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博士(医学)山本 真 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)山本   真 学位論文題名

持続低酸素負荷時のヒト循環,呼吸応答

―とくに内因性アデノシンの役割について−・

学位論文内容の要旨

     研究目的

   ヒトあるいはネコなどの動物においては,吸入酸素濃度10 %程度の低酸素ガスを20 一30 分間吸入すると換気は最初の数分で最大に達した後に徐々に減少して一定のレベルで安定 する.この低酸素換気応答の二相性は主に動物実験の成績から末梢化学受容体を介する換 気増大と中枢性の興奮性/抑制性神経伝達物質の変化による換気抑制によって生ずると考 えられている.一方,心拍数も低酸素負荷により増加するが,この換気の二相性変化に伴 ってどのように変化するかは検討されていない.もし,低酸素負荷中の心拍数増加が肺伸 展受容体反射によるとすれば、後半の換気抑制に伴って心拍数も低下するであろう.アデ ノシンはプリンヌクレオシドで,虚血あるいは高度低酸素で組織内濃度は上昇する.生理 活性が高く,呼吸調節に関しても外的投与で換気に影響を与えることが知られている,し かし,ヒトで内因性アデノシンが低酸素負荷時の呼吸循環調節に関与しているか否かは不 明である.そこで,本研究は健常者を対象として,まず第一に20 分間の低酸素負荷中(動 脈血酸素飽和度Sa02=80 %)の換気及び心拍数の相互作用を解析し,次に低酸素換気・心 拍数応答における内因性アデノシンの関与を検討した.

     対象と方法

   被験者は仰臥位でマウスピースを介して自発呼吸した.Sa02 が98 %から80 %に低下す るように約6 分間かけて徐々に低酸素ガスを負荷し,その後約20 分間は呼気終末PC ○2 を 一定に保ちながら、Sa 〇2 が80 土1 %以内に維持されるよう吸入気ガス濃度を調節した.

(実験1 )対象は健常若年男性22 名.前半の漸減性低酸素負荷に対する換気および心拍 数 応答 の評価 はSaQ2 低 下に対 する 換気 増加 (AVE) と心拍数増加(△HR) を直線回帰 して,その傾きAVE/ △ Sa02 と△HR/ △ Sa02 で行なった.持続低酸素負荷中の評価は,

Sa 〇 2 が 80 % に 達 し たの ち の 最 初 と 負 荷 最 後 の 各々 2 分 間 の 平均 値を比 較し た.

( 実験 2 ) 対象は健常若年男性 9 名.ジピリダモール(0.5mg/kg) あるいは生理食塩水

のいずれかを前投与し,実験1 と同様の低酸素負荷試験を2 日間にわたり無作為二重盲検

法で施行した.ジピリダモールはアデノシンの細胞内取り込みを抑制し、組織での細胞外

アデノシンの濃度を高め,その作用を強めることが期待される.応答の評価は漸減性低酸

素負荷については実験1 と同様に行ない,持続低酸素負荷中のデータはSa02 が80 %であ

る初期と負荷中期と負荷最後の各々2 分間の平均値で比較した.9 名中4 名で,さらにジ

ピリダモール投与前にアデノシン受容体拮抗薬であるアミノフィリンの投与(初めに

5mg/kg 静注し,以後0.5mg/kg/h の速度で維持)を行ない,ジピリダモールの効果が消

失するか否かを検討した.

(2)

    結果

( 実験1) 全被 験者の平 均でみる と換気も 心拍数も漸 減性低酸 素負荷後 に最大値 に達した あと ,徐々に低 下するい わゆる二 相性反応 を呈した .しかし ,漸減性低酸素負荷に対する AVE/△Sa02と △HR/△Sa〇2の 両 者 間 に は 相 関 が な か っ た(r=0.38,NS), 持 続 低酸 素 負 荷 時 の 換 気 の 低 下 分 と 心 拍 数 の 低 下 分 に も 相 関 が な か っ た(r− ―0.31,NS) .

