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博士(医学)小川浩司 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)小川浩司 学位論文題名

    C 型慢性肝炎患者に対する

りバビリン先行インターフェロン併用療法における      りバビリンの作用機序の検討

学位論文内容の要旨

[緒言]Interferon (IFN)/Ribavirin (RBV)併:用療法はHepatitisCvirus (HCV)感染症に対する 標 準 療 法 の ひ と っ と な っ たが ,RBVのHCVに 対す る作 用機 序は 未だ 解明 され てい な い.HCVに 対 す るRBVの 作 用 機 序 を 解明 する ため に併 用療 法開 始 前に4週 間のRBVを 単独 投与 し, 治療 経 過中の免疫学的,ウイルス学 的検討を行った.

[ 対象 と方 法]C型 慢性 肝炎 患 者25名を 対象 とし た. 対象 患者25名 のう ちの17名 はgenotype1 で8名 はgenotype2で あ っ た .IFNと の 併 用 療 法 開 始 前 に4週 間 のRBV内 服 治 療 を 先 行 し , そ の 後IFN‑Q2bを 合 計24週 間 併 用 投 与 し た . ウ イ ル ス 学 的 治 療 効 果 に よ り2群 に 分 け た . Early viral responder (EVR)群は併用療法開始4週後にHCV RNAが陰潤三イ匕した症例群と定義し,

non一EVR群 は併 用療 法開 始4週 後にHCV RNA陽性 のま まの 症 例群 と定 義し た.Survival viral responder (SVR)群 は併 用療 法 終了24週 間後 までHCV RNA陰 性が 継続 した 患者 群と 定義 した・

RBV単 独 投 与 開 始 前 , 併 用療 法開 始前 に患 者血 清を 採 取し 解听 に使 用し た. 末梢 血CD4陽性T 細 胞のThl/Th2サブ セッ トは フ ロー サイ トメ トリ ー法 にて 測定 し,血清中サイトカイン濃度は ELISA法 に て 測 定 し た . 上 記 治 療 を 施 行 し たC型 陵 陸 肝 炎 患 者 でgenotype lbの14名 よル ウ イ ル ス 学 的 解 析 を 行 っ た ,各 血清 よりHCV RNAを抽 出 し逆 転写 反応 を行 いcDNAを 合成 した ・ そ の後NS5A‑ISDR領 域をnested PCRにて 増幅 しプ ラス ミド に導 入し た.1サン フシ レあ たり10 ク ロー ンを 抽出 しシ ーク エン ス法 にて 解析 した . 10本の クロ ーンの測定結果から,それぞれ の 位置 で最 も高 頻度 な配 列を コン センサスシークエンスと定 義し,HCV―Jと比較し検討した.

次 に同 一血 清中 の各 クロ ーン とコ ンセ ンサ スシ ーク エン ス との 平均 変化 数を 変異 率と して算     ●

出し,EVR群とnon‑EvR群とで 比較検討した・

[ 結果 ]対 象患 者25名を 併用 療法 開始早期のウイルス学的反 応により2群に分けた.17名 はEvR で , そ の う ち の10名 は 最 終的 にSvRで あっ た.EvR群 と比 較し て,genotypelと高 線雑 イ匕 は nonIEvR群 にお いて 有意 に高 い 傾向 を認 めた .治 療開 始前 のThl/Th2比, 血清 中の サイ トカイ ン レ ベ ル は 両 群 間 で 差 を 認 め な か っ た .4週 間 のRBv単独 投与 中,EvR群に おい てALT値は 有 意 に低 下し たが ,n。nーEVR群 にお いて は軽 度の 上昇 を認 めた .Thlパh2比はEvR群で有意に上

‑ 395

(2)

昇したが,norrEVR群では差を認めなかった.IFN‑ッはEVR群において上昇傾向を示したが有 意差を認めなかった. IL−10はEVR群で有意に低下したが,non‑EVR群では低下傾向であった が有意差を認めなかった.sCD30は両群共に有意差を持って低下した.治療開始前のコンセン サスシークエンスはHCV‑Jと比較してヌクレオチドレベルで120塩基中平均10.9個の変異を,

