博士(獣医学)小川恭喜 学位論文題名
Characterization of murlne macrophage cloneslmmortalized with a helper‑free and replication‑defective retroviral vector
(ヘル′ヾ―フリ−・複製欠損レト口ウイルスベク夕―にて 樹 立 し た マ ウ ス マ ク ロ フ ァ ー ジ ク 口 一 ンの 特 性
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
単球及びマクロファージ(M¢)は侵入微生物、異物及び変性自 己組織を貪食することによって生体防御において重要な役割を果たして いる。M¢の形質と機能は生体内の分布部位によって異なっており、M
¢の増殖のための栄養要求性はM¢の起源や分化段階により異なること が示唆されている。Mめの増殖性状や機能をin vitrで解析する場合、
様々な機能を有するM¢細胞株を用いることが有用である。しかし、現 在あるマウスM¢株は造腫瘍性か、機能が乏しいかあるいはレトロウイ ルス産生細胞である。これらは正常ヤウスM¢の増殖性状や機能を必ず しも反映していない。
腫瘍ウイル スSV40やレ卜ロウイルスが細胞株の樹立に利用され ている。SV40はマウス細胞に対する感染性及び不死化の効率が低く、
また、レトロウイルスによって不死化した細胞は子ウイルスを産生する ため、試験を混乱させる。これらの問題を解決する為にヘルノヾーフリ ー・複製欠損レトロウイルスベクターが開発された。このレトロウイル スベク夕一は容易にマウス細胞に感染し、ゲノムに入り、挿入遺伝子を 効率良く発現するが子ウイルスを産生レない。そこで、SV40初期抗原 を発現するへルパーフリー・複製欠損レトロウイルスベクター(MV40) を用いて、クローナルなマウスM¢株を樹立した。得られたM¢株は正 常M¢の形態を呈し、貪食能、細胞毒性、抗体依存性細胞傷害活性及び
各種サイトカイン産生能を保持していた。これらM¢株はM V40プ口ウ イ ルスを有し、SV40初期抗原を発現していたが、いずれのM¢株でも MV40ウイルス産生は認められなかった。これらの結果は、樹立した全 て のマウスM¢株がMV40プ口ウイルスを有しながらもウイルスを産生 せ ず 、 上 述 の M¢ 機 能 を 保 持 す る こ と を 示 し て い る 。 M¢の多様性及びM¢クローンを 大量に調製することが困難であ ることから、個々の成熟M¢のサイ卜カイン依存性増殖及び血液細胞コ ロニ一刺激因子(CSF)発現プロフィール、またイン夕一フェ口ン‐ア(
IFN‑ア)のM¢CSF産生に対する調節作用のメカニズムは殆ど不明のま まであった。そこで、まず、樹立したマウスM¢クローンのサイ卜カイ ンに対する反応性を調べたところ、サイ卜カイン反応パターンはM¢ク 口一ン間で異なっていた。この成績は成熟マウスM¢クローンの増殖が サイ卜カインで特異的に調節されることを示唆している。いっぽう、イ ン夕一口イキン‑4 (IL‑4)がマウスM¢クローン及びチオグリコレート誘 導腹腔マウスM¢の増殖を誘起することから、IL‐4が成熟マウスM¢の 増殖に関与することが示唆された。次に、これらマウスM¢クローンの CSFの発現と調節について解析した。リポポリサッカライド(LPS)刺激に よ り 顆粒 球CSF (G‑CSF)、顆 粒 球・M¢CSF (GM‑CSF)及びM¢CSF( M‑CSF)の発現が誘導もしくは減弱され、そして、.それらの発現レベル はM¢クローン間で異なっていた。これらのCSF発現パターンを比較し た と ころ 、M¢ク ローンはG夕 イプ(G‑CSF+++GM‑CSF‑M‑CSF+)とGM夕 イ プ(G‑CSF+GM‑CSF+++M‑CSF+)に分類された。しかし、両タイプ間で インターロイキン・1、イン夕一ロイキン‐6及び腫瘍壊死因子ロm心嶮の LPS誘導発現レベルに差は認められなかった。M‐髑Fm心峭の発現様式 はG‐CSFやGM−CSFmRNAと異なっており、その発現は正N‐アにより完 全に抑制された。また、LPSと正N‐アの同時刺激によってGとGM夕イプ 間 でCSFmRNAの発現調節は異 なるが、mN‐アはマウスM¢クローンの LPS 刺激依存性CSF産生を強く抑制した。これらの成績はマウスM¢ク ロ ーンは特異的に調節されたCSF発現様式を持つこと及び抑制機序は GとGM夕イプ間で異 なるものの、IFN‐アがマウスM¢のCSF産生を強
く抑制することを示唆している。
