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博 士 ( 工 学 ) 森 川 博 司 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 森 川 博 司

学 位 論 文 題 名

衝 撃 荷 重 を 受 け る 鋼 製 ラ イ ナ ー 補 強 コ ン ク リ ー ト 板 状 部 材 の 局 部 損 傷 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  飛来物がコンクリート構造物に衝突する場合の衝撃現象は、飛来物とコンクリート構造物 の相互作用に、コンクリートの圧壊、剥離、飛散などが絡み合う極めて複雑な現象である。

これまでに数多くの実験が国内外で実施され、耐衝撃設計上重要となる貫通限界厚さおよび 裏面剥離限界厚さを推算する評価式が提案されてきた。一方これらの衝撃実験の中には、鉄 筋コンクリート板の裏面に鋼製ライナー補強した試験体も含まれており、この補強により耐 衝撃 陸が向上することが報告されている。しかし、鋼製ライナー補強鉄筋コンクリート板の 衝撃現象は飛来物と鉄筋コンクリート板およぴ鋼製ライナー間の複雑な相互作用となり、こ の複合構造物の貫通、裏面剥離などの局部損傷を論じた研究は極めて少なく、限界厚さを定 量的に評価するまでには至っていない現状である。したがって、鋼製ライナー補強された鉄 筋コンクリート板に対して耐衝撃設計を行おうとすると、鉄筋コンクリート板に対して提案 された各限界厚さの評価式を用いて算定した必要板厚による設計を行いライナーの効果を 無視せざるをえなかった。また、コンクリ―トの飛散や剥離、鋼板の亀裂や破断などを伴う 局部損傷を解析的に表現できる手法も従来ほとんど無く、解析的に限界厚さを評価すること もできなかった。

  このような観点から、本研究は鋼製ライナー補強鉄筋コンクリート板への飛来物の高速衝 突実験による貫通限界厚さおよび穿孔限界厚さの定量的評価を行うとともに、コンクリート 構造物の破壊挙動を追跡できる個別要素法による解析法を提案し、衝撃実験のシミュレーシ ヨン解析による局部損傷のメカニズムの把握を経て、設計上必要な鋼製ライナー補強鉄筋コ ンクリート板の穿孔限界厚さを簡便に推算できる簡易評価法を提案し、耐衝撃設計法確立の 一 助 と す る も の で あ る 。 本 研 究 の 成 果 を ま と め る と 以 下 の と お り で あ る 。

(1)衝撃実験による各限界厚さ評価

  鋼製ライナーで補強した鉄筋コンクリート板の耐衝撃性を定量的に評価するために、コン クリート厚さおよび鋼製ライナー厚さをパラメータとして剛飛来物による衝撃実験を行い、

以下の成果を得た。

1)裏面を鋼製ライナー補強した鉄筋コンクリート板の局部損傷は、飛来物が完全に通り抜け   る貫通、鋼製ライナーに穿孔が生じるが飛来物が貫通しない穿孔、コンクリート板の裏面   剥離は起きているが鋼製ライナーによって飛散していない膨らみ、および飛来物がコンク   リー ト板に 貫入する が裏面の 膨らみ も生じない貫入の4種のモードに分けられる。

2)鋼製ライナーを裏面に取付けることにより、鉄筋コンクリート板の裏面コンクリートの飛   散を防止するとともに貫通に対しても効果がある。一方衝突面に取付けた場合には、貫通   や裏面剥離防止にはほとんど効果がない。

3)局部損傷の大きさを減少させるために必要なコンクリート厚さは、鋼製ライナーを取り付

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  けることにより減少させることができる。また同一の損傷の生じるコンクリート厚さは、

  取り付ける鋼製ライナー厚さに逆比例する。穿孔限界に対する鋼製ライナーの等価なコン   クリート厚さは、鋼製ライナー厚さの21倍に相当する。

(2)個別要素法による衝撃実験シミュレーション

    コンクリート構造物の破壊現象を追跡する解析手法として個別要素法による方法を提案 し、この手法により鋼製ライナー補強鉄筋コンクリート板の衝撃挙動を明らかにした。

1)非連続体解析法のーつである個別要素法は、コンクリート構造物の連続体としての挙動か   ら大変形|破壊の発生、進行に至る解析が可能であり、コンクリートの持っひずみみ速度   効果を考慮して、鉄筋コンクリート板の衝撃実験シミュレーション解析に適用した結果、

