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博士(医学)石崎高司 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)石崎高司 学位論文題名

周期的制限給餌下における予知性

コルチコステロンピークの発現におけるラット脳内 NeuropeptideY の役 割

学位論文内容の要旨

  (緒言)多くの生理機能には昼夜変化に同調する概日リズムが認められる.例えば,

夜行性齧歯目であるラットでは,自発行動,摂食行動,飲水行動は暗期にみられ,血漿 コルチコステ口ンレベルは明期後半から暗期前半にかけて上昇する.これらのりズムは 恒常暗の照明条件下でも独自の周期で長時間持続する内因性リズムであり,その振動体 は視床下部視交叉上核に存在することが明らかにされている.一方,ラットの給餌を一 日の一定時刻に制限する周期的制限給餌を2週間以上行うと,給餌の1〜2時間前より あたかも給餌時刻を予知するかのように,行動量や血漿コルチコステロンレベルが上昇 する.これを給餌前ピークという.給餌前ピークは周期的制限給餌を中止し,ラットを 自由摂食に戻しても数日は持続し,また絶食条件下で再現することから,概日周期を持 つ内因性リズムに支配されていると考えられる.給餌前ピークは,視交叉上核を両側性 に破壊しても出現するので,視交叉上核の概日振動体とは異なる振動機構に支配されて いると考えられるが,その局在は不明である.一方,CRH=ユー口ンの細胞体が存在す る室傍核には脳幹(孤束核等)に由来するニューロベプチドY (NPY)を含む上行性カ テコ―ルアミンニューロンが分布しており,神経終末から分泌されるノルアドレナリン (NA)やNPYはCRH分 泌 に 促進 的 に 作 用 す る こ と が 知 られ て い る . また,NAやNPY は強カな摂食促進物質としても知られている.上行性カテコールアミンニューロンを特 異的に阻害すると,コルチコステロンの概日リズムは影響されないが,周期的制限給餌 下の給餌前ピークが消失することから,給餌性振動体からの情報は上行性カテコールア ミンニューロンを介してCRH=ユー口ンに伝達されている可能性がある.ラットを絶食 条件下におくと,視床下部NPY濃度が上昇し,合成や分泌が亢進することから,視床下 部NPYが絶食時の摂食行動に重要な役割を果たしていると想定される.本研究は,周期 的 制限 給餌 あるいは48時間絶食におけるラット弓状核および孤束核NPYmRNAを定量 的に測定し,NPY合成に対する給餌条件の影響を解析することによって,給餌前コルチ コステ口ンピーク形成に関する弓状核および孤束核NPYの役割を検討するとともに,給 餌性振動体の局在を解明することを目的として行われた.

(2)

  (方 法) 実験 動物に は,6時 から18時 まで 明期の24時 間明 暗サイクル下で飼育した約 12週 齢 の ウ イ ス タ ー 系 雄 ラ ッ ト を 用い た.周 期的 制限 給餌 (RF)あ るいは48時 間絶 食 の 実験を除き,ラットには固形飼拳HBよび7淋を自由に摂取させた(自由摂食ラット).

周 期 的 制 限 給 餌 実 験 で は ,10時 か ら12時まで の2時間 のみ 摂食 が可 能な制 限給 餌ス ケ ジ ュ ー ルを3週間 実施 した .そ の間 飲水 は自由 に摂 取さ せた . 48時 間絶食 実験 では , 10時 に 給餌 を中止 し,48時 間の 絶食 を行 った 後,10時 に再 摂食 させ た.飲 水は 自由 に さ せた .自 由摂 食,周 期的 制限 給餌および48時間絶食の各給餌条件下におけるラット血 漿 コル チコ ステ 口ンの24時 間変 動, 室傍 核, 弓状 核, 孤束 核NPY含量,および弓状核,

孤 束 核 のNPYmRNA量 の 経 時 変 化 を測 定 し た 。 血 漿 コ ル チ コ ス テ 口 ン は ,Murphyの タ ン パ ク 競合 結合法 によ り測 定し た。 脳組 織中NPYは 免疫 酵素 法(E瞼 )にて 測定 し, 組 織 夕 ン バ ク 量 で 割 っ た 値 をNPY濃 度 と し た . ま た ,NPYmRNAの 測 定 に 定 量 的 阿一PCf法およびmsituhybnmzadon法を導入した.

