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博 士 ( 医 学 ) 日 下 真 純 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 日 下 真 純

学 位 論 文 題 名

ブ 夕 培 養 顆 粒 膜 細 胞 に お け る 膜 電 流 系 に 関す る 研究      学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  細胞 膜 に存 在す るイ オ ンチ ャン ネルは、種々の細胞機 能に密接に関与している。 ステロ イド 産生細胞である卵巣顆粒膜細胞では、その培養系においてCa2゛の除去やCa2゛チャンネル ブロ ッカ.ー投与により、プロゲ ステロンやステロイド産生 促進効果を有する黄体化ホルモ ン(LH)の セ カ ン ド メ ッ セ ン ジ ャ ー で あ るcAMPの産 生 が抑 制さ れる 。 また 、LHは顆 粒膜 細胞 を脱分極させ、細胞内Ca2゛ 濃度(にal)を上昇させる。一方、黄体細胞において細胞外 K゛濃 度を 上昇させて細胞膜 の脱分極を引き起こすと、プ ロゲステロン産生が増加す る。し た がっ て 、顆 粒膜 細胞 に おけ るス テロイド産生に細胞膜 の電位依存性イオンチャン ネルが 関 与し て いる こと が推 察 され る。 本研究では、パッチク ランプ法を用いて、培養プ タ卵巣 顆 粒膜 細 胞の膜電流系を解析 し、そのLHによる影響を検 討した。さらに、K゛チャン ネルブ ロッ カーのプロゲステロン産生へ の影響を検討した。

    実 験材料および方法

  ブタ 顆 粒膜 細胞 は、 屠殺 暘 にて 得ら れた 生 後6ケ 月の ブタぢ 喋の中卵胞(直径3〜5 mm) よ り卵 胞 液を 吸引 して 採取 し た。卵 を除去した後、ブタFSH(10 ng/ml)を添加した無血清 培 地 に て 、95%air ‑5%C02`37℃ の 条 件 下 で48時 間 前 培 養 し た 。 そ の後 は無 血 清培 地のみ にて培養を継続した。

  単 一 顆 粒 膜 細 胞 の 膜 電 流 の 測 定 は 、 培 養 開 始 後3〜5日 に 、 先 端 内 径 が2〜3pmの ガ ラ ス吸 引 電極 を用 いて 、バ ッ チクラ ンプ法の全電流測定法によ り記録した。細胞外溶液お よ び 電 極 内 液 の 組 成は 、各 々NaCl 143 mM; KC1 5.4 mM; CaCl21.8mM; MgCl2 0.5 mM;

NaH2P040.33 mM; glucose 5.5 mM; HEPES 5.0 mM (pH 7.4)およびK‑aspartate 100 mM; KC1 20 mM; MgC121.0mM;ATP.K25.OmM;phosphocreatine.K25.0mM;EGTA0.5mM;HEPES5.O mM(pH7.4,pCa8)と した 。 膜電 流は 、通 常 持続 時間300msecの矩形波電圧パルスをo.1 Hzで与 えて記録した。

  K゛ チャ ンネ ル プロ ッカ ーの プロ ゲステロン産生への影響を検 討するため、培養開始3日 後 に、LH非添 加群 、LH(lOOng/ml冫添加群のそれぞれについて 、培養液にK゛チャンネル プロッ カーであるtetraethylammonium(TEA;2〜50mM)もしくは4・aminopyridine(4・AP; 0.2〜5mM) を 加 え て4時 間 培 養 し た 後 、 培 養 液 中 の プ ロ ゲ ス テ ロ ン 濃度 を無 抽出RIA 法を用 いて測定した。

  得ら れた諸値は、平均値士標準 誤差で表した。プロゲステロン濃度は、unpairedt.testに て有意 差を検定し、pくO.05で有 意差ありとした。

    結  果

  1膜 電流 系 の解 析とLHに よ る影 響

  保 持電 位を―70 mVとして、脱分極 パルスを与えると、異なった 時間依存性を持つ二種類 の電 位依 存性K゛ 電流 が認 め られた。 一通性外向き電流(Ito)は、 試験バルス開始後急速に 活性 化し て、5〜 20 msecで最大とな り、100 msec以内に完全に不 活化した。活性化閾値は

