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博士(医学)山田 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)山田 学位論文題名

慢性心疾患患者における骨格筋の 運動時工ネルギー代謝と運動能

一3tP一 磁 気 共 鳴 ス ペ ク ト 口 ス コ ピ ー を 用 い て 一

学位論文内容の要旨

. 堂i

【は じめに 】

  慢性 心不 全では ,代償 期には 筋肉運 動に 際し, 骨格筋 の血流 は保 たれており,血流によらない 内 因 性の 筋 代 謝 効 率 の低 下 が 運 動 耐容 能 に 影 響 して い る 可 能 性が 示 唆され ている 。高 磁場MR 装置 では, 生体内 の生 化学的 情報を 非侵襲 的か っ経時 的に測 定する 磁気共 鳴スペクト口スコピ一

(Magnetic Resonance Spectroscopy: MRS)が 可 能 で あ る 。MRSを 応 用 し た こ の 分 野 の 研究 は,主 に前腕 で行 われて おり, 心不全 患者 では運 動時骨 格筋工 ネルギ ―代謝効率と最大仕事 率の 低下が 報告さ れて いる。 しかし,全身の運動耐容能を考えると,下肢の方が直接関係がある。

また ,筋肉 量は最 大仕 事率に 大きく 関係し てく ると考 えられ る。そ こで, 本研究の目的は,心疾 患で 上下肢 の骨格 筋工 ネルギ ー代謝 に相違 があ るかど うかと いう点 と,筋 肉量が運動耐容能にど のよ うに関 係して いる かを検 討する ことで ある 。

【 対  象】

  慢 性心 疾 患 患 者10名 (C群)と 性,年 齢,身 長お よび体 重に有 意差を 認めな い正 常者11名 (N 群 ) 。 心 疾患 患 者 は , ニュ ー ヨ ー ク 心臓 協 会(NYHA) 心 機能 分 類 で は ,H度 (6名 )とm度 (4 名 )であり,下腿の浮腫,肺野のラ音を認めず,非代償期の心不全fま含まなかった。その内訳は,

弁 膜 症5名 , 陳1日 性心 筋 梗 塞2名, 拡 張 型 心 筋 症2名 , 非 閉 塞性 肥 大 型 心 筋症1名 で あった 。

【方  法】

  (1)全 身運動 耐容能 の指 標とし て下肢 坐位工 ルゴメ一夕―による最大酸素摂取量(peak VO:)

の 測 定。ramp負 荷 法 に よ り自 覚 的 最 大 運 動を 行 いbreath by breath法によ る呼 気ガス 分析器

(2)

を用 いて測 定し た。

  (2) |P―MRS。1)前 腕 お よ び下 腿 の 最 大 屈筋 断 面 積(Muscle Crossーsectional Area: MCA) の 測 定 。 臨 床 用MR装 置 (MAGNETOMl. 5T,Siemens社 製 ) を 使 用 し , ス ピ ン エ コ ー 法 に よ り 右 側 前 腕 と 下腿 の 体 軸 多 断面 像 を 幅10mmで 撮 像 し, 各 々 のMCAを 測 定 した 。2

)3'P一MRS測 定 。 前 腕 お よび 下 腿 と も 仰臥 位 を と り ,前 腕 屈 筋 運 動の場 合には ,表 面コイ ル

(直 径80mm)を右 前腕屈 側に固 定し, 下腿 屈筋運 動の場合にはヒラメ筋に接して同コイルを置き,

手 関 節 の 屈 曲 運 動 と 足 の 底屈 運 動 を 個 々に 行 っ た 。 とも に 安 静 時 のMRSを 測 定し た 後 ,MCA か ら , かけ る 重 り の 重さ を 決 定 し ,初 期 負 荷 量 はlJ /cnfと し ,2分 目以降 は増 分を毎 分lJ/ cnfとなる ように 多段 階漸増 負荷を行い,自覚的に1分間続けることが可能′よ最大値を最大仕事率

