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博 士 ( 獣 医 学 ) 大 島 秀 基

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 大 島 秀 基

学 位 論 文 題 名

放 射線 誘発D NA損 傷:8―ヒドロキシグアニン、アルカリ感g帥生塩基損傷生成および 鎖切Mを 指標とした放射線擬直接#ロ (quasi‑directeffect)の解析

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  細 胞 に 放 射 線 が 照 射 さ れ る と 、塩 基損 傷( 変性 、遊 離) 、DNA鎖切 断( 一本 鎖 お よ び 二 本 鎖 切 断 ) な ど の 様 々なDNA損 傷を 導く こと が知 られ てい る。 これ らDNA損 傷 は 、 放 射 線 に よ る 細 胞 死、 突然 変異 、癌 化な どと 密接 に関 連す ると 考 え ら れ て い る 。 放 射 線 がDNAな どの 生体 分子 に損 傷を 与え る様 式と して は、

従 来、 直接 作用 と間 接作 用の2つの タイ プの 機序 が考 えられてきた。直 接作用で は 、 放 射 線 はDNA分 子 に 直 接 イ オ ン化 を起 こし 、塩 基ラ ジカ ルを 誘発 する 。間 接 作 用 で は 、DNA周 囲 の 水 の 放 射 線分 解に よっ て生 成す る反 応性 の高 い水 ラジ カ ル (OHラ ジ カ ル ; .OH、 水 和 電 子 ;e―aq` . 原 子 状 水 素 ; .Hな ど ) が DNAと 反 応 す る 。 間 接 作 用 に はDNA周 囲 の 水 が 関 与 す る が 、 水 溶 液 系 で は 、 DNA周 囲 を 取 り 囲 む 水 は2種 類 存 在 す る 。 一 つ は 自 由 水 で 、 こ れ はDNA周 囲 環 境 の ほ と ん ど 大 部 分 を 占 め る 。も うー つは 結合 水で 、こ れ はDNAの 水和 層に 存 在 し て い る 。 常 温 水 溶 液 系 で は、DNA損 傷に 対す る寄 与は 、放 射線 によ る自 由 水 の分 解生 成物 によ る間 接作 用 がほ とん どで ある 。し かし 、実 際の 細胞 内で は 、DNA周 囲 は 水 含 量 が 極 め て 少 な い た め 、 実 際 にDNAに 反 応 可 能 な ラ ジ カ ル 生 成 は 、DNA近 傍 領 域 に 限 定 さ れ る と 考 え ら れ る 。 こ の 結 合 水 の イ オ ン 化

(H2 0‑+H20‑ト+e− ) に よ り 生 じ る 電 子 (e― ) お よ び 水 カ チ オ ン ラ ジ カ ル

(H20十 ) に よ るDNA損 傷 機 構 が 存 在 し て お り 、 直 接 作 用 の そ れ と 類 似 し て い るた め、 擬直 接作 用と 呼ば れる。さらに、凍結水溶液系を用いた結合 水の研究 に お い て 、 最 近DNA水 和 層 に .OHが 生 成 さ れ て い る こ と が 証 明 さ れ 、 こ れ が DNA損 傷に 関与 する 可能 性が 示 唆さ れて いる 。

  本 研究 では 、擬 直接 作用 とと も に自 由水 なら びに 結合 水に 由来 する .OHに関 す る 知見 を得 るた めに 、ま ず常 温 水溶 液を 用い て、 放射 線に よる‑ OH誘発 とそ れ に よ るDNA損 傷 に つ い て 、 グ ア ニ ン 塩 基 変 性 物 で あ る8ー ヒド 口キ シデ オキ シ グ ア ノ シ ン (8−OHdG)に 注 目 し 、 ス ピ ン 捕 捉 剤 で あ るa− フ ェ ニ ル ーN ーtertー ブ チ ル ニ ト ロ ン (PBN) を 用 い て 、 反 応 中 間 体 お よ び8― OHdGの 生 成 機 構 に 関 す る 知 見 を 得 る こ と を 目 的 と し た 。 次 に 、 凍 結DNA水

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溶液に 放射線照 射を行い 、実際に水和層に.OHやeーが生成されているか否か を確認 した後、 それらのDNA損傷(塩基損傷、鎖切断、アルカル感受性損傷)

に対する寄与について調べた。

  常 温 水 溶液 系では、 デオキシグ アノシン (dGuo)水溶 液をX線照 射するこ   と に よ り 、 ・OHとdGuoの 反 応 を 誘 発 し 、 生 成 し た8−OHdGをHPLC