以上の成績は以下のことを示す。1)マウスM¢クローンは特異的 に調節されたサイトカイン依存性増殖とCSF発現様式を持っている。2) IL‑4は成熟マウスM¢の増殖を助ける。3) IFN‑アはマウスM¢のCSFの 産生を抑制する。4) SV40初期抗原を発現するヘルパーフリー・複製欠 損レトロウイルスベクターはin n7roで機能的なM¢細胞株を樹立するの に有効である。また、5)得られた機能的マウスM¢クローンは、多様性 を示すM¢群の増殖及び機能を細胞及び分子レベルで解析するために有 用である。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Characterization of murlne macrophage cloneslmmortalized with a helper‑free and replication‑defective retroviral vector
(ヘルパーフリ―・複製欠損レト口ウイルスベクタ―にて 樹立 し たマ ウ スマ ク 口フ ァー ジク口一ン の特性)
マ ク ロ フ ァ ー ジ (M¢ ) の 増 殖 性 状 や 機 能 をinvitroで 解 析 す る 場 合 、 様 々 な 機 能 を 有 す るM¢ 細 胞 株 を 用 い る こ と が 有 用 で あ る 。 し か し 、 現 在 あ る マ ウ スMア 株 は 造 腫 瘍 性 か 、 機 能 が 乏 し い か あ る い は レ ト ロ ウ イ ル ス 産 生 細 胞 で あ り 、 正 常 マ ウ スM鈩 の 増 殖 性 状 や 機 能 を 必 ず し も 反 映 し てい な い。
そ こ で 、SV40初 期 抗 原 を 発 現 す る へ ル バ ー フ リ ー ・ 複 製 欠 損 レ ト ロウ イ ルス ベ クタ ー (MV40) を 用い て 、ク ロ ーナ ルなマウ スM¢株 を樹立した 。 得 ら れ たM¢ 株 は 正 常M¢ の 形 態 を 呈 し 、 貧 食 能 、 細 胞 毒 性 、 抗 体 依 存 性 細 胞 障 害 活 性 及 び 各 種 サ イ ト カ イ ン 産 生 能 を 保 持 し て い た 。 い ずれ の M¢ 株 もMV40プ ロ ウ イ ル ス を 有 し 、SV40初 期 抗 原 を 発 現 し て い た が 、MV 40ウ イ ル ス 産 生 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 樹 立 し た 全 て の マ ウ スM¢ 株 が ウ イ ル ス を 産 生 せ ず 、 戚 熟M¢ の 機 能 を 保 持 す る こ と を 示 して い る。
樹 立 し た マ ウ スM¢ ク ロ ー ン を 用 い て そ の サ イ ト カ イ ン に 対 す る 反 応 性 を 調 べ た と こ ろ 、 サ イ ト カ イ ン 反 応 性 パ タ ー ン はM¢ ク ロ ー ン 間 で 異 な っ て い た 。 ま た 、 イ ン タ ー ロ イ キ ン −4が 成 熟M <の 増 殖 に 関 与 す る こ と が示 唆 され た 。こ れ らマ ウ スM¢ クロ ー ンの 血 液 細胞 ニ |匸1ニー 刺 激 因 子(CSF) の発現と 調節にっい て解析した 。リポポリ サッカライ ド(LPS) 刺 激 に よ り 顆 粒 球CSF(G−CSF) 、 顆 粒 球・MOCSF(GM−CSF)及 びM¢CSF
(M−CSF) の 発 現 が 誘 導 も し く は 抑 制さ れ 一丶 そ れら の 発現 レ ベル はM¢ ク ロ ー ン 間 で 異 な っ て い た 。 こ れ ら のCSF発 現 パ タ ー ン を 比 較 し た と こ
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操 之宏 正 昌 智 沼藤 田邊 小斉 喜渡 授授 授授 教教 教教 査査 査査 主副 副副
ろ 、M¢ク ロー ンはG夕イプ(G−CSF,++゛GM―CSFーM−CSF+)とGM夕イプ
(G→CSF士GMーCSF゛+゛M―CSF゛)に分類された。またインターフェロン−7 は マ ウ スM¢ ク ロ ー ン の LPS刺 激 依 存 性CSF産 生 を 強 く 抑 制 し た 。 こ の 研 究 は レ ト ロ ウ イ ル ス 非 産 生 で 正常M¢ の 機 能 を も っ た 細 胞 株を 樹 立 し 、 こ れ ら 細 胞 株 を 用 い 、M¢ の サ イ 卜 カ イ ン 依 存 性 増 殖 及 びCSF 発 現 プ ロ フ イ ー ル 等 に っ い て 明 ら か に した も の で あ り 、M¢ の 増 殖 及び 機 能 を 分 子 レ ベ ル で 解 析 する た め に 重 要 な 知 見 を 提 供す る も の で あ る 。 よ っ ゛ て審 査員 一同 は小川 恭喜 氏が 博士 (獣医 学) の学 位を受 ける のに 十 分な資格を有するものと認めた。
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