  損傷の進行など実験と良い対応を示した。提案したモデル化手法、解析バラメータの設定   法によ って、 個別要素法による衝撃現象を表現する一連の解析手法を確立できた。

2)鋼製ライナー補強鉄筋コンクリート板の衝撃実験に対して個別要素法で解析した結果、衝   突時の鉄筋コンクリート板内部の圧壊、ひびわれなどの損傷の進行状況、衝撃荷重や飛来   物速度の時刻歴などの各種の応答をうることができ、多面的に局部損傷を捉えることがで   .きた。ライナーの有無による解析結果を比較することによって、鋼製ライナーの耐衝撃性   効果は板厚方向のひびわれ角度を大きくさせ広い範囲に損傷を分散させるとともに膜要   素とし ての大 変形状態 における 張カに よる抵抗 作用が 大きいこ とが推察できた。

(3)簡易評価法の提案

  鋼製ライナー補強鉄筋コンクリート板の耐衝撃設計法を確立するための基礎となる局部 損傷の評価法に関して、既往の局部損傷式を組み合わせて穿孔現象の生じる限界厚さを推定 する方法を提案した。

1)コンクリート板と鋼製ライナーそれぞれの貫通を想定し、コンクリート板の貫入深さと貫   通厚さの既往評価式およぴ鋼製ライナーの貫通厚さ評価式を組み合わせた本簡易評価手   法は、実験結果と良い適合性を示すことが確認できた。

2)本評価法の有効性を確認するために、過去に実施されたBarrらの衝撃実験、米国電力研究   所が主宰して行った衝撃実験や個別要素法による各種条件の異なる衝撃解析との比較に   本評価法を適用した結果、限界厚さや限界速度が実験結果や解析結果と矛盾していないこ   とが確認でき、本評価法の妥当性と有効性が確認できた。

  以上の成果により、鋼製ライナー補強鉄筋コンクリート板の衝撃挙動を明らかにし、耐衝 撃設計のための鋼製ライナー補強鉄筋コンクリート板の必要板厚の簡易評価法および個別 要素法による詳細な検討法を確立した。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

衝撃荷重を受ける鋼製ライナー補強コンクリート 板状部材の局部損傷に関する研究

  近年、構 造物は 大型化・ 複雑化し 、新し い構造材 料や工 法の使用が進められると共 に、安全 性と信頼 性の高 い設計法 が要求 されてい る。構 造物の安全性に関わる外的要 因のーっ として、 飛来物 による衝 撃破壊 がある。 従来、 コンクリート構造物は経験的 に耐衝撃 性に優れ たもの として使 用され て来たが 、飛来 物が構造物に対して相対的に 小さい場 合の衝撃 現象は 両者の相 互作用 と、コン クリー トの局部的な圧壊・剥離・飛 散などが 絡み合う 複雑な 現象を伴 う。鉄 筋コンク リート 板に関しては、実験的な研究 により耐 衝撃設計 上重要 となる貫 通限界 厚さおよ び裏面 剥離限界厚さを推算する評価 式が提案 されてい る。し かし、そ の裏面 に鋼製ラ イナー で補強することにより優れた 耐衝撃性 能が期待 される 鋼製ライ ナー補 強鉄筋コ ンクリ ー卜板に関しては、研究の実 績が極め て少なく 、複合 構造物と しての より複雑 な挙動 を示すために、応力伝達およ び破壊機 構の解明 とその 設計法が 確立さ れていな い。

  本研究は 、鋼製 ライナー 補強鉄筋 コンク リート板 を対象 として、飛来物に対する耐 衝撃設計 を確立す るため の基礎的 検討を 目的とし たもの である。これを解決するため に、1)飛来物 の高速 衝撃実験 による 貫通限界厚さおよび穿孔限界厚さの定量的評価、

2)コ ンクリー ト構造 物の破壊 挙動を 追跡できる個別要素法による数値解析法の提案、

3) 衝 撃 実験 の シ ミュ レ ー ショ ン解 析によ る局部損 傷メカ ニズムの 把握、4)鋼 製ラ イナ ー 補 強鉄 筋 コ ンク リ ー ト板 の穿孔 限界厚 さ簡易評 価法の 提案を順 次行っ て、実 用的な設 計法の確 立に供 している 。