74―

(2)

一40mV付近 にあり 、強い 外向き 整流特 性を認 めた。 その不 活化曲線 よりVl/2 (50%の不 活 化を 示 す 膜 電位 ) 、k (slopefactor)は 各々‑42.2mV、3.8 mV(n 9) であっ た。遅延 整 流外 向 き 電 流(IK)は、5sec以上の バルス でも不 活化を 認めず 、約―30 mVで活性 化して 、 やはり 外向き 整流特 性を示 した。It。およ びIKは、 膜電流 を記録し 得た130個の細胞のうち 各々33個(25% ) 、21個 (16%) に ほ ぼ 単独 に 認 められ 、残り の細胞 では、 両者のK゛電 流が種 々の割 合で合 わさっ て認めら れた。 両電流 は、K゛ チャン ネルブロッカーである4‑AP

(2 mM)に より 完 全 に 抑制 さ れ た 。IKは 別 のK゛ チャ ン ネ ル ブロ ッ カ ー であ るTEA (2‑10 mM)により 抑制さ れたが 、Itoはほ とんど 影響さ れなか った。 また、両電流はC02゛もしくは NjZ゛(2 mM)の細胞 外溶液 投与に より抑制 された 。

  細 胞 外 溶液 に4‑AP(2mM)を 加 えてK゛電 流 を 抑 制し た 条 件 下で 、 保 持 電位‑70 mVより 脱分極 パルス を与え ると、 急速な活 性化の 後、50 msec以内に 不活化するCa2゛電流(ICa)が 認め ら れ た 。そ の 活 性 化閾 値は‑50 mVであり 、―20 mV付 近で最 大値を とった 。Icユは 、 L型Ca2゛チ ャンネ ルプロ ッカー であるnifedipine、verapamil  (10〃M)に影響されず、T型 Ca2十チャ ンネル ブロッカーであるtetramethrin(1″M)により減少した。また、不活化曲線 からV1/2`kは各 々―50.3mV、4.8 mV(n 3) であった 。

  LH(100 ng/ml)の細胞 外溶液投 与によ り、L。 は13.9土1.8%(n二ニ7)抑制されたが、

IKお よ びIcユ は 影 響を 受 けな かった 。また 、cAMPの同 族体で 細胞膜 を透過 するdibutyryl cAMP(1mM)も 同 様 に I。 。 の み を 21. O士1.5% ( n― − 4) 抑 制 し た 。   2K゛チャ ンネル ブロッ カーの プロゲ ステロ ン産生 に及ぼ す影響

  TEAは 、LH添 加 、 非 添 加 両 群 に お い て2〜10 mMの 濃 度 で はプ ロ ゲ ス テロ ン 産 生 に影 響しな かった が、20 mM以 上の濃 度で対 照と比較して有意(pく0.05〜pくO.001)にプロゲ ステ ロ ン 産 生を 抑 制 し た。4‑APは 、LH添加 、 非 添加 両群に おいて 、濃度 依存性に プロゲ ステロ ン産生 を抑制 し、0.5 mM以上の 濃度で 有意(pくO.Ol〜pく0.001)な差を認めた。

    考  察

  本研究により、培養ブタ顆粒膜細胞において、二種類のK゛電流(It。、IK)と、Ca2゛電流

(kユ)の存在を確認した。これらのK゛電流はCoz十、Nj2゛により抑制されることから、Caz゛依 存性であると考えられた。一方、ICaは、比較的過分極側での不活化(Vl/2二ニニニ―50.3 mV)と 低 閾 値 ( 約ー50 mV)を示 したこ と、T型 チャン ネルブ ロッカ ーであ るtetramethrinに より 減少したことから、T型Ca2゛電流であると思われた。

  細 胞 外液 へ のLH投 与 に よりkは減 少 し 、 同様 の 効 果 はdibutyryl cAMPによ っても 認め ら れた。ICaはLHの影 響を受 けなか った。 したが って、LHはcAMPを介 してIヤ 。を抑制し、

