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博士(医学)高辻浩也 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)高辻浩也 学位論文題名

A New Approach for Evaluation of Left Ventricular Diastolic Function  :  Spatial and Tempora,l Analysis   of Left Ventricular Filling Flow Propagation by      Color M ‑ mode Doppler Echocardiography

( カラ −Mモ ード・ドプ ラ法を用い た左室流入 血流伝播 の空間的・時間的解析による左室拡張能の新しい評価法)

学位論文内容の要旨

パルスドプラ法による経僧帽弁血流速の計測は左室拡張障害の非観血的評価法として 広く用いられている。しかし左室左房間圧較差の上昇した拡張不全心では、経僧帽弁血 流波形が偽正常化をきたすため、バルスドプラ指標は観血的な左室拡張能指標と相関を 示さず、左室拡張能の正確な評価が困難になる。本研究では、カラーMモード・ドプラ 法により求めた拡張早期・左室流入血流伝播速度の左室拡張能評価における有用性につ いて、経僧帽弁血流の偽正常化例を含めて検討した。

    方法

対象  正 常左室収縮 の31例(明ら かな心疾患 のなぃ16例、 安定狭心症15例)をコ ントロール群とした。左室収縮障害(左室駆出分画60%未満)を呈した62例(陳旧性心 筋梗塞34例、拡張型心筋症28例)は、バルスドプラ法による経僧帽弁血流の拡張・早期 最 大 速度(E)と 心 房収 縮 期最 大 速度(A)の 比(E/A)に より 次 の2群 に 分割 し た。I 群37例:E/Aく1、u群25例:F,/A≧―1。n群は、経僧帽弁血流が偽正常化(E/A≧1) を呈する症例である。弁膜症、先天性心疾患、肥大型心筋症、高血圧例は除外した。

  ドプラ 心エコー図 法  心尖部ア プローチにより拡張早期流入血流に対しカラーM モード・ドプラ法を施行した。ベースラインシフトを用い折返し領域を変化させ(Fig 2)、折返し領域が最小となる僧帽弁口部での最大流速点と、その流速が70%に減速す る点を求め、この2点を結ぶ直線の距離/時間比を計測し拡張早期左室流入血流伝播速 度(rate of propagation、cm/sec)とした。従来のバルスドプラ法により経僧帽弁血流の 拡張早 期と心房収 縮期の最大 速度(各々E、A、cm/sec)と その比(E/A)、拡張早期 最大流速の減速時間(deceleration time、msec)を求めた。拡張早期最大流入血流(E) は症例により異なるため、その影響を補正する目的で左室流入血流伝播速度をEで除し 左室流入血流伝播率(propagation ratio)とした。

心臓カ テーテル検 査  全症例で 心臓カテー テル検査を 施行し左室駆出分画(%)

を求め た。うち40例 (コントロ ール群13例、I群14例、H群13例)において、マイ     −92―

(2)

ク ロ チ ップ ・ マノ メ ータ を用い左 室等容弛 緩期の時定 数T(msec)、左室 圧の最大 陰性 dP/dt (peak‑dP/dt、mmHg/sec)、 最 小 左 室 拡 張 期 圧(LVPminヽmmHg)、 左 室 拡 張 終 期 圧(LVEDP、mmHg)を 求め 観 血 的拡 張 能指 標 と した 。

再 現 性 の評 価  無 作 為に 選 ん だ14例に お い て、 同 一検 者 が2週 間の 間 隔を あ け て、

ま た 独 立2検者 が 個別 に 左 室流 入 血流 伝 播 速度 を 計測 し た 。     結 果

全93例中 、 良好なカ ラーMモー ド・ドプ ラ画像を 得た88例(95%) において 解析した 。 コ ン ト ロ ー ル 群 、I群 、H群の3群 間 で年 令 、 心拍 数 、収 縮 期 血圧 に 有 意差 は なか っ た 。コント ロール群に 比し、I群 ではE/Aは有意に低値(p〈0.001)、deceleration time は 有意に延 長(p〈0.001)を示 したが、H群では経僧帽弁血流速波形の偽正常化のため、