(実 験2)ジピリ ダモール の前投与 は△VE/△Sa〇2を有意に 高めた( コント口ール―0.35 士0.131/mm/%vsジピリダ モール−0.70土0.251/mm/%,pく0.05).一方,持続低酸素 負荷中の換気の変化はコントロールでは中期に90.2土8.3%,最後に78.7土9.2%と低下し たのに対し,ジピリダモール前投与の場合にはそれぞれ68.4土4.3%,56.1土7.2%とより換 気の 抑制が強く起こった(pくO.01,p 0.07).心拍数についてはジピリダモールは,安 静 室 内 気 吸 入 時 の 値 を 有 意 に 高 め た が (70土3beat/mimvs85土5,pく0.05) , △HR/

△Sa02にも 持 続 低酸 素 負荷 中 の 心拍 数 につい ても,対照 とは有意 差を認め なかった .な お, 血圧はコン ト口ール 実験日の 低酸素負 荷最後の 時点で拡 張期圧が前値に比較して低値 をと った以外に は,両実 験日とも 全く変動 がなかっ た.アミ ノフィリンの前投薬は被験者 4例 い ずれ に 対 して も ,ジ ピ リ ダモ ー ルの 換気応答に 対する効 果(とく に2相性応 答)を 減弱 あるいは消 失させた .同様に ジピリダ モールに よる安静 時心拍数増加もアミノフィリ ン前投与は減弱あるいは消失させた.

    考察

  急性 の 低酸素 負荷に対 する心拍 数増加は 従来よりSa〇2の低下に 対して直 線的であ るこ とが 知られてい る.その 機序は肺 伸展受容 体反射, 大動脈小 体を介する反射,交感神経系 の関 与,循環中枢を介する応答等が指摘されているが,主たる機序についての定説はない.

また ,頚動脈小 体を介す る反射や 洞結節に 対する直 接効果に よる心拍数抑制機序も存在す る, もしも,こ の中で肺 伸展受容 体反射が 最も優位 に働いて いるとすると低酸素負荷に対 し て換 気 の 変化 に 追 従す る はず で あ る. 本研究の結 果は,漸 減性低酸 素負荷に 続く20分 間の 持続低酸素 負荷に対 して,心 拍数は換 気と同様 に最高値 をとった後,徐々に低下する こと を示した. しかし、 応答のバ ターンは 類似して いても, 漸減性低酸素負荷に対する応 答も 持続低酸素 負荷時の 低下の程 度も換気 と心拍数 の変化に は相関が認められなかったこ とか ら,低酸素 負荷時の 心拍数応 答に肺伸 展受容体 反射が最 も優位に働いているとする可 能性を否定した.

  ジピ リダモール は常用量 でアデノ シンの細 胞内取り 込みを抑 制して細胞外アデノシン濃 度を 上昇させ, 結果的に 内因性ア デノシン の作用を 強めるこ とが知られている.一方,組 織中 のアデノシ ン濃度は 虚血や高 度の低酸 素血症で 上昇する ことが動物実験によってこれ まで 繰り返し明 らかにさ れている .さらに ,アデノ シンは呼 吸調節の面では外的に投与す ると 末梢化学受 容体の興 奮を強め ,脳室内 投与によ り換気を 抑制する.本実験の結果は,

ジピ リダモール の前投与 により初 期の低酸 素換気応 答が高め られ,その後の持続低酸素負 荷に 対する換気 抑制現象 が顕著と なったこ とから, 内因性ア デノシンは低酸素負荷に対し て初 めに末梢化 学受容体 を刺激す るように 働き,そ の後に中 枢において換気を抑制するよ うに 作用したと 解釈する ことがで きる.こ の解釈は ,アデノ シン受容体の拮抗薬であるア ミノ フィリンを 前処置す ることに よルジピ リダモー ルの効果 が消失したことからも支持さ れる,

  アデ ノシンの循 環系に対 する作用 には,末 梢血管拡 張作用, 房室結節の伝導時間延長作 用, 洞房結節の 抑制作用 ,迷走神 経刺激作 用などが ある.さ らに末梢化学受容体を介する 間接 的な心拍数 ・血圧調 節作用の 機序もあ りうる. 本研究で ジピリダモール前投与による 心拍 数の変化が 安静時室 内気吸入 時の値に だけ認め られ,低 酸素負荷中の変動バターンに は影 響を及ぽさ なかった ことは, 内因性ア デノシン が心拍数 制御に関与していないという こと ではなく, むしろ, 低酸素負 荷中の内 因性アデ ノシンの 心拍に及ぽす効果が一方向で

(3)

はないということを意味しているかもしれない.