細胞膜の脱分極を引き起こして電位依存性Ca2゛チャンネ丿レを、二次的に開口する結果、【Ca], を 上昇さ せてステロイド産生などの細胞機能に作用するものと考えられた。一方、.K゛電流 の強いCa2十依存性から、LHによる【Cal,の上昇がK゛電流を活性化し、膜電位の再分極を引き 起 こしてCaz+チャン ネルを 閉じる 事も予 想され る。し たがって、K゛電流は、LH作用に強く 関わっているものと思われた。

  ま た、今 回検討 した二 種類のK゛チャ ンネル ブロッ カーのう ち、kお よびIKの両者を抑制 す る4‑APは 、 プロ ゲ ス テ ロン 産 生 を 抑制 し た が 、TEAは 、IKの み を 抑 制す る10 mM以 下 の 濃度で は影響 を認め なかっ た。即ち、4‑APのプロゲステロン産生抑制効果は、It。の抑制 に よるも のと思 われる 。した がって、K゛チャ ンネル ブロッカーを用いた実験においても、

kが プロゲ ステロ ン産生 に関与 するこ とが示唆 された 。ところで、LHがIt。を抑制したこと か ら、同 じIto抑制 作用を 有する4‑APもプロ ゲステ ロン産 生を促進することが予想され、実 際 の実験 結果と は矛盾 する。 その説明 として 、4‑APに よる持続的なK゛チャンネルの抑制の ため、脱分極が持続してCa2十チャンネルの不活化を引き起こし、細胞内へのCaz→流入がとまっ てステロイド産生が抑制されることが考えられる。

75 ‑

(3)

    以上、本研究により、卵巣穎粒膜細胞におけるプロゲステロン産生およびLH作用に、

It。をはじめとするK゛電流が重要な役割をもっていることがはじめて具体的に示された。

76ー

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ブ 夕培養顆 粒膜細胞における膜電流系に関する研究

  本研究は、ブ夕卵胞穎 粒膜細胞の膜電流系をバッチクランプ法によって解析し 、この細胞 の生理機能であるプロゲ ステロン産生機構との関連について明らかにすることを 目的に行っ たものである。

  研 究 に は 、 生 後6ケ月 のプ 夕卵 巣の 中型 卵胞 (直 径2〜5mm)より 採取 した 顆粒 膜細 胞を ブ 夕 卵 胞 刺 激 ホ ル モン(FSH:10 ng/ml)を 添加 した 無血 清培 地に て48時間 前培 養し 、そ の後 は無 血清 培地 のみ にて 培養 して 用い てい る 。単 一顆粒膜細胞の膜電流は、 ガラスピッ ペッ ト電 極を 用い て、 バッ チク ラン プ法 の全 電 流測 定法により測定している。 顆粒膜細胞 のス テロ イド 産生 能を 、培 養開 始3日 後に 黄体 化ホ ルモ ン(LH) 添加 群お よ び非 添加群の そ れ ぞ れ に つ い て 、 培 養 液 にK十 チ ャ ン ネ ル プ ロッ カー であ るtetraethylammomum(m丶

) も し く はpaminopyridine(41AP) を 加 え て4時 間 培 養 し た 後 、 無 抽 出RIA法 に よ っ て測定された培養液中のプロゲステロン濃度から評 価した。

  得られた結果は次の通りである。すなわち、

1) ブ夕 培養 顆粒 膜 細胞 には 、異なった時間依存性を持つ2種類の電位依存´陸K十電流が認 め ら れ た 。 す な わ ち、 一過 性外 向き 電 流Cuと遅 延整 流外 向き 電流 (IK冫で ある 。膜 電流 を 記 録 し 得 た130個 の細 胞の うち 、33個(25% )の 細胞 にはIt0の みが 、21個(16% )の 細胞にIまIKにみが記録され、残りの細胞では両者のK十電流が種々の割合で合わ さって認め ら れ た 。K十 チ ャ ン ネル ブ口 ッカ ーで ある4―AP(2mM) は両 者を 完 全に 抑制 し、 別のK十 チャ ンネ ルプ ロッ カー であ るnニA(2〜10mM) はIKを抑 制したが、It0にはほと んど影響を 与え なか った 。両 電流 はC02十もしくはNi2十(2mM)の細胞外溶液投与により抑 制された。

