博士(医学)今 重之 学位論文題名
オステオポンチンの構造解析と機能に関する研究 学位論文内容の要旨
オス テオポン チン(OPN)は分子量約41kDaの分泌型酸性リン酸化糖夕ンパク質である。
乳汁 、尿、腎 尿細管、 破骨細胞、骨芽細胞、マク口ファージ、活性化T細胞、ある種の腫 瘍 細 胞 な ど 広 く 発 現 が 認 め ら れ る。OPN分 子中 央 部 には 、 細胞 接 着 に重 要 とさ れ る Gly‑Arg‑Gly‑Asp‑Ser (GRGDS)配列 を 有 する 。GRGDS配 列の 直 後に は ト 口ン ビ ン切 断 部位 が存在す る。OPNがト ロンビン 切断される と隠れて いた細胞 接着部位 が現れ、新た な受 容体と結 合するよ うになる 。OPNは細胞接 着、細胞 遊走、一 酸化窒素(NO)産生の制 御、腫瘍、免疫系への関与など多彩な機能が報告されてきている。これらの機能は受容体 選択 によって 行われて おり、OPNの 受容体選択 手段とし ては、ト 口ンビン 切断などによ るOPN形態によって調節されていると考えられている。
OPNは炎 症部位で 発現が増強し、さらに同部位ではトロンビンやコラゲナーゼが活性化 し、これら酵素による特異的分解を受ける事が考えられる。すなわち生体内においては、
全 長 型OPN、 卜□ ン ビン 切断型OPNが 混在して いること が予想され る。しか も、ト□ ン ビ ン 切断 型OPNは 、 全長 型OPNより細 胞接着能 、細胞遊 走能が上昇 するとい う報告が あ る。
本研 究 で は、 ト 口ン ピン切断 型OPN、全長 型OPNを検出 、定量でき るような 系を確立 す る こ と と 、 OPN分 子 内 の 機 能 部 位 を 解 析 す る こ と を 研 究 目 的 と し た 。 ト口 ン ビ ン切 断 型OPN、 全 長型OPNを検 出 、 定量 で きる 系 を 確立 す る ため に 、ヒト OPN内 の異 な った べ プ チド に 対 する4種 の ポリ ク □ ーナル抗体 と1種のモ ノク口ー ナル 抗体を作製した。これらの抗体は全て、大腸菌で作製したglutathion S‑transferase (GST) 融 合OPN夕 ン バ ク 質 、OPN遺 伝 子 導 入CHO‑K1細 胞 由 来 のOPN夕 ン バ ク 質 を 検 出 す る こと ができた 。全ての 抗体は卜 □ンビン切 断型OPNを検 出するこ とができ た。また、腫 瘍 細 胞 培 養 上 清 由 来OPN、 尿中OPNも検 出 で き、 生 体 内に 存 在す るOPNも検 出 可能 で あっ た。4種の ポリク口 ーナル抗 体と1種のモ ノク口ーナル抗体を組み合わせることによ り 、6種 のサ ン ドイ ッ チELISA系 を構 築 する こ と がで きた。これ らのELISAを用 いて、
全 長OPN、 ト 口ン ビ ン 切断 型 ア ミノ 基(N)末 端 フ ラグ メン卜、カ ルボキシ ル基(C)末端 フラグヌントを定量できる系を確立した。
我々 が 作 製し た5種の モノク□ ーナル抗 体と、既 に報告され ているmAb53と を用いて OPN内 機能 部 位を 解 析 した 。 ヒ 卜線 維 芽細 胞 株 であ るTIG‑7細胞を 用いたRGD依 存性の 細 胞 接 着 に お い て 、 モ ノ ク □ ー ナ ル 抗 体 の 細 胞 接 着 阻 害 能 を 検 討 し た 結 果 、 VDTYDGRGDSVVYGLRSを 抗 原 ペ プ チ ド と し た2K1が 阻 害 活 性 を 有 し て い る こ と が 判 明し 、mAb53と同等 の阻害活 性を有し ていること が判明した。合成ベプチドを用いて2K1 とmAb53の 詳 細 な エ ピ ト ー プ 解 析 を 行 っ た 結 果 、2K1はSVVYGLRのN末 端 近 傍 を 認
識 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た。 一 方、mAb53は 、SVVYGLRのC末 端 近 傍を 認 識し て い る こと が 示唆 さ れ た。 そ こ で、 さ らにSlrVYGLRよ りC末側 に さ らに3ア ミ ノ酸 を付加 し たぺ プ チドSWYGLRSKSを 作 製 し、 検 討し た 結 果、非 常に強い結 合活性を 示した。 す な わちmAb53はRSと い う 卜口 ン ピン 切 断 部位 を また いで認識し ているこ とが明ら かと な った 。SVVYGLR配 列はa9piイ ンテグリ ンとの結 合配列な ので、oc9piイン テグリン と の 接着 に 対す る2K1の阻 害 能 を調 べ るた め 、a9遺 伝子 導 入SW480細 胞を 用 いた 細胞接 着 試験 を 行っ た 。2K1はこの接 着に対し て細胞接 着阻害能を 示し、OPNとa9piインテグ ル ンと の 接着 も 阻 害できる ことが判 明した。2K1とmAb53との細胞 遊走阻害 能を調べ る た め に 、U937細 胞 を 用 い て 全 長 型OPN、 ト口 ン ビ ン切 断 型OPN、N末 端 フラ グ ヌン ト OPNに対 す る細 胞 遊走 試験を行 った。そ の結果、2K1は全ての細 胞遊走に 対して阻 害活 性を有 していた が、,mAb53は 全長型0PNに対 してのみ 遊走阻害 活性を有 していた。5A1 と10A16は 細胞 接 着、 遊 走 阻害 能 を有 さ な いこ と から、2KlとmAb53の エピトー プとす る 配列 、 すな わ ち 、細 胞 接 着領 域 であ るSVVYGLR、 トロンビン 切断部位 を含むGLRSKS 配 列がOPNの細 胞 接 着、 細 胞 遊走 能 にお け る 機能 部位であ ることが 明らかと なった。
