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博士(工学)前花浩志 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)前花浩志 学位論文題名

微生物を用いるオンチップバイオアッセイの開発と      変異原性試験への応用

学位論文内容の要旨

  現代社会が直面する環境やエネルギーに関する諸問題を考えると,それらを解決するため の低環境負荷,省資源型を指向した科学技術の開発は重要な研究課題である.分析化学にお いては,これらの課題に対応するための新たな分析システムとして,半導体微細加工技術を 利用してシリコンなどの小型基板(チップ)上に形成した微小空間内で物質分離や化学分析 を行うマイクロ分析システム(冖TAS)が提案された,Lt‑TASは分析プロセスのシステム化によ り操作の簡便化や分析時間の短縮化などを可能にすることから,タンパク質や遺伝子をター ゲットとする生化学分野への応用を中心に盛んに研究が行われている.一方,生物学的な分 析方法である細胞を用いるバイオアッセイは,生体に対する化学物質の毒性などの影響を直 接的に評価できることから環境分析や医薬品のスクリーニングなどに利用されている.しか しながら,煩雑な操作や長い分析時間を必要とするため,これらを軽減しうるサTASを利用 したオンチップバイオアッセイの開発が期待されている.オンチップバイオアッセイでは,

細胞の機能を発現できる微小空間の構築とともに,少量の試料で多検体・多項目のアッセイ を同時に実行できる高性能なアッセイフオーマットが求められるが,現状では微小空間での 細胞の集積化および機能発現などの基礎的な研究にとどまっており,実用化に向けたアッセ イフオーマットの開発に関する研究は行われていない.

  このような観点から本論文では,実用可能なオンチップバイオアッセイフオーマットの開 発とその応用を目的とした.そのため,多検体・多項目の一斉分析が可能な新しいオンチッ プアッセイフオーマットとして,複数のチップで構成される微小流体ネットワークを用いる 方法を開発し,生物学的分析システムとしての基礎的な性能を明らかにした.さらに,微生 物 を 用 い る 変 異 原 性 試 験 に 応 用 す る こ と で , そ の 有 用 性 を 明 ら か に し た .   本論文はそれらの経緯をまとめたもので,全7章から構成されている.以下に各章の概要 を示す.

  第1章は序論であり,本論文の背景と目的について述ぺている.

  第2章では,細胞を固定化する貫通孔(ウェル)をアレイ状に配置したチップと試料を導 入するチャネルを平行に配置したチップを組み合わせ,そこに形成される3次元微小流体ネ ットワークを利用した新規オンチップバイオアッセイフオーマットを考案した.このフオー マットで は,2枚のポリジメチルシロキサン製マイクロチャネルチップとそれに挾まれた1 枚のシリコン製貫通ウェルチップを使用する.アガロースに懸濁したアッセイ用試験菌株を 一方のチャネルチップから導入し,ウェル内でゲル化する.次いで,別のチャネルチップか

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(2)

ら測定物質を導入して試験菌株と反応させることで,アガロースゲルで固定化した複数のア ッセイ用試験菌株と複数の被験物質を掛け合わせた全ての組合せのアッセイを一組のチップ 上で行うことが可能である.ここでは,25(5x5)個の貫通ウェルを有する試験菌株固定化用チ ップならびに5本のチャネルを有する試験菌株および試料導入用チップをそれぞれ作製した.

発現誘 導物質と してマイ トマイ シンC (MMC)によル ルシフェ ラーゼを発現する複数の大腸 菌をモデル菌株として用い,考案したフオーマットにおいて発現ルシフェラーゼによる生物 発光(BL)の 測定を行 った, その結果 ,モデ ル大腸菌 の種類お よぴMMCの濃度の組合せに応 じた強 度の異な る25通り のBLを一組 のチップ上で一斉に検出することができた.これによ り,本 フオーマ ットによ るオン チップバイオアッセイが可能であることを明らかにした.