  (結 果) 血漿 コルチ コス テロ ンの24時間変動は,48時間絶食では自由摂食と本質的な 差 異は なか った が,周 期的 制限 給餌では給餌前に血漿コルチコステ口ンレベルが上昇す る 給 餌 前 ピ ー ク が 認 め ら れ た . 弓 状 核NP濃 度 は , 周 期 的 制 限 給 餌 および48時 間絶 食 の 給餌 前に 自由 摂食よ りも 有意 に上昇したが,摂食後は有意差は認められなかった.室 傍 核 お よび 孤束核NP濃 度に は, どの 時点 でも 自由 摂食 と有 意差 は認 められ なか った . 弓 状 核NPY mRNA量 は 周 期 的 制 限 給 餌お よび48時 間絶 食の いず れに おいて も自 由摂 食 よ り 有 意 に 上 昇 し て い た の に 対 し , 孤 束 核NPYmRNA量 は 周 期 的 制 限 給 餌 の 給 餌 前 に のみに有意に上昇していた.

  (考察)本実験結果から,弓状核Nn′.、二ユーロンとNPYを含む上行性カテコ―ルアミ ン ニュ ーロ ンは 周期的 制限 給餌 と48時間絶食条件下で異なる機能を示すことが明らかと な っ た . す な わ ち , 弓 状 核 に お け るNP濃 度 お よ びNPYmRNA量 は 両 条 件 下 で 自 由 摂 食 よ り 有 意 に 増 加 し て い た の に 対 し , 孤 束 核 に お け るNPY濃度 お よ びNPYmRNA量 は 周 期的 制限 給餌 でのみ 自由 摂食 より増加し,48時間絶食では増加していなかった.この 結果は,弓状核におけるNn合威めミ一般的に給餌が制限された場合に亢進するのに対し,

孤 束 核 に お け るNP.Y合 成 は 周 期 的 制限 給餌 で特 異的 に亢 進す るこ とを示 して いる . NPYは 摂 食行 動 を 刺 激 す る 他 に ,CRH分 泌を増 加さ せる .し かし なが ら,NP Yの作 用 と 室 傍 核 に 分 布 す る2系 統 のNPに ュ ー口 ンと の関 係は 不明 であ った .カテ コー ルア ミ ン 枯 渇 剤で ある6もydro) 叩opan血1e(6ーOHDA) を中 脳に 投与 して ,上行 性カ テコ ー ル アミ ンニ ュー ロンを 選択 的に 破壊すると,周期的制限給餌で形成された給餌前コルチ コ ステ 口ン ピー クの消 失と とも に, 室傍 核に おけ る給 餌前NPy分泌もみられなくなる.

し か し ,48時 間 絶 食 で み ら れ るNPY分 泌 の 亢 進 は6−OHDA投 与 で 影 響され ない こと か ら ,給 餌前 コル チコス テロ ンピ ークの成立には上行性カテコールアミンニューロンが特 異 的に 関与 する ことが 示唆 され た.本実験結果は,これらの成績を支持するとともに,

上 行 性 カ テ コ ー ル ア ミ ン ニ ュ ー 口 ン が主 と し てCRH分 泌 に 作 用 し, 弓状 核NPY二ユ ー ロ ンは 摂食 行動 に関与 する こと を示している.48時間絶食では血漿コルチコステ口ンレ ベ ルは 自由 摂食 と差が 無い のに 対し ,周 期的 制限 給餌 では 午前8時の血漿コルチコステ

(3)

口ンレベルが有意に上昇している.これは孤束核におけるNPYmRNAの変化と一致し ている.一方,両条件下ではともに摂食行動の亢進が予想されるが,これは弓状核 NPYmRNAの変 化と対応している.すなわち,本実験結果は,室傍核に分布する2系 統のNPY=ユー口ンが異なる機能を持つことを示した.

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(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

周期的制限給餌下における予知性

コルチコステロンピークの発現におけるラット脳内 NeuropeptideY の役 割

本 研 究 は 、 周 期 的 制 限 給 餌 あ る い は48時 間 絶 食 に お け る ラ ッ 卜 弓 状 核 お よ び 孤 束 核 NPYmRNAを 定 量 的 に 測 定 し 、NPY合 成 に 対 す る 給 餌 条 件 の 影 響 を 解 析 す る こ と に よ っ て 、 給 餌 前 コ ル チ コ ス テ 口 ン ピ ー ク 形 成 に 関 す る 弓 状 核 お よ び 孤 束 核NPY二 ユ ー 口 ン の 役 割 を 検 討 す る と と も に 、 給 餌 性 振 動 体 の 局 在 を 解 明 す る こ と を 目 的 と し て 行 わ れ た 。 本 実 験 結 果 か ら 、 弓 状 核NPY二 ユ ー ロ ン とNIッ を 含 む 上 行 性 カ テ コ ー ル ア ミ ン ニ ュ ー ロ ン は 周 期 的 制 限 給 餌 と48時 間 絶 食 条 件 下 で 異 な る 機 能 を 示 す こ と が 明 ら か と な っ た 。 す な わ ち 、 弓 状 核 に お け るNn濃 度 お よ びNPymRNA量 は 両 条 件 下 で 自 由 摂 食 よ り 有 意 に 増 加 し て い た の に 対 し 、 孤 束 核 に お け るNPY濃 度 お よ びNPYHlRNA量 は 周 期 的 制 限 給 餌 で の み 自 由 摂 食 よ り 増 加 し 、48時 間 絶 食 で は 増 加 し て い な か っ た 。 こ の 結 果 は 、 弓 状 核 に お け るNn合 成 が 一 般 的 に 給 餌 が 制 限 さ れ た 場 合 に 亢 進 す る の に 対 し 、 孤 束 核 に お け るNP合 成 は 周 期 的 制 限 給 餌 で 特 異 的 に 亢 進 す る こ と を 示 し て い る 。