(J/ 甜 /min)と し た 。 運 動 中1分 毎 にMRSを 測 定 し た 。測 定 条 件 は 繰り 返 し 時 間2.5秒 , 加 算 回 数16回 で あり ,1回 の 測定 に 約40秒要 し た。得 られた 無機 燐(Pi)とク レア チン燐 酸(PC r) の ス ペ ク 卜 ル よ り 各 々 の 面 積 と ピ ー ク を 求 め ,PCrは 標 準 化し てPCr/(PCr十Pi) と し た 。PiとPCrの 化 学 シ フ ト の 差 よ り 以 下 の 式 に 代 入 し て 細 胞 内pHを 算 出 し た 。 細 胞 内pH=ニ6.75十log[ (6―3.27)/ (5.69ー6) ] ,6(ppm) 二 二 二 ニPi―PCro

【 結  果】

  (1) 下 肢 工 ル ゴメ ー ターに よる最 大仕 事率(watt),peak VOよ(ml/kg/min) は各 々次の 通 り で,C群が 有意に 小さか った(153.5土39.lvs 100土16.9゛,30.9土6.2vs  18.0土2.8 , mean土SD, ゛ ;pくO.01,N群vsC群 ) 。 安 静 時 →最 大 運 動 時 の心 拍 数(bpm) はN群;68土 9 ‑*161土18,C群 ;76土13 ‑*161土31で あ り , 両 群 間 に 有 意 差 を 認 め な か っ た 。   (2) °lP―MRSの 結果 。1)前腕 および 下肢 のMCAは両群 におい て有意 差が なかっ た(前 腕;

12.8土3.8  vs  15.4土2.4,下腿;41.5土8.2vs  39.8土4.O,甜,NS,N群vsC群)。2)細胞 内pHとPCr/(PCr十Pi)の 経 時 的 変 化 を み る と , 前 腕と 下 腿 の 比 較で は ,PCrは 同 一 群 内 で は 差 を 認 めな か っ た が ,細 胞 内pHは前 腕 で 低 下 が大 き か っ た 。N群 とC群と の比較 ではい ずれ の 指 標 も 前腕 , 下 腿 と もにC群 で 低 下が 大 き か っ た。 し か し ,MCA当 た り の最 大 仕 事 率 (J/ cnf/min)は前 腕 , 下 腿と もにN群とC群 の間に 有意差 はな く(前 腕;6.6土1.2vs5.6土1.1, 下 腿 ;7.3土O.8  vs  6.5士1.0,NS,N群vsIC群) ,絶対 最大 仕事率 (J/min)は 筋断面 積に 比 例 し た ( 相 関 係 数 は 前 腕 ;r =0. 773,pく0.001, 下 腿 ;r二 二0.731,pく0.001)。

‑ 225 ‑

(3)

【 考  察 】

  今 回, 前腕に おいて 下腿よ り, 嫌気性 代謝が 早期に 始まっ てい たと考 えられ,これは体重を支 え ない筋 群で ある前 腕と, 体重を 支え移 動さ せる筋 群であ る下腿 とで は,遅筋線維と速筋線維の 比 率が元 来異 なるこ とに加 え,日 常から 下膸 では比 較的ト レーニ ング された状態におかれ,ミト コ ンド リア密 度や好 気的 代謝に 関わる 酸化系 酵素 の増加 がある ことが 考えら れた 。しか し,PCr の 変化 が,同 じ群内 では 両者に 有意差 がなか った のは, 前腕と 下腿で はエネ ルギ ー産生 のdrive に は 差 が な かっ た こ と を 示す と 考 え ら れる 。 ま た,N群と 比較し てC群でのPCr低 下の傾 向は,

前 腕,下 腿と もにみ られ, 慢性心 不全状 態が 全身の 筋肉内 ミトコ ンド リアに影響を及ぼしている こ と が 示 唆 さ れ た 。 さ ら に ,MCA当 た り の 負荷 中 のpHやPCrな どに 差 が あ る に も関 わ ら ず , 最 大 仕 事 率 (J /cnf/min)に は差 が な か っ た。 こ れ は ,PCrの 滅 少 ,Piの 増 加 から 推 測 さ れ る ‐ よ う に , 工 ネ ル ギ ー 産 生 のdriveと して のADPがC群 で よ り増 加 し て お り, こ の た めATP の 生 産 も 大 幅 に は 低 下 し な か っ た た め と 思 わ れ る 。 ま た 絶 対 最 大 仕 事 率 (J /min)がMCA に 比例し てい たこと により ,負荷 量や仕 事量 の評価 には, 筋断面 積の 測定が不可欠なことが示さ れ た 。 こ れ までMRSを用 い た 心 不 全 患者 の 骨 格筋 運動 の報告 で,心 疾患の 最大 仕事率 が低下 し て い た の は ,MCAを 考慮 せ ず に 同 一 負荷 量 を かけ たこ とによ り生じ た過負 荷の 影響と 推測さ れ る 。今 回の研 究ではC群 の筋自 体の エネル ギー代 謝効率 低下 のデメ リット は最大 仕事率 の面 から は 明らか では なかっ た。こ れは小 筋群の運動では上限が筋断面積で規定されるためと考えられる。