本 研 究 で確 立 したOPNの多様な 検出系、 測定系を 用いること により0PNの 形態を含 め た機能をさらに解明することができると期待され、疾患の診断に応用できる可能性がある。
また、0PNの発現抑 制により、腫瘍、骨粗鬆症など疾患治癒にっながる報告があることか ら 、 機 能 阻 害 抗 体2Klが こ れ らの 疾 患に 対 す る抗 体 医薬 と な りう る 可 能性 が ある 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
オステオポンチンの構造解析と機能に関する研究
こ の 学 位 論 文 で は 、 ト ロ ン ピ ン 切 断 型 オ ス テ オ ポ ン チ ン(OPN)、 全 長 型OPNを 検 出、 定量 で きる 系を 確立 する ため に、 ヒトOPN内 アミ ノ酸 配列 を基 に、 複数 の異 なっ た ぺ プ チ ド に 対 す る4種 の ポ リ クロ ーナ ル抗 体と1種の モノ ク口 ーナ ル抗 体を 作製 した 。 4種の ポリ ク口 ーナ ル抗 体と1種の モノ クロ ーナ ル抗 体を 組み 合わ せ るこ とに より 、6種 のサ ンド イ ッチELISA系 を構 築す るこ と がで きた 。こ れら のELISAを 用い て、 全長OPN、 ト口 ンピ ン 切断 型ア ミノ 基(N) 末端 フ ラグ メン ト、 カル ボキシル基(C)末端フラグメン ト を 定 量 で き る 系 を 確 立 し た。 腫 瘍 細胞 培養 上清 由来OPN、尿 中OPNも検 出で き、 生 体 内 に 存 在 す るOPNも 検 出 可 能で あっ た。 次 に、 今回 申請 者が 新 規に 作製 した5種 の モ ノ ク 口 一 ナ ル 抗 体 と 、 既 に報 告さ れ てい るmAb53とを 用い てOPN内機 能部 位を 解析 し た 。VDTYDGRGDSVヽWGu峪 を 抗 原 ペ プ チ ド と し た2K1は 、RGD依 存 性 、aVイ ン テ グ リン 依存 性細胞接着において、接着阻害能を有して いた。すでに接着阻害効果を有する事 が、 報告 さ れて いる モノ ク口 ーナ ル抗体眦へb53と 同等の阻害活性を有していることが判 明 し た 。 更 に 、2K1の 認 識 部 位 はSWYGLRのN末 端 近 傍 で あ り 、mAb53はSWYGLRS のRとSを ま た い だ 部 位 、 っ まル ト口 ン ピン 切断 部位 を認 識し てい る事 を見 い出 した 。 SVVYGLR配 列 はQ961イ ン テ グ リ ン と の 結 合 配 列 で も あ る 。 そこ でa9p1イ ンテ グリ ン と の 接 着 に 対 す る2K1の 阻 害 能を 調べ るた め、 印遺 伝子 導入SW480細胞 を用 いた 細胞 接 着 試 験 を 行 っ た 。2K1は こ の 接着 に対 して 細胞 接着 阻害 能を 示し 、OPNとa9p1イ ンテ グ リン との 接 着も 阻害 でき るこ とを 明ら かに した 。
この 学位論文の公開発表に対して、まず副査の 三浪教授から、骨芽細胞、破骨細胞の 両 方 がOPNを 産 生 す る が 、 機 能の 差が ある のか 、単 クロ ーン 抗体2K1は どの よう な病 態 に治 療効 果 を示 すの か、 メカ 二カ ルス トレ スと0PNの 関係 につ いて 、副 査の 小林 教授 よ り、 トロ ンピンで切断されるとウエスタンブ口ット で、完全長オステオポンチンで見られ
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光 彦
男
利 邦
明
出 林
浪
上 小
三
授 授
授
教 教
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査 査
査
主 副
副
るブ口ードなバンドがシャープになるのは、どうしてか、CD44とOPNの結合に関する 最近の考え方、母乳中のOPNの機能に関して、最後に主査の上出教授より、OPN分子内 にこれまで同定された細胞接着ドメインおよびOPN受容体の種類に関して質問がなされ た。これらの質問に対し、申請者は、自らの実験データや文献を引用しっつ、概ね妥当な 答弁をなし得た。
この論文では、生体内で多様な存在形態をしめ iOPNの測定系の作成を報告し、さら にはオステオポンチン分子内の配列に対する特異的単クローン抗体を作成し、オステオポ ンチンの機能部位の検討を行った。分子内の複数のインテグリン受容体を介する細胞接 着に関わる機能ドメインに対する単クローン抗体2 K1が癌細胞の遊走や接着を抑制する 事を示した。すなわち、RGD依存性、aVインテグリン依存性細胞接着のみならず、a961 インテグリン依存性細胞接着を阻害する。 また全長型のみならず、トロンピン切断型 OPNの機能を阻害することを報告した。 この2K1抗体は、今後オステオポンチンが関 与する種々の病態、すなわち、癌転移、骨粗鬆症や関節リウマチ等の治療薬としての可能 性も期待される。
審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。
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