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博 士 ( 医 学 ) 和 田 雅 子 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 医 学 ) 和 田 雅 子

学 位 論 文 題 名

ミ コ バ ク テ リ ア 感 染症 に お け る 末 梢 血 T リ ンノ ヾ球 の分 析

は じ めに

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  結核 症はヒ ト型 結核菌 の感染 によっ て惹 起され る感染 症であ るが, 感染 したヒ トの約1割 が生 涯 のう ちに発 病に至 ると考 えられ てい る。ど のよう なヒト が, いつ, どのような条件下で,潜在 的 な感 染から 臨床的 な発病 へと進 展するかの問題は,結核の臨床にとっても結核対策の上からも,

も っ と も 重 要 な 問 題 で あ る に も 関 わ ら ず , ほ と ん ど 不 明 の ま ま 残 さ れ て い る 。   結 核 の 潜在 的 感 染 か ら発 病 へ の 進 展, 治 療 終 了 後 の再 燃 ,MOTT症 の成 立,ミ コバク テリ ア 感 染症 の難治 化など を規定 してい る宿 主側の りスク ファク ター の特定 を究極の目的として,結核 症 およ びMOTT症患 者、 リンパ 球サブ セット の分 析を行 なった 。.

1.材 料

  結 核 予 防会 複 十 字 病 院に 入 院 ま た は通 院 中 の 結核症 および ゛非定 型抗 酸菌症 。(MOTT症)70 才 未満 の患者 を対象 とした 。健康 正常 対照者 として ,結核 研究 所・複 十字病院職員,ならびに某 衣 料関 係の会 社の健 康な従 業員を 選ん だ。

2.方 法

  末 梢 静 脈 血 を 採 血 し , 全 血 溶 血 法 を 用 い てFluorescein isothiocyanate(FITC)お よ び Phycoerythrin (PE) で 標 識し た2種 類 の単 ク 口 ー ン 抗体 を 組 み 合 わせ て二 重染色 を行な い,

フ 口ー サイ卜 メトリ ーの分 析試料 とし た。

3.実 験結果

1)総白血 球,総 リンパ 球,Tリン パ球 およびBリ ンパ球

  総 リ ン パ球 数 は 両 患 者群 ともに 正常対 照群に 比較 すると 有意に 低下し ていた 。TおよびBリ ン パ 球の 実数は 両患者 群とも に低下 して いた。 総リン パ球に 対す る比率 は両患者群で軽度に低下し て いた が,T/B比は一 定に 保たれ ていた 。

2) CD4+お よびCD8゛Tリン パ球サ プセ ッ卜

  両 患 者 群 と も にCD4゛/CD8― お よ びCD4 ‑7CD8゛ サ ブ セ ッ ト の 実 数 は と も に正 常 対 照 群

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(2)

と比較して有意に低下していた。各サブセットの総リンパ球に対する比率は正常対照群と著しい 差はみられなかったが,個々の症例では正常対照群の平均値土2x標準偏差よりも高値を示す例 や,低値を示す例が多かった。CD4゛リンパ球の比率が正常範囲を越えて高値を示す例が結核 群で8.3%,MOTT症群で7.9%あり,正常範囲を下まわるものはそれぞれ,6.O%,10.5%あっ た。CD8゛の比率が高い例が結核群で7.1%,MOTT症群で7.9%あった。低値を示す例は両群 ともになかった。

  CD4/CD8比にっいては,正常値 を越えて高い例は結核群で は7.1%,低い例は1.2%,

MOTT症群ではそれぞれ7.9%,2.6%あった。

  CD4゛Tリンパ球ではLeu8゛とLeu8ーのサブセッ卜には両群 ともに有意差はみられなかっ た。CD8゛Tリンパ球ではCDllb゛のサブセットには有意差はみられなかったが,CDllb―サブ セットではMOTT症群が正常対照群と比較して有意に高かった。

3)活性化Tリンパ球

  IL―2―R陽 性お よびHLA―DR陽 性細胞は,総リンパ球に対 する比率でみても,総Tリン パ 球 と の 比 率 で み て も , 両 患 者 群 と も に 正 常 対 照 群 と の 差 は み ら れ な か っ た 。 4)臨床所見との関連