E/Aお よびdeceleration timeに有 意差を認め なかった 。

拡 張 早期 左 室 流入 血 流 伝播 速 度は 、 コ ント ロ ール 群 に 比し 、I群 、H群とも に有意に 低 値 を 示 し た ( コ ン ト ロ ー ル 群 、74.3土17.4;I群、33.8土13.8゛;H群 、30.0土 8.6゛cm/sec、゛コン トロール群 に対しp〈0.001)。左室流入血流伝播率はH群において 最 も 低 値 で あ っ た ( コ ン ト ロ ー ル 群 、1.27土0.36;I群 、0.74土0.32゛ ;u群 、 0.47土0.13゛ 十 、 ゛ コ ン ト ロ ー ル 群 に 対 しp〈0.001、 十I群 に 対 しp〈0.01) 。   時 定数T、peak ‑dP/dtは 、コントロ ール群と 比しI群、H群におい て有意に延長(p〈 0.001)し た 。LVPminお よ び LVEDPはH群 に お い て 最 も 高 値 で あ っ た 。E/Aと deceleration timeは 時定数Tと 相関を示さなかった。一方、左室流入血流伝播速度は、

時 定数T、peak ‑dP/dt、LVPminとそれぞれ良好な相関を示した(各々r‑0.82、r‑0.72、 r=0.61、pく0.001)

再 現 性 の 評 価  同 一 検 者 間 、 独 立2検 者 間 の 計 測 に お け る 差 異 は 、 各 々1.0土3.4 cm/s、 ‑1.0土 6.2 cm/s (mean土 SD)で 再 現 性 は 良 好 と 考 え ら れ た 。

    考察

拡 張早 期 ・左 室 流 入血 流 伝播速度 はI群、n群 で低値を 示した。 特に、従 来のバルス ・ ドプラ指標であるE/Aおよびdeceleration timeは、経僧帽弁血流速波形の偽正常化のため、

H群およ びコントロ ール群間 で有意差 が見られ なかった が、左室 流入血流伝 播速度およ び血流伝播率はH群において著明に低値を示した。

左 室流 入 血流 伝 播 速度 は 以下のよ うな機序 に規定さ れると考 えられる 。正常の左 室拡 張では 、速やかな 左室弛緩 により左 室内に大 きな圧較 差を生じ、この圧較差は左室内腔 の心尖 部近くまで 維持され る。その 結果、左 室流入血 流は僧帽弁口部から左室内に向か い速や かに伝播さ れる。一 方、左室 拡張障害 では、緩 徐な左室弛緩に伴い拡張早期血流 (E)が 減 少 す る 。 ま た 、 最 小 左 室拡 張 期 圧(LVPmin)が 早 期に 上 昇す る た め、 拡 張 早 期の左 室内の圧較 差は速や かに消失 し流入血 流は緩や かに伝播することになる。前負荷 増 大に よ り左 室 左 房間 圧 較差 の 上 昇し た 例で は 、 拡張 早期 血流(E)が増 高し経僧帽 弁 血流速 波形が偽正 常化する ため左室 拡張障害 が隠蔽さ れる。高度に伸展性の低下した左 室で|ま、少量の流入血流で左室内圧が急激に増大しこの圧較差はただちに消失するため、

拡 張 早 期 血 流(E)の 増 高 に も か か わ ら ず 、 左 室 流 入 血 流 伝 播 は 直 ち に 減 衰 す る 。   E/Aやdeceleration timeとぃったパルスドプラ法による左室拡張能指標は、時定数Tな どの観 血的左室拡 張能指標 と良好な 相関を示 さないこ とは、本研究のみならず従来から も報告 されている 。一方、 本研究で 、カラーMモード・ ドプラ法 を用い新た に開発した 指標で ある拡張早 期左室流 入血流伝 播速度は 、観血的 指標と良好な相関を示し、経僧帽 弁血流 の偽正常化 例も含め て、従来 のドプラ 指標より も的確に左室拡張能の評価が可能 な指標であると考えられる。

(3)

    結語

カラーMモード・ドプラ法で求めた拡張早期・左室流入血流伝播速度は、従来のパル スドプラ指標と異なり偽正常化をきたさず、より的確に左室拡張能を評価することので きる、有用かつ新たな非観血的指標であると考えられる。

(4)

学位論文審査の要旨 主査    教授    安田慶秀 副査    教授    北畠    顯 副査    教授    宮坂和男      学 位 論 文 題 名

A New Approach for Evaluation of Left Ventricular Diastolic Function  :  Spatial and Temporal Analysis   of Left Vent,ricular Filling Flow Propagation by       Color IVI ‑ mode Doppler Echocardiography

