博 士 ( 医 学 ) 櫻 井 宏 治
学 位 論 文 題 名
新 し い ヒ ト 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル ス の 分 子生 物 学 的 解 析
学 位 論 文 内 容の 要 旨
Iは じめに
すべて の脊 椎動物 の染色 体上にtユ ,レト 口ウ イルス様構造を持つ遺伝子が多数存在し,これら は内 在 性 レ ト 口 ウイ ル ス と 呼 ばれ て い る 。 内在 性 レ ト 口 ウイ ル ス は プ ロ ウイ ル スDNAの 形で 通常の 遺伝子 と同 様,生 殖細胞 を通じ て親か ら子 ヘメン デルの 法則に 従い,宿主の遺伝子として 安定な 形で継 代さ れる。 この内 在性レ トロウ イル スの研 究は, マウス などの系で研究が進み,内 在性プ ロウイ ルス と感染 性レト 口ウイ ルスと の組 み換え により 発癌性 を獲得した例や変異誘発因 子とし て働く 例が 知られ ており ,癌化 におけ る1っの要 因に なって いる。 さらに ある 種のマ ウス におい ては自 己免 疫疾患 への病 因的関 与も指 摘さ れてい る。し かし, ヒトの場合,内在性レト口 ウイル スが癌 や自 己免疫 疾患な どの病 因に関 与し ている という 直接的 証拠はまだ見っかっていな い。ま た,ヒ ト内 在性レ ト口ウイルスは,今までのところごく少数しか, その遺伝子クローニン グが な さ れ て い ない の が 現 状 であ る 。 本 研 究で は , ヒ ト 内在 性 レ ト口ウ イル スERV3と ク口ス ハイブ リダイ ズす る新し いヒト 内在性 レトロ ウイ ルスの 存在を 見出し ,そのいくっかの遺伝子断 片 を 単 離 す る こ と に 成 功 し た 。ERV3は チ ン パ ン ジ ー の 内 在 性 プ ロ ウ イ ル ス (CH 2)のpol 領域を プ口ー ブと してヒ トの全 染色体 ライブ ラル ーより 単離さ れたC型レ トロウ イル ス関連 のプ 口 ウ イ ル ス で あ り , ヒ 卜genome中 にハ プ 口 イ ド あた り1コ ピ 一存 在 し て い る 。こ のenv領 域 をプ 口 ー ブ に 用 いて ヒ トgenomicラ イ ブ ラ リ ― より ,4個 の 新し い 内在 性レ卜 ロウイ ルス遺 伝 子断片 を単離 し, 部分的 に塩基 配列を 決定し たの で報告 する。
n材 料 ,方 法 お よ び 結 果 1)サ ザン ブ 口 ッ テ ィン グ 解 析
約30人 の 同 一 家計 の 日 本 人 末梢 血 リ ン パ 球か ら , 常 法 に 従っ て 高 分 子DNAを 抽 出し た。 そ の う ち12〃gを 制 限酵 素 (EcoRIま た はBamHI)で 消 化 し たも の をO.9%アガ ロ― スゲル にて,
25V,36時 間 泳 動し, ナイ 口ンメ ンブレ ンにブ 口ッ ティン グした 。プ口 ―ブに は1コピー 形ヒ 卜
内在 性レ 卜ロ ウ イル スERV3のenv領域1.7kbを用 いた 。こ の25ngをrandom primer法に より,3゜Pで標識し,常法に従ってサザンハイブリダイゼーションを行った。washの条件は2 xSSPE,O.1%SDSで室温10分2回,1xSSPE,O.1%SDSで65℃15分1回(low stringency),
さらに,high. stringencyの場合は0.lxSSPE,0.1%SDSで65℃15分1回行った。high strin・ gencyの 条 件 で 行 っ たRFLP解 析 で は , 白 人 同 様 ,BamHI―20kb, EcoRI―5kbの 単一 の バン ドが 認め ら れた 。一 方,low stringencyの条件で同様に行ったRFLP解析では,ERV3 とク口スハイブリダイズする多数のバンドが観察された。しかも,これら多数のバンドの一部に は個体間で多型が存在し,BamHIを使用した場合には,6.Okb,5.Okbの位置に,EcoRIでは,