‑ECD法 で測 定 し た。 ま た照 射 の 際PBNを 共存 さ せ 、そ の 影響 も 調 べた 。そ の 結 果 、PBNは .OHあ た り の8―OHdG生 成 を 増 加 さ せ て い る 事 が 判 明 し た 。 さ ら に 、8―OHdGの 前 駆 ラ ジカ ル がPBNに 捕 捉さ れ て いる か どう か 調 べ る た め に 、PBNとdGuo共 存 水 溶 液 を 照 射 し 、 電 子 ス ピ ン 共 鳴(ESR) 法で検討したところ、前駆ラジカルに由来するシグナルは観察されず、‑ OH由 来 の シ グ ナ ル と .H(e一aq)由 来の シ グナ ル が 観察 さ れ た。 さ らに 、 .H

(e−aq)由 来 のESRシ グ ナル は 、PBN溶 液の みに照射 した場合 と比較し て、

有 意に 増 加 している 事が明らか となった 。現在ま で、8−OHdGの 前駆ラジ カ ル とし て 塩 基8位への .OH付加によ るN7ラジカ ルが類推 されてい る。今回 ス ピ ン 捕 捉 法 で こ のN7ラ ジ カ ル が 観 察 さ れ ず 、PBNに よ る8―OHdG生 成 量 の 増 加 が 観 察 さ れ た 事 実 は 、PBNがN7ラジ カ ル からe− な らび に プ 口ト ン   (H+)を 受 け 取 り 、8−OHdGの 生 成 を 促 進 さ せ 、 そ の 結 果H(eっ 由 来の シグナルが増加したものと考えられた。

  次に、 結合水に 由来する ラジカルがDNA損傷に関与するかどうか明らかにす る 目 的 で 、 凍 結DNA水 溶 液 を 用 い て、 放 射線 照 射 によ るDNA損 傷 ( 塩基 損 傷、鎖切断、アルカリ感受性損傷)について調べた。まず、凍結下でどのような ラ ジカ ル が 生成 さ れて い る か確 認 する た めにPBN単独 およびDNAが 共存した 凍 結水 溶 液 にァ線照 射を行い、 室温下で 融解後、ESR測定を行 った。そ の結 果 、PBN単 独 の 場 合 は ・OHお よ びe− ( .H) に 由 来 す るESRシ グ ナ ル は ほ とん ど 観 察さ れ ず、DNAが 存在 す ると き の み.OHおよ びe− (.H) に由 来 する シ グ ナルが観 察された。 このこと から、凍 結DNA水溶液 を照射す ると

・OHお よ びe−(‑H) が 生 成 す る こ とが 分 かっ た 。 ここ で .OHとe― はDNA 結 合水 の イ オン 化 に由 来 す るこ と が考 え られたが 、e―はDNAの イオン化 に よ って も 生 じるので 、それらの 総和であ ると考え られた。 次に8―OHdG生 成 に 関す る 影 響を 調 べる た め に、 凍 結DNA水溶 液に照射 を行い、 融解後、8― OHdGを 測定 し た 。そ の 結果 、PBN非存 在 下、 存 在 下と も 線量 の 増 加に 伴い   8− ○HdG生 成 量 の 増 加 が 観 察 さ れ た が 、PBN存 在 下 に お い て8ーOHdG 生 成 は 抑 制 さ れ て い た 。 こ れ は 、ESRの 結果 か ら 明ら か なよ う に 、PBNが DNAに 反 応 す る .OHを 捕 獲 し た ため で ある と 考 えら れ る 。次 に 、DNA鎖 切 断につ いて調べ る目的で 、凍結プラスミドDNA水溶液に照射を行い、融解後、

鎖切断 について アガロー スゲル電気泳動法により検討した。その結果、PBNは 鎖切断に関してほとんど影響を与えないことが観察された。このことから、水和

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層に生成 され、PBNに 捕捉され た.OHは、 鎖切断に 関してはほとんど影響を 与えないと考えられた。最後に、アルカル感受性損傷について調べるために、凍 結下でDNA水溶液に照射を行い、融解後、中性処理あるいはアルカル処理を施 し、同様にアガ口ーースゲル電気泳動法で検討した。その結果、アルカリ処理に よっ て、PBNが共存し たDNAにおい て鎖切断 の有意な 増加が見ら れた。こ れ はPBNがDNA水和 層由来の ラジカル による塩 基損傷を 促進してい ることを 示 唆してい る。しか し、水和 層由来の 塩基に反 応性のある・OHがPBNにより捕 捉され、.OH生成が抑制された条件でもアルカル感受性損傷を増加させたとい う事実か ら、損傷 の原因は ・OHによる ものであ るとは考えられず、DNAその

