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博士(医学)藤原幸雄 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)藤原幸雄 学位論文題名

糖尿病性網膜症の遺伝子発現解析

→ マ ウ ス 酸 素 誘 導 網 膜 症 の 遺 伝 子 発 現 解 析 ―

学位論文内容の要旨

  糖尿病網膜症は,腎症および神経症とともに微小血 管症に分類される重大な糖尿病合 併症の―つである.糖尿病網膜症は,高血糖に起因す る血管障害により網膜組織に虚血 状態 が引 き起 こさ れ, それ によ り血 管新 生が 誘導 さ れる.VEGFが虚血誘導性の網膜血 管新生において中心的な役割を果たすと考えられてお り,近年,VEGFを標的とした治療 薬の開発がすすめられている,しかし,この虚血性血 管新生の発生機序はいまだ不明な 点が多い.

  今回我々は,虚血性網膜血管新生を示す動物モデル である新生児マウスによる酸素誘 導網膜症モデルを用いて糖尿病網膜症の血管新生にか かわる新たな遺伝子を探索し,病 態との関連性を解析することを目的として実験を行っ た.

  C57BL/6 Cr Slcマウス新生児を母動物とともに生後7日から12日までの連続5日問75% 酸素分圧下に暴露し,その後通常の酸素分圧下で飼育 した.75%酸素分圧下に暴露した マウス新生児にFITC‑dextran/saline溶液を灌流し,網膜のwhole‑mount標本を作製したと ころ,生後17日網膜には,視神経乳頭周囲に無灌流部 位が認められ,その周辺部には新 生血 管の 塊が 顕著 にみ られ た, さら に, 網膜 のHE染 色組織標本において生後15日以降 内境 界膜 を越 えて 硝子 体内 に存 在す る新 生血 管が 顕 著に認められた,CD31抗体による 免疫 染色 にお いて も生 後15日以 降硝 子体 内の 新生 血 管像が顕著であった,生後12日の 75% 酸 素 分 圧 暴 露 終 了 後0,12お よ び24時 間 に お け るVEGFのmRNA発 現 は 時 間 の 経     ―524―

(2)

過と と もに増 加を示 し,暴露 終了後24時間では0時間 に比し 発現比は ほぼ2倍にま で達 した,以上より,酸素誘導網膜症モデルは適切に作成されていると判断した,

そ こ で 生後17日のマ ウス新生 児網膜 における75%酸素 分圧下暴 露と通 常酸素分 圧下 (20%02)でのmRNA発現をDifferential display法により網羅的に比較検討した,その結果,

75% 酸素分 圧下暴露 により発 現が増 加したバ ンドが18個,逆に発現が減少したバンドが 17個 であり,ホモロジ―検索により発現が増加したバンドから12個,減少したバンドから 15個 の遺伝 子を同定 したさら に,これら計27個の遺伝子の発現変化を real time RT‑PCR に より定量的に再確認した.その結果,75%酸素分圧下暴露により発現が増加した遺伝子 は4個で ,逆に 発現が顕 著に減 少した遺 伝子が2個で あった,既知の遺伝子との相同性を 検 索したと ころ, 発現が増 加した遺伝子として,ABIN2遺伝子が,また,発現が顕著に減 少 した遺伝 子とし て代謝型 グルタミン酸受容体6 (mGlu6)とヌクレオポリン54遺伝子が同 定できた,

  上 記3遺 伝 子は , い ずれ も 酸 素 誘導 網 膜 症と の 直接的 関連は 不明であ る,しか し,

ABIN2に関 しては, 血管新生 に関与することを強く示唆する報告がなされている,即ち,

ABIN2はTie2(Tyrosine kinase with Ig and EGF homology domains‑2)により活性化し,

NF‑だB阻害作 用を示す .また ,ABIN2はAngiopoietin・1の抗apoptosis作用に関与するこ と が報告されている,Angiopoietin‑lはTie2と結合し,PI31く/AktシグナルおよびMAPKシ グ ナル経路 により 血管新生 を誘導する,ABIN‑2はPI3IくノAktシグナル経路の上流で機能 しapoptosisを 阻害する ことが 示唆されている,したがって,糖尿病網膜症における血管 新 生を理解 するう えで,ABIN‑2が血管新 生にど の様な機能を有しているかより詳細な検     ●

討が必要と考えられる,

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教 授    上出 利光 副査    教授   小野江和則 副査    教 授    大野 重昭