4. 3kb.4.Okbの位置に多型が観察された。また,多型を示すバンドのうち,BamHIー6.Okb, EcoRI―4.3kb,4.Okbのバンドは,検索したすべての男性にのみ存在し,Y染色体上にあるこ とが明らかとなった。
2)遺伝子ライブラリーの作製とスクリーニング
ヒト男性末梢血リンパ 球由来のgenomic DNAを,制 限酵素EcoRIを使用して完全消化し,
7. Okb〜1.5kbの大きさのDNA fractionをAgt10にライゲーションさせ,in vitro packag― ingを行い,遺伝子ライブラリーを作製した。ERV3 envl. 7kbをプ口ーブとして,常法に従つ てplaque hybridizationを行い,陽性signalをいくっか確認した。さらに二次,三次スクリー ニングを続けて行い,4種類の純粋な遺伝子断片を単離した。これらの4個のクローンをSY― 1,SY―2,SY一3,SY一4と名づけた。
3)クローン化プ口ウイルスgenomeの存在様式
ヒ ト男 性お よび女性の末梢血リンパ球 から抽出したDNAをEcoRIで消 化し,1)と同様に して作製したメンブレン に対し,上記のSY―1,2,3,4のク口ーン化遺伝子断片をプ口一 ブとして,サザンハイブ リダイゼーションを行い, その存在様式を確認した。SY亠1では,
EcoRI−4.Okbの1本のバ ンドが男性においてのみ認 められ,Y染色体上にマップされた。SY
‑2では,EcoRI一4.4kbの1本のバンドが男性,女性 ともに認められ,常染色体上に存在す ることが明らかになった 。SYー3では,EcoRI一2.lkbの1本のバンドが男性,女性ともに認 められるとともに,それとクロスハイブリダイズするいくっかのバンドも認められた。またこれ らのクロスするバンドは ,ERV3 env領域とクロスするバンドの存在様式と異なっていた。SY
―4では,多数のバンドが認められマルチコピ一型の内在性レトロウイルスであるとともにいく っかの多型も存在した。
4)単離したプ口ウイルスgenome塩基配列の決定とその解析
単離した遺伝子断片をM13mp 18, 19にサブク口ーニングし,single strand DNAを回収し て,シーケン ス時のtemplate DNAに用いた 。シーケンス反応は,Sequenase Ver.2.0を使 用し,Sanger法に従って行った。単離した プ口ウイルス遺伝子断片のDNA塩基配列の連結や 相 同性 検索 ,お よび制限酵素地図作製 はDNASISソフトウェアを使用 して行った。SY―1, SYー2,SYー4tま,部分的にそれぞれ約200bpにっいてsense strandの みをシーケンスし,
同 時に 相同 性検 索も行った。Y染色体上 にあるSY―1にっいてfま,ERV3のenv(1650bp−l 820bp)と72.6%相同性を有していた。また,ヒトで唯一発見されているY染色体上の内在性レ ト ロウ イル スNP―2のenv領 域(430bp−600bp)と55.1%の 相 同性を 有していた。SY−2で は,ERV3pol領 域(lbp―170bp) (71.9%) の他にChimpanzee endogenous retrovirus pol 領域(3 pb―170bp)(77.9%),Baboon endogenous retrovirus pol領域(4880−5050bp) (61.O%),Moloney murine leukemia virus pol領域(320bp ‑ 490bp) (57.3%)等と相同 性を有していた。SY―4は,レチノイン酸で転写が誘導されることが知られているマルチコピ一 型 内在 性レ ト口 ウ イル スRRHERV―1のpol領域(2105bp―2270bp)と 高い相同性(83.8%)