こ の よ う な 比 較 的 短 時 間 の 漸 増 負 荷法 で の 最 大 仕事 率 は 最 大 随意 収 縮(Maximum Voluntary Contraction: MVC)に 比 例 した も の に な ると 考 え ら れ る。 こ れ は ,通 常行わ れて いる漸 増負 荷 法 の 問 題 点と い え る 。 筋自 体 の 実 際 的な エ ネ ル ギ ー 代謝 の 影 響 は ,主 にMCAで 決 定 さ れ る 漸 増 負 荷 法 では 明 か で な く, 亜 最 大 負 荷(submax) での持 続時 間,耐 久カな どで発 揮され るか も し れ な い 。下 肢 工 ル ゴ メ一 夕 ー に よ る運 動 に おいて は,MRS時の 小筋群 の運 動に比 べはる か に 多 く の 筋 群を 使 用 し て いる が , 筋 肉 のみ の モ デルと して考 えた場 合には ,MCA当た りの負 荷 量 とエネ ルギ ー代謝 指標の 変化お よび最 大仕 事率の 関係は ,活動 して いる筋肉量がふえても,下 肢 筋全体 の酸 化酵素 活性や 組成が ある程 度同 じで, しかも 血流増 加が 十分追従してくるかぎり同 様 に 成 立 す るは ず で あ る 。し か し , 最 大酸 素 摂 取量な どはC群に おいて 大きく 低下し てい た(N 群 の60% 程度) 。この 差は骨 格筋 のみを 考慮し たこの モデル から は説明 できず,主に心臓ポンプ 機 能 の 差 に より 決 定 さ れ ると 考 え ら れ た。 本 研 究の課 題とし ては,MCA測 定上 の問題 (脂肪 組 織 な ど を 含 む) と , 負 荷プ口 トコ ールに 関して ,筋線 維の 動員(recruitment)の 問題が ある。

(4)

【 結  語】

  心 疾患患 者の 骨格筋 運動時 エネル ギー 代謝を 検討す るため ,下肢 坐位 工ルゴメー夕一による最 大 酸 素 摂 取量 と , 一 側 の 前腕 と 下 腿 屈 筋運 動 中の °lP−MRSを 施行し た。前 腕, 下腿と もに正 常 者より 心疾患 患者 の方が 代謝効 率が低 下して いた 。しか し,最 大屈筋 断面積当たりの最大仕事 率 には有 意差が なか った。 これは 前腕, 下腿と いう 比較的 小筋群 の運動 は,心臓の最大ポンプ機 能 以下で 行われ るた めと考 えられ た。一 方,下 肢工 ルゴメ 一夕一 運動は ,大筋群の運動であり,

心 機能に より両 群の 差が表 れたと 考えら れた。

学位論文審査の要旨

  慢性心 不全で は,代 償期 には筋 肉運動 に際し ,骨 格筋の 血流は 保たれ ており,血流によらない 内 因性 の筋代 謝効率 の低下 が運 動耐容 能に影 響して いる可 能性 が示唆 されている。そこで本研究 の 目 的 は , 心 疾患 の 骨 格筋工 ネルギ 一代 謝を°'P一磁気 共鳴 スペク トロス コピ一 (3・P―MRS) に より 検討し ,筋自 体のエ ネル ギー代 謝が, 全身の 運動耐 容能 に大き く影響を与えているかを明 ら かに するこ とであ る。