  X線上空洞の有無,広がりおよび化学療法後の排菌別にりンパ球のサブセットにっいて検討し たが ,結核病学会X線分類の広がり1と3で比較すると,広がり3はりンパ球の総自血球に対す る比 率,総リンパ球の実数,CD4゛,CD8゛Tリンパ球の実数が 広がり1に比較して有意に少 なかった。化学療法により排菌停止した群と持続排菌している群との間には有意差はみられな かった。

5)症例報告

  経 過を追ってFACS分析を行なっ た結核症,MOTT症それぞれ1例づっを示した。両患者と もに 経過中X線陰影の悪化に先立 ち総リンパ球,Tリンパ球お よびCD4゛Tリンパ球の著明な 滅少がみられた。

4.考察

  最近の免疫学の著しい進歩によって,結核の免疫においてはT細胞が重要な役割を演じている こと が明らかにされている。本研究で結核症およびMOTT症患者の総自血球に対するりンパ球 の 役割 が 滅少 して いた こ とは 諸家 の報 告と 一 致している。CD4 +/CD8―およびCD4 ‑/CD 8゛Tリンパ球にっいては,総リンパ球に対する比率でみた場合,軽度のCD4゛/CD8−の低下,

CD4 ‑/CD8゛の 増 加が みら れ, この 結 果CD4 /CD8比は患者群 でわずかの低下を示した。

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CD4 /CD8比 に っ いて は , 上 昇 して い る と い う報 告 と 低 下 し てい る と いう 報告 がみら れるが , このよ うな食 違い の原因 は,第 一に対 象患者 の違 いがも っとも 大きい 要因 と思われるが,第二に は試料 調整法 の違 いなど 技術上 の問題 もある と思 われる 。

  CD4゛/CD8―Tリ ン パ 球 の 実 数 は 結 核 患 者 群 もMOTT症 患 者 群 も 正 常 群 に 比 較し て 有 意 に 低下し ていた 。本 研究の ような 臨床研 究では 発病 の結果 リンパ 球系の 異常 が生じたのか,リンパ 球系の 異常が 原因 となっ て発病 ,重症化が起こったのかを一義的に決定することは困難であるが,

例 と し て 示 し た2症 例 で はTリン パ 球 , 特 にCD4゛Tリ ン パ 球 の 減少 が 先 行 し , この よ う な 免 疫 能 の低 下 を 背 景 とし て 悪 化 が 起こ っ た と 考 え るの が 妥 当 で ある と 思 わ れ る。CD4−CD8゛T 細 胞 の 実 数 は , 結 核 患 者 群 もMOTT症 患者 群 も 正 常 群 に比 し て 有 意 に低 下 し て い た。CD8゛T リン パ球 は従 来細菌 感染防 御免疫 におい ては むしろnegativeな役 割をtまた すも のと考 えられ て いた が , 最 近Kauf mannら の グル ー プ は , 細菌 内 寄生 細菌の 場合に は,す でに 感染を 受けた 食 細 胞 に 対 し て 細 胞 障 害 性 に 作 用す る こ と に よっ て ,CD8゛Tリ ン パ 球も 感 染 の 制 御に 一 定 の positiveな役 割を 担うと 主張し ている 。

  宿主の 免疫 応答は 基本的 には遺 伝子 によっ て支配 されて いるが ,こ れに種 々の要因が相互に複 雑に影 響しあ って ,ある 患者の ある時 点にお ける 免疫状 態が規 定され ,そ れが末梢血のりンパ球 のプ口 フィー ルと して反 映され ている 。この よう にして ,ミコ バクテ リア 感染症患者では,リン パ 球 の サ ブ セ ッ ト の 比 率 やCD4 /CD8比 な ど は 正常 対 照 群 と 比較 し て 一 律 に高 い 値 , ま たは 低い値 をとる ので はなく ,正常 範囲を 越えて 高い 値から 正常範 囲をず っと 下まわる低い値を示す ものま で一連 のス ペクト ラムを 形づく るので ろう 。個々 の症例 がこの よう なスペクトラム上のど のよう な位置 を占 めてい るのか ,経過 にとも なっ てこの スベク トラム 上を どの方向に動いて行く か を 知 る こ と に よ っ て , 症 例 ご と の 経 過 予 測 や 予 後 判 定 に 役 立 っ と 期 待 で き る 。