を示した。SY−3にっいては,その1.8kbにっいて,senseおよびanti―sense strandの両方 向からシーケンスを行い,その塩基配列を決定した。SYー3の各部分にっいて,相同性を有す るレト口ウイルスを検索したところ, ERV3 pol,envの領域,マルチコピ一型ヒト内在性レト 口 ウイ ルス ス4―1のpol領域,非ウイル ス型レトロポゾンであるU3small nuclear RNA(U 3 snRNA)のregulatory elementsとの相 同性が認められ,部位によ ってその相同性を有す る既知の遺伝子が異なっており,内在性レ卜ロウイルスと非ウイルス型レ卜口ポゾンからなるキ メ ラDNAで あっ た。 この ウイ ル スgenome中に は 長いopen reading frameは存在せず,ま たヒト胎盤や各種の培養細胞株を用いたノーザン解析でもその転写活性は認められなかった。`
5) Zoo blotを用いた進化遺伝学的解析
各 種の 哺乳 動 物(human,thesus monkey,Splague一Dawley rat,BALB/c mouse, dog,cow,rabbit)お よ びchicken, yeastのgenomic DNA各々8〃gをEcoRIで消 化し , 1)と同様にして電気泳動後,ブ口ッティングしたメンブレンに対し,単離したプ口ウイルス遺 伝 子断 片のSY―3を プ口 ーブ と して サザ ン解析を行ったところ,hum anとRhesus Monkey において,SY―3もしくは,それと近縁の 内在性レトロウイルスgenomeが存在したが,それ より下等の動物には存在しなかった。
m考 察
本 研究 で は ,1コピ 一 型 ヒ ト 内在 性 レ 卜 ロ ウイ ル スERV3を 使 用 し て, こ れ と 相 同性 を 示 す 新し いヒ ト内在 性レト ロウイ ルスの 断片 をクロ 一二ン グし検 討し た結果 ,以下のことが明らかと なっ た。
1.1コ ピ ー 型 ヒ 卜 内 在 性 レ 卜 口 ウ イ ル スERV3と ク口 ス ハ イ ブ リダ イ ズ す る 多く の 内 在 性 レ ト ロ ウ イル ス の 存 在 を確 認 し た 。ERV3と 近 縁の こ れ ら の レト ロ ウ イ ルスの 一部は 個体間 で多 型 性 を 有し て い た 。 この 内 在 性 レ ト 口ウ イ ル ス の 多型 性 を 利 用 してRFLP解 析を行 い,自 己免 疫疾 患な どの患 者集団 と健常 人集団 での その存 在様式 の違い を検 索する ことにより,疾患に関与 し て い る内 在 性 レ 卜 口ウ イル スをっ きとめ るとい う、 アプ口 一チも 有効で あると 考え られた 。 2. 上 記の 内 在 性 レ ト口 ウイ ルスの うち4種類 にっ いて, その遺 伝子断 片の ク口一 二ング に成功 し た 。SY―1はY染 色 体 上 に の み存 在 し , 他 の染 色 体 上 に は存 在 し な か った 。 ま た , 同 じY染 色 体 上 に存 在 す る 内 在性 レ ト ロ ウ イ ルスNP―2と 相同性 を有し ,他の 染色 体上に は,両 者とも 組 み込ま れては いな いとい うこと は,Y染色 体の起 源を 考える 上で興 味がも たれる 。マ ウスの 場 合 にもY染色 体上に マップ され たレト 口ウイ ルスの 報告 がいく っかあ るが, それら は他 の染色 体 上 に も 分 散 し て お り ,Y染 色 体 に の み 存 在 す る 例 は , ヒ ト のSY―1とNP―2の み で あ る 。 SY―2は , そ の 相 同 性 め 検 索 か ら ,ChimpanzeeやBaboonな ど の 霊 長 類 の他 に マ ウ ス の内 在 性レ 卜口 ウイル スの塩 基配列 とも相 同性 を有し ており ,この ウイ ルスが 進化における比較的初期 の段 階で 哺乳動 物のgenomeに組み 込まれ たも のと推 測され る。