学 位 論 文 題 名

糖尿病性網膜症の遺伝子発現解析

― マ ウ ス 酸 素 誘導 網膜 症の 遺伝 子発 現解 析ー

  糖尿病網膜症は、腎症および神経症とともに微小血管症に分類される重大な糖尿 病合併症のーつである。糖尿病網膜症は、高血糖に起因する血管障害により網膜組 織に虚血状態が弓jき起こされ、それにより血管新生が誘導される。血管増殖因子 (VEGF)が 虚血 誘導 性の網膜血管新生において中心的な役割を果たすと考えられて おり、近年、VEGFを標的とした治療薬の開発がすすめられている。しかし、この虚血 性血 管新 生の 発生 機序はいまだ不明な点が多い。本研究は、虚血性網膜血管新生 を示す動物モデルである新生児マウスによる酸素誘導網膜症モデルを用いて糖尿病 網膜症の血管新生にかかわる新たな遺伝子を探索し、病態との関連性を解析するこ とを目的として実験を行った。C57BU6 Cr Sicマウス新生児を母動物とともに生後7 日から12日までの連続5日間75}6酸素分圧下に暴露し、その後通常の酸素分圧下で 飼育した。75%酸素分圧下に暴露したマウス新生児にFITC‑dext他n/saIjne溶液を灌 流し、網膜のwhole一mount標本を作製したところ、生後17日網膜には、視神経乳頭周 囲に無灌流部位が認められ、その周辺都に|ま新生血管の塊が顕著にみられた。さら に、 網膜 のHE染色 組織標本において生後15日以降、内境界膜を越えて硝子体内に 存在 する 新生 血管 が顕著に認められた。CD31抗体による免疫染色においても生後 15日 以降 硝子 体内 の新 生血 管像 が顕 著で あっ た。生 後12日の75臓 素分 圧暴 露終 了後0、12お よび24時間 にお けるVEGFのmRNA発 現|よ時間の経過とともに増加を 示し 、暴 露終 了後24時間では0時間に比し発現比はほぼ2倍にまで達した。以上よ り、酸素誘導網膜症モデルは適切に作成されていると判断した。そこで生後17日のマ ウス 新生 児網 膜に おける75X酸素分圧下暴露と通常酸素分圧下(2偽02)でのmRNA 発現をDi偽re觸a書dispIay法によ川罔羅的に比較検討した。その結果、7X酸素分圧下 暴露により発現が増加したバンドが18個、逆に発現が減少したバンドが17侶であり、

ホモロジ一検索により発現が増加したバンドから12個、滅少したバンドから15個の遺

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伝子を同定した。さらに、これら計27個の遺伝子の発現変化をrealtime RT‑PCRによ り定量的に再確認した。その結果、75%酸素分圧下暴露により発現が増加した遺伝子 は4個で、逆に発現が顕著に減少した遺伝子が2個であった。既知の遺伝子との相同 性を検索したところ、発現が増加した遺伝子として、ABIN2遺伝子が、また、発現が顕 著に滅少した遺伝子として代謝型グルタミン酸受容体6 (mGlu6)とヌクレオポリン54遺 伝子が同定できた。このうち、ABIN2に関しては、血管新生に関与することを強く示唆 す る報告が なされている。即ち、ABIN2はTie2(Tyrosine kinase with Ig and EGF homology domains−2)により活性化し、.NF‑KB阻害作用を示す。また、ABIN2は Angiopoietin−1の抗apoptosis作用に関与することが報告されている。Angiopoietin−1 はTie2と結合し 、P13K/Aktシグナ ルおよびMAPKシグナル経路により血管新生を誘 導する。ABIN2はPI3K/Aktシグナル経路の上流で機能しapoptosisを阻害することが 示唆されている。したがって、糖尿病網膜症における血管新生を理解するうえで、

ABIN2が血管新生にどの様な機能を有しているかを今後より詳細に検討することが必 要と考えられる。発表に当たり、副査の大野教授より、今回の研究に用いた動物モデ ル を糖尿病 網膜症のモデルとすることの根拠及びその妥当性、ABIN2の発現増加の 意義等について質問があった。次いで、副査の小野江教授より、糖尿病マウスモデル による解析の実施、高酸素ス卜レスによる影響等について質問があった。最後に、主 査 の上出教 授より、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いた管腔構造形成モデ ルと虚血性血管新生病態の類似性、in vitro虚血性血管新生モデルの情報および過 去 に報告さ れた糖尿 病網膜症の 網羅的遺 伝子発現解析結果との整合性について質 問があった。これらの質問に対して、申請者は自己のデータや糖尿病網膜症モデルお よびABIN2に関するこれまでの論文報告を弓1用し、概ね適切な回答をなし得た。この 論文は、糖尿病網膜症を含む虚血性網膜血管新生に関与することが示唆される新規 分子を詞定したことで高く評価され、今後の病態メカニズム解明および新規治療法開 発への応用が期待される。審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程に おける研鑽や取得単位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な 資格を有するものと判定した。

参照

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