  本 論 文 は 、 全 5章 か ら 成 り 、 各 章 の 成 果 は 以 下 の よ う に 纏 め ら れ る 。

  第1章は序 論であ り、小物 体の衝突 問題と 、これに よるコ ンクリート構造物の局部 損傷 に関する 実験的 な既往の 研究、な らびにコンクリート構造物の衝撃問題に関する 解 析 的 な 既 往 の 研 究 を 詳 細 に 調 べ て 、 本 研 究 の 目 的 と 範 囲 を 特 定 し て い る 。

攻 二

司 志

   

   

祐 武

   

   

山 山

沼 口

城 石

内 大

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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  第2章 は、 裏 面を 鋼製 ライ ナー で補 強し た鉄 筋コ ンク リー ト板 (以下、鋼板補強R C板 )を 対象 と して 、コ ンク リー ト板 厚さおよび鋼製ラ イナー厚さを影響要因とする 剛飛 来物 によ る衝撃実験を行ったもので、その耐衝撃性 能を定量的に評価し、以下の 事項 を明 らか にし た。1)鋼 板補 強RC板の局部損傷は、 貫通型、穿孔型、膨らみ型、

貫入 型の4種 に 分け られ る。2) 鋼製 ライ ナ ーを 裏面 に取 り付 ける ことにより、貫通 防止 およ びコ ンクリートの飛散防止に効果がある。しか し、衝突面への取り付けでは その 効果 は極 めて 小さ い。3)同 一の 損傷を生じるコン クリート厚さは、鋼製ライナ ー厚 さに 逆比 例す る。

  第3章は 、個 別要 素法 による衝撃実験のシミュレーションを 行ったもので、コンク リート構造物の局部破壊現象を追跡 する手法として個別要素法による数値解析法を提 案し 、鋼 板補 強RC板 の衝 撃挙 動を 明ら かに した 。即 ち、1)コ ンク リー トの 歪み速 度効果を考慮することにより、コン クリート構造物の連続体としての挙動から亀裂の 発生、分離、破壊へと非連続体に移 行する損傷過程を精度良く再現できる個別要素法 の適 用方 法を 提 案し た。2) 各鋼 板補 強RC板 試験 体の 衝撃 実験 に適 用し 、コ ンクリ ート内部の損傷過程、衝撃荷重や飛 来物速度の時刻歴応答など、局部損傷を多面的に 把握した。また、鋼製ライナーの耐 衝撃性効果は、コンクリートの損傷を分散させ、

大変 形時 に膜 要 素と して の張 カに よる 抵抗 作用 が支配的であ ることを明確にした。

  第4章は 、鋼 板補 強RC板の 実用 的な 耐衝 撃設 計 法を 確立 する ため に、 局部 損傷の 簡易評価法の提案を試みたもので、既 往の局部損傷式を組み合わせて穿孔現象を生じ る限 界厚 さお よび 飛 来物 の限 界速 度推 定式 を提 示し、以下の性 能を確認している。

1)コ ンク リー ト板 と鋼 製ライナーそれぞれの貫通を想定し、既 往のコンクリート板 貫通厚さ評価式および鋼製ライナー貫 通厚さ評価式を組み合わせて表記した簡易評価 法は 、実 験結 果と 良 く適合する。2)著者以外が行った既往の衝 撃実験結果や解析結 果における限界厚さや限界速度に対し ても、本簡易評価法による計算結果は適合し、

本評価法の妥当性と有効性を示すこと が出来た。

  第5章は 、第1章か ら第4章を 総括 し取 り纏 める と共 に、 今後 にお ける 研究 の方向 を示している。

  これを要するに、著者は 鋼製ライナー補強鉄筋コンクリート板の衝撃挙動を明らか にし、耐衝撃設計における 鋼製ライナーおよび鉄筋コンクリート板の必要板厚さの簡 易評価法ならびに個別要素 法による詳細な検討方法を提案したもので、コンクリート 構造学の発展に貢献すると ころ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大 学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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