3, SY―3は 内 在 性 レ 卜口 ウ イ ル ス と非 ウ イ ル ス 型レ ト ロ ポ ゾ ンか ら な る キ メ ラDNAで あっ た 。 こ の よ う な キ メ ラDNAがgenome内 に 存 在 し て い た と い うこ と は , 内 在性 レ ト ロ ウ イル ス と 非 ウ イ ル ス 型 の レ 卜 ロ ポ ゾン が 連 続 し た1っ のRNA分 子 と し て 転写 さ れ , 内 在性 レ ト ロ ウ イ ル スの 持 つ 逆 転 写酵 素 を 利 用 し て,genome中 を ト ラン ス ポ ジ ショ ンする 分子の 存在 も予 想 さ れ る。 ま た ,SY―3に は , さら に 近 縁 の 内在 性レト 口ウイ ルスが 存在 するこ とが確 認でき た ことか ら,SY―3をプ口 一ブと して, 遺伝子 ライ ブラリ ーをス クリー ニン グする ことに より,
未知 の内 在性レ ト口ウ イルス をク口 一ニ ングで きると 考えら れる 。その 中には,タンパク質まで 翻訳 され ,機能 分子と して作 用している内在性レト口ウイルスの存在も十分あり得ると思われる。
4. SY―3,あ るいは それと 近縁の レト 口ウイ ルスが ,ヒ卜 とサル のゲ ノムの 中にの み存在 し,
そ れ よ り 下 等 な 動 物 に1ま 存 在し な か っ た 。SY―3は進 化 の 比 較 的 最近 に な っ て ,霊 長 類 の genome中 に 内在 化 し た の であ ろ う 。 ま たこ の こ と は ウ イル ス の も つ種 特異的 感染性 を示 唆す る と 同 時に ,SY一3が か っ て は 感染 性 の レ ト 口ウ イルス であっ たこと をも 示して いると 考えら れる 。
学位論文審査の要旨
内在 性レ トロウ イルス は進化 の過 程にお ける外 来性レ ト口ウ イル ス感染 を示す 証拠と 考えられ てい る。ま たそ の構造 から考 え,内 在化後 も, 自己の 持つ逆 転写酵 素を 利用し てのレ トロトラン ス ポ ジ ショ ン に よ る 宿主 遺 伝 子 の 破壊 や ,LTRを プ ロ モ 一 夕ーと しての 下流に ある 宿主細 胞遺 伝 子 の 発現 異 常 , さ らに は , プ ロ ウイ ル ス の 構 造夕 ン パ ク で あ るgagやenvに 対 しての 抗体出 現に よる自 己免 疫疾患 の発症 など, ヒトの 発癌や奇形,自己免疫疾患などと結びっくのではナょい かと 推測さ れる 。
しか しヒ トにお いては ,内在 性レ トロウ イルス が何ら かの疾 患の 原因に 直接的 に関与 している かど うかは 不明 であり ,また 現時点 におい てク ローニ ングさ れてい る内 在性レ ト口ウ イルスの数 も限 られて いる 。その 様なレ ト口ウ イルス と疾 患との 関係を 探し出 すこ とは, 現時点 において論 理的 思考で 行う こと憾 困難で あり, 各々の 疾患 にっい て,数 多くの 内在 性レ卜 口ウイ ルスをラン ダム に検索 して いかざ るを得 ナょい 。本研 究は,上記のプ口ジェクトの一環として,新しいヒト内 在性 レト口 ウイ ルスの 遺伝子 クロー ニング をそ の目的 として 行った 。
そ の 結 果 ,1コ ピ 一 型ヒ 卜 内 在 性 レト 口 ウ イ ル スERV3を使 用 し て , こ れと 相 同 性 を 示す 新 しい ヒト内 在性 レト口 ウイル スの断 片をク ロ一 二ング し,そ の存在 様式 ,塩基 配列等 の解析から 以下 のこと が明 らかと ナょっ た。
1.1コ ピ ー 型 ヒ ト 内 在 性 レ ト ロ ウ イル スERV3と ク ロ ス ハイ ブ リ ダ イ ズ する 多 く の 内 在性 レ ト 口 ウ イル ス の 存 在 を確 認 し た 。ERV3と 近緑 の こ れ ら の レト 口 ウ イ ル スの 一 部 は個 体間で 多 型 性 を 有し て い た 。 この 内 在 性 レ トロ ウ イ ル ス の多 型 性 を 利 用 してRFLP解 析 を 行い ,自己 免 疫疾 患など の患 者集団 と健常 人集団 でのそ の存 在様式 の違い を検索 する ことに より, 疾患に関与 し て い る内 在 性 レ 卜 口ウ イ ル ス を っき と め る と いう ア プ 口 ー チ も有 効 で あ る と考 えられ た。