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学位論文審査の要旨

I.研究目的

  結核の 潜在感染から発病への進展,治療終了後の再燃,MOTT症(通称非定型抗酸菌症)の 成立,ミコバクテリア感染症の難治化などを規定している宿主側のりスクファクターの特定を究 極 の 目 的 と し て , 結 核 症 お よ びMOTT症 患 者 の り ン パ球 サ ブセ ット の解 析を 行 った 。 H.方法

  結核予 防会複十字病院に入院または通院中の70才未満の結核症および,MOTT症患者を対象 とした。健康正常対照者として結核研究所複十字病院職員,ならびに某衣料関係会社の健康な従 業員を選んだ。末梢静脈血を採取し,全血溶血法を用いてFluorescein isothiocyanateおよび Phycoerythrinで標識した2種類の単ク口一ン抗体を組み合わせて二重染色を行ない,フ口一 サイトメトリーでりンパ球サブセットを分析した。

m.結果

  総自血球数は患者群と正常対照群との間には差はなかったが,総リンパ球数,Tリンパ球数,

および,Bリンパ球数は,結核症およ びMOTT症のいずれにおいても,健康対照群より低下し ていた。

  T,Bリン パ球の総リンパ球に対する 比率は,両患者群で軽度に低下していたが,T/B比は 一定に保たれていた。

  両患 者群 ともにCD4゛/CD8−およびCD4 ‑/CD8゛サブセットの実数はとも に正常対照群 と比較して有意に低下していた。

  各サブセットの総リンパ球に対する比率は正常対照群と著しい差は見られなかったが,患者群 で は正 常対 照 群の 平均 値土2 SDよ りも低値を示 す例が多く,高値を示す例 も目立った。

  CD4゛Tリ ンパ球の なかのLeu8゛/・,CD8゛Tリ ンパ球のなかのCDllb゛/− の検査では,

CDllb−サブセットの細胞がMOTT症において有意に高かった。

  活性化 リンパ球の指標とされるIL一2R陽性細胞,および,HLA―DR陽性Tリンパ球数は,

正常と比して差が見られなかった。

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明 保

光  

  知

沼 崎

柿 宮

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

  X線上空洞の有無,病巣の広がり,および,化学療法後の排菌の有無とりンパ球サブセットの 関係を検討したが,病巣の広がりとりンパ球数との間に関連が認められた。結核病学会X線分類 の広がり1と3で比較すると,広がり3は広がり1に比較してりンパ球の総自血球に対する比率,

総リンパ球数,CD4゛,CD8゛Tリンパ球の実数が低かった。

  初診時にりンパ球およびサブセットの異常が認・められた患者の90%以上は,結核症,MOTT 症ともに,治療によってそれらが正常化した。

  経過を追っ てFACS解析を行った結核症 ,M‑OTT症それぞれ1例づっにっいて病像とりンパ 球サプセットとの関係を検討した。両患者ともに経過中X線陰影の悪化に先立ち総リンパ球,T リンパ球およびCD4゛Tリンパ球の著明な減少が認められた。

  口頭発表に際して,宮崎保教授から(1)結核症の進展とりンパ球数の変化との間の因果関係,

(‑2)ア/6陽 性Tリンパ球との結核症との 関係にっいて,皆川知紀教授から(1)経過を観察 した症例におけるツ反応の変化,(2)ツ反応の成績と末梢血のりンパ球サブセットの低下との 関係にっいて,細川真澄男教授から結核症の進展とアレルギーとの関係にっいて質問がなされた が,申請者はいずれも適切な回答をなしえたと思われる。さらに,副査の宮崎保,皆川知紀両教 授から個別に審査を受け合格と判定された。

  これまでに結核症患者にっいて臨床免疫学的研究が多数行われてきたが,本研究では解析法を 工夫して信頼 度の高い成績を得たこと,極めて少数例の知見しか得られていなかったMOTT症 における免疫動態の解析を多数の症例にっいて行ったこと,また,一部の患者にっいて長期間に 亙ってりンパ球サブセットの解析を行い,免疫機能の低下が,病勢の悪化に積極的に関与する事 を明らかにした点で,優れた臨床免疫学的研究と考えられ,博士の学位論文として妥当なものと 判断される。

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