( カラ‑Mモ ー ド・ ド プラ 法 を用 い た左室流入 血流伝播 の空間的・時間的解析による左室拡張能の新しい評価法)

バルスドプラ法による経僧帽弁血流速の計測は左室拡張障害の非観血的評価法として 広く用いられるが、高度の拡張不全心では、経僧帽弁血流波形が偽正常化し、左室拡張 能の正確な評価が困難となる。本研究では、カラーMモード・ドプラ法により求めた拡 張早期・左室流入血流伝播速度の左室拡張能評価における有用性について検討した。

対象は、正常左室収縮の31例(コントロール群)と、左室収縮障害(左室駆出分画 60%未満 )を呈した62例 (心筋梗塞34例、拡張型心筋症28例)o後者は、バルスドプ ラ法 に よる 経 僧帽 弁 血流 速 のE/Aによ り 、I群(37例 :E/Aく1) と、n群(25例 : E/A≧ 1) に 分 類 し た 。 II群 は 経 僧 帽 弁 血 流 の 偽 正 常 化 例 で あ る 。 心エコー図検査では、心尖部より拡張早期流入血流に対しカラーMモード・ドプラ法 を施行した。ペースラインシフトを用い、折返し領域が最小となる僧帽弁口部での最大 流速点と、その流速が70%に減速する点を定め、この2点を結ぶ直線の距離/時間比を 計測し拡張早期左室流入血流伝播速度(cm/sec)と定義した。パルスドプラ法により E/A、deceleration timeを求め、左室流入血流伝播速度をEで除し左室流入血流伝播率と した。この方法は、新規性のある手法と考えられ、また、再現性についても十分検討し ている。さらに、心臓カテーテル検査で、拡張能のstandardとされる観血的拡張能指標 との対比を行い妥当性についての裏付けを行った。

  結果:拡張早期左室流入血流伝播速度は、コントロール群に比し、I群、n群とも に有意に(p〈0.001)低を示した(コントロール群、74.3土17.4;I群、33,8士 13.8;H群、30.O土8.6cm/闘c)。左室流入血流伝播率は矼群において最も低値であっ た(コントロール群、1.27土O.36;I群、O.74士O.32;n群、O.47土O.13)。

E/A、decelerationEmeと観血的拡張能指標との相関は不良であったのに対し、左室流入 血流伝播速度は良好な相関を示した。

  学位論文公開発表に際して、副査・宮坂教授および放射線科医師よルペースラインシ

(5)

フト 法の具体 的詳細、 計測時の 速度レンジ、折返し速度の画像上での求め方についての 質問 があった 。さらに 、Limitationに関して、血流伝播速度の計測が困難な具体的事例 につ いて質問 があった 。また、 主査・安田教授および循環器外科医師より、心負荷の変 化時 の血沌伝播速度の動向、心房細動時におけるカラーMモード・ドプラ指標の有用性、

´凵臓手術中・手術後の経食道心エコー図法によるモニタリングの可能性についての質問 があった。

  これ らに対す る回答と して、申 請者は、ペースラインシフト法と折返し現象の機序、

カラ ーMモード ・ドプラ 速度の表 示法につい て詳述し た。Limitationに関しては、拡大 心で 左室内を 血流が旋 回する場 合、血流速 度が著し く低値く く25cm/sec)の場合、左室 流入 血流と超 音波ピー ムが一致 しなぃ場合には、頻度は少ないが指標の計測が困難であ るこ とを述べ た。また 、血流伝 播速度は´噸荷の変化に伴う影響は少なぃと推測される ことを示した。さらに、将来の可脅斟生として、心房細動症例に対する応用が可能であり、

経食 遭心エjー 図法によ る計測も 可能である ことを述 べた。申 請者は、これらの質問に 対し 、自件デ ータや過 去の研究 等を引用し、明解に回答した。最後に、副査・北畠顕教 授よ り、今後、カラーMモード・ドプラ指標の、´ふ負荷変化に伴う影響、各種の心疾患 に対 する応用 、治療効 果判定に 対する応用について解明することの必要性についてコメ ントがあった。

本 研 究仕 、 新規性のあ る研究で あるうえ に、方法 諭、結果 も明解で ある。公開 発表時 の質 疑に対す る回答も 明瞭であ った。審査員一同はこれらの成果を高く評価し、また、

大学 における 医学の研 鑽や研究 歴などもあわせ、博士(医学)の学位を受けるのに十分 な資格を有するものと判定した。

参照

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