アミノ酸レベルにおいて40アミノ酸中平均1.2個の変異を認めた,RBV単独投与後,これら の変異数に有意な変化は認めなかった.治療開始前の変異率は,ヌクレオチドおよぴアミノ酸 レベルにおいてEVR、non‑EVR両群間に有意差を認めなかった.RBV単独投与中にヌクレオチ ドでEVR群においてのみ有意な変異率の上昇を認めた・

[考察]C型幔J陸肝炎へのIFN/ RBV併用療法の導入後,従来のIFN単独療法と比較して良好な 成績が報告されている.IFNは直接的ぬ抗ウイルス効果を発揮するといわれているがRBVの作 用機序は未だ解明されていない.C型戞陸肝炎患者にRBV単独療法を施行すると血清ALT値は 有意に低下するがHCV RNA量は変化しないと報告されている.本研究においても血清ALT値は EVR群でRBV単独投与中に有意な低下を認めたが,nonーEVR群では逆に軽度の上昇を認めた.

RBvはThl系サイトカインを誘導し,その一方でTh2系サイトカインを抑制すると報告されて いる .本 研究 におい ては ,末梢血CD4陽性T細胞におけるThl/Th2バランスと血清中のThl 系サイトカイン(IF骭ッ,TNFIa)及びTh2系サイトカイン(IL―10,sCD30)にっき評価した,

4週間のRBv単独投与によりThl/Th2バランスは有意にThl側に傾き,Th2系サイトカインは 有意に減少した.これらの免疫学的変化と治療効果の関連性は,EvR群においてより強く示唆 された.このThl/Th2バランスの変化が宿主の抗ウイルス性免疫応答を賦活し感染肝細胞排除 に関連したと考えられた.Ns5A領域に存在する特定のアミノ酸配列の相違がI剛感受性と相 関していることが報告されており,interferonsensitivitydeterminingregion(ISDR)と言 われている.4週間のRBv単独投与において,大部分の症例ではコンセンサスシークエンスに 変化を認めなかった,しかしHWは生体内において様々な多様性に富む状態で存在しており,

そのようなHCv遺伝子の多様性をquasispeciesと呼んでいる.本研究では各血清よりlO本の クローンを検索し,各クローンとコンセンサスシークエンスとの差を計測し変異率として算出 した.この変異率が大きいほど各クローン間のばらっき,っまりquasispeciesが大きいこと を示すと考えられる.RBv投与前の変異率は両群間で差を認めなかったが,投与4週後でEVR 群においてヌクレオチドレベルで有意な変異率の上昇を認めた.遺伝子変異がより促進的に起 こったと考えられる事例で,RBvがHCvに対してmutagenとして作用するという仮説の裏付け となる可能陸が考えられた.本研究のRBv先行IFツRBv併用療法におけるSvR率は40%で全 てのSVR患者はEvR群であった.このことは早期ウイルス排除がSvRに必要な条件と考えられ た.Genotype1に限るとSvR率は23.5%であり,過去の報告と比較してもRBvの先行投与は最 終的な治療結果の改善に寄与しなかった.しかし4週間のRBv単独投与中の血清ALT値やサイ トカイン,HCv遺伝子配列の変化の解析により,引き続いて施行される併用療法の治療効果の 予測が可能と考えられた.RBvの作用機序としては宿主の免疫反応の修飾及びHCv遺伝子変 異共に関与していると考えられ,それらの相互作用によルウイルス排除に作用していると考え られた.

    ―396ー

(3)

[結語]C型慢性肝炎患者に対するRBV投与は,宿主免疫の賦活,HCVに対する遺伝子変異の促 進を促し,IFN治療の有効性を上昇させ ると考えられた.IFN/RBV併用療法に先行するRBV投 与中の血清ALT値,Thl/Th2系サイトカイン,NS5A一ISDR領域のヌクレオチド変異率の測定は,

併用療法開始後の抗ウイルス効果の予測に有用であった.