  公 開 発 表 に お い て 、 福 島 菊 郎 教 授 か ら 周 期 的 制 限 給 餌下 に お ける ラ ッ トの 睡 眠 覚醒 状 態 、 周 期 的 制 限 給 餌 下 に お け る 血 漿 コ ル チ コ ス テ ロ ン 濃 度 と 輪 回 し 行 動 の 関 係 、 周 期 的 制 限 給 餌 下 に お け る 血 漿 コ ル チ コ ス テ 口 ン 濃 度 の 給 餌 前 ピ ー ク の 意 義 、24時 間 絶 食 で は な く 、 な 48時 間 絶 食 を 行 っ た か の 理 由 、 周 期 的 制 限 給 餌 下 に お け る 血 漿 コ ル チ コ ス テ 口 ン 濃 度 と Nn濃 度 の 変 動 バ タ ー ン の 相 違 の 解 釈 に 関 す る 質 問 が あ っ た 。 申 請 者 は 哺 乳 類 で あ る ラ ッ ト の 睡 眠 覚 醒 状 態 は 脳 波 を 測 定 し て み な け れ ば 分 か ら な い こ と 、 周 期 的 制 限 給 餌 下 に お け る 血 漿 コ ル チ コ ス テ 口 ン 濃 度 と 輪 回 レ 行 動 に は 直 接 の 因 果 関 係 は な い こ と 、 周 期 的 制 限 給 餌 下 に お け る 血 漿 コ ル チ コ ス テ 口 ン 濃 度 の 給 餌 前 ピ ー ク に は 食 物 の 利 用 効 率 の 上 昇 が 関 与 し て い る こ と 、48時 間 絶 食 下 の 血 漿 コ ル チ コ ス テ 口 ン 濃 度 変 動 パ タ ー ン は24時 間 絶 食 群 と 差 異 は な く 、 従 来 の 研 究 に よ り2日 間 絶 食 は 負 荷 条 件 と し て 中 程 度 に あ る こ と 、 転 写 後 修 飾 、 翻 訳 制 御 、 翻 訳 後 修 飾 な ど の 段 階 でNPY合 成 が コ ン ト 口 ー ル さ れ て い る 可 能 性 が あ る

一 郎

研 菊

間 島

本 福

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

ことなどを回答した。次いで吉岡充弘教授から周期的制限給餌下におけるラットの摂食量 と 体重 の変化 、NPYmRNA量 とNPY濃 度の 変動 バタ ーンの相違の解釈、室傍核における CRH合成に関するNPYレセブターのサブタイプと細胞内伝達系、給餌性リズムの振動中枢 に関する質問があった。申請者は周期的制限給餌を行うと最初は摂食量も体重増加率も低 下するが、1週間ほどで体重増加率は回復すること、転写後修飾の段階に給餌性のりズム 信号が入っている可能性があること、NPYレセブターには5つのサブタイブが知られてお り、そのうちのY1とY5の2つのサブタイブが関与していること、給餌性リズムの振動中枢 は孤束核、あるいは迷走神経を孤束核に投射している胃腸管に存在する可能性があること を回答した。また本間研一教授から行動の種類と給餌前ピークの形成、本研究の医学的意 義に関市る質問があった。申請者は自発行動などの輪回し行動以外でも給餌前ピークがみ られること、摂食障害などでみられる行動や内分泌系の変化を理解するうえで意義のある ことなどを回答した。最後に富樫広子講師から給餌性リズムに関与している孤束核内部位 に関する質問があった。申請者は胃腸管から孤束核に投射されている迷走神経が今後の研 究対象になることを回答した。いずれの質問に対しても、申請者は自らの研究に基づく経 験や過去の論文の内容を引用し、妥当な回答を行った。

  本論文は、孤束核におけるNPY合成が周期的制限給餌下で特異的に亢進することを実証 し、弓状核二ユー口ンとの相違を明確に示した点が高く評価され、今後の生物リズムの振 動機構の解明に役立つものと期待される。

審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や修得単位なども 考え併せ、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに、充分な資格を有するものと判定し た。

参照

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