     結語

   健常者を対象にSa 〇2=80 %を目標とする漸減低酸素負荷とそれに続く20 分間の持続低酸 素負荷を行なって以下の知見を得た.

1 .換気と同様に心拍数は初めに最大値をとった後,徐々に低下する.しかし,換気と心 拍数の変動には相関がないことから低酸素負荷に伴う心拍数変動に肺伸展受容体反射が主 として関与している可能性は少ない.

2 .低酸素換気応答の修飾因子として,内因性アデノシンは末梢性にも中枢性にも関与し ている可能性がある.

3. 低 酸 素 心 拍 数 応 答 に お け る 内 因 性 ア デ ノ シ ン の 役 割 は 一 定 し て い な い .

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

持続低酸素負荷時のヒト循環,呼吸応答

―とくに内因性アデノシンの役割について一

  一 般 に 酸 素 濃 度10% 程 度 の 低 酸 素 ガ ス を20‑30分 間 吸 入 す る と 、 換 気 は 最 初 の 数 分 で 最 大 値 に 達 し た 後 に 徐 々 に 減 少 し て 一 定 の レ ベ ル で 安 定 す る 二 相 性 反 応 を呈 す る 。こ の 換 気 の 二 相 性 反 応 は 、 主 に 動 物 実 験 の 成 績 よ り 末 梢 化 学 受 容 器 を 介 す る 換 気増 大 と 中枢 性 の 興 奮 性 / 抑 制 性 神 経 伝 達 物 質 の 変 化 に よ る 換 気 抑 制 に よ っ て 生 ず る と 考 えら れ て いる 。 心 拍 数 も 低 酸 素 負 荷 に よ り 増 加 す る が 、 動 物 実 験 で は 肺 伸 展 受 容 体 反 射 が 心拍 数 増 加の 主 因 で あ る と の 報 告 も あ る 。 本 研 究 で は ヒ ト で 持 続 低 酸 素 負 荷 時 の 心 拍 数 変 動が 換 気 の変 化 に 追 従 す る か否 か を 検討 し 、 低酸 素 時 の 心拍 数 増 加へ の 肺 伸展 受 容 体反 射 の 関与 を 検 討し た ( 研 究1) 。 動 物 実 験 で は ア デ ノ シ ン は 高 度 低 酸 素 で 脳 組 織 内 濃 度 が 上 昇 し 、 低 酸 素 換 気 応 答 へ の 関 与 が 示 唆 さ れ て い る 。 そ こ で 内 因 性 ア デ ノ シ ン の 持 続 低 酸 素 負 荷時 の 換 気及 び 心 拍 数 応 答 へ の 役 割 を ヒ ト で 検 討 し た ( 研 究2) 。 研 究1の 対 象 は 健 常 若 年男 性22名 。 動 脈 血酸 素 飽 和 度(Sa02) 80% に 低 下 す る よ う に 徐 々 に 低 酸 素 ガ ス を 負 荷 し 、 そ の 後 約20分 間 は Sa02を80前 後 に 維 持 さ せ た 。 応 答 の 評 価 は 二 相 性 反 応 の 特 徴 を 考 慮 し て 、 前 半 のSa02を 漸 減 性 に 低 下 さ せ た 部 分 ( 第 一 相 ) と 持 続 低 酸 素 を20分 間 持 続 さ せ た部 分 ( 第二 相 ) に 分 け て 行 っ た 。9名 に は ア デ ノ シ ン の 細 胞 外 の 濃 度 を 高 め 、 そ の 作 用 を 強 め る こ と が 期 待 さ れ る ジ ピ リ ダ モ ー 丿 レ(0.5mg瓜g) あ るい は 生 理食 塩 水 を前 投 与 し、 同 様 の低 酸 素 負 荷試 験 を2日 間 に わ た り 無 作 為 二 重 盲 検 法 で 施 行 し た ( 研 究2) 。9名 中4名 に ジ ピ リ ダ モ ー ル 投 与 前 に ア デ ノ シ ン 受 容 体 拮 抗 薬 で ある ア ミ ノフ ィ リ ンの 投 与 (初 め に5m餅 (g静 注 し 、 以 後O.5mg瓜gmの 速 度 で 維 持 ) を 行 な い 、 ジ ピ リ ダ モ ー ル の 効 果 が消 失 す るか 否 か を 検討 し た 。 全22名 の 平 均 で は 換 気 も 心 拍 数 も 低 酸 素 負 荷 初 期 に 最 大 値 に 達 した 後 、 徐々 に 低 下 す る 二 相 性 反 応 を 呈 し た 。 し か し 、 第 一 相 の 換 気 及 び 心 拍 数 の 応 答 も 第 二相 の 換 気及 び 心 拍 数 の 減 少 分 に も 有 意 相 関 が な か っ た ( 研 究1) 。 ジ ピ リ ダ モ ー ル の 前 投 与 は 全 例 で 低 酸 素 換 気 応 答 を 有 意 に 高 め た (pくO.05) 。 一 方 , 持 続 低 酸 素 負 荷 中 の換 気 の 変化 は ピ ー ク値 に 対 し て% 値 で 表す と ジ ピリ ダ モ ー ´レ で 中 期に 有 意 に減 少 さ せ(pく0.01)、 負 荷 最 後に

