塵マスクが農夫肺症の予防手段として有用である

ことを 示したこと は意義のあるものと考えられ、よって本論文は博士(医

学)に相当するものと認めた。

参照

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