2. 上記 の 内 在 性 レ ト口 ウ イ ル ス のう ち4種類に っいて ,そ の遺伝 子断片 のク口 ーニ ングに 成功 し た 。SY―1はY染 色体 上 に の み 存 在し , 他 の 染 色体 上 に は 存 在し な か っ た 。ま た , 同 じY染 色 体 上 に存 在 す る 内 在性 レ ト 口 ウ イル スNP―2と 相 同 性 を 有し, 他の染 色体上 には ,両者 とも 組 み 込 まれ て いな い。こ のこ とは,Y染 色体の 起源を 考える 上で 興味が もたれ る。マ ウスの 場合
敬 暹
明
光
木 巻
沼
吉 葛
柿
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
にもY染色体上にマップされたレトロウイルスの報告がいくっかあるが,それらは他の染色体上 に も 分散 して おり ,Y染色 体に の み存 在す る例 は, ヒ 卜のSY―1とNP一2の みである。SY
―2は,その相同性の検索から,ChimpanzeeやBab oonなどの 霊長類の他にマウスの内在性 レト口ウイルスの塩基配列とも相同性を有しており,このウイルスが進化における比較的初期の 段階で哺乳動物のgenomeに組み込まれたものと推測される。
3. SY一3はそのenv遺伝子中に非ウイルス型レ卜口ポゾン様配列の挿入された内在性レト口 ウ イ ルス であ った 。SY―3でtままだ確認できて いないが,このような構造 の塩基配列が genome内に存在していたという ことから,ヒトのgenomeの中 には内在性レト口ウイルスと 非ウ イルス型のレトロポゾンが 連続した1っのRNA分子として 転写され,内在性レトロウイ ルス の持つ逆転写酵素を利用して,genome中をトランスポジションする分子が存在するとい う可 能性も否定できない。また,SY―3には,さらに近縁の内在性レトロウイルスが存在して いる ことが確認できたことから,SY−3をプローブとして,遺伝子ライブラリ―をスクリーニ ングすることにより,未知の内在性レトロウイルスをクローニングできると考えられる。その中 には,夕ンパク質まで翻訳され,機能分子として作用している内在性レト口ウイルスの存在も十 分あり得ると思われる。
4.SY―3,あるいはそれと近縁のレト口ウイルウスは,ヒトとサルのゲノムの中にのみ存在 し,それより下等な動物には存在しなかった。SY‑ 3は進化の比較的最近になって,霊長類の genome中に内在化した可能性がある。またこのことはウイルスのもつ種特異的感染性を示唆 していると考えられた。
ヒ卜内在性レト口ウイルスは今までのところごく少数しかその遺伝子クローニングがなされて いないのが現状であり,本研究において新たにク口一二ングされた上記のヒト内在性レトロウイ ルスか加わったことは,内在性レト口ウイルスの癌や自己免疫疾患などへの病因的関与を検索す る上で有意義なものと考えられる。
この口頭発表に対し,3人の教授より以下のような質問がなされた。葛巻教授からは,1)内 在性 レト口ウイルスの転写活性 の有無,2)RFLPを示した内在性レ卜口ウイルスの病因的意 義,3)内在性レ卜口ウイルスの起源にっいて,柿沼教授からは,内在性レ卜ロウイルスのホモ ロジ ―にっいて,細川教授から ,HTLV―1,HIV等の外来性レ ト口ウイルスと内在性レト口 ウイルスとのヒトにおける相互関係にっいての質問がなされたが,発表者は概ね適当な回答を 行った。また,その後,副査の柿沼,葛巻両教授との口頭試問においても,概ね適切な回答がな され,合格と判定された。
本研究は,ヒト原因不明の自己免疫疾患や脱髄疾患などにおける病因的役割の注目されている ヒト内在性レト口ウイルスにっいて,1コピー型内在性レト口ウイルスER¥T3と相同性を有す る新しい4っの内在性レト口ウイルス遺伝子断片をク口一二ングし,その存在様式,塩基配列を 決定したもので,今後,自己免疫疾患や脱髄疾患の原因追求に資するところ大なるものがあり,
博士(医学)の学位を授与するに値すると考える。