  対象は ,慢性 心疾患 患者10名と性 ,年齢 ,身 長およ び体重 に有意 差を 認めない正常者11名であ る 。 心 疾 患 群 はNYHA心 機 能 分 類 上 ,H度 (6名 ) と 皿 度(4名 ) で , 非 代 償 期の 心 不 全 は 含 ま な か っ た 。 その 内 訳 は , 弁膜 症5名 , 陳旧 性 心筋梗 塞2名,拡 張型心 筋症2名, 非閉塞 性肥 大 型 心筋 症1名 であ る。

  方法。 運動耐 容能の 評価 法として,2っの検査を施行した。(1)全身運動耐容能の指標として下 肢 坐位 自転車 工ルゴ メ一夕 一に よる酸 素摂取 量の測 定を行 った 。自覚 的最大運動を行い呼気ガス 分 析を 用いて 最大酸 素摂取 量を 測定し た。(2) 末梢骨 格筋の 検討1)前腕お よび下 腿の最 大屈 筋 断 面 積 の 測 定 。 骨 格 筋 運 動 で は 筋 重 量 の 影 響 が大 き い の で , 臨床 用MR装置 (Magnetoml.5 T,Siemens社 製) を 使 用 し ,右 側 前 腕 と 下腿 の 体 軸 多 断 面像 よ り 各々 の最大 屈筋断 面積を 測 定 し た 。  2) 一 側 の 前腕 と 下 腿 の 屈筋 運 動 中 の ‥P―MRS測定 。 前 腕 お よび 下 腿 と も 仰臥 位

227

従 和

   

   

正 義

畠 舘

北 古

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

をとり,前腕屈筋運動の場合にfま,表面コイル(直径80mm)を右前腕屈側に固定し,下腿屈筋運 動の場合にはヒラメ筋に接して同コイルを置き,手関節の屈曲運動と足の底屈運動を個々に行つ た。ともに安静時のMRSを測定した後,最大屈筋断面積から,かける重りの重さを決定し,初 期負荷量は1J /cnfとし,2分目以降は増分を毎分1J/cnfとなるように多段階漸増負荷を行い,

自覚的 に1分間続けることが可能な 最大値を最大仕事率(J /cnf/min)とした。運動中1分毎 にMRSを 損l亅定した。得られた無機 燐(Pi)とクレアチン燐酸(PCr)のスペクトルより各々 の 面積 と ピー クを 求め ,PiとPCrの化学シフドの差より細 胞内pHを産出した。PCrは標 準 化してPCr/ (PCr十Pi)とした。

  結果。自転車工ルゴメー夕―による最大仕事率,最大酸素摂取量は各々心疾患群が有意に小さ かった。すなわち,全身の運動耐容能には大きな差があった。前腕および下腿の最大屈筋断面積 は両群 間に有意差はなかった。細胞 内pHとPCr/(PCr十Pi)の経 時的変化をみると,正常群 と心疾患群との比較ではいずれの指標も下腿で心疾患群での低下が大きかった。これより,工ネ ルギー産生のドライブとしてのADPが,心疾患群でより多く増加していることと,心疾患群で ミトコンドリアの酸化酵素活性の減少などがあることが考えられた。しかし,最大屈筋断面積当 たりの最大仕事率は前腕,下腿ともに正常群と心疾患群の間に有意差はなかった。すなわち,動 員筋量の少ない運動では,運動耐容能に有意差がなかった。以上より,全身の運動耐容能の差に は心臓のポンプ機能か大きく関与していると考えられた。

  口頭発表の審査会において,古舘教授よりMRS施行時の最大運動は,自転車工ルゴメーター での最大運動と同様に評価して良いものかどうかという点にっいて,ATP濃度の変化にっいて の質問がなされた。また,川上教授より同一被験者における骨格筋訓練の有無による差を検討可 能かという点にっいて,筋肉動員と血流配分の相違を検出可能かにっいての質問がなされた。さ らに宮崎勝巳教授より,細胞内pH測定の誤差にっいての質問がなされた。これらに対し,申請 者は慨ね妥当な回答を行った。その後行われた古舘審査教授との試問においても,概ね妥当な回 答がなされた。また,川上審査教授との試問の場において,論文内容に対しての問題点を指摘さ れ,加筆,訂正の後,適当とされた。

  本研究は,骨格筋のエネルギー代謝効率をMRSにより検討し,全身運動能との関連にっいて 明かにした有意義な研究と考えられ,学位授与に値する。

参照

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