2) ブ夕 顆粒 膜細 胞 で記 録さ れるCa2十電 流(Ica冫 は、L型Ca2十 チャ ンネ ル ブロ シカーに よ っ て 影 響 さ れ ず 、T型Ca2十チ ャン ネ ルブ 口ッ カー であ るtetramethrin(1ルM)に より 減少したことから、1型Ca2十電流と結論した。

3)IH(100ng/ml) の細 胞外 溶液 投与 によ り、Jt。 は13.9% 抑制 され たが 、IKおよびbヨ は 影 響 を 受 け な か っ た 。 ま た 、m¢ の 同 族 体 で 細 胞 膜 を 透 過 す るdibuロrylaWP(1 mM)も同様にItoのみを21.O%抑制した。

4) プ ロ ゲ ス テ ロ ン 産 生 に 対 し 、2〜10mMの 濃 度 でI榊 制 作 用 を 示 し たTEAは影 響を 与え なか った 。し かし 、It0およ びIKを抑 制す る41APは 、O.5mM以上 の濃 度でIH添加 、非添加 両群において、濃度依存性にプロゲステロン産生を 抑制した。

  以上の結果から、申請 者は次のような結論に到達している。すなわち、プ夕培 養穎粒膜細 胞に おい て、IHは 、cAMP産 生を 介し てItoを抑 制す る結 果、 細胞 膜の 脱分 極 を引 き起こし てT型Ca2十チャンネルを開ロさせ、[Ca]iを上昇させてプロゲステロン産生を亢進する。一

夫 一

   

   

盛 研

野 間

菅 本

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

方、

K+

電流の細胞内

Ca2+

依存性から、

LH

によるLCali の上昇がK+ 電流を活性化し、膜電位 の再分極を引き起こして

Ca

十流入を制御する。したがって、顆粒膜細胞のK 十電流は、IH 作用に強く関わっているとしている。しかしながら、この仮説に矛盾するのはIto およびIK の両者を抑制する4 ―AP の前処置ががプロゲステロン産生を促進せずに、むしろ抑制したこ とである。その説明として、UH 作用の発現には機能性をもつIt 。の存在が必要であり、その 背景には、4 −

AP

による持続的な

K

十チャンネル抑制が膜の脱分極を持続してCa2 十チャンネ ル不活化を引き起こすことが考えられるとしている。

  

本研究の発表に際して、実験方法、実験結果の解釈、さらに得られた結論の妥当性等に関 し本質的な質疑がなされた。主要なものをあげると、本間研一教授からは、パッチクランプ 法による細胞内環境変化やEG1 、A による細胞内Ca2 +濃度の固定が実験結果に与える影響を無 視できるのか、IH が産生するcAMP による蛋白キナーゼ活性化の経路を考えなくても良い のか、藤本教授からは、発現してくるK 十電流に細胞差がみられる理由はなにか、卵胞に あっては顆粒膜細胞は集団として機能しているから、細胞集団として膜電位固定による電流 解析が出来ないのか、得られた結果の臨床的意義はなにか、牧野田助教授からは、性周期に 関連してK 十電流発現に差異は観られないか、また、プ口ゲステロン産生との関連はどう か、菅野教授からは、この領域における最近の進展はなにか、K 十チャネルプロッカーによ るホルモン産生抑制の機序は、などである。申請者は未発表データや豊かな学識を駆使して これらの質問に適切に解答し得た。

  

発表終了後に、主査および2 名の副査は審査委員会を開催し、本研究の新規性、実験方法

の妥当性、実験結果の信頼性、結果の解釈と結論に至る論理の妥当性などについて審議した

結 果 、 い ず れ も 水 準 を 越 え て い て 、 高 く 評 価 し 得 る と の 判 定 が な さ れ た 。

  

本研究はブ夕培養顆粒膜細胞の膜電流系を解析して、この細胞の生理機能であるプロゲス

テロン産生機構との関連に関し妥当な仮説を提唱したものである。審査員一同は、本研究が

この領域の研究に重要趣示唆を与え、今後の研究の発展に寄与するところが大きいと評価

し 、申請者 が博士( 医学)の 学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

参照

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