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

C 型慢性肝炎患者に対する

りバビリン先行インターフェロン併用療法における りバビリンの作用機序の検討

近年イン ターフ ェロン(IFN)にりバビリン(RBV)を併用することにより,C型肝炎ウイルス (HCV)感染症に対して優れた抗ウイルス効果が得られ難治例に対する標準療法となったが,

RBVのHCVに対する作用機序仮説としては免疫学的作用およびウイルス学的作用が報告され ているが 十分に は解明さ れていなぃ.またRBV単独投与に引き続き施行した併用療法の成 績は報告 がなぃ .そこでHCVに 対するRBVの作用機序を解明するために併用療法開始前に4 週間のRBVを単独投与し,治療経過中の免疫学的,ウイルス学的検討を行った.C型慢性肝 炎患者25名 を対象 とし,4週間 のRBV連 日投与を 先行し ,その後IFNを 合計24週間 併用投 与した.併用療法開始4週後にHCV RNAが陰性化した症例群をEarly viral responders (EVR) 群,HCV RNA陽性のままの症例群をnon−EVR群としてRBV単独投与前後の免疫学的,ウイル ス学的変 化を比 較検討し た.免 疫学的検 討としてRBV単 独投与前後のThl/Th2サブセット およぴ血 清サイ トカイン の変化を検討した.4週間のRBV単独投与によりThl/Th2バランス は有意にThl側 に傾き,Th2系 サイトカインは有意に減少した.この免疫学的変化は,EVR 群におい てより 著明であ り,このThl/Th2バランスの変化が抗ウイルス性免疫応答を賦活 し,感染 肝細胞 排除に関 連したと考えられた.次にウイルス学的検討としてRBV単独投与 前後のInterferon sensitivity determining region(ISDR)領域の遺伝子変異を検討した.

患者血清 より10ク ローンのISDR領域の 遺伝子配 列を解 析した.10クローンの最も高頻度 な配列を コンセ ンサスシ ークエンス,各クローンとコンセンサスシークエンスとの1グロ ーンあたりの平均変化数を変異率と定義した.4週間のRBV単独投与によルコンセンサスシ ークエンスに有意な変化は認めなかったが,変異率は,EVR群のヌクレオチドレベルにおい て有意な上昇を認めた.遺伝子変異はEVR群でより促進的に起こったと考えられ,RBVによ るISDR領域 の遺伝子 変異の増 大は,IFN療法 の有効 性に関連したと考えられた.RBVは,

これらの免疫学的およびウイルス学的作用により,IFNの有効性を上昇させると考えられた.

    ―398−

正 隆

(5)

  口頭発表に際し,副査の有賀教授より今回のRBV先行投与の臨床結果にっいて,ISDR 領域の遺伝子変異の意義,stop codonになる変異の存在の有無にっいての質問があった.

これに対して申請者は,RBV先行投与では最終的なウイルス排除率には寄与しない事,

今回の検討では解析していないが文献的にISDR領域がIFNにより誘導される酵素のー っである蛋白質リン酸化酵素との関連,現在までにそのようなstop coclonは解明され て いないこ とを回答 した.次いで副査小池教授より再びIFN感受性とISDR領域の変 異の関連,RBVによる他部位への変異の可能性,生体の遺伝子への変異の可能性,Th1 disease^のりバビリン投与,HIV重複感染へのりバビリン投与についての質問があっ た.これに対して申請者は,文献的に報告されているISDR領域の意義,RBVにより他部 位にも変異の入る可能性,生体の遺伝子,Thldiseaseへの影響の報告はないこと,HIV にも変異を起こす可能性があり重複感染には注意が必要であることを回答した.さらに 主査浅香教授よりIFN同時投与の際の変化,ペグインターフェロン(PEG―IFN) /RBVの併 用の有効性,RBV単独投与の成績,RBVがHCVに使用されるにいたった経緯についての 質問があった.これに対して申請者は,同時投与だとIFNの修飾が大きくRBVの作用機 序の解明ができないこと,PEG一IFNでも同様の解析が必要なこと,RBVがHCVに対して最初 に使われた報告を回答した.

  本研究は十分に解明されていなかったRBVのHCVに対する作用機序の一部を解明した ことで高く評価され,この研究を足掛かりとして今後のHCV感染症への治療結果の改善 が期待された.

  審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑚や取得単位など も併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した.

399

参照

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