  第3章では,本オンチップアッセイの分析システムとしての特徴を明らかにするために,

アッセイプロセスの速度論的モデルを提案し,BL反応を用いてその解析を行った.オンチッ プアッセイでは,チップ内に供給された被験物質や酵素基質が,微生物を保持するゲルと細 胞膜を透過し,細胞内で反応するプロセスとなっている.BL応答曲線から各プロセスの速度 定数を求めたところ,物質の膜透過プロセスが発光応答時間や分析感度に影響を与える主な 要因であることを明らかにした.

  第4章では,本フオーマットにおける固定化菌体の生育および遺伝子機能について検討し た.  3x108 cells ml‐lの大腸菌を用いて液体培地中で静置培養した場合,菌体濃度は約5時間で 2倍となったのに対し,固定化した場合は,約2.5時間で2倍となった.一方,lx10io cells ml一1 の大腸菌を用いた場合,液体培地中では菌体濃度に変化が見られなかったのに対し,固定化 した場合は菌体濃度が減少し,約2.5時間で1/2となった.また,チップ内に保持された菌体 は,培養液中に存在する場合と同様の遺伝子発現機能を示した,したがって,固定化された 菌体は正常な遺伝子発現機能を有するものの,培養液中とは異なる生育特性を示し,また,

その増殖および死滅が菌体濃度に依存することを明らかにした.

  第5章では, 本オンチ ップフ オーマットをSOS応答に基づくルシフェラーゼの遺伝子発現 を指標 とした変 異原性試 験に応 用した, 変異原 物質とし てMMCを用い,培養液を用いる従 来法と比較した.その結果,本フオーマットにおいても変異原性の強さを示す用量反応曲線 が従来法と同様に得られ,検出下限はいずれの方法においても0.2 ng ml一lとなった.その他 代表的な変異原物質数種類についても同様の結果が得られた.また,分析時間に関しては,

約8時 間を要 していた 従来法 のアッセイを約2時間に短縮することができた.これらのこと から, 本フオーマットがSOS応答に基づく変異原性試験に有用であることを明らかにした.

  第6章では,高濃度の菌体を微小空間内に固定化した場合にその死滅が促進されることに 着目し,致死感受性を指標としたオンチップフオーマットの変異原性試験を新たに考案した.

致死感 受性に基づく従来の試験法では,感受性の異なる2種類の試験菌株を用い,コロニー 計測に基づく菌体の生存率の違いから変異原性を評価する.しかしながら,チップ上でコロ ニー計測を行うのは困難であるため,発現ルシフェラーゼによる発光量を生存率の指標とす る方法 を新たに 考案し, 本フオ ーマット に適用 した.MMCを用 いて検討したところ,ニつ の試験 菌株の生 存率の違 いをBL強 度に基づ ぃて算 出するこ とが可能となり,MMCの変異原 性を検 出することができた,分析時間は約3時間であり,数日を要していた従来法から大幅 に短縮 すること ができた .これ らのことから,本フオーマットを用いてBL強度を生存率の 指標と すること で,致死 感受性 に基づく変異原性試験が可能であることを明らかにした.

  第7章では,以上の結果を総括した.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

微生物を用いるオンチップバイオアッセイの開発と      変異原性試験への応用

  現 代社 会に 韜いて,低環境負荷・省資源型を指向した 科学技術の開発はますます重要 にな って いる 。これらの課題に対応するための新たな分 析システムとして,半導体微細 加工 技術 を利 用してシリコンなどの小型基板(チップ) 上に形成した微小空間内で分析 操作 を行 うマ イ クロ 分析 シス テム (冖TAS)が提案された。y‑TASは分析プロセスのシス テム 化に より 操作の簡便化や分析時間の短縮化などを可 能にすることから,タンパク質 など を対 象と する生化学分析での応用が盛んに試みられ ている。一方,生物学的な分析 方法 であ る細 胞を用いるバイオアッセイは,生体に対す る化学物質の毒性などの影響を 直接 的に 評価 できることから医薬品のスクリーニングな どに利用されている。しかしな がら ,操 作が 煩 雑で 分析 に長 時間 要す ることから,これらを軽減するためy‑TASを利用 したオンチップバイオアッセイの開 発が期待されている。.そのさい,細胞の機能を発現 でき る微 小空 間の構築とともに,少量の試料で多検体・ 多項目のアッセイを同時に実行 でき る高 性能 なアッセイフオーマットが求められるが, 現状では微小空間での細胞の集 積化および機能発現などの基礎的な 研究にとどまっている。