. も の や 結 合 水 に 生 じ るe− やH20十 が 関 与 し て い る と 考 え ら れ た 。   本 研究で は、PBNを用 いたスピ ントラッ ピング法 により、DNA水 和層で生 成された .OHならび にeー(.H)を安定なスピン付加体として直接観測する ことに成 功した。 さらに、8−OHdGやアル カリ感受 性損傷生成などにこれら の結合水由来のラジカルが関与することが明らかとなった。゛これらの知見は、放 射線 に よ る細 胞 のDNA致 死 損傷 を 理解 する上で 重要である と考えら れる。

‑ 867

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学位 論文審査の要旨 主査   教授   桑原幹典 副査   教授   藤田正一

副 査    助 教 授    稲 波    修 副査   教授   松田   彰(薬学部)

    学位論文題名.

放射線誘発DNA損傷:8―ヒドロキシグアニン、アルカリ感み弛は缶基損傷生成および 鎖切Mを指標とした放射線擬直接作用(quasi‑direct effect)の解析

  放射線は水 分子を媒 介に、DNAへ の損傷生 成を通し てその生 物作用を発現する。DNAを 取り 巻 く水 分子には 、DNAに結合 し、DNAを中 心に直径4nmの 層を形成 する水分 子(7Jk和 層)と、さらにその外側にあって自由に拡散できる水分子(自由水層)の2層が存在する。DNA 水溶液の放 射線照射ようなモデル実験では、損傷生成の999a以上は自由水層に由来し、細 胞の放射線 照射の場 合は逆に90%以上の損傷が水和層に由来する。この水和層の水分子が 放射線誘発DNA損傷に与える効果を擬直接作用(Qu asi‑DirectEffect)と呼ぷ。細胞における 放射 線 誘発DNA損 傷の メ カニ ズ ム の解 明 には 、 こ の擬 直 接 作用 の 解明 が重要に なる。

  申請者は、この水和層の水分子(DNA結合水)が放射線のエネルギーを吸収した際、どの ようにDNA損傷 を誘発す るかにつ いて研究した。自由水の影響を排除し、結合水のみが選 択的に関与 する実験系として、DNA水溶液を液体窒素温度ア7K)に冷却し、ア線照射する方 法を採用した。また、DNA損傷の種類として、二つの塩基損傷(グアニンの酸化的損傷であ る8.ヒドロキシグアニンと塩基が遊離した脱塩基サイト)とDNA鎖切断を選び、電気化学検 出法、電気 泳動法等 によりそ の生成を 定量測定した。また、DNA損傷誘発化学反応のメカ ニズムに関する知見を得るため、ESR‑スピントラッピングおよびノヾルスラジオリシス法を 適用した。

  そ の結 果、DNA水溶液を77Kに冷却し 、y線照射 すると、水 和層に吸 収された ァ線エネ ルギーは結 合水をイオン化し、正電荷水分子m20十)を作る。その一部はDNAと反応し、そ の正 電 荷をDNAに付与す る(H20+うDNA+)とと もに、他 は自己分解 し、活性 酸素のー つで ある反応性の高いヒドロキシルラジカルを生成する (H2 0+OH.)ことを明らかにした。こ の反応系に求電子性化合物ぱ・フェニール‑N,t―ブチルニトロンを添加し、DNA+生成量を増 加させたと ころ、脱 塩基サイ ト生成増 大がもたらされたことから、H2 0+‑*DNA+う塩基遊 離という反 応過程が脱塩基サイト生成過程であると結論した。一方、ヒドロキシルラジカ ル(OH.)については、それが生成されると同時にDNAのグアニンと反応し、8‐ヒドロキシ グアニン生 成へと反応が進行することを明らかにした。その一方で、このヒドロキシルラ ジ カ ル は 脱 塩 基 サ イ ト やDNA鎖 切 断 に は 関 与 し な い と い う 事 実 も 明 ら か に し た 。

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  以上、 申請者は これまで 不明瞭であった放射線の擬直接作用によるDNA損傷誘発メカニ ズムにつしヽて、重要な知見をもたらした。よって、審査員一同は大島秀基氏が博士(獣医学)

の学位を受けるのに充分に資格を有するものと認めた。

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