夫 郎

盛 菊

上 野

川 菅

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

はコント口ールと有意差がなかった(p=0.07)。アミノフィリンの前投与はジピリダモ ールの第ー相、第二相の低酸素換気応答に対する効果を減弱させた。心拍数についてはジ ピリダモールは,安静室内気吸入時の値を有意に高めたが(pく0.05)、第一相及び第二 相の心拍数の変動のいずれにも対照と有意差を認めなかった。アミノフィリン前投与は安 静時心拍数増加も消失させた(研究2)。本研究をまとめると低酸素負荷を持続させると 心拍数は換気と同様に二相性反応を呈するが、漸減性低酸素負荷に対する応答も持続低酸 素負荷時の低下の程度も換気と心拍数の変化に有意相関がなかった。ヒ卜では低酸素負荷 時の心拍数増加に肺伸展受容体反射が主因ではないと結論した。ジピリダモー´レの前投与 により持続低酸素負荷時の換気増大反応が高められ、その後換気抑制現象が顕著となった。

さらにアミノフィリン前処置によルジピリダモー´レの効果が消失したことから内因性アデ ノシンは低酸素負荷時の換気応答の修飾因子として末梢化学受容器の興奮と中枢性換気抑 制の両者に関与している可能性を考案した。ジピリダモールの前投与は低酸素負荷中の心 拍数変動パターンに影響を及ばさなかったことより、内因性アデノシンの低酸素負荷中の 心拍数に及ばす効果が一方向ではないと考案した。

  審査にあたって、副査福島教授から、1)迷走神経を介する肺伸展受容体反射が心拍数 を増加させる機序、2)低酸素換気応答の二相性の解釈について質問があった。次いで副 査菅野教授より、1)標本集団の不均一性、2)低酸素感受性の決定因子について質問があ った。最後に主査川上教授から低酸素換気応答へのアデノシン関与の評価の妥当性につい て質問があった。これらの質疑に対し申請者は、肺伸展受容体反射で迷走神経を介して心 臓抑制性中枢を抑制する機序と呼吸調節中枢への入カが血管運動中枢ヘ放散する機序が存 在することを回答した。また他の動物実験で低酸素に対する二相性換気応答の換気の増加 部分と減少部分で機序が異なることが示されており、分けて解析することの意味づけを回 答した。また標本はランダムに抽出したものであること、低酸素換気応答は個人でばらつ きが大きぃこと、またその決定因子のーっとして遺伝要因があることを参考文献の引用に より回答した。またジピリダモールが低酸素換気応答の増大部分と減少部分の双方に影響 を与えた結果に考察を加え回答した。その他の質疑においても申請者は、質問者を概ね納 得させる妥当な回答を行なった。

  以上より、審査員一同は、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有す るものと判定した。

参照

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