  本 論文 の目 的は,高性能なアッセイフオーマットの開 発を目的として,多検体・多項 目の 一斉 分析 が可能な新しいオンチップアッセイフオー マットを考案し,オンチップバ イオ アッ セイ に応用することにある。また,本オンチッ プアッセイの分析システムとし ての 特徴 を明 らかにする。さらに,微生物を用いる変異 原性試験に応用し,その実用性 を明らかにすることが本論文の目的 である。

  本 論文 は7章 から 構成 され てお り, 第1章 では 本研 究の 背景 と目 的にっいて述べられ

1025 ‑

夫 信

睦 一

   

舘 方

木 口

上 棟

高 田

授 授

授 授

   

   

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ている。以下に著者が見出した主要な成果を述べる。

  (1)

細胞を固定化する貫通孔(ウェル)をアレイ状に配置したチップと試料を導入 するチャネルを平行に配置したチップを組合せ,そこに形成される3次元微小流体ネッ トワークを利用した新規オンチップバイオアッセイフオーマットを考案した。考案した フオーマットにおいて発現ルシフェラーゼによる生物発光(BL)の測定を行った。その結 果,モデル大腸菌の種類および発現誘導物質であるマイトマイシンC(MMC)の濃度の組 合せに応じた強度の異なるBLを一組のチップ上で一斉に検出し,本フオーマットによ る オ ン チ ッ プ バ イ オ ア ッ セ イ が 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。

  (2)

本オンチップアッセイの分析システムとしての特徴を明らかにするために,ア ッセイプロセスの速度論的モデルを提案し、

BL

反応を用いてその解析を行った。オン チップアッセイでは、チップ内に供給された被験物質や酵素基質が,微生物を保持する ゲルと細胞膜を透過し,細胞内で反応するプロセスとなっている。BL応答曲線から各 プロセスの速度定数を求めたところ,物質の膜透過プロセスが発光応答時間や分析感度 に影響を与える主な要因であることを明らかにした。

  (3)

本オンチップフオーマットを

SOS

応答に基づくルシフェラーゼの遺伝子発現を 指標とした変異原性試験に応用した。変異原物質として

MMC

を用い,培養液を用いる 従来法と比較した。その結果、従来法と同様の用量反応曲線が得られ、検出下限も同程 度となった。その他の代表的な変異原物質についても同様の結果が得られた。また,分 析時間に関しては、従来法の約1/4に短縮することができた。以上の結果から,本フオ ー マ ット が

SOS

応 答 に 基づ く 変異 原 性 試験 に 有 用で あ るこ と を明 らかにし た。

  (4)

高濃度の菌体を微小空間内に固定化した場合にその死滅が促進されることに着 目し,致死感受性を指標としたオンチップフオーマットの変異原性試験を新たに考案し、

本フオーマットに適用した。MMCを用いて検討したところ,二つの試験菌株の生存率 の違いをBL強度に基づいて算出することが可能となり,致死感受性に基づく変異原性 試験が可能であることを明らかにした。なお、分析時間は約3時間となり,数日間を要 す る 従 来 法 か ら 大 幅 ぬ 分 析 時 間 の 短 縮 が 可 能 に な る こ と を 明 ら か に し た 。

  

これを要するに、著者は高性能なオンチップアッセイフオーマットとして、複数のチ ップで構成される微小流体ネットワークを用いる方法を考案し、変異原性試験などの実 用分析に応用することにより、ハイスループットなオンチップアッセイシステムを開発 したものであり、生物機能化学および生物計測工学の発展に貢献するところ大